21 / 21
㉑
しおりを挟む
それからはてんやわんやと慌ただしく、特に大々的に祝おうとする国王陛下と面白半分にからかおうとするエント様が騒いでいたのだが。
「静かになさい」
という女王陛下の一言でその場は収まり。
それ以上騒ぎになるのも面倒だということで、会の終わりを待たずに屋敷へと帰ってきた。
「……」
しかしさっきまでは騒ぎの渦中の中にいたことで感じていなかった色々な感情が、冷静になったここにきて一気になだれ込んできて。
ジン様の顔をまともに見ることができない。
「……もしかして、後悔しているのか」
そんな私の様子を心配したのか、ジン様がこちらへ近づいてくる。
「断りづらい雰囲気になっていたからな。考え直したなら今からでも……」
いつもの調子が戻っていないのはどうやらジン様も同じらしく。
余裕の一切ない不安な表情をしながら、そんなことを聞いてくる。
その様子を見て私の方は、ゆっくりと落ち着きを取り戻して。
普段の余裕そうな態度の方が一種の強がりのようなもので、今のジン様が本来の姿なのかもしれないと。
今のジン様を見ていると、そんな気がしてくる。
「後悔なんて、してません」
ジン様の不安を断ち切るように、言葉を遮って前へ出る。
「……ん」
気づけば私とジン様の間にロイドが割って入っていて。
非常に既視感を覚える状況になっていた。
「変なこと、を検知しました」
ロイドが言ってくる言葉も、予想通り。
なぜならほかでもない私が指示したことだから。
「ありがと、ロイド」
私はロイドのことを優しく抱きしめてから、耳の後ろにあるスイッチを押した。
「でももう、変なことは止めなくていいからね」
ゆっくり、私の手元を離れていったロイドに見守られる形で。
私たちは互いの気持ちを確かめるように、ゆっくりとキスをした。
「そういえば、私のどこがよかったんですか?」
「……チープに聞こえるかもしれないが、運命を感じたんだ」
「運命……ですか」
「ステラに整備してもらうまで、この義手は動作不良を起こしてばかりだった。それが今ではこんなに安定している」
「買い被りですよ、それは」
「……いや、私は運命の方を信じている」
「……では私も、運命だったのだと思うことにします」
「……ステラ」
「……ジン、様」
「お嬢様、起きてください、お嬢様」
「……ロイド、その機能もストップ!!」
「静かになさい」
という女王陛下の一言でその場は収まり。
それ以上騒ぎになるのも面倒だということで、会の終わりを待たずに屋敷へと帰ってきた。
「……」
しかしさっきまでは騒ぎの渦中の中にいたことで感じていなかった色々な感情が、冷静になったここにきて一気になだれ込んできて。
ジン様の顔をまともに見ることができない。
「……もしかして、後悔しているのか」
そんな私の様子を心配したのか、ジン様がこちらへ近づいてくる。
「断りづらい雰囲気になっていたからな。考え直したなら今からでも……」
いつもの調子が戻っていないのはどうやらジン様も同じらしく。
余裕の一切ない不安な表情をしながら、そんなことを聞いてくる。
その様子を見て私の方は、ゆっくりと落ち着きを取り戻して。
普段の余裕そうな態度の方が一種の強がりのようなもので、今のジン様が本来の姿なのかもしれないと。
今のジン様を見ていると、そんな気がしてくる。
「後悔なんて、してません」
ジン様の不安を断ち切るように、言葉を遮って前へ出る。
「……ん」
気づけば私とジン様の間にロイドが割って入っていて。
非常に既視感を覚える状況になっていた。
「変なこと、を検知しました」
ロイドが言ってくる言葉も、予想通り。
なぜならほかでもない私が指示したことだから。
「ありがと、ロイド」
私はロイドのことを優しく抱きしめてから、耳の後ろにあるスイッチを押した。
「でももう、変なことは止めなくていいからね」
ゆっくり、私の手元を離れていったロイドに見守られる形で。
私たちは互いの気持ちを確かめるように、ゆっくりとキスをした。
「そういえば、私のどこがよかったんですか?」
「……チープに聞こえるかもしれないが、運命を感じたんだ」
「運命……ですか」
「ステラに整備してもらうまで、この義手は動作不良を起こしてばかりだった。それが今ではこんなに安定している」
「買い被りですよ、それは」
「……いや、私は運命の方を信じている」
「……では私も、運命だったのだと思うことにします」
「……ステラ」
「……ジン、様」
「お嬢様、起きてください、お嬢様」
「……ロイド、その機能もストップ!!」
10
お気に入りに追加
56
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。
それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。
一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。
いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。
変わってしまったのは、いつだろう。
分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。
******************************************
こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏)
7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

【完結】巻き戻りを望みましたが、それでもあなたは遠い人
白雨 音
恋愛
14歳のリリアーヌは、淡い恋をしていた。相手は家同士付き合いのある、幼馴染みのレーニエ。
だが、その年、彼はリリアーヌを庇い酷い傷を負ってしまった。その所為で、二人の運命は狂い始める。
罪悪感に苛まれるリリアーヌは、時が戻れば良いと切に願うのだった。
そして、それは現実になったのだが…短編、全6話。
切ないですが、最後はハッピーエンドです☆《完結しました》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
お気に入りに登録しました~
ハナミツキさんの作品読ませてもらいました(^o^) 私には書けない作品なので参考になりました…続きが気になったのでお気に入り登録させてもらいました(^o^)
良かったら私の作品も観てくださいね(^^)/