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参 失われた契約
参 失われた契約【3】
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「お……終わりか……?」
がくがくと身を震わせて、自分で自分の肩を抱くようにしながら、霞月が問うた。
「ああ……。もう一回やってもいいけど、おまえ、きついだろ?」
霞月は大きく目を見開いた。
「も、もう一回……!? どこから!?」
「え? そりゃ、最初からだろ。途中からでもいいけど……」
頼むからやめてくれと、許してくれと、霞月が泣いて頼むのを、御影は微笑ましげに見ていた。不安そうな目で御影を見る霞月を、今日は終わりだから、と言って抱き寄せる。
「満足……したか……?」
まだわずかに震えながら、霞月が問うた。
その震えを収めるように抱き締めて、御影が静かに頷く。
「ああ」
「……なら、いい……」
その後ふいに、御影が散らかったままのサイに手を伸ばし、シュっとふすま目がけて投げつけた。
「な、なに!?」
「いや、たぬきがさ。途中で3回くらい追い払ったんだけど、懲りずに見に来るんだよ。あの性懲りのなさはぜってー智だな」
霞月は卒倒しそうになった。
「子供が見ていたのか!?」
「見えないだろ。子供がおまえの声聞いて、何が楽しいんだかわかんないけど。いや、俺も昔やったけど。今となると、何が楽しかったんだかなあ。自分でやんなきゃつまんないよな」
「そういう問題ではない! あんまりだ! どうして教えてくれないんだ!」
「霞月~。せっかくの雰囲気ぶち壊しだから、痴話げんかするのやめろよ~」
ふすまの陰から眠たそうに言ったのは、もちろん智だ。
今度ばかりはさしもの霞月も本気で怒って、ばきっとげんこで殴った。
智は三度、余計な口を出したことを後悔した。
がくがくと身を震わせて、自分で自分の肩を抱くようにしながら、霞月が問うた。
「ああ……。もう一回やってもいいけど、おまえ、きついだろ?」
霞月は大きく目を見開いた。
「も、もう一回……!? どこから!?」
「え? そりゃ、最初からだろ。途中からでもいいけど……」
頼むからやめてくれと、許してくれと、霞月が泣いて頼むのを、御影は微笑ましげに見ていた。不安そうな目で御影を見る霞月を、今日は終わりだから、と言って抱き寄せる。
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まだわずかに震えながら、霞月が問うた。
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「ああ」
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その後ふいに、御影が散らかったままのサイに手を伸ばし、シュっとふすま目がけて投げつけた。
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「そういう問題ではない! あんまりだ! どうして教えてくれないんだ!」
「霞月~。せっかくの雰囲気ぶち壊しだから、痴話げんかするのやめろよ~」
ふすまの陰から眠たそうに言ったのは、もちろん智だ。
今度ばかりはさしもの霞月も本気で怒って、ばきっとげんこで殴った。
智は三度、余計な口を出したことを後悔した。
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