悪役令嬢と十三霊の神々

冴條玲

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第二章 魔神ルシフェル ≪永遠のロマンス≫

第49話 悪役令嬢は中学校を中退する

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 最初は、あんなに行きたくなかった小学校なのに。
 終わってみれば楽しかった。
 私達、中学生になったの。


 この二年半の間のことだけど、まず、ユリシーズが闇幽鬼スペクター【Lv32】になってしまった。
 ネプチューンが帝位に就いたら、私に癒してもらえるんだと信じて、ユリシーズは礼儀作法を学ぶようになったの。
 だけど、そのユリシーズに聞えよがしな陰口を叩く人達がいるのよ。
 「庶民の娘のくせに」「あの顔で」「礼儀作法を学んで何か意味があるのかしらね?」って。
 その度に、ユリシーズの闇幽鬼レベルが上がっていくのが、すごく、怖かった。
 男性がそれを言ったら、ジャイロが半殺しにするんだけど。
 女性なのよね、そういうの。

 同じ神殿で暮らしているから、ユリシーズがジャイロに取りすがって泣いているのを何度も見かけたの。

 だけど、もう少しよ。
 昨日、闇の十二使徒の最後の一人をネプチューンにつないだの。
 今のところ、闇落ちした闇の十二使徒はゲイルだけ。
 ジャイロのお母さんは逃げたって話だったけど、ゲイルが殴り殺して庭に埋めたのよ。それがゲイルの闇落ちイベントで、私がジャイロに出会う前に終わってしまっていたの。

 この調子なら、きっと、公国の滅亡は阻止できる。
 そうしたら、癒してあげられるから、頑張って、ユリシーズ。


 それから、サイファにはその後も、私の誕生日の度に抱いてもらった。
 サイファじゃなく、私の誕生日なところが恥ずかしいんだけど。
 私へのご褒美なのよね、サイファじゃなくて。

 あ、それで思い出した。
 サイファは見事に借りていたお金を完済したのよ。
 サイファの報酬は月に金貨三十枚なんだけど、そのうち十二枚をお母さんに仕送りして、十五枚を返済に充てて、残りの三枚をためて、私の誕生日に何か贈ってくれていたの。
 闇巫女も闇主も衣食住は支給されるから、今のところ、生活費はかかっていないの。


 そんなこんなで、中学校なんだけど。
 実は、入学したその月のうちに、私、中退したの。
 小学校の時は、四年生の時に担任だった先生が卒業まで担任だったから、六年生になる頃には、私、学校に水晶球を持ち込んで攻略情報をあさるようになっていたのね。
 そんな真似を許してくれたあの先生は、とっても、優しくていい先生だった。

 でも、中学校でも何の気なしに同じ真似をしてしまったら、先生にチョークでトントンと机を叩かれて、教科書はって聞かれて、持ってきていませんって答えたの。
 だって、持ってきていなかったんだもの。
 そうしたら、廊下に立ってなさいと言われてしまったのよ。
 泣きながら、水晶球と攻略ノートと筆記用具を持って廊下に出て、懲りずに廊下に座って続けていたら、先生に見つかって叩かれたの。
 立ってなさいと言われたのに座ってたから。
 だけど、これにはサイファが怒って、先生に意見したのよ。

 「デゼルは小学校でずっと、こうすることを許されていたんです。悪いことだとわからなかったんです。廊下に出されて泣いているデゼルを、この上、叩くなんて!」

 そうしたら、先生がひとつも悪くないサイファを叩いたのよ!
 私、許せなくて、「もう、明日から来ません」って、やめちゃった。
 ガゼルに一筆、『公務なのでさせておくように』と書いてもらえばよかったんだけど、そこまでして中学に通う必要もないかなと思ったの。
 少なくとも、今年は。
 オプスキュリテ公国が滅亡するかしないかの正念場なんだもの。
 怖いのよ、私だって。
 リセットはきかない。
 だいたい、去年までが幸せすぎたのよ。
 こんなに幸せばかりが続くなんてことがあるのかなって、何か、とんでもない見落としがあって、私自身の闇落ちの阻止にだけ失敗したらとか、最悪は公国がシナリオ通りに滅んでしまったらとか、不安で攻略情報をあさるんだけど、データが多すぎるの。

 でも、学校をやめて、昼間、一人で神殿にいるようになったら、私、もっと不安になった。
 いつ、私の闇落ちイベントや公国が滅亡するイベントが発生するかもわからない時期に、サイファが傍にいない時間があることを、とても、怖く感じたの。
 怖くて、すごく怖くて、私が神殿で一人、泣いていた時だった。

「デゼル、サイファとジャイロが放課後にケンカするわよ! 見にきなさいよ」

 マリアが私を呼びに来てくれたの。
 私は涙を拭って、ちょっと笑った。

「ありがとう、すぐ行くわ」
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