サッカー少年の性教育

てつじん

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コーチのリベンジ

第2話 話し合い

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蹴翔がサッカーボールを追いかけながらグラウンドを走っている姿を見るのは、実に久しぶりのことだと博は思った。
その姿は表面的には極めて健全そうに見えるのだが、同じ年齢の男の子と比べると蹴翔の体はある意味、もうそうではないということを考えないわけにはいかなかった。
そんなことを思いながら、博は新見に言った。

「落ち着いて話ができる場所はないか?」

「あー、はい‥‥」

なんて間の抜けた返事なんだと思った。

「じゃあこっち、オレの車ん中でいいすか?」

新見も話の内容は薄々感づいているようで、博を駐車場の方へ案内した。

「どこでもいい、二人きりで話ができるなら」

新見が博を案内したのは黒い大きなワンボックスカーだった。
運転席側に新見自身が座り、博は助手席側に促された。

「蹴翔、本当はもうクラブを辞めさせようと思った」
「何故だかわかるか?」

博は早速話を切り出した。
新見ももちろんその問いに心当たりがないわけではないが、わざわざ自分から口を割るのは地雷を踏むようなものだと心得ていたので、うつむき加減にじっと黙って聞いていた。

「この車の中でか‥‥」

博が後ろを振り返りながら広い後部座席を見渡した。

「ここで蹴翔はお前にユニフォームを脱がされ裸にされて、カラダをもてあそばれた上に射精までさせられたのか‥‥」

「先輩‥‥」
「蹴翔が、そう言ったんですか?」

「ああ、全部話してくれたよ」

「そうですか‥‥」
「‥‥すみませでした」

「すみませんだとっ!」
「お前、どう言うつもりでそんなこと言ってるんだっ!」

博よりガタイのいい新見が、さすがに萎縮している。
まだ先輩後輩という力関係が効いているのか、それとも博への後めたさからなのか。

「す、すみません‥‥」

「だから言ってるだろ、謝るなって」
「少なくとも蹴翔はお前に嫌なことをされたとは思ってないんだ」
「お前がそんなふうに謝ったら、蹴翔は本当に可哀想なことをされただけで終わってしまうじゃないか」

「えっ?」
「じゃあ先輩は、オレを許してくれるんすか?」

「許すとか許さないじゃないんだよ」

「なら、話って言うのは‥‥」

「一言お前に言っておこうと思ってな」

「何をですか?」

「お前、蹴翔に男同士のセックスを教えるって言ったそうじゃないか」

「はい、言いました」

新見はこの次点で既に観念していて、全て正直に話す気でいた。

「俺は蹴翔がお前に抱かれるというのが、どうにも我慢できないんだ」
「まだ6年生だからと言うことではなくて、お前にられるという事がだ」

新見は博の話の意図が掴めず黙って聞いていた。

「蹴翔の初めての相手が俺の後輩だなんてこと、絶対に許せない」

肉体関係を持つことについて蹴翔の年齢を気にしているのではなくて、その相手が自分自身の後輩だから許せないという事なのか。
新見は博の真意を測りかねていた。

「だから俺自らが最初に蹴翔のカラダを教育してやることにしたんだ、父親からの性教育として」

「え?先輩が‥‥?」
「だって本当の息子さんですよね、先輩の」

「そうだ」
「それが蹴翔の望みでもあったから」

カラダを教育してやるってことは、蹴翔が父親とのセックスを望んだということか‥‥?

新見は思考を巡らせながら、段々と迷路にはまり込んでいくような感覚に捕われていた。

「だからもう諦めろ」
「蹴翔はお前とはセックスしないし、お前が男同士のセックスを教える必要ももうない」

やっぱそうなんだ‥‥
蹴翔の最初のアヌスはもう、先輩にれられてしまったんだ‥‥

「それであのぉ‥‥」

「何だ?」

「蹴翔はどうでした?」

「どうでしたとは?」

「先輩とその‥‥、セックスしたとき‥‥」

新見は自分でも馬鹿なことを聞いていると自覚してた。

「まだ蹴翔のことを諦めきれないようなら教えてやるが‥‥」

意外にも博から拒否はなかった。

「父親の俺がこう言うのもなんだが、我が子ながら最高に可愛かった」
「俺の体にしがみつくようにして、一生懸命に俺のセックスを受け入れてた」
「甲高い声で喘ぎながら、もっと奥までってねだったよ」

博は少し遠い目をしながら蹴翔に行った性教育を赤裸々に説明した。

「俺が何でわざわざお前にこんな恥っ晒しのことを教えるか分かるか?」

「わかりません‥‥」
「どうしてですか?」

「蹴翔はお前に体を悪戯されてもお前のことが好きだと、そう言った」
「だがそれは、サッカーコーチとして好きと言う意味だ」
「だからもう、蹴翔はお前から男同士のセックスの誘いには乗らない」
「新見、お前もそれをよく理解しておけ」
「オレが話たかったのはそれだけだ」

「分かりました」

博は新見はもうこれで蹴翔への興味を失ったはずだと思った。

「じゃあ、オレはこれで帰る」

そう言って、2人はグラウンドに戻った。
子供たちはドリブルの練習をしていた。
博と新見の姿を見つけた蹴翔は2人に大きく手を振った。

「じゃあ、オレはこれで帰るから」
「蹴翔には、今日は先に帰ると言ってあるから」

「先輩‥‥」

「何だ?」

「俺、羨ましいっす、先輩が」
「蹴翔みたいな可愛い息子がいて」

博はフッと笑った。

「新見‥‥」

「?」

「蹴翔はお前を信頼してお前からサッカーを習いたいと言っていた」

「先輩だって、元サッカー部じゃないっすか」

「オレはサッカーを離れてもうだいぶ時間が経つ」
「とっくに現役は退いてるからな」
「だから、くれぐれも蹴翔のこと、よろしく頼むぞ」

「分かりました」

「じゃあ、行くわ」

「はい、気をつけて」

この博が最後に言ったよろしく頼むの一言が、実は新見に大きな誤解を与えてしまった事は言うまでもない。
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