120 / 177
第三章 願いの枠が余ったので
第72話 乙女ゲームの始まり
しおりを挟む
私はサイファを引っ張って、さらに後ろにさがった。
ネプチューンて、ゲームでは、こんなじゃなかった。
ファン投票でデゼルとトップ争いをするくらい、人気の高いキャラなのに。
光の十二使徒もそれぞれ魅力的なんだけど、光の十二使徒はたくさんいすぎて、票割れを起こしてしまうの。
ネプチューンはクールで傲慢だけど、心から、ユリアを愛している設定だったから、恋愛至上主義の乙女達には人気が高かった。
やっぱり、ゲームと同じにはいかないのかな。
ユリアが生きていた頃のネプチューンは、ゲームの印象に近かったのに、私が公国の滅亡や、闇の十二使徒の闇落ちを阻止した影響なのかな。
私がネプチューンを駄目にしたのかな。
「――ネプチューン様、あなたが拒否するデゼルに強いるつもりなら、これ以上、あなたにお仕えすることはできません」
サイファ……。
そうね、ネプチューンに仕えるのをやめることも、考えよう。
ハッピーエンドになるはずのシナリオを崩すことは、こわいけど。
シナリオの通りにしないと、ハッピーエンドにならないわけじゃ、ないはずだもの。
公国だって、今頃は存在していないはずだったけど、十七年、平和が続いてきたもの。
私はそっと、サイファだけに聞こえるようにささやいたの。
「ありがとう、サイファ様」
サイファがきゅっと、つないだ手を握り返してくれて、ほっとした。
私とサイファを冷たく一瞥したネプチューンが立ち去って、ほどなく。
とてつもない魔力が皇宮の地下神殿から放たれたと感じたの。
サイファも感じたみたいで、緊張した様子で私を見た。
キンコーン
==============================
暗黒皇帝ネプチューンが聖サファイア共和国に対する侵攻を開始しました。
これより、『星空のロマンス』のゲームがスタートします。
闇巫女デゼルに運命の女神テュケーからの祝福が与えられました。
女神の祝福により、すべてのステータスが一段階上昇し、運命の輪【Lv1】が付与されました。
運命の輪【Lv1】により、闇巫女デゼルが起こすべきイベントを起こせます。
==============================
どうして、ネプチューンは動いたの!?
京奈に会って何を思って、私を抱くなんて言い出して、あげく、ユリア復活のための物語を始めることにしたの!?
「サイファ様、ネプチューンが地下神殿で、禁断の魔術を使った。今、たくさんの人達が魔物に変えられてしまった」
「行こう」
燭台の灯だけが頼りの地下神殿に、山羊か何かを生贄に捧げた様子のネプチューンが佇んでいた。
「ネプチューン、どうしてこんなことを!」
「おまえこそ、どうしたデゼル。俺の副官などやめるんじゃなかったのか?」
私、ほんとにやめていいならやめたい、ネプチューンの副官なんて。
生贄は山羊とはいえ、血の海の中で妖艶に笑ってるネプチューンの気が知れないのよ。
「ああまで言われて、誰がおまえを信用するんだ。京奈がユリアなものか。信用しろと言うなら――」
邪悪に微笑んだネプチューンが、私に血塗られた手を差し伸べた。
「俺に身も心も任せるんだな」
ネプチューンて、ゲームでは、こんなじゃなかった。
ファン投票でデゼルとトップ争いをするくらい、人気の高いキャラなのに。
光の十二使徒もそれぞれ魅力的なんだけど、光の十二使徒はたくさんいすぎて、票割れを起こしてしまうの。
ネプチューンはクールで傲慢だけど、心から、ユリアを愛している設定だったから、恋愛至上主義の乙女達には人気が高かった。
やっぱり、ゲームと同じにはいかないのかな。
ユリアが生きていた頃のネプチューンは、ゲームの印象に近かったのに、私が公国の滅亡や、闇の十二使徒の闇落ちを阻止した影響なのかな。
私がネプチューンを駄目にしたのかな。
「――ネプチューン様、あなたが拒否するデゼルに強いるつもりなら、これ以上、あなたにお仕えすることはできません」
サイファ……。
そうね、ネプチューンに仕えるのをやめることも、考えよう。
ハッピーエンドになるはずのシナリオを崩すことは、こわいけど。
シナリオの通りにしないと、ハッピーエンドにならないわけじゃ、ないはずだもの。
公国だって、今頃は存在していないはずだったけど、十七年、平和が続いてきたもの。
私はそっと、サイファだけに聞こえるようにささやいたの。
「ありがとう、サイファ様」
サイファがきゅっと、つないだ手を握り返してくれて、ほっとした。
私とサイファを冷たく一瞥したネプチューンが立ち去って、ほどなく。
とてつもない魔力が皇宮の地下神殿から放たれたと感じたの。
サイファも感じたみたいで、緊張した様子で私を見た。
キンコーン
==============================
暗黒皇帝ネプチューンが聖サファイア共和国に対する侵攻を開始しました。
これより、『星空のロマンス』のゲームがスタートします。
闇巫女デゼルに運命の女神テュケーからの祝福が与えられました。
女神の祝福により、すべてのステータスが一段階上昇し、運命の輪【Lv1】が付与されました。
運命の輪【Lv1】により、闇巫女デゼルが起こすべきイベントを起こせます。
==============================
どうして、ネプチューンは動いたの!?
京奈に会って何を思って、私を抱くなんて言い出して、あげく、ユリア復活のための物語を始めることにしたの!?
「サイファ様、ネプチューンが地下神殿で、禁断の魔術を使った。今、たくさんの人達が魔物に変えられてしまった」
「行こう」
燭台の灯だけが頼りの地下神殿に、山羊か何かを生贄に捧げた様子のネプチューンが佇んでいた。
「ネプチューン、どうしてこんなことを!」
「おまえこそ、どうしたデゼル。俺の副官などやめるんじゃなかったのか?」
私、ほんとにやめていいならやめたい、ネプチューンの副官なんて。
生贄は山羊とはいえ、血の海の中で妖艶に笑ってるネプチューンの気が知れないのよ。
「ああまで言われて、誰がおまえを信用するんだ。京奈がユリアなものか。信用しろと言うなら――」
邪悪に微笑んだネプチューンが、私に血塗られた手を差し伸べた。
「俺に身も心も任せるんだな」
0
お気に入りに追加
132
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王妃さまは断罪劇に異議を唱える
土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。
そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。
彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。
王族の結婚とは。
王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。
王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。
ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
もう彼女でいいじゃないですか
キムラましゅろう
恋愛
ある日わたしは婚約者に婚約解消を申し出た。
常にわたし以外の女を腕に絡ませている事に耐えられなくなったからだ。
幼い頃からわたしを溺愛する婚約者は婚約解消を絶対に認めないが、わたしの心は限界だった。
だからわたしは行動する。
わたしから婚約者を自由にするために。
わたしが自由を手にするために。
残酷な表現はありませんが、
性的なワードが幾つが出てきます。
苦手な方は回れ右をお願いします。
小説家になろうさんの方では
ifストーリーを投稿しております。
何も知らない愚かな妻だとでも思っていたのですか?
木山楽斗
恋愛
公爵令息であるラウグスは、妻であるセリネアとは別の女性と関係を持っていた。
彼は、そのことが妻にまったくばれていないと思っていた。それどころか、何も知らない愚かな妻だと嘲笑っていたくらいだ。
しかし、セリネアは夫が浮気をしていた時からそのことに気づいていた。
そして、既にその確固たる証拠を握っていたのである。
突然それを示されたラウグスは、ひどく動揺した。
なんとか言い訳して逃れようとする彼ではあったが、数々の証拠を示されて、その勢いを失うのだった。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
【完結】伯爵の愛は狂い咲く
白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。
実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。
だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。
仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ!
そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。
両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。
「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、
その渦に巻き込んでいくのだった…
アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。
異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点)
《完結しました》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる