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氷幼女「……む、魔法使いではないか。どうしたのだ、部屋に入らんのか?」

僧侶「……顔、変」

魔法使い「え?あ、うん……」

氷幼女「なんじゃ、なにかあったのかえ?」

魔法使い「……うん。なんか、勇者の様子が変なんだ」

氷幼女「勇者が……?」

魔法使い「あんな怖い顔、初めて見た……ボク何かしちゃったのかな」

魔法使い「今までの不満が……」
ポコン
魔法使い「……ぅ」

氷幼女「勝手に深く考えるでない、アホ。人間はめんどくてかなわん」

僧侶「……よし、よし」


氷幼女「しかし、あの勇者がのう……何があったのじゃろうか」

魔法使い「分からないよ……宿に帰って来たと思ったらすぐ部屋に戻っちゃって」

僧侶「……外で、何かが?」

氷幼女「ふむぅ……本人に聞いてみらんことにはなんとも言えんな」

僧侶「……きっと、大丈夫」

魔法使い「……そうだね、勝手に落ち込んでてもしょうがないよね!ありがと、二人とも」


氷幼女「しかし、勇者がそんな調子ならそっとしておくのがよかろうな」

僧侶「……部屋、変える?」

氷幼女「んー……そうじゃなぁ、もう一部屋借りるとするか」

魔法使い「……うん、そうしたほうがいいかも」

氷幼女「わらわはもう眠いからのう……ふわぁ……」

僧侶「……早く、寝たい」

魔法使い「じゃぁ、ボク宿主さんに言ってくるよ」タタタ

氷幼女(……表面は笑っておるが、相当堪えておるな)

僧侶(……心配)



魔法使い「ゆうしゃー、いきなりたびなんてどうしたの?」

勇者「……おやじが、かえってこないんだ」

勇者「かあさんまいにちないてばかり……おれがさがしにいくんだ!」

魔法使い「でもゆーしゃ、まものとたたかえるの?」

勇者「うぐ……だいじょうぶ……なはず」

魔法使い「もー、しかたないなー、ボクがいっしょにいってあげる!」

勇者「なんでおまえが……」

魔法使い「だって、ボクのほうがゆうしゃよりつよいもん!」


魔法使い「なんか、りょこうみたいでたのしいねー」

勇者「……」

魔法使い「さっきからなにさー、ぶすってしちゃってー」

勇者「なんでついてくんだよ……おれはひとりでもだいじょうぶなのに!」

魔法使い「……うそつき、ひとりじゃおおがらすもたおせないくせに」

勇者「……」

魔法使い「ボクがついてきたかったら、ついてきたの!」

魔法使い「かえれっていわれても、かえってやらないぞ!」


魔法使い「うう……いたいよう」

勇者「だいじょうぶか?まほうつかい」ポワァ

魔法使い「わぁ、あったかい……」

勇者「……やっぱり、おまえはかえれ」

魔法使い「だから、ボクは……」

勇者「しんぱいなんだ、おまえがしんだりしないか」

勇者「おれはゆうしゃだからだいじょうぶだけど……おまえは」

魔法使い「……ボクも、しんぱいだよ、ゆうしゃのこと」

魔法使い「ゆうしゃだからっていつもむちゃばっかじゃないか、ゆうしゃは」

魔法使い「まちにいたらしんぱいすぎてよるもねむれなくなっちゃうもん」

魔法使い「だから……かえれなんて、いわないでよ……」グスン



勇者「……ん」

勇者「朝……か」

勇者(あの後すぐ寝ちまってたのか、俺)

勇者(なんで今頃昔の夢なんか見るんだ……?)

コン コン

魔法使い「……勇者、起きてる?」

勇者「ああ、起きてるよ」

魔法使い「えと……朝ごはん出来てるみたいだけど……どうする?」

勇者「……あぁ、大丈夫だ。今いくよ」


勇者「……」モグモグ

魔法使い「……」モフモフ

勇者「……」

魔法使い「……」チラッ

勇者「……どうかしたか?」

魔法使い「い、いやっ……なんでも」

氷幼女(……な、なんという気まずい空気なんじゃ……)

僧侶(……ご飯が、おいしくない)

勇者「あー、その、なんだ。昨日は、すまんかったな」

魔法使い「へ?うん、ああ……いいよ別に。気にしてないから」

氷幼女(強がりおって、阿呆が)

魔法使い「……すぅー……はぁー……」

勇者「……?」

魔法使い「……聞いてもいい?何があったか」

勇者「……」

僧侶「……知りたい」

氷幼女「このままじゃ旅がぎこちなくなりそうじゃからのう。さっさと吐いたほうがよいぞ?」

勇者(……一人であれこれ考えても、仕方ないよな)

勇者「……それがな」
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