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番外編 & SS
SS 酔ったアリサは
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本編とはまた別の、その時彼らはのSSを集めました。
アリサを神殿に送り届けた後、騎士達の国境まで向かう道中のお話。ランスロット視点。
※※※
「ったく、なんでまたお前と一緒に行動しないといけないんだよ」
「仕方がないだろう。団長命令だ。うちはまだいいが、白の団長はかなりヤバい人だろう。素直に従っておかないと後が大変だぞ」
神殿を出て、オンボロ馬車に揺られながら俺が愚痴をこぼすと、エドワードに冷静に返されてしまった。
本当はアリサの事が心配で、離れたくはなかったのだが、さすがに本心を言うのは嫌だった。とにかくまたこの二人で行動というのがどうも気に入らなかった。
剣術の腕も同等レベル、お互い団を引っ張る逸材だと言われて何かと比べられてきたのだ。
「……まぁ。しばらく一緒に旅した仲だから……、印象が変わったと言えばそうだけど……」
普段は団を超えての交流はほとんどなく、一緒に飲んだこともなかった。
先日、町で俺の旧友達も交えて一緒に飲むことになったが、その時に色々と話して、特に害はなく普通に会話ができた。
顔が良くて女にモテるからいい気になっているとばかり思っていたが、ただの真面目な男だったので、つまらないと思ったくらいだ。
「そういえば、町で飲んだ時、お前完全に酔いつぶれたけど、あの時の記憶はあるのか?」
「あ?……あんまり…。つーか、あれだけ飲めば記憶なんてねーよ」
「そうか……。残念だな」
「ああ!?」
前に座って手綱を握りながら、やけに含みのある言い方をしてエドワードは後ろに座る俺を振り返って見てきた。
その口元がニヤついているのが、癇に障ってイラっとしてきた。
「あの夜、アリサも飲んでいただろう」
「アリサ? あぁ確かに。だけど、酒は飲んでなかったし、楽しそうに俺の仲間の連中と話した後、そのまま部屋に戻ったんじゃ……」
「あの時は確か…ランスロットは床で寝ていたな。アリサは間違えて、お前の酒を飲んでしまったんだ」
「なっ…!? 聞いてないぞ! 大丈夫だったのか!?」
「アリサは酔うと……」
ごくりと喉を鳴らしながら、俺はエドワードの言葉の続きを待った。
なかなか言わないで、早く言えと言うとエドワードはクスクスと笑い出した。
前を向いているのでそのムカつく顔は見えない。
「……まるで」
「まるで?…なんだよ!!」
「幼な子のようになって…甘えてきて……」
「なっ…ななななっ!!!」
「顔を真っ赤にして…熱いと言って…ドレスの紐を……」
頭の中で、俺にしなだれかかってきたアリサが、上目遣いに俺を見つめる表情が思い浮かんできて、アリサが俺の名前を呼んで微笑んで紐に手をかけたところを想像してしまった。
「……と言うのは冗談で」
「だあああああああっ!!!エドワード!お前フザけんな!!」
「はははっ…。悪い悪い、つい面白くて」
前言撤回だった。
真面目でつまらない男だと思っていたが、ムカつくヤツに昇格した。
まったく、このまま同じ任務に就くのかと思うと、どっと疲れが出て俺は椅子の背もたれに力を預けてため息をついた。
「……でも、アリサを飲ませない方がいいのは確かだな」
すっかり終わった話だと思って目を閉じていたが、ぱっと目を開けるとまたこちらに振り向いてニヤリと笑った男の顔が見えた。
「おーまーえーー!!絶対何かあっただろう!!」
「えー内緒」
また前言撤回!
クソムカつくヤツに昇格だ。
もう何を言われても無視してやると怒りながら、座席に転がってふて寝を決め込むことにした。
「だーーー!クソーー!なんでこの馬車は屋根がないんだ!!」
ギラギラと降り注ぐ太陽の光を浴びて、ちっとも寝れそうになくて俺は叫んだ。
楽しい旅は、まだもう少しだけ続くのだった。
□□
エドワードに遊ばれるランスロットのお話でした。
アリサを神殿に送り届けた後、騎士達の国境まで向かう道中のお話。ランスロット視点。
※※※
「ったく、なんでまたお前と一緒に行動しないといけないんだよ」
「仕方がないだろう。団長命令だ。うちはまだいいが、白の団長はかなりヤバい人だろう。素直に従っておかないと後が大変だぞ」
神殿を出て、オンボロ馬車に揺られながら俺が愚痴をこぼすと、エドワードに冷静に返されてしまった。
本当はアリサの事が心配で、離れたくはなかったのだが、さすがに本心を言うのは嫌だった。とにかくまたこの二人で行動というのがどうも気に入らなかった。
剣術の腕も同等レベル、お互い団を引っ張る逸材だと言われて何かと比べられてきたのだ。
「……まぁ。しばらく一緒に旅した仲だから……、印象が変わったと言えばそうだけど……」
普段は団を超えての交流はほとんどなく、一緒に飲んだこともなかった。
先日、町で俺の旧友達も交えて一緒に飲むことになったが、その時に色々と話して、特に害はなく普通に会話ができた。
顔が良くて女にモテるからいい気になっているとばかり思っていたが、ただの真面目な男だったので、つまらないと思ったくらいだ。
「そういえば、町で飲んだ時、お前完全に酔いつぶれたけど、あの時の記憶はあるのか?」
「あ?……あんまり…。つーか、あれだけ飲めば記憶なんてねーよ」
「そうか……。残念だな」
「ああ!?」
前に座って手綱を握りながら、やけに含みのある言い方をしてエドワードは後ろに座る俺を振り返って見てきた。
その口元がニヤついているのが、癇に障ってイラっとしてきた。
「あの夜、アリサも飲んでいただろう」
「アリサ? あぁ確かに。だけど、酒は飲んでなかったし、楽しそうに俺の仲間の連中と話した後、そのまま部屋に戻ったんじゃ……」
「あの時は確か…ランスロットは床で寝ていたな。アリサは間違えて、お前の酒を飲んでしまったんだ」
「なっ…!? 聞いてないぞ! 大丈夫だったのか!?」
「アリサは酔うと……」
ごくりと喉を鳴らしながら、俺はエドワードの言葉の続きを待った。
なかなか言わないで、早く言えと言うとエドワードはクスクスと笑い出した。
前を向いているのでそのムカつく顔は見えない。
「……まるで」
「まるで?…なんだよ!!」
「幼な子のようになって…甘えてきて……」
「なっ…ななななっ!!!」
「顔を真っ赤にして…熱いと言って…ドレスの紐を……」
頭の中で、俺にしなだれかかってきたアリサが、上目遣いに俺を見つめる表情が思い浮かんできて、アリサが俺の名前を呼んで微笑んで紐に手をかけたところを想像してしまった。
「……と言うのは冗談で」
「だあああああああっ!!!エドワード!お前フザけんな!!」
「はははっ…。悪い悪い、つい面白くて」
前言撤回だった。
真面目でつまらない男だと思っていたが、ムカつくヤツに昇格した。
まったく、このまま同じ任務に就くのかと思うと、どっと疲れが出て俺は椅子の背もたれに力を預けてため息をついた。
「……でも、アリサを飲ませない方がいいのは確かだな」
すっかり終わった話だと思って目を閉じていたが、ぱっと目を開けるとまたこちらに振り向いてニヤリと笑った男の顔が見えた。
「おーまーえーー!!絶対何かあっただろう!!」
「えー内緒」
また前言撤回!
クソムカつくヤツに昇格だ。
もう何を言われても無視してやると怒りながら、座席に転がってふて寝を決め込むことにした。
「だーーー!クソーー!なんでこの馬車は屋根がないんだ!!」
ギラギラと降り注ぐ太陽の光を浴びて、ちっとも寝れそうになくて俺は叫んだ。
楽しい旅は、まだもう少しだけ続くのだった。
□□
エドワードに遊ばれるランスロットのお話でした。
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