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第二章
⑥一夜の夢
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フレイムに倒された男達が転がっているところを抜けて、奥へすすんでいくと、校舎の玄関口の前にエリーナが立っていた。そして、校舎の中からジェイドが現れた。
すかさず、エリーナがジェイドの隣に駆け寄った。
「…ジェイド、エリーナ」
アルフレッドの悲しげな声が響いた。
「あら、アルフレッド様、私のために来てくれたのですか?」
エリーナはご機嫌で、笑いが止まらないという顔をして、ジェイドの腕に絡み付いた。
「でも、ごめんなさーい。私、ジェイド様と結ばれる運命なのです。正直、アンタみたいな単純なおバカ王子つまんねー!って感じなわけよ。私達の邪魔しないで、とっととお家に帰ってくれない?」
エリーナは、ばいばーいと言いながら、アルフレッドに手を振って、ニヤつきながら、ジェイドにもたれ掛かった。
「…全く。アルフレッド。お前の女の趣味は最悪だな。仮にも王位継承者が、このくらいの小者の価値も見抜けないでどうするんだ」
そう言ってジェイドは、エリーナがもたれ掛かっている腕を振り払った。エリーナはひぃと声を出して、大袈裟に転がった。
「ジェイド…、兄さん。俺の事が気にくわないんだろ。学園まで巻き込んで、もう、こんな事やめてくれよ」
「…ああ、気にくわなかったよ。母さんの事もお前の事も、二人を憎むことで、ここまで生きてこられた」
アルフレッドが苦悶の声を漏らした。
二人の間に悲しい沈黙が流れた。
「母さんは、もう死んでしまったけど、いつも後悔していたよ。どうしてあの時、兄さんを連れて出れなかったのか、何度も何度も思い出して後悔して苦しんでいた。兄さんの苦しみは、俺なんかじゃとても理解できるはずがないけど、母さんもずっと苦しんでいた、それだけは知っていて欲しい」
「分かっているよ、アルフレッド。それでも、羨ましかったんだ。母に抱かれていたであろう君が。憎かったんじゃない。羨ましかったんだ。」
「ジェイド兄さん…」
その時、校舎の中からドタドタと音をたてて、フェルナンドが出てきた。
ジェイドを見つけると、鬼の形相で近づいてきた。
「おい!ジェイド!貴様!人を走らせやがって!リリアンヌをどこへ隠した!?まさか、傷つけていたりしないだろうな!」
「怖いなぁ、フェルナンド。いつもの仮面はどこに置いてきたのさ。リリアンヌならずっとここにいるよ。本当、こういうタイプが一番厄介だよね」
ジェイドがため息をつきながら、ライルと呼ぶと、校舎の暗がりから、ライルとリリアンヌが出てきた。
リリアンヌは、手を縛られて、口にも布を巻かれていた。
「くっ…リリアンヌ!」
フェルナンドが思わず助け出そうと、足を踏み出した時、大きな声が響き渡った。
「おらーー!!!!もう子供の遊びは終わりだ!ここからは、サファイア騎士団の仕切りだ!全員武器を捨てろ!」
副団長レオンを先頭に、団員達がゾロゾロとやって来て、剣を持った者から次々と取り上げていく。
「ライル、解いてあげて」
ジェイドがそう言った後、ライルはリリアンヌの手と口を自由にした。
「フェルナンド!」
リリアンヌは一直線に駆け出し、フェルナンドの胸に飛び込んだ。
「リリアンヌ…リリアンヌ…リリアンヌ」
二人の感動の再会を見て、ユージーンとローリエも、ほっと胸を撫で下ろした。
「エリーナ・マグニート!殺人未遂でお前を収監する!」
レオン副団長はまず、エリーナに詰め寄った。
「なんですって!私はただの目撃者よ!」
「いや、調べは付いている。ただ目撃しただけで、現場に近寄ることもなかった君の洋服から、飛び散った血液が見つかった。そして、何より、はっきり意識を取り戻したアレックスが、目隠しの隙間から君が見えたのを思い出した」
「離して!ジェイドさまー!ジェイドさまー!」
エリーナは、団員に抱えられながら、連れていかれた。
「さて、お二人にも来てもらわないと、いけないんですよね」
次にレオンは、ジェイドとライルに声をかけた。
「ああ、分かっている。少しだけいいかな」
ジェイドは、改めて、アルフレッドに向き合った。
「今回の事は、僕のいつものお遊びみたいなもので、適当に演出して、お前や皆が苦しんでいるところが見れたら楽しいくらいに思っていた」
「相変わらず、悪趣味だな」
フェルナンドが思わず呟いた。
「でも、もう、こういうの終わりにするよ。飽きちゃったんだよねー。結局つまんないし。いつまでも、アルフレッドの事で、僕の人生を費やすのは無意味だと気づいたんだよ」
「ジェイド兄さん…」
いつもの軽口のようだか、吹っ切れたような顔をしたジェイドに、アルフレッドは少し驚いた。
「なんか、もっと、好きなことしたいなーと思って、ねっ!リリアンヌ!」
突然話を振られて、目をパチクリしながら、リリアンヌは驚いていた。
「リリアンヌが言ったんだよ。アルフレッドなんかに構ってないで、自分の好きなことしろって!」
ジェイドは軽い足どりで、リリアンヌに近づいていった。
「え…、まぁ、そうだけど」
「あっ、間違えた!それを言ってくれたのは、トーヤだったね」
「いっぐ!!…ちょっと!」
リリアンヌが慌ててジェイドの口を塞ごうとした瞬間、その手を取られて、引き寄せられた。
「僕は、トーヤの事、好きだよ」
ジェイドは耳元でそう囁いて、リリアンヌの頬にキスをした。
顔を真っ赤にして固まるリリアンヌに軽く手を振り、ジェイドはレオン副団長の横にするりと入った。
「おい…誰か!!剣を持ってこい!アイツを叩き斬ってやる!なくてもいいー!ボコボコに殴らせろー!」
「ちょ、気持ちは分かるが、重要参考人殺さないでくれ!」
ユージーンやらアルフレッドやら団員やらが、まとめてフェルナンドにしがみついて、必死に止めた。
「ったく!ガキの喧嘩に付き合いきれねぇよ。おら!さっさと行くぞ!王子さん!」
レオンが呆れ顔でそう言って、ジェイドを連れていこうとした。
「あー!フェルナンド!レディのお肌は大切だよ。あんまりゴシゴシ拭くのは感心しないな。嫉妬もほどほどね」
「おいおい、あんまり煽るなよ。ってか遊んでんな、全く…」
案の定、フェルナンドはぶちギレで、火をふいて怒り狂うこととなった。
□□□□□□
ジェイドの信者達は次々と連れていかれ、破壊されたバリケードの残骸が広場に転々と残っていた。
関係者は取り調べがあるのと、フェルナンドとアルフレッドは、騎士団塔を破壊したらしく、レオンからどこにも行くなと10回くらい言われていた。
と言っても、みんな疲れていて、ぐったりと、座り込んで、広場に散乱している松明の残りを眺めていた。
「…なんだったんでしょうね」
「ああ…本当に。ただただ疲れた」
正面玄関前の石段に、フェルナンドと二人並んで座って、疲れと眠気をごまかしていた。
「フェルナンドとお話しするのも久しぶりですね。最後に会った時は、フィネルの花が咲いたばかりで、それが今はもう枯れようとしています」
「アルフレッドに託した伝言を聞いた」
一瞬なんの事か分からなかったが、あの事かと気がつくと、一気に恥ずかしくなった。
「あっあれはっっ…、その…なんと言うか…」
「嬉しかった」
フェルナンドは、前を向いたまま、照れくさそうな顔をしていた。
「いつも私ばかりが思いをよせていて、リリアンヌは、私の事は考えてくれていないかと思っていた」
さすがに、そこまで冷たくしていないと、カチンとしつつ、申し訳ない思いも混じって複雑な気持ちになった。
フェルナンドを見れば、子供のように口を尖らせて、下を向いて、小枝でぐりぐり土をいじっている。
(…ったく。怒り狂って助けに来たと思えば、今は小さいガキみたいに…負けたよ…もう、俺は…)
「…好きだよ」
「え?」
フェルナンドは正面を向いたまま、目を見開いていた。土をいじっていた小枝がパキっと折れた。
「だから、会えなければ寂しくなるくらいは、好きってことで、でもそれが恋とか愛かと言われたら、まだ実感がないというか…」
「それでもいい…それでも、こんなに嬉しいことは生まれて初めてだ…」
「え…!」
フェルナンドを見ると、ボロボロと涙をこぼして泣いていた。そうだ、この人、涙もろいひとだったと思い出した。
「あーあー、リリアンヌ。その猛獣を泣かせるのは、アンタくらいだよ」
通りかかったアルフレッドが、からかってきた。
「慰めてあげてよ、あー可哀想に」
うるさいアルフレッドを睨みながら、手をしっしと振って、向こうへ行かせた。
(仕方ないなー!もーどーにでもなれ!)
小さく丸まっている、フェルナンドに覆い被さるように、抱きしめて、背中をポンポンした。
「ほら!泣き止んでください」
「うー、リリアンヌ…おまじないして」
「…それまだ言っているんですか?」
明らかにみんなの注目を浴びているので、そんな状態で出来るわけがない。
「…リリアンヌ、さっきジェイドが言っていた事なんだけど…」
「え?なんですか…」
フェルナンドの答を聞く前に、騎士団の者達が、ゾロゾロとやってきた。
「いやー!悪い悪い!けっこう長引いててな。やはり、明日また、改めて話を聞かせてもらう事になった。今日は帰って寝てくれ」
副団長のレオンが、疲れた様子で謝ってきた。みんな文句を言う気力もないので、大人しく従って、歩き出した。
「おっ、アレンスデーンの王子様はボロボロじゃないか、どっか怪我でもしたのか!?」
レオンが目ざとく、こちらに気がついた。
「いいえ、怪我はありませんわ。色々あるんです。色々」
あまり注目されるのも、いやなので、適当にごまかしておいた。
「そう言えば、レオンは甲冑は脱がれたのですね。あの装備でよく走り回れるものですね」
レオンは、軽装に変わっていたので、話題をそらせて、世間話でもしてみるのが一番良いだろう。
「訓練すりゃどうってことねーけど、この時間まで、着てられねーよ」
「そうなんですね。私を担ぎ上げた時なんて、びっくりしましたわ」
「そりゃアンタみたいなの一人や二人、担げなくて騎士団はやってられねーよ!」
がはははっと豪快に笑い、楽しげに語らいながら歩く二人の後ろには、ぶつぶつと呟く男がいた。
「……なぜだ……なぜ、リリアンヌはサイロス副団長を、レオンと親しげに呼んでいるんだ。担ぎ上げた?なんだそれは…私の知らない間に一体何が…」
「殿下、差し出がましいようですが、言わせていただくと、リリアンヌは無尽蔵に人を引き寄せますわよ。なのに、本人には恋愛には疎すぎて全く自覚なし!婚約で縛ったとしても、心は別物ですわ。のんびりしていると、意外な方に、盗られてしまいますわよ」
ちょっと声色を変えて、ローリエはフェルナンドに発破をかけておいた。
ローリエの言葉に、目を見開いたフェルナンドは、リリアンヌー!と、叫びながら追いかけていった。
「いーんですか。ローリエ様、あんな事言って…」
ユージーンが恐る恐る声をかけてきた。
「あーでも言わないと!フェルナンド様は、女性には不自由していなかったくせに、本気になると、ダメダメのグズグズで全然ダメ!」
「ひっひどい…」
「ジェイド様を見た?絶対あれは狙ってきたわよ!クラフト国になんて、嫁がれたら、リリアンヌに会えなくなっちゃうじゃない!私はアレンスデーンの男じゃないと許さないわ!」
「…ローリエ様、それが理由…」
ひと騒動終わっても、まだまだ嵐がきそうな予感がする。夜空は明るくなり始め、新しい光に包まれていくのであった。
□□□
すかさず、エリーナがジェイドの隣に駆け寄った。
「…ジェイド、エリーナ」
アルフレッドの悲しげな声が響いた。
「あら、アルフレッド様、私のために来てくれたのですか?」
エリーナはご機嫌で、笑いが止まらないという顔をして、ジェイドの腕に絡み付いた。
「でも、ごめんなさーい。私、ジェイド様と結ばれる運命なのです。正直、アンタみたいな単純なおバカ王子つまんねー!って感じなわけよ。私達の邪魔しないで、とっととお家に帰ってくれない?」
エリーナは、ばいばーいと言いながら、アルフレッドに手を振って、ニヤつきながら、ジェイドにもたれ掛かった。
「…全く。アルフレッド。お前の女の趣味は最悪だな。仮にも王位継承者が、このくらいの小者の価値も見抜けないでどうするんだ」
そう言ってジェイドは、エリーナがもたれ掛かっている腕を振り払った。エリーナはひぃと声を出して、大袈裟に転がった。
「ジェイド…、兄さん。俺の事が気にくわないんだろ。学園まで巻き込んで、もう、こんな事やめてくれよ」
「…ああ、気にくわなかったよ。母さんの事もお前の事も、二人を憎むことで、ここまで生きてこられた」
アルフレッドが苦悶の声を漏らした。
二人の間に悲しい沈黙が流れた。
「母さんは、もう死んでしまったけど、いつも後悔していたよ。どうしてあの時、兄さんを連れて出れなかったのか、何度も何度も思い出して後悔して苦しんでいた。兄さんの苦しみは、俺なんかじゃとても理解できるはずがないけど、母さんもずっと苦しんでいた、それだけは知っていて欲しい」
「分かっているよ、アルフレッド。それでも、羨ましかったんだ。母に抱かれていたであろう君が。憎かったんじゃない。羨ましかったんだ。」
「ジェイド兄さん…」
その時、校舎の中からドタドタと音をたてて、フェルナンドが出てきた。
ジェイドを見つけると、鬼の形相で近づいてきた。
「おい!ジェイド!貴様!人を走らせやがって!リリアンヌをどこへ隠した!?まさか、傷つけていたりしないだろうな!」
「怖いなぁ、フェルナンド。いつもの仮面はどこに置いてきたのさ。リリアンヌならずっとここにいるよ。本当、こういうタイプが一番厄介だよね」
ジェイドがため息をつきながら、ライルと呼ぶと、校舎の暗がりから、ライルとリリアンヌが出てきた。
リリアンヌは、手を縛られて、口にも布を巻かれていた。
「くっ…リリアンヌ!」
フェルナンドが思わず助け出そうと、足を踏み出した時、大きな声が響き渡った。
「おらーー!!!!もう子供の遊びは終わりだ!ここからは、サファイア騎士団の仕切りだ!全員武器を捨てろ!」
副団長レオンを先頭に、団員達がゾロゾロとやって来て、剣を持った者から次々と取り上げていく。
「ライル、解いてあげて」
ジェイドがそう言った後、ライルはリリアンヌの手と口を自由にした。
「フェルナンド!」
リリアンヌは一直線に駆け出し、フェルナンドの胸に飛び込んだ。
「リリアンヌ…リリアンヌ…リリアンヌ」
二人の感動の再会を見て、ユージーンとローリエも、ほっと胸を撫で下ろした。
「エリーナ・マグニート!殺人未遂でお前を収監する!」
レオン副団長はまず、エリーナに詰め寄った。
「なんですって!私はただの目撃者よ!」
「いや、調べは付いている。ただ目撃しただけで、現場に近寄ることもなかった君の洋服から、飛び散った血液が見つかった。そして、何より、はっきり意識を取り戻したアレックスが、目隠しの隙間から君が見えたのを思い出した」
「離して!ジェイドさまー!ジェイドさまー!」
エリーナは、団員に抱えられながら、連れていかれた。
「さて、お二人にも来てもらわないと、いけないんですよね」
次にレオンは、ジェイドとライルに声をかけた。
「ああ、分かっている。少しだけいいかな」
ジェイドは、改めて、アルフレッドに向き合った。
「今回の事は、僕のいつものお遊びみたいなもので、適当に演出して、お前や皆が苦しんでいるところが見れたら楽しいくらいに思っていた」
「相変わらず、悪趣味だな」
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「でも、もう、こういうの終わりにするよ。飽きちゃったんだよねー。結局つまんないし。いつまでも、アルフレッドの事で、僕の人生を費やすのは無意味だと気づいたんだよ」
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いつもの軽口のようだか、吹っ切れたような顔をしたジェイドに、アルフレッドは少し驚いた。
「なんか、もっと、好きなことしたいなーと思って、ねっ!リリアンヌ!」
突然話を振られて、目をパチクリしながら、リリアンヌは驚いていた。
「リリアンヌが言ったんだよ。アルフレッドなんかに構ってないで、自分の好きなことしろって!」
ジェイドは軽い足どりで、リリアンヌに近づいていった。
「え…、まぁ、そうだけど」
「あっ、間違えた!それを言ってくれたのは、トーヤだったね」
「いっぐ!!…ちょっと!」
リリアンヌが慌ててジェイドの口を塞ごうとした瞬間、その手を取られて、引き寄せられた。
「僕は、トーヤの事、好きだよ」
ジェイドは耳元でそう囁いて、リリアンヌの頬にキスをした。
顔を真っ赤にして固まるリリアンヌに軽く手を振り、ジェイドはレオン副団長の横にするりと入った。
「おい…誰か!!剣を持ってこい!アイツを叩き斬ってやる!なくてもいいー!ボコボコに殴らせろー!」
「ちょ、気持ちは分かるが、重要参考人殺さないでくれ!」
ユージーンやらアルフレッドやら団員やらが、まとめてフェルナンドにしがみついて、必死に止めた。
「ったく!ガキの喧嘩に付き合いきれねぇよ。おら!さっさと行くぞ!王子さん!」
レオンが呆れ顔でそう言って、ジェイドを連れていこうとした。
「あー!フェルナンド!レディのお肌は大切だよ。あんまりゴシゴシ拭くのは感心しないな。嫉妬もほどほどね」
「おいおい、あんまり煽るなよ。ってか遊んでんな、全く…」
案の定、フェルナンドはぶちギレで、火をふいて怒り狂うこととなった。
□□□□□□
ジェイドの信者達は次々と連れていかれ、破壊されたバリケードの残骸が広場に転々と残っていた。
関係者は取り調べがあるのと、フェルナンドとアルフレッドは、騎士団塔を破壊したらしく、レオンからどこにも行くなと10回くらい言われていた。
と言っても、みんな疲れていて、ぐったりと、座り込んで、広場に散乱している松明の残りを眺めていた。
「…なんだったんでしょうね」
「ああ…本当に。ただただ疲れた」
正面玄関前の石段に、フェルナンドと二人並んで座って、疲れと眠気をごまかしていた。
「フェルナンドとお話しするのも久しぶりですね。最後に会った時は、フィネルの花が咲いたばかりで、それが今はもう枯れようとしています」
「アルフレッドに託した伝言を聞いた」
一瞬なんの事か分からなかったが、あの事かと気がつくと、一気に恥ずかしくなった。
「あっあれはっっ…、その…なんと言うか…」
「嬉しかった」
フェルナンドは、前を向いたまま、照れくさそうな顔をしていた。
「いつも私ばかりが思いをよせていて、リリアンヌは、私の事は考えてくれていないかと思っていた」
さすがに、そこまで冷たくしていないと、カチンとしつつ、申し訳ない思いも混じって複雑な気持ちになった。
フェルナンドを見れば、子供のように口を尖らせて、下を向いて、小枝でぐりぐり土をいじっている。
(…ったく。怒り狂って助けに来たと思えば、今は小さいガキみたいに…負けたよ…もう、俺は…)
「…好きだよ」
「え?」
フェルナンドは正面を向いたまま、目を見開いていた。土をいじっていた小枝がパキっと折れた。
「だから、会えなければ寂しくなるくらいは、好きってことで、でもそれが恋とか愛かと言われたら、まだ実感がないというか…」
「それでもいい…それでも、こんなに嬉しいことは生まれて初めてだ…」
「え…!」
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うるさいアルフレッドを睨みながら、手をしっしと振って、向こうへ行かせた。
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ローリエの言葉に、目を見開いたフェルナンドは、リリアンヌー!と、叫びながら追いかけていった。
「いーんですか。ローリエ様、あんな事言って…」
ユージーンが恐る恐る声をかけてきた。
「あーでも言わないと!フェルナンド様は、女性には不自由していなかったくせに、本気になると、ダメダメのグズグズで全然ダメ!」
「ひっひどい…」
「ジェイド様を見た?絶対あれは狙ってきたわよ!クラフト国になんて、嫁がれたら、リリアンヌに会えなくなっちゃうじゃない!私はアレンスデーンの男じゃないと許さないわ!」
「…ローリエ様、それが理由…」
ひと騒動終わっても、まだまだ嵐がきそうな予感がする。夜空は明るくなり始め、新しい光に包まれていくのであった。
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