上 下
1 / 1

しおりを挟む
男「あー、疲れた……」

男(あいつ、人出が足りないからってこき使いやがって……)

男「……あっちー」

男(冷蔵庫にビール、残ってたっけな……この暑さの中買いに行くのだけは……)

男「……ん?」

「……」

男(見たことない子だな……そういや、隣に誰か越してくるって大家が言ってたっけか)

「……」

男(さて、ビールビールっと)

「……はふぅ」

男(……)

「……」


男「おい、お前」

「……?」

男「俺とお前以外に誰もいねーよ」

「……それって、まさか」

男「あ?」

「叫んでも誰も来やしねーぞ、ってやつですか?」

男「んなわけあるか、アホ。大家が飛んでくるわ」

男(……多分)

「では、なぜ私に声を掛けたんですか?」

男「何故って……こんな時間に子供が玄関前でうずくまってたら、大抵の大人は声掛けるもんなんだよ」

「そんなもんですか?」

男「そんなもんです」

「そんなもんなら仕方無いですね……よいしょ」

男(立つと小ささが際立つな、何歳くらいだ?こいつ)


「どうぞ、なんでもお聞き下さい」

男「とりあえず、名前から聞いておこうか」

「私は少女と申します。あなたは?」

男「ん、ああ。俺は男、この部屋の住人だ」

少女「お隣さんでしたか、今後よろしくお願い致します」

男「こちらこそ……じゃなくてだ」

少女「??」

男(なんか調子狂う奴だな……)


少女「質問は以上ですか?」

男「なわけあるか。まだ自己紹介しあっただけだろ」

少女「……ふむ」

男「そこ、お前の家なんだろ?」

少女「えぇ、そりゃまぁ」

男「じゃあなんでこんな時間に玄関先で座り込んでるんだ」

少女「……そうですね、話すと長くなりますが」

男(長くなるのか……)

少女「……じー」

男(……うん、まぁ。話しかけちまったのは俺だしな)

男「ちょっと待ってろ」

少女「……?」

男「……あー、あちぃ」

男(クーラー入れとこ……よっと)

男(見事にビールとつまみしか入ってねぇな……流石にこれ飲ますわけにもいかねぇよな)


男「おう、待たしたな」

少女「いえ、特には」

男「ほれ、飲め」

少女「……」

男(ここまで警戒されると結構ショックだな……)

男「まぁ別に、無理に飲めとは言わんが」

男(俺はビール飲むけど……嫌味みたいになってねぇかな)

少女「……ごく、ごく」

男「お……」

男(それじゃ、俺も遠慮なくっと)

男「……んぐ、んぐ」

少女「……けぷ」

男(あー、美味い……)

少女「……おいしくないですね」

男「……そりゃ悪かった」

少女「いえ、お構いなく」


男「それで、さっきの話の続きは?」

少女「さっきの話……」

男「話が長くなるとか、なんとか」

少女「あぁ、そうでした」

男(おいおい)

少女「私はここに、母と二人で暮らしていまして」

少女「普段は秘密の隠し場所に鍵を置いてあるのですが、どうやら今日は忘れてしまったらしく」

少女「それで、こうして座って母の帰りを待ってるわけです」

男「……ぐび」

少女「……んぐ、んぐ」

男「え、終わり?」

少女「はい、終わりです」

男「……」

少女「……」


男「いつぐらいに帰ってくるんだ?母親は」

少女「いつぐらい、なんでしょうか。いつも特に気にした事なかったですし」

男「ふーん……」

男(ビールぬるくなってきたな……そろそろ俺はこの辺で……)

少女「……水道水」

男「ん」

少女「味はともかく、助かりました。ありがとうございます」

男「おう、お構いなく」


男「あー、さっぱりした」

男(……もう8時か、夏は夜もあちいな)

男「……」

男「……ちら」

少女「……はふぁ」

男(まだ外にいるのか……)

男「……おい」

少女「……?」

少女「まだ何か、ご用ですか」

男(……余計なお世話な気がしてきた)

少女「……じー」


男(見た感じ、汗一つかいてないし……暑さ感じないとかいう可能性も)

男(……んなわけあるか。アホか俺は)

男「あー、その、なんだ」

男「そこに座ってたら暑いだろ?」

少女「……まぁ、多少は」

男「母親が帰ってくるまでの間、うちに来ないか?」

少女「……」

男「変な意味はないぞ。玄関のとこで座ってれば、俺は近寄らん」

少女「……そこまで言われると、逆に」

男(あーあー、やっぱ余計な……)

少女「冗談です、厚意で言ってくださってるんですよね」

少女「お言葉に甘えさせていただいて、いいですか?」

男「最初からそう言えばいいんだよ」

男(笑うと結構印象変わるな、こいつ)


少女「……おじゃま、します」

男「おう、適当にくつろいでくれ」

少女「……んしょ」

男「……」

少女「……きょろ、きょろ」

男(……落ち着かんな、まぁ当たり前か)

男(なんか会話でもしてみるか……)

男「なぁ」

少女「……はい、なんでしょうか」

男「いつもこんな時間なのか?母親が帰ってくるの」

少女「どうなんでしょうか、時計をあまり見ないもので」

少女「今日はいつもより遅い、ような気はします」

男「ふーん……」


男「なら、お前はいつも一人で待ってるのか」

少女「そうなりますね。あの部屋に私が感じられない何かがいる可能性も否定はできませんが」

男「……なんじゃそりゃ」

男(母子家庭、ってやつか……)

男「お前、寂しくは……」

少女「……あ」

男「あ?」

少女「音が、しました」

男「……あぁ」


「……ありがとうございます、どうしているかずっと心配だったんです」

男「勝手にやった事ですんで」

「ほら、あなたもお兄さんにお礼を言いなさい」

少女「……ありがとうございます」

男(……嫌そうな顔してんな)

「後日、引っ越しのご挨拶も兼ねてお礼をさせていただきますね」

男「あ……その、お構いなく」

「では、また……」

男「あ、はい。ほんとお礼とか……」

男(……行っちまった)

男(幸薄そうな顔してたな……ま、色々苦労してんだろうな)

男「……寝るか」


男「……ふわーぁ」

「随分と大欠伸ね」

男「……色々あってな、昨日」

「色々って何さ」

男「具体的に話しても特に面白い話でもないが」

「そう言われると聞きたくなるのが人間でしょ」

男「……仕方ねぇな」


「ふーん、そりゃ大変だったね」

男「だから特に面白い話でもないと言っただろ……」

「……どうだか?」

男「……あ?」

「うん?」


男「……あー」

男(相変わらずあっちぃな……政府はもっと温暖化対策に力を入れるべきだ)

男「……ん」

少女「……あ」

男「……よう」

少女「……こんばんは」

男「こんばんは……じゃなくて、なんで俺の家の前にいるんだ」

少女「母がお礼に、と」

男「本人はどうした」

少女「今日のお仕事は夜勤だそうで、お礼だけを持ってお待ちしてました」

男(……てことは、こいつは今日一人ぼっちなわけか)

男「……」

男「一緒に、食うか?それ」

少女「……」

男「……」

少女「……そちらの都合がよろしければ」

男「都合が悪かったらこんな事言わねーよ」

少女「そう、ですか……では」

男(カレーか、自分じゃあんま作らんからな。久しぶりだ)


少女「……お邪魔します」

男(別にわざわざ言わんでもいいのに)

少女「お台所、借りますね」

男「ん……火は使った事あるのか?」

少女「……手伝いくらいなら、多少」

男「危なっかしいな、俺に任せてお前は座ってろ」

少女「……それではお礼になってないのでは」

男「俺がお礼されたと思ってりゃいいんだよ」

少女「……納得いきませんが、理解は出来ます」

男「ほれ、ジュースでも飲んでろ」


少女「……ごく、ごく」

男(おー、美味そうな匂いだ)

少女「……あなたは」

男「ん?」

少女「一人暮らし、されてるんですか」

男「誰かと暮らしているように見えるか、この部屋」

少女「……すいません」

男「別に謝る必要はないぞ……よし、このぐらいでいいか」

男(米は確か冷凍のがあったよな……)

男「待たした」

少女「いえ、そこまでは」


男「この場合、俺が言うのが正しいか分からんが」

少女「?」

男「遠慮なく食えよ」

少女「……元々そこまで大食いではないのですが」

男「いや、無理して食わんでもいいが」

少女「……いただきます」

男「いたきだきます」

少女「……もぐ、もぐ」

男(……甘口、か。多分こいつの為に作ったカレーなんだろうな)

少女「……おいしい、ですか?」

男「おう、美味いぞ」

少女「……にこ」

男「……」

男「お前、普段からもう少し笑った方がいいと思うぞ。その方が、いい感じだ」

少女「……」

男「どうした、目丸くして」

少女「……これはいわゆる、口説き文句と言うやつですか?」

男「アホ言え」


少女「……ご馳走様でした」

男「ふー、久々に腹一杯食べた」

少女「……後片付けくらいは、させてください」

男「おう、そこはお言葉に甘えようか」

男(ビールビールっと……)

少女「……ごし、ごし」

男(……つまみうめぇ)

少女「……終わりました」

男「おう、お疲れさん」

少女「……」

男「……」

男「おい」

少女「……?」


男「まだ何か用があるのか?」

少女「いえ、無いですが」

男「だったら、いつまでいる気なんだ」

男(男の一人暮らしだぞ、一応)

少女「……私がいると、迷惑ですか?」

男「いや、迷惑と言うか……なんと、言うか」

少女「……じー」

男(急に警戒心が減ったな、やっぱりよく分からん奴だ)


男「12時過ぎるまでだからな」

少女「……ふむ」

男(……理由は分からんでもないから、追い出しにくい)

少女「……あの」

男「ん、なんだ」

少女「……ありがとう、ございました」

男「改まって急になんだ」

少女「……」

男「……?」

少女「……ぐぅ」

男(寝言、だったのか今の。にしちゃ……)

男(じゃなくて、何寝てくれちゃってんだコイツ)


少女「……すぅ……すぅ」

男「おい、起きろ。おい……」

少女「……」

男(……ダメだ、完全に寝入ってる)

男(ちょいと確認してくるか)

男「……ふむ」

男(隣の部屋に行くだけでもちゃんと戸締りするんだな、感心だが……)

男「さて、どうしたものか」


男(とりあえず、ベッドまで運ぶか)

少女「……むにゃ」

男(……軽いな。事務所の荷物よりも……は言い過ぎか?)

少女「……」

男「……よいしょっと」

男(さて、俺はどこで寝るかな……)

男「……?」

少女「……」

男(裾をギュッと握られては、動けんのだが)

少女「……ぐぅ」

男「……はぁ」

男(今から言い訳、考えておいた方がよさそうだな……)


少女「……むにゃ、むにゃ」

少女「……くぁ」

少女(……私、寝ちゃってた?)

少女「……じー」

男「ぐがー……」

少女(……だらしない寝顔ですね)

男「すぴー……」

少女「……つん、つん」

男「んが、ぁ……」

少女「……なで、なで」

男「むにゃ……」

少女「……ふふ」


男「……ん」

男「ふわーぁ……」

男(いつの間にか寝ちまってたのか)

男(今何時だ……ん?)

『ありがとうございました。目が覚めたので帰ります』

男(……母親が帰ってくる前に帰れたんだろうか)

男「おっと、こんな時間か。急がんとな」


「おっす、おはよう」

男「おっす」

「今日は面白い話、ないの?」

男「そう毎日何かあってたまるかよ」

「その反応は、何かあったんだね」

男「……まぁな」

「またお隣の少女関連かな?」

男「そうだが、何故そう思った」

「昨日の今日だし、なんとなくね。で、どんなことがあったの?」

男「……話さないといけないのか」

「暇だしね」

男「俺は暇じゃない」

「わくわく」

男「……チッ」


「へー、そんなことが」

男「子供は何考えてるのか分からん」

「大人だからって分かるもんでもないんじゃない?」

男「子供よりは幾分かマシだ」

「へぇー」

男「んだよ」

「んーん、別にー」

男「お前も作業を手伝え。何が暇だ」

「はいはーいっと」


男(今日は早く終わりそうだな……)

「ねぇ、今日さ」

男「ん、どうした」

「キミの家、行ってもいい?」

男「……なんだ、急に」

「話しを聞いてたら、その女の子の事が気になっちゃって」

男「お前、そういう趣味が……?」

「……バーカ」

男「??」

「とりあえず、分かったらさっさと作業終わらせなよ」

男(だったら手伝えっての……)


「いやー、事務所を出るとあっちぃね。この時間でも」

男「一旦家に帰ったほうがいいんじゃないか」

「まぁ最悪、キミの家でシャワー借りるよ」

男(本気で言ってんのかこいつ……)

男「……ん」

「……んー?」

少女「……あ」

男「む」

「お?」


男「なんだ、またなのか?」

少女「……の、ようです」

(ふーん、この子が噂のね)

「はじめまして、こんばんは」

少女「……じー」

(心なしか、睨まれているような?)

男「こいつは俺の職場の同僚だ。アホだがそこまで害はない」

「微妙にひどい紹介じゃない?」

男「全面的にひどく紹介したつもりだが」

少女「……お友達、ですか?」

男「まぁ、かなり好意的に解釈するとそんなとこか」


少女「……失礼しました」

「いえいえ、お構いなく」

男「まぁ、知らない奴に対しての反応としちゃ間違った方じゃないから安心していい」

少女「……ぺこり」

(可愛いなぁ、こりゃもしかしなくても……)

男「じゃ、帰れ」

「へ?」

男「用は済んだだろ」

「まだシャワー借りてないよ」

男「本気で言ってたのかそれ……」


男「着替えどうすんだよ」

「キミの借りちゃダメ?ちゃんと洗って返すよ」

男「そういう問題かよ……」

少女「……」

「……ダメ?」

男「ダメだ、さっさと帰れ」

「ちぇーっ、帰りますよっと……それじゃ、またねー」


男「……」

少女「……」


男(まったく、何しに来たんだあいつ……)

少女「……おっきかった」

男「は?」

少女「なんでもありません」

男「……ならいいんだが」

少女「いや、なんでもないわけではないかも……?」

男(また訳の分からんことを言い始めやがって)

少女「……暑さで頭が回りません」

男「……」

少女「……暑い、です」

男「分かった分かった……」


少女「……はふ」

男(随分と遠慮がなくなったな、コイツ)

少女「今日はお酒、飲まないんですか?」

男「ん、あぁ」

男(余計な奴が引っ付いてきたせいで買い忘れただけだがな)

少女「……あの」

男「ん、どした」

少女「……」

男「……おい」

少女「……上手く言葉が出てこない、です」

男「なんじゃそら」


少女「ですから、その……ですね」

男(こいつ用にと思って買ってきたもんだったが)

少女「……あっと……ええと」

男(久々に飲むとオレンジジュースも悪くねぇな)

少女「……マジメに聞いてますか?」

男「なんも話してねぇだろ」

少女「ですから……」

男「……ん?」

男「わりぃ、来客だ。ちと待っててくれ」

少女「……むすー」


「こんばんは、お隣さん」

男「あ、どうも。こんばんは」

「あの子、こちらにいらしてませんか……?」

男「あぁ、来てますよ」

「よかった……いつもの場所に鍵が置きっぱなしだったから、心配しちゃって」

男(俺のとこにいたから安心、ってのもおかしい気もするがな)

男「……ん?」

「……この前のカレーどうでした?」

男「へ?あ、はい。美味しかったですよ」

少女「……とてとて」

「それはよかったです、あの子から話を聞いた時は心配で……」

少女「……お母さん、帰ろ」

「はいはい、今行きますよ……では、これで」

男「は、はぁ……」


男(なーんか、話がおかしかった気がするが……)

男(まぁいい、寝るか)


男「……ん」

男(朝……いや、もう昼か?どうも休みってのは時間の感覚が掴めんな)

男「とりあえず食いもん買ってくるか」

男「む?」

少女「……あ」

男「おつかいか、偉いじゃないか」

少女「今日はお仕事、お休みなんですか」

男「ま、そんなとこだな」

少女「……惣菜ばかりでは、体を壊しますよ」

男「この生活を続けてるが幸い俺は健康体だ」

少女「……むー」

男(な、なんで不機嫌になる)


少女「……では、ここで」

男「……」

少女「とてとて……」

少女「……っ?」

男「どうせ帰る方向一緒なんだ、持ってやるよ」

少女「……泥棒は犯罪です」

男「料理しねぇのに食材ばっか盗んでどうすんだ」

少女「……ありがとう、ございます」

男「うむ、それでよろしい」


少女「……重くないですか?」

男「この程度、慣れてるよ」

少女「……」

男「おい、歩きにくいだろ」

少女「我慢してください、これぐらい」

男「いや、なんでだよ」

少女「……」

男(……まったく、子供は分からん)


男「ほいよ、ここまでくればいいだろ」

少女「……こく」

男(この程度とは言ったものの肩が……歳か?なんて言いたかねぇな)

少女「ただいま、お母さん」

「あら、早かったわね……」


男「……さて、飯飯っと」


男「……おっと、もうこんな時間か」

男(一日中家でゲームだなんて、実に贅沢な休日の使い方だ)

男「ん?」

男(誰だ、こんな時間に……)


少女「……」

男「おう、どした。また親がいねぇのか」

少女「……親はいます。片親ですけど」

男「いや、そう言う意味の言葉じゃなくてだな……」

少女「お昼のお礼を、言ってなかったので」

男「ん、あぁ」

少女「ありがとう、ございました」

男「はい、どういたしまして」

少女「……それでは」

男(え、そんだけ?)

少女「……さようなら」

男「あ、おい……」


男「なんだったんだ、今の」


「やぁ、おはよう」

男「おう、おはよう」

「いつにも増して不景気なツラしてるね」

男「……ある程度は生まれつきだ」

「また件の少女関連?」

男「いや、あいつとはしばらく会ってない」

「しばらくってどのぐらい」

男「そこ重要か?」

「それなりに」

男「……」

男(あの謎のあいさつ以降、だなそういや)


「結構な期間音沙汰なしなんだね、また引っ越したとか?」

男「いや、母親の方を見かけるからそれはないだろうな」

「聞いてみればいいじゃん、そのお母さんに」

男「……めんどくせぇよ、そんなもん」

「……くく」

男「なんだ、そのツラ」

「いや、なんでも」

男「なんだよそれ」

「キミが不景気ヅラしてる理由が分かって満足だし」

男「どこをどう聞いて理由が分かったんだ」

「さて、どこでしょう?」

男「……ケッ」


「あ、そういや聞いた?」

男「何をだよ」

「今日新しいバイトの子、入るらしいよ」

男「ほう、これでやっと俺の重労働も軽減されるのか」

「残念、女の子らしいです」

男「……はぁ」

「所長好みの女の子とかなんとか」

男(所長の趣味なんて知るか……)


「もうそろそろ来るって聞いてたんだけど……」

男「俺は作業に戻るぞ、お前が対応しろ」

「えー、めんどくさいなぁ……っと、噂をすれば」

「はいはい、今出ますよー」

男(というか、所長って普段何やってんだ?俺も面接の時一回会ったきりな気がするぞ)

「おーい、一応新人くんに挨拶ぐらいしときな」

男「へいへい……」

男「……」

少女「……」


少女「……初めまして?」

男「いや、なんでだよ」


「キミが子供子供言うから、完全に勘違いしちゃってたよ」

男(まさか高校生だったとは……)

「受験とかで大変だったんだよねー」

少女「……はい、まぁ」

(ま、それだけじゃないんだろうけど)

男「……」

男「まさか、新人がこいつだって知ってたんじゃあるまいな?」

「……まっさかー?」

少女「……まっさかー」

男「……お前らなぁ」


男「ったく、仕事をなんだと……」

少女「……あの」

男「あん?」

少女「……これから宜しくお願いします、先輩」

男「お、おう?」

「ニヤニヤ」

男「……まったく、変な奴に懐かれたもんだ」

少女「変な奴とは失礼な」

男(……これからよろしくな、後輩)

少女「……なにか言いましたか?」

男「なんでもねぇよ、なんでも」
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません

下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。 旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。 ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも? 小説家になろう様でも投稿しています。

愛されない女

詩織
恋愛
私から付き合ってと言って付き合いはじめた2人。それをいいことに彼は好き放題。やっぱり愛されてないんだなと…

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの
恋愛
 幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。  誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。  数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。  お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。  片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。  お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……  っと言った感じのストーリーです。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

処理中です...