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第四章 叶わない願いはないと信じてる
第92話 幼い心に響いたものは
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可哀相だよね、やっぱり。
だって、ケイナ様の大切なネプチューン様は、ユリシーズと結ばれてしまって。
――……。
何もかも、陛下が悪いように感じてしまうのは僕の私怨?
だって、デゼルも怒ってたけど、陛下がユリア様のことも、ユリシーズのことも裏切るから、みんなが不幸になってしまったんだ。
デゼルにもユリシーズにも手を出しておきながら、ユリア様を復活させるためだからって、何の罪もない人達を魔物に変えてしまって。
陛下の愛には、愛する人を悲しませまいとする誠心を感じない。
まるで、五歳の子供みたいに、ただ、欲しいものを手に入れようとしているみたいで。
そんな愛し方でも、僕とは違う愛のカタチで、愛は愛なのかな。
お互いに、相手よりも自分を優先する方がラクで効率的なのは、仕事なら、少し、わかるんだ。
僕だって、僕のルールに従わない隊士は締めるからね。
あんまり得意じゃないけど。
ジャイロには「いや、おまえは得意だ」って言われるけど。
「駄目よ、ルーカス! 床にこぼれたものを舐めないで!」
ルーカスを叱りつけるユリシーズの声に、はっとした。
いけない、ルーカスとエトランジュがいたんだ。
泣き声が聞こえないから、忘れてた。
どうして泣かないんだろう、怖くなかったのかな。
見れば、金の瞳を魔的に輝かせたルーカスが、床にこぼれたデゼルの血を舐めて叱られてた。
三歳の綺麗な男の子が、指を血にひたして嬉しそうに舐めてるの、ちょっと怖い。
でも、ユリシーズが気にするのは、ルーカスにとって血が魅力的なことじゃないみたいだね。グラスにつがれた血なら、飲んでいいみたいな叱り方してるもの。
エトランジュの方は、つかまり立ちに成功したところで、エトランジュもやっぱり、翠の瞳をキラキラさせてた。
だけど、エトランジュの視線の先には僕がいて、嬉しそうに、ちっちゃな手を開いて、なにか、「あぅわー! ぱぁぱー!」って、はしゃいでる。
僕を叱る感じじゃないな……。
可愛い眉をぴっと上げて、何度も、僕に向けて手を突き出して、そのうち、泣き出してしまったけど。
たぶん、できなくて泣いてるな。
血まみれのデゼルが、血まみれの胸にエトランジュを抱き上げるわけにもいかなくて、困って僕を見た。
うん、僕、わかったかも。
「おいで、エトランジュ。泣かないで。パパと一緒にしようか。ルーカスをやっつけようね」
「!」
たちまち、天使の笑顔になったエトランジュが、僕の方に来ようとしたけど、つかまるものがないから歩けない。
でも、挫けたりしないよ。
歩けなければ這えばいいって、いいこと思いついた顔で、喜んで這って来た。
ふふ、とっても可愛いよね。
エトランジュは、たぶんね。
左腕で抱き上げたエトランジュの小さな右手の甲に、僕の右手を重ねて、ルーカスに向ける。
「あぅわー! るぅー、るぅー!」
エトランジュの呪文に合わせて、ルーカスに癒術をかける。
エトランジュの手の平から光が溢れたみたいになって、エトランジュ、とっても喜んだ。
エトランジュにはたぶん、デゼルが僕にかけたレーテーか、僕がデゼルにかけたヒールか、その両方が、魅力的に見えたんだ。
エトランジュもぴかってしたかったんだ。
うん、やっぱり、僕に似たのかも。
僕も聖闘士みたいな必殺技を繰り出したいと思って、一生懸命、ポーズを真似してみたことあって。
聖闘士のクロスもお父さんと一緒につくって、カッコイイぞーって褒めてもらえたの、嬉しかったな。
だって、ケイナ様の大切なネプチューン様は、ユリシーズと結ばれてしまって。
――……。
何もかも、陛下が悪いように感じてしまうのは僕の私怨?
だって、デゼルも怒ってたけど、陛下がユリア様のことも、ユリシーズのことも裏切るから、みんなが不幸になってしまったんだ。
デゼルにもユリシーズにも手を出しておきながら、ユリア様を復活させるためだからって、何の罪もない人達を魔物に変えてしまって。
陛下の愛には、愛する人を悲しませまいとする誠心を感じない。
まるで、五歳の子供みたいに、ただ、欲しいものを手に入れようとしているみたいで。
そんな愛し方でも、僕とは違う愛のカタチで、愛は愛なのかな。
お互いに、相手よりも自分を優先する方がラクで効率的なのは、仕事なら、少し、わかるんだ。
僕だって、僕のルールに従わない隊士は締めるからね。
あんまり得意じゃないけど。
ジャイロには「いや、おまえは得意だ」って言われるけど。
「駄目よ、ルーカス! 床にこぼれたものを舐めないで!」
ルーカスを叱りつけるユリシーズの声に、はっとした。
いけない、ルーカスとエトランジュがいたんだ。
泣き声が聞こえないから、忘れてた。
どうして泣かないんだろう、怖くなかったのかな。
見れば、金の瞳を魔的に輝かせたルーカスが、床にこぼれたデゼルの血を舐めて叱られてた。
三歳の綺麗な男の子が、指を血にひたして嬉しそうに舐めてるの、ちょっと怖い。
でも、ユリシーズが気にするのは、ルーカスにとって血が魅力的なことじゃないみたいだね。グラスにつがれた血なら、飲んでいいみたいな叱り方してるもの。
エトランジュの方は、つかまり立ちに成功したところで、エトランジュもやっぱり、翠の瞳をキラキラさせてた。
だけど、エトランジュの視線の先には僕がいて、嬉しそうに、ちっちゃな手を開いて、なにか、「あぅわー! ぱぁぱー!」って、はしゃいでる。
僕を叱る感じじゃないな……。
可愛い眉をぴっと上げて、何度も、僕に向けて手を突き出して、そのうち、泣き出してしまったけど。
たぶん、できなくて泣いてるな。
血まみれのデゼルが、血まみれの胸にエトランジュを抱き上げるわけにもいかなくて、困って僕を見た。
うん、僕、わかったかも。
「おいで、エトランジュ。泣かないで。パパと一緒にしようか。ルーカスをやっつけようね」
「!」
たちまち、天使の笑顔になったエトランジュが、僕の方に来ようとしたけど、つかまるものがないから歩けない。
でも、挫けたりしないよ。
歩けなければ這えばいいって、いいこと思いついた顔で、喜んで這って来た。
ふふ、とっても可愛いよね。
エトランジュは、たぶんね。
左腕で抱き上げたエトランジュの小さな右手の甲に、僕の右手を重ねて、ルーカスに向ける。
「あぅわー! るぅー、るぅー!」
エトランジュの呪文に合わせて、ルーカスに癒術をかける。
エトランジュの手の平から光が溢れたみたいになって、エトランジュ、とっても喜んだ。
エトランジュにはたぶん、デゼルが僕にかけたレーテーか、僕がデゼルにかけたヒールか、その両方が、魅力的に見えたんだ。
エトランジュもぴかってしたかったんだ。
うん、やっぱり、僕に似たのかも。
僕も聖闘士みたいな必殺技を繰り出したいと思って、一生懸命、ポーズを真似してみたことあって。
聖闘士のクロスもお父さんと一緒につくって、カッコイイぞーって褒めてもらえたの、嬉しかったな。
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