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第一章 舞い降りた天使
第23話 きっと、僕が選ばれる
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翌日は、昨夜の嵐が嘘だったみたいな、綺麗な快晴だった。
起きてすぐ、ジャイロ達の様子を見に行ったら、お姉さん、あんまりいい状態じゃなかったけど、それでも、昨日の夜よりは落ち着いたみたいだった。
それから、僕はいったん、一人で家に帰ることにしたんだ。
「サイファ、闇巫女様とあまり仲よくするのは、よくないのよ? やめられないの?」
「母さん?」
夏休みの間、闇主としてデゼルと一緒に行動することが多くなるのを母さんに話しに戻った僕に、母さんがひどく不安そうに、そう言った。
どうしたんだろう、母さんがこんなこと言うなんて。
「身分が違うから一緒にはなれないのよ」って言われたことなら、何度かあるけど、デゼルと仲よくするのをやめるようになんて。
「そんな、デゼルを裏切るようなことできないよ」
「裏切るも何も、闇巫女様は公子様と内々にご婚約が決まっているのよ」
――えっ!?
「……それ、デゼルは知ってるの?」
「どうかしら」
公子様と婚約って――
「デゼルの気持ちは?」
僕にあんなに懐いてくれてるデゼルが、そんな婚約――
デゼルは、確かに公子様のことを心配してたけど。
血まみれになってまで、ジャイロから僕を庇ってくれたデゼルが、他の人と婚約?
初めてキスした時の唇の甘さだって――
そんなはず、ないと思う。
デゼルとのこと、少なくとも僕は真剣なんだ。
デゼルだって!
あんな風に庇って欲しくなかったけど、デゼルが僕のために命を懸けてくれたのは、確かなこと。
ジャイロの正気を取り戻そうとしたデゼルは、凄かった。
デゼルがふつうの子じゃないのは、わかってる。
身分の違いとかより、デゼルはもう、ふつうの子とは風格が違う。
だけど、僕はすごく強いデゼルが、すごく弱いことも知ってる。
デゼルは怖くないわけでも、痛くないわけでもないんだ。
僕の腕の中で震えていたし、泣いていた。
デゼルには僕が必要なんだって、初めて一緒に眠った夜にも、昨日の夜にも、感じたんだ。
デゼルは僕が抱いていてあげないと、すごく、つらそうなんだ。
「サイファ、気持ちは変わるのよ」
「変わらないよ、母さん。僕の気持ちもデゼルの気持ちも」
この気持ちが変わるなんて、とても、信じられない。
デゼルが僕じゃない誰かを好きになるなんてことも、想像できないんだ。
だって、デゼルの澄んだ瞳と透き通る声には力がある。
時々、すごく鮮烈な瞳をして、何かを見詰めてる。
絶対に、いつか変わるような心で持てる力じゃないと感じるのに。
「――母さん、夏休みは帰れないことが多くなると思う。デゼルを守って、もしかしたら外国まで、行くかもしれないから」
「サイファ!」
「これ」
マリベル様から頂いた先月分の給与を、母さんにそのまま渡した。
「母さん――再婚しても、いいよ? 仕送りは続けるけど、僕はもう、母さんの傍にあんまり、いてあげられないかもしれない」
「サイファ、聞いていたの!? 闇巫女様は公子様とご婚約なさっているのよ」
「デゼルはきっと知らないし、――僕を選ぶよ」
ずっと、僕の気持ちもデゼルの気持ちも変わらないなんて、母さんは、信じてくれないと思うけど。
だって、父さんは帰ってきてくれなくなったんだから。
でも、僕は――
僕の気持ちも、デゼルの気持ちも変わらないと信じてる。
それに、大切なのは、今この時、目の前のデゼルに僕が必要だってことなんだ。
気持ちが変わるか、変わらないかなんて、今から、話したって仕方ないと思う。
だって、経験しなきゃ、僕は絶対に、そんなこと信じられないんだから。
起きてすぐ、ジャイロ達の様子を見に行ったら、お姉さん、あんまりいい状態じゃなかったけど、それでも、昨日の夜よりは落ち着いたみたいだった。
それから、僕はいったん、一人で家に帰ることにしたんだ。
「サイファ、闇巫女様とあまり仲よくするのは、よくないのよ? やめられないの?」
「母さん?」
夏休みの間、闇主としてデゼルと一緒に行動することが多くなるのを母さんに話しに戻った僕に、母さんがひどく不安そうに、そう言った。
どうしたんだろう、母さんがこんなこと言うなんて。
「身分が違うから一緒にはなれないのよ」って言われたことなら、何度かあるけど、デゼルと仲よくするのをやめるようになんて。
「そんな、デゼルを裏切るようなことできないよ」
「裏切るも何も、闇巫女様は公子様と内々にご婚約が決まっているのよ」
――えっ!?
「……それ、デゼルは知ってるの?」
「どうかしら」
公子様と婚約って――
「デゼルの気持ちは?」
僕にあんなに懐いてくれてるデゼルが、そんな婚約――
デゼルは、確かに公子様のことを心配してたけど。
血まみれになってまで、ジャイロから僕を庇ってくれたデゼルが、他の人と婚約?
初めてキスした時の唇の甘さだって――
そんなはず、ないと思う。
デゼルとのこと、少なくとも僕は真剣なんだ。
デゼルだって!
あんな風に庇って欲しくなかったけど、デゼルが僕のために命を懸けてくれたのは、確かなこと。
ジャイロの正気を取り戻そうとしたデゼルは、凄かった。
デゼルがふつうの子じゃないのは、わかってる。
身分の違いとかより、デゼルはもう、ふつうの子とは風格が違う。
だけど、僕はすごく強いデゼルが、すごく弱いことも知ってる。
デゼルは怖くないわけでも、痛くないわけでもないんだ。
僕の腕の中で震えていたし、泣いていた。
デゼルには僕が必要なんだって、初めて一緒に眠った夜にも、昨日の夜にも、感じたんだ。
デゼルは僕が抱いていてあげないと、すごく、つらそうなんだ。
「サイファ、気持ちは変わるのよ」
「変わらないよ、母さん。僕の気持ちもデゼルの気持ちも」
この気持ちが変わるなんて、とても、信じられない。
デゼルが僕じゃない誰かを好きになるなんてことも、想像できないんだ。
だって、デゼルの澄んだ瞳と透き通る声には力がある。
時々、すごく鮮烈な瞳をして、何かを見詰めてる。
絶対に、いつか変わるような心で持てる力じゃないと感じるのに。
「――母さん、夏休みは帰れないことが多くなると思う。デゼルを守って、もしかしたら外国まで、行くかもしれないから」
「サイファ!」
「これ」
マリベル様から頂いた先月分の給与を、母さんにそのまま渡した。
「母さん――再婚しても、いいよ? 仕送りは続けるけど、僕はもう、母さんの傍にあんまり、いてあげられないかもしれない」
「サイファ、聞いていたの!? 闇巫女様は公子様とご婚約なさっているのよ」
「デゼルはきっと知らないし、――僕を選ぶよ」
ずっと、僕の気持ちもデゼルの気持ちも変わらないなんて、母さんは、信じてくれないと思うけど。
だって、父さんは帰ってきてくれなくなったんだから。
でも、僕は――
僕の気持ちも、デゼルの気持ちも変わらないと信じてる。
それに、大切なのは、今この時、目の前のデゼルに僕が必要だってことなんだ。
気持ちが変わるか、変わらないかなんて、今から、話したって仕方ないと思う。
だって、経験しなきゃ、僕は絶対に、そんなこと信じられないんだから。
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