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エピローグ

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 それからほどなくして、社交界は新たな波に揺れていた。
 勢いで婚約を破棄したはいいものの、借金やら約束事やらが明るみに出たことで一転、多額の慰謝料を請求されるケースが現れたのだ。
 騒動の発端になった王子がいい例で、実は過去に借金を帳消しにしてもらう代わりに娘を王族として迎え入れてもらう、という約束のもとに行われていた婚約だったらしく。
 それを一方的に破棄しようとしたものだから、一国の王子が土下座までして謝罪をするという事態にまで発展していた。

「今日もまた一段と、騒がしいわね」

 そんな喧騒を横目に、私は隣に立つ婚約者へと声をかける。

「ああ、そうだねメル」

 あの後、ルードはかなり強引に話を進めようとしていたのだが、

『せめてどちらかが成人をしてから』

 という至極真っ当な反論により、とりあえずは婚約者のままということになっている。
 とはいえ婚姻の宣言はしてしまっているから、事実婚のような形でもあるのかもしれないが。

「私ももしかして、借金のカタだったりするのかしら」

「そういう話は聞いたことないけど、ボクはどちらでも問題ないかな」

 答えになってるんだかなってないんだかよく分からない返答と共に、ルードが私を抱き寄せる。
 あの日からルードはかなり思い切りが良くなった。
 人目をはばからぬ行動ぶりに辟易させられることもしばしばだが。

(まんざらでもない、と思っている自分もいるのが悔しい)

 照れ隠しのように早くなるルードの鼓動を聞いていると。
 これからどんな流行が蔓延ろうと、私とルードは大丈夫だろうと思えるのだった。

「ああ今日もかわいいよ、メル」

「……」

 大丈夫だと思う、たぶん。
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