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参 失われた契約
参 失われた契約【2】
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小刻みに震える霞月の肩を、御影が静かに抱いた。
背中から緩く霞月を抱いて、その首筋に口付けを落とす。
「御影……許してくれと……見逃してくれと、言ったら……?」
ひどく恐怖を覚えるらしく、息も絶え絶えの様子で尋ねた霞月に、御影は答えなかった。
細い霞月の体を腕に捕らえて、逃げられないようにして、首筋を強く吸い、舌を這わせる。
「……っ……! ……かげ……許して……許してくれ……やめ……!」
ついに霞月が泣くと、沈黙の後、御影がやっと口を開いた。
「抱かれたら、力を失うか?」
「……え……?」
「――祈祷の条件に、処女があるなら見逃してやる。一度しか聞かない、よく考えて答えてくれ――……あるか?」
それは、いやなら嘘でもあると言えということだった。
その条件がないことくらい、御影はとっくの昔に知っている。けれど、霞月が本当にいやなら、知らないふりをして、やめてもいいと言ったのだ。
けれど、霞月は別の意味に取った。
思い上がるなと、言われたと思った。
祈祷を請け負うことも、身を許すことも、霞月が言い出した条件だ。
それを忘れて彼を拒み、彼の支えをなくすのと、ここで抱かれるのと、どちらがましか考えろ、と――
――だから、答えた。
「……そのような、条件はない……好きにしろ」
「……ああ」
霞月の首筋に深く口付けて、そのまま、御影は霞月を引き倒した。
床に組み伏せ、夜着の合わせから、その内側へと手を差し入れる。
素肌に硬い御影の指が触れ始めると、霞月は悲鳴をかみ殺し、御影の肩を握りしめて耐えた。
「……っ……」
首筋から胸へ、さらにその先へと、御影の指先が触れていき、時折その口腔に肌を含まれた。
「……くっ……」
「苦しいのか?」
「く、苦しいと言えばやめてくれるのか……?」
霞月が泣きながら言うのに、御影は小さく笑った。
「違うよ、」
御影の指が、肌をさらって行く。
殺し切れない悲鳴が霞月の喉から時折、漏れた。
「責める」
小声で告げたかと思うと、その指をすっと、さし戻した。霞月が苦しがった場所に。
「そっ……!」
「こことか、な」
その動きがひどく上手いとか、考える余地はなかった。ただ、苦しい。
「……やめっ……」
「あと、ここだな……」
「――ああっ!」
指の動かし方を変えたり、手のひらを強く押し当てたり、舌を這わせたり、吸いついたり、御影はなお、霞月が感じる方法を探しているようだった。霞月はもう十分だと思うのに、御影はそう簡単には納得せず、容赦もしなかった。
「もうやめ……やめてくれ……!」
「ここで手を抜くと、後が痛い」
「……?」
ようやく御影が納得したような素振りを見せた時、霞月は正直、心底ほっとした。
ところが、それは始まりでしかなくて。
その後、要領を得たらしい御影が散々に霞月を弄ぶのに、霞月はただ、悲鳴をかみ殺して耐えた。どうしていいのかわからず、何度か殺し切れない悲鳴を漏らし、責め立てられて、泣いた。
ひどく長かったようにも、短かったようにも感じる時が過ぎて。
終わったのかと思った最後、その深奥に、激痛と共に御影を受け入れさせられた。
背中から緩く霞月を抱いて、その首筋に口付けを落とす。
「御影……許してくれと……見逃してくれと、言ったら……?」
ひどく恐怖を覚えるらしく、息も絶え絶えの様子で尋ねた霞月に、御影は答えなかった。
細い霞月の体を腕に捕らえて、逃げられないようにして、首筋を強く吸い、舌を這わせる。
「……っ……! ……かげ……許して……許してくれ……やめ……!」
ついに霞月が泣くと、沈黙の後、御影がやっと口を開いた。
「抱かれたら、力を失うか?」
「……え……?」
「――祈祷の条件に、処女があるなら見逃してやる。一度しか聞かない、よく考えて答えてくれ――……あるか?」
それは、いやなら嘘でもあると言えということだった。
その条件がないことくらい、御影はとっくの昔に知っている。けれど、霞月が本当にいやなら、知らないふりをして、やめてもいいと言ったのだ。
けれど、霞月は別の意味に取った。
思い上がるなと、言われたと思った。
祈祷を請け負うことも、身を許すことも、霞月が言い出した条件だ。
それを忘れて彼を拒み、彼の支えをなくすのと、ここで抱かれるのと、どちらがましか考えろ、と――
――だから、答えた。
「……そのような、条件はない……好きにしろ」
「……ああ」
霞月の首筋に深く口付けて、そのまま、御影は霞月を引き倒した。
床に組み伏せ、夜着の合わせから、その内側へと手を差し入れる。
素肌に硬い御影の指が触れ始めると、霞月は悲鳴をかみ殺し、御影の肩を握りしめて耐えた。
「……っ……」
首筋から胸へ、さらにその先へと、御影の指先が触れていき、時折その口腔に肌を含まれた。
「……くっ……」
「苦しいのか?」
「く、苦しいと言えばやめてくれるのか……?」
霞月が泣きながら言うのに、御影は小さく笑った。
「違うよ、」
御影の指が、肌をさらって行く。
殺し切れない悲鳴が霞月の喉から時折、漏れた。
「責める」
小声で告げたかと思うと、その指をすっと、さし戻した。霞月が苦しがった場所に。
「そっ……!」
「こことか、な」
その動きがひどく上手いとか、考える余地はなかった。ただ、苦しい。
「……やめっ……」
「あと、ここだな……」
「――ああっ!」
指の動かし方を変えたり、手のひらを強く押し当てたり、舌を這わせたり、吸いついたり、御影はなお、霞月が感じる方法を探しているようだった。霞月はもう十分だと思うのに、御影はそう簡単には納得せず、容赦もしなかった。
「もうやめ……やめてくれ……!」
「ここで手を抜くと、後が痛い」
「……?」
ようやく御影が納得したような素振りを見せた時、霞月は正直、心底ほっとした。
ところが、それは始まりでしかなくて。
その後、要領を得たらしい御影が散々に霞月を弄ぶのに、霞月はただ、悲鳴をかみ殺して耐えた。どうしていいのかわからず、何度か殺し切れない悲鳴を漏らし、責め立てられて、泣いた。
ひどく長かったようにも、短かったようにも感じる時が過ぎて。
終わったのかと思った最後、その深奥に、激痛と共に御影を受け入れさせられた。
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