105 / 177
第二章 魔神ルシフェル ≪永遠のロマンス≫
第66話 悪役令嬢は町人Sにおしおきされる
しおりを挟む
私はそれからも、しばらく、衰弱が続いた。
生命の水を使って、完全に回復したはずなのに、忘却でラクになったはずなのに、心労がたたってか、何度も高熱を出しては倒れての繰り返し。
その間も、ずっと、サイファがついていてくれた。
「サイファ様、どうして――? 穢され尽くしたあげく、私はこの手を血に染めた、みんなに石を投げられる魔女だよ。傍にいたら、サイファ様も悪く言われて傷つけられるよ。それなのに、どうして、見捨てないの? サイファ様、私の傍にいたら、幸せになれないよ……」
やわらかく煮込んだミルクパンをスプーンですくって、私に食べさせてくれていたサイファが、じっと、私を見詰めた。
「わからないの?」
ミルクパンを口に含んだサイファが、私に口移しにしてきたの。
私、心臓が止まるかと思った。
「…あ……」
二口、三口、そうして口移しにされて。
いつの間にかあふれた涙が、ぱたぱた、床に落ちた。
「いやなら、言って」
耳まで紅潮させた私が何も言えずにいたら、サイファがもう一口、口移しにしてきた。
飲み込んだ後、自分でも驚くくらい、甘い声が出たの。
「こうした方が食べられる?」
「……」
なんて、答えたらいいの。
真っ赤になってうつむいた私に、サイファがもう一口、口移しにしてきた。
「いつまでも、僕を心配させてる、おしおきだからね、デゼル?」
「えっ……あ、あぁっ!」
サイファに首筋を吸われて、すごく甘い悲鳴が出て、恥ずかしくて真っ赤になる私を、サイファが笑うのよ。
「可愛い」
「…っ……」
どうしよう、嬉しい。
「デゼルには、僕が幸せじゃないように見えるの? 今、デゼルが可愛くて、とっても、幸せなんだけどな?」
「……っ!!」
サイファはなんで、私のなだめ方を知っているの。
「一緒にいようね」
何にも言えずに、こくんとうなずいたら、嬉しくて、また、涙が落ちた。
「熱が下がらなかったら、明日も、おしおきに口移しするから。元気になって」
そんなこと言われたら、熱が上がりそうなのよ。
「サイファ様、私……」
「なに?」
「私、サイファ様のことが好きでもいい……? ずっと、好きでもいい……?」
嬉しそうに笑ったサイファが、私と額をあわせて言った。
「うん、僕も」
サイファが優しくて、私に優しすぎて、涙が止まらないの。
私を寝台に横たえたサイファが、横顔に、耳元に、優しいキスをしてくれて。
「啼いて」
えっ!?
私のネグリジェの紐を解いたサイファが、左手で私の右手を寝台に縫いつけて、首のつけねのあたりから胸元にかけてキスを降らせた。
「あっ…! …あぁっ……!」
どうして、サイファにされるとこんな甘い声が出るの!?
恥ずかしいのよ。
サイファったら、クスクス笑ってるし。
「熱が上がるからここまでね」
サイファのいじわる、もう上がったもん!
「大丈夫だよ、デゼル。もう、怖い夢はみない。ずっと、僕にされたことだけ、考えていて」
「~!」
サイファって、やっぱり、隠れSよね?
からだの内にも外にも、いつまでも、サイファの優しい感触が残って、ほんとに、サイファのことしか考えられないまま、私はすうっと眠りに落ちたの。
生命の水を使って、完全に回復したはずなのに、忘却でラクになったはずなのに、心労がたたってか、何度も高熱を出しては倒れての繰り返し。
その間も、ずっと、サイファがついていてくれた。
「サイファ様、どうして――? 穢され尽くしたあげく、私はこの手を血に染めた、みんなに石を投げられる魔女だよ。傍にいたら、サイファ様も悪く言われて傷つけられるよ。それなのに、どうして、見捨てないの? サイファ様、私の傍にいたら、幸せになれないよ……」
やわらかく煮込んだミルクパンをスプーンですくって、私に食べさせてくれていたサイファが、じっと、私を見詰めた。
「わからないの?」
ミルクパンを口に含んだサイファが、私に口移しにしてきたの。
私、心臓が止まるかと思った。
「…あ……」
二口、三口、そうして口移しにされて。
いつの間にかあふれた涙が、ぱたぱた、床に落ちた。
「いやなら、言って」
耳まで紅潮させた私が何も言えずにいたら、サイファがもう一口、口移しにしてきた。
飲み込んだ後、自分でも驚くくらい、甘い声が出たの。
「こうした方が食べられる?」
「……」
なんて、答えたらいいの。
真っ赤になってうつむいた私に、サイファがもう一口、口移しにしてきた。
「いつまでも、僕を心配させてる、おしおきだからね、デゼル?」
「えっ……あ、あぁっ!」
サイファに首筋を吸われて、すごく甘い悲鳴が出て、恥ずかしくて真っ赤になる私を、サイファが笑うのよ。
「可愛い」
「…っ……」
どうしよう、嬉しい。
「デゼルには、僕が幸せじゃないように見えるの? 今、デゼルが可愛くて、とっても、幸せなんだけどな?」
「……っ!!」
サイファはなんで、私のなだめ方を知っているの。
「一緒にいようね」
何にも言えずに、こくんとうなずいたら、嬉しくて、また、涙が落ちた。
「熱が下がらなかったら、明日も、おしおきに口移しするから。元気になって」
そんなこと言われたら、熱が上がりそうなのよ。
「サイファ様、私……」
「なに?」
「私、サイファ様のことが好きでもいい……? ずっと、好きでもいい……?」
嬉しそうに笑ったサイファが、私と額をあわせて言った。
「うん、僕も」
サイファが優しくて、私に優しすぎて、涙が止まらないの。
私を寝台に横たえたサイファが、横顔に、耳元に、優しいキスをしてくれて。
「啼いて」
えっ!?
私のネグリジェの紐を解いたサイファが、左手で私の右手を寝台に縫いつけて、首のつけねのあたりから胸元にかけてキスを降らせた。
「あっ…! …あぁっ……!」
どうして、サイファにされるとこんな甘い声が出るの!?
恥ずかしいのよ。
サイファったら、クスクス笑ってるし。
「熱が上がるからここまでね」
サイファのいじわる、もう上がったもん!
「大丈夫だよ、デゼル。もう、怖い夢はみない。ずっと、僕にされたことだけ、考えていて」
「~!」
サイファって、やっぱり、隠れSよね?
からだの内にも外にも、いつまでも、サイファの優しい感触が残って、ほんとに、サイファのことしか考えられないまま、私はすうっと眠りに落ちたの。
0
お気に入りに追加
132
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢っぽい子に転生しました。潔く死のうとしたらなんかみんな優しくなりました。
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に転生したので自殺したら未遂になって、みんながごめんなさいしてきたお話。
ご都合主義のハッピーエンドのSS。
…ハッピーエンド???
小説家になろう様でも投稿しています。
救われてるのか地獄に突き進んでるのかわからない方向に行くので、読後感は保証できません。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
【完結】処刑された王太子妃はなぜか王太子と出会う前に戻っていた
hikari
恋愛
マドレーヌは無実の罪を着せられ、処刑された。王太子は浮気をしていたのだ。
そして、目が覚めると王太子と出会う前に戻っていた……。
王太子と出会ったのはある日の舞踏会。その日からマドレーヌは他の男性と踊る事を決める。
舞踏会にはたまたま隣国のジェーム王子もいた。
そして、隣国の王子ジェームスはマドレーヌに惹かれていく……。
※ざまぁの回には★印があります。
令和4年4月9日19時22分完結
婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います
ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」
公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。
本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか?
義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。
不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます!
この作品は小説家になろうでも掲載しています
どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。
しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。
だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。
○○sideあり
全20話
王命なんて・・・・くそくらえですわ
朝山みどり
恋愛
ティーナは王宮薬師の下っ端だ。地下にある自室でポーションを作っている。自分ではそれなりの腕だと思っているが、助手もつけてもらえず一人で働いていた。
そんなティーナが王命で公爵と結婚することになった。驚くティーナに王太子は公爵がひとめぼれからだと言った。
ティーナだって女の子。その言葉が嬉しいし、婚姻届にサインするとき会った公爵はとても素敵だった。
だが、それからすぐに公爵は仕事だとかで一度も会いに来ない。
そのうえ、ティーナの給料の大半が公爵家に渡される事になった。ティーナにはいるのは端数の部分だ。
お貴族様っていうのはほんとに民から金とるしか考えてないねとティーナは諦めて休みの日も働いて食いつないだ。
だが、ある日ティーナがプッツンとなる出来事が起きた。
働いたって取り上げられるなら、働くもんかと仕事をやめて国一番の歓楽街のある町に向かう事にした。
「わたしは都会が似合う女だからね」
やがて愛しいティーナに会えると戻ってきたジルフォードは愕然とする。
そしてすぐに追いかけたいけどそれも出来ずに・・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる