130 / 139
第四章 叶わない願いはないと信じてる
第108話 叶わない願いはないと信じてる【後編】
しおりを挟む
「――サイファ様、キス、してもいい?」
僕がくすっと笑って、いつものように優しいキスを降らせたら、苦しさに、僕にすがるようにしたデゼルがささやいた。
「サイファ様、する方が好き?」
そういうわけじゃないんだけど。
なんだか、嬉しいような、楽しいようなくすぐったさに、くすくす笑っちゃった。
「だってデゼルが、されたがるから。デゼルの甘くて綺麗な啼き声を聞くの、好きだよ」
雪明りの中でもわかるくらい、初々しく頬を紅潮させたデゼルの震える手をとって、また、デゼルが感じるようにキスを降らせた。
デゼルの甘い啼き声に誘われて、したくなっちゃうけど――
「デゼル、この頃、僕にすごく甘えるね。可愛いからいいけど、何か、不安だったり、怖いことがあったりするなら、話してね?」
「……」
デゼルの凍える蒼の瞳が泣き出しそうに見えたのは、どうしてだろう。
こくんとうなずいたデゼルが、僕の胸に頬をすり寄せた。
「話せないこと?」
「……ううん、わからない。私にも、わからないの。だけど、サイファ様に――」
「なに?」
「あまえたい」
左腕できゅっとデゼルを抱き締めて、可愛らしく紅潮した耳元にそっと、ささやいた。
「じゃあ、お姫様を心ゆくまで、甘やかしてあげようか」
びくっと震えたデゼルが、僕にますます、頭を押しつけてきた。
何が怖いのか、デゼルが僕にぎゅっとしがみつくから、愛しさがこみ上げて――
なるべく優しく抱いて、頭をなでたら、デゼルの頬を涙が一筋、伝い落ちた。
「デゼル、どうして泣くの?」
「サイファ様が優しくて、失ったら、心が砕けそうで怖いの」
えぇ!?
全然、デゼルが僕を失うような状況じゃないのに、何が怖いんだろう……。
僕、ピンチでも何でもないのに心配してたら、キリがないよ。
心配性が過ぎるデゼルには、おしおきが必要だね?
唇でそっと、デゼルの涙をすくい取って、微笑んだ。
「じゃあね。もっとだね」
「――っ! や、サイファさ……」
儚い抵抗に誘われて、デゼルが感じるところを攻めて追い込むと、僕を求めるように、デゼルが僕の腕にすがった。
「あっ……あぁっ!」
「啼き声が甘くて、とっても綺麗。デゼル、可愛い」
片腕じゃ、難しいかと思ったけど。
僕がどうしたいか知ってるデゼルが、僕がやりやすいように、自分で自分を支えてくれるんだ。
耳まで紅潮させて、息も絶え絶えなのに、デゼルって健気で可愛い。
僕だって、デゼルがして欲しいようにしてあげるけどね?
片目を失っても、片腕を失っても。
デゼルとエトランジュがこれまでと変わらずに、いっぱいの笑顔で僕を迎えて、愛してくれるから。
僕には何にも足りなくなかった。すべての願いが満たされて、幸せだった。
デゼルと一緒にエトランジュの成長を見守ってゆきたい。
片腕での暮らしに慣れてきたら、エトランジュに弟だって、妹だって、つくってあげるんだ。
この十年間、本当に短かった。
毎日が、ずっと、楽しくて幸せだったから。
きっと、これからも。
ねぇ、デゼル。
ずっと、この幸せを僕達の力で守ってゆこう?
僕は、叶わない願いはないと信じてる。
いつか、死がふたりを分かつまで。
僕がくすっと笑って、いつものように優しいキスを降らせたら、苦しさに、僕にすがるようにしたデゼルがささやいた。
「サイファ様、する方が好き?」
そういうわけじゃないんだけど。
なんだか、嬉しいような、楽しいようなくすぐったさに、くすくす笑っちゃった。
「だってデゼルが、されたがるから。デゼルの甘くて綺麗な啼き声を聞くの、好きだよ」
雪明りの中でもわかるくらい、初々しく頬を紅潮させたデゼルの震える手をとって、また、デゼルが感じるようにキスを降らせた。
デゼルの甘い啼き声に誘われて、したくなっちゃうけど――
「デゼル、この頃、僕にすごく甘えるね。可愛いからいいけど、何か、不安だったり、怖いことがあったりするなら、話してね?」
「……」
デゼルの凍える蒼の瞳が泣き出しそうに見えたのは、どうしてだろう。
こくんとうなずいたデゼルが、僕の胸に頬をすり寄せた。
「話せないこと?」
「……ううん、わからない。私にも、わからないの。だけど、サイファ様に――」
「なに?」
「あまえたい」
左腕できゅっとデゼルを抱き締めて、可愛らしく紅潮した耳元にそっと、ささやいた。
「じゃあ、お姫様を心ゆくまで、甘やかしてあげようか」
びくっと震えたデゼルが、僕にますます、頭を押しつけてきた。
何が怖いのか、デゼルが僕にぎゅっとしがみつくから、愛しさがこみ上げて――
なるべく優しく抱いて、頭をなでたら、デゼルの頬を涙が一筋、伝い落ちた。
「デゼル、どうして泣くの?」
「サイファ様が優しくて、失ったら、心が砕けそうで怖いの」
えぇ!?
全然、デゼルが僕を失うような状況じゃないのに、何が怖いんだろう……。
僕、ピンチでも何でもないのに心配してたら、キリがないよ。
心配性が過ぎるデゼルには、おしおきが必要だね?
唇でそっと、デゼルの涙をすくい取って、微笑んだ。
「じゃあね。もっとだね」
「――っ! や、サイファさ……」
儚い抵抗に誘われて、デゼルが感じるところを攻めて追い込むと、僕を求めるように、デゼルが僕の腕にすがった。
「あっ……あぁっ!」
「啼き声が甘くて、とっても綺麗。デゼル、可愛い」
片腕じゃ、難しいかと思ったけど。
僕がどうしたいか知ってるデゼルが、僕がやりやすいように、自分で自分を支えてくれるんだ。
耳まで紅潮させて、息も絶え絶えなのに、デゼルって健気で可愛い。
僕だって、デゼルがして欲しいようにしてあげるけどね?
片目を失っても、片腕を失っても。
デゼルとエトランジュがこれまでと変わらずに、いっぱいの笑顔で僕を迎えて、愛してくれるから。
僕には何にも足りなくなかった。すべての願いが満たされて、幸せだった。
デゼルと一緒にエトランジュの成長を見守ってゆきたい。
片腕での暮らしに慣れてきたら、エトランジュに弟だって、妹だって、つくってあげるんだ。
この十年間、本当に短かった。
毎日が、ずっと、楽しくて幸せだったから。
きっと、これからも。
ねぇ、デゼル。
ずっと、この幸せを僕達の力で守ってゆこう?
僕は、叶わない願いはないと信じてる。
いつか、死がふたりを分かつまで。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
気づいたら隠しルートのバッドエンドだった
かぜかおる
ファンタジー
前世でハマった乙女ゲームのヒロインに転生したので、
お気に入りのサポートキャラを攻略します!
ザマァされないように気をつけて気をつけて、両思いっぽくなったし
ライバル令嬢かつ悪役である異母姉を断罪しようとしたけれど・・・
本編完結済順次投稿します。
1話ごとは短め
あと、番外編も投稿予定なのでまだ連載中のままにします。
ざまあはあるけど好き嫌いある結末だと思います。
タグなどもしオススメあったら教えて欲しいです_|\○_オネガイシヤァァァァァス!!
感想もくれるとうれしいな・・・|ョ・ω・`)チロッ・・・
R15保険(ちょっと汚い言葉遣い有りです)
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【完結】役立たずになったので身を引こうとしましたが、溺愛王子様から逃げられません
Rohdea
恋愛
───あなたのお役に立てない私は身を引こうとした……のに、あれ? 逃げられない!?
伯爵令嬢のルキアは、幼い頃からこの国の王太子であるシグルドの婚約者。
家柄も容姿も自分よりも優れている数多の令嬢を跳ね除けてルキアが婚約者に選ばれた理由はたった一つ。
多大な魔力量と貴重な属性を持っていたから。
(私がこの力でシグルド様をお支えするの!)
そう思ってずっと生きて来たルキア。
しかしある日、原因不明の高熱を発症した後、目覚めるとルキアの魔力はすっからかんになっていた。
突然、役立たずとなってしまったルキアは、身を引く事を決めてシグルドに婚約解消を申し出る事にした。
けれど、シグルドは──……
そして、何故か力を失ったルキアと入れ替わるかのように、
同じ属性の力を持っている事が最近判明したという令嬢が王宮にやって来る。
彼女は自分の事を「ヒロイン」と呼び、まるで自分が次期王太子妃になるかのように振る舞い始めるが……
ゲームの序盤に殺されるモブに転生してしまった
白雲八鈴
恋愛
「お前の様な奴が俺に近づくな!身の程を知れ!」
な····なんて、推しが尊いのでしょう。ぐふっ。わが人生に悔いなし!
ここは乙女ゲームの世界。学園の七不思議を興味をもった主人公が7人の男子生徒と共に学園の七不思議を調べていたところに学園内で次々と事件が起こっていくのです。
ある女生徒が何者かに襲われることで、本格的に話が始まるゲーム【ラビリンスは人の夢を喰らう】の世界なのです。
その事件の開始の合図かのように襲われる一番目の犠牲者というのが、なんとこの私なのです。
内容的にはホラーゲームなのですが、それよりも私の推しがいる世界で推しを陰ながら愛でることを堪能したいと思います!
*ホラーゲームとありますが、全くホラー要素はありません。
*モブ主人のよくあるお話です。さらりと読んでいただけたらと思っております。
*作者の目は節穴のため、誤字脱字は存在します。
*小説家になろう様にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる