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ゲーム世界は敵国のモブに厳しい
第1話 俺の名はモブリオ ~破滅エンドは突然に~
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俺の名はモブリオ。
トランスサタニアン帝国の真面目な衛兵だ。
悲劇は突然だった。
ナントカ公国の公子が第二皇子に会いに来るそうで、その公子の仕業に見せかけて第二皇子を暗殺し、公国の使節は口封じのため皆殺しにするようにって、いきなり、皇太子殿下に呼び出されて命令されたんだ。
ちょっと、待ってくれ。
これ、断ると口封じに殺されて、従うと仕事の後にやっぱり口封じに殺されるやつじゃね?
いやいやいや、待ってくれ。
つまり俺は、「今死ぬか、後で死ぬか」の選択を迫られて大ピンチなやつじゃね!?
勘弁してくれ!
俺は真面目な衛兵なんだ。
暗殺沙汰なんかに加担したくないんだ。
くそう。
今死にたくなかった俺は、泣く泣く、第二皇子暗殺に加担することにした。
くそう、くそう。
その日が来る前に逃げる、という手はどうだろう。
そう思っていた矢先、逃げようとしたんだろう、同じ仕事を任された同僚の水死体が上がった。
やばい、逃げちゃだめだ。逃げちゃだめだ。
なんかさ、ゲームとか小説とか、敵兵をゴミのように虐殺してるのよく見かけるけど、俺らモブの生存権はどーなってんの?
なんで、『後で死ぬ』ことにしただけで悪役にされなきゃなんねぇの?
悪いのは司令官じゃね? 司令官だけゴミのように成敗してくんね?
どうしたら死なずに済むのかわからないまま、公国からの使節が来ちまった。
やべぇ、やべぇよ。
て、あれ?
八人とは聞いてたけど、そのうち五人が女子供だぞ?
戦えそうなのは第二皇子と公国の近衛一人じゃね?
俺はちょっとだけ、もしかしたら、生き残れるかもしれないと思い始めた。
これ、仕事としては簡単なんだな。多勢に無勢だ。
皇太子に口封じされなければ大丈夫なやつ……。
いや、第二皇子は強いらしいから、第二皇子を討ち取りにいくとやばいよな。
俺、可哀相だけど公子を狙おうかな。
何が可哀相ってガキなんだよ。
何しに来たのか知らないけど、小坊か中坊かそんくらい。
「闇の神オプスキュリテに願う、夜明けの祝福を与えたまえ!」
俺ら暗殺部隊が剣を抜き放つと、応戦する気らしく、剣を抜いた公子が声も高らかにナンカ言った。
なに言ってんだ、このガキ。
だが、俺は。
戦場に咲く一凛の花、世にも愛らしい妖精を見た。
公子のとなりにいた、七、八歳の少女が公子の声に振り向いたんだが。
天 使 降 臨 。
ちょっと、待て!
なんだあの子、ものすごく可愛いぞ。
何しにきたのかと思ったら、あの子を第二皇子のお妃様に推薦にきたのか!?
きっとそうだ、あの子が怖がらないようにお友達と一緒に。
やべぇ、目が離せねぇよ!
てか、皆殺しって、あの子も殺すの!?
天使だぞ、お花だぞ、ねぇよ、ありえねぇよ!
なんかもう、どうせ死ぬんだろうし、なら俺、舞い降りた天使を守って死ぬのはどうだろうなんて思い始めた時だった。
「ぎゃぁあああ!」
第二皇子を狙っていた仲間が絶叫した。
すごい声に目を向ければ、そいつの足元に血の色の闇があって、化け物の真っ黒な手が何本もそいつに絡みついてた。
こえぇよ!!
なんなんだよ、あれ!?
そうかと思えば。
ズガーン!!
なんか、物凄い音がして、仲間がいきなり倒れて血だまりがひろが、ひろが…
やべぇ!! なんか、わかんねぇけどやべぇ!!
俺はもう、無理だと思った。
天使を殺せるわけねぇだろ。
俺は逃げる。
頼む、見逃してくれぇええ!!!
トランスサタニアン帝国の真面目な衛兵だ。
悲劇は突然だった。
ナントカ公国の公子が第二皇子に会いに来るそうで、その公子の仕業に見せかけて第二皇子を暗殺し、公国の使節は口封じのため皆殺しにするようにって、いきなり、皇太子殿下に呼び出されて命令されたんだ。
ちょっと、待ってくれ。
これ、断ると口封じに殺されて、従うと仕事の後にやっぱり口封じに殺されるやつじゃね?
いやいやいや、待ってくれ。
つまり俺は、「今死ぬか、後で死ぬか」の選択を迫られて大ピンチなやつじゃね!?
勘弁してくれ!
俺は真面目な衛兵なんだ。
暗殺沙汰なんかに加担したくないんだ。
くそう。
今死にたくなかった俺は、泣く泣く、第二皇子暗殺に加担することにした。
くそう、くそう。
その日が来る前に逃げる、という手はどうだろう。
そう思っていた矢先、逃げようとしたんだろう、同じ仕事を任された同僚の水死体が上がった。
やばい、逃げちゃだめだ。逃げちゃだめだ。
なんかさ、ゲームとか小説とか、敵兵をゴミのように虐殺してるのよく見かけるけど、俺らモブの生存権はどーなってんの?
なんで、『後で死ぬ』ことにしただけで悪役にされなきゃなんねぇの?
悪いのは司令官じゃね? 司令官だけゴミのように成敗してくんね?
どうしたら死なずに済むのかわからないまま、公国からの使節が来ちまった。
やべぇ、やべぇよ。
て、あれ?
八人とは聞いてたけど、そのうち五人が女子供だぞ?
戦えそうなのは第二皇子と公国の近衛一人じゃね?
俺はちょっとだけ、もしかしたら、生き残れるかもしれないと思い始めた。
これ、仕事としては簡単なんだな。多勢に無勢だ。
皇太子に口封じされなければ大丈夫なやつ……。
いや、第二皇子は強いらしいから、第二皇子を討ち取りにいくとやばいよな。
俺、可哀相だけど公子を狙おうかな。
何が可哀相ってガキなんだよ。
何しに来たのか知らないけど、小坊か中坊かそんくらい。
「闇の神オプスキュリテに願う、夜明けの祝福を与えたまえ!」
俺ら暗殺部隊が剣を抜き放つと、応戦する気らしく、剣を抜いた公子が声も高らかにナンカ言った。
なに言ってんだ、このガキ。
だが、俺は。
戦場に咲く一凛の花、世にも愛らしい妖精を見た。
公子のとなりにいた、七、八歳の少女が公子の声に振り向いたんだが。
天 使 降 臨 。
ちょっと、待て!
なんだあの子、ものすごく可愛いぞ。
何しにきたのかと思ったら、あの子を第二皇子のお妃様に推薦にきたのか!?
きっとそうだ、あの子が怖がらないようにお友達と一緒に。
やべぇ、目が離せねぇよ!
てか、皆殺しって、あの子も殺すの!?
天使だぞ、お花だぞ、ねぇよ、ありえねぇよ!
なんかもう、どうせ死ぬんだろうし、なら俺、舞い降りた天使を守って死ぬのはどうだろうなんて思い始めた時だった。
「ぎゃぁあああ!」
第二皇子を狙っていた仲間が絶叫した。
すごい声に目を向ければ、そいつの足元に血の色の闇があって、化け物の真っ黒な手が何本もそいつに絡みついてた。
こえぇよ!!
なんなんだよ、あれ!?
そうかと思えば。
ズガーン!!
なんか、物凄い音がして、仲間がいきなり倒れて血だまりがひろが、ひろが…
やべぇ!! なんか、わかんねぇけどやべぇ!!
俺はもう、無理だと思った。
天使を殺せるわけねぇだろ。
俺は逃げる。
頼む、見逃してくれぇええ!!!
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