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第三章 入学編(十八歳)
【幕間SS】ツルツル、ではない
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※本編より少し先のお話です。
「ファンクラブ?」
「そう、作ることにしたんだ。それで発起人の俺が会長に決まった。お前は副会長だ、シリウス」
「本当に作るの? ちなみに、人数は……」
「……まだ二人だ」
イゼルはいいだろ別にと言いながら、手すりに背中をもたれて自信満々の様子でニヤッと笑って銀色の髪をかき上げた。
ゲームの設定では悪役とその手下の関係であった俺とイゼルは、実際のところ、ただの友人同士になった。
家族思いではあるが、調子に乗って悪ノリするタイプのイゼルの評判はあまり良い方ではない。
本人も来るもの拒まずと言うだけあって、色恋の方は遊び人というあだ名が付けられていた。
リカード達はイゼルと俺が連むのをいい顔はしなくて、影響されたら困るからやめておけとアドバイスされるくらいだ。
そっち方面のことは、相容れないものがあるが、俺とイゼルは別の繋がりがあって意気投合して、友人同士としての関係が続いていた。
イゼルとは知り合って以来、こうやって放課後たまに屋上に集まってアスランの情報交換や、近況について語り合っていた。
学内でクラブ活動は自由にしていいとされている。いちおう許可制だが、この勢いだとすでにイゼルは申請書類まで出していそうな気配がした。
「そんなに大々的にするのはなぁ……」
「あっ、ずるいぞ、恋人だからって自分だけのものにするなんて! アスラン様のカッコよさは誰が見ても惚れ惚れしてしまうんだから! まだ勧誘していないけど、おそらく同じ意見のやつを何人か知ってる」
そう言われてしまえば、これ以上反対するのはどうかという状況になってしまった。
あれだけの存在感だ。
俺がカッコいいと思うんだから、他にもそう思う人がいるのは当たり前で、自分だけ独り占めしたいなんていうのは確かによくないなと思ってしまった。
「心配するなよ、別に恋人を目指す会ってわけじゃない。あの漢っぷりに憧れて語り合いたいだけなんだ」
「うん……」
「そうだ、シリウスに細部の情報を聞いて完成した似姿絵が出来上がったぞ。邸に届けるようにしておいたから。ちなみに協力料として俺が全部負担している」
「本当に!? ありがとう、早速部屋に飾るよ。楽しみだなぁ」
似姿絵を作るなんて言ったらアスランは絶対嫌がるタイプなので、俺が顔の特徴などを絵師に伝えて下書きを作ってもらった。後は色を付けたものの完成を待っていたのだった。
「本当に助かったよ。かなり良いものが出来た。それでさ、今度は彫像を作ってクラブのシンボルにしようと思うんだけど、また協力して欲しいんだけど」
「彫像!? すごいね! 確かにあれは俺も芸術として後世に残しておくべきだと思う」
うんうん言って頷いながら腕を組んでいたら、耳を近づけてきたイゼルが小声で話しかけてきた。
「彫像となると、全身が必要なんだけど……」
「全身? ああ、あの筋肉の具合とか重要だよね」
「筋肉もそうなんだけど、ほら……他にも大事なところが……」
言いにくそうに頬を赤らめているイゼルを見て、俺は何のことだか察知して一緒に真っ赤になってしまった。
そうだった、俺が前世とかでイメージのある彫像といえば、裸でポーズをきめているものだった。
芸術とはああいうものだったと思い出して、心臓がドクドクと鳴ってしまった。
言いにくそうなイゼルを見て悟った。俺しか分からないことといえば、つまりアソコの部分、ということだろう。
「そっ……そんなに、忠実に再現しないとだめなのか?」
「当たり前だろう! 彫像は芸術作品なんだ! 適当にするわけにいない!」
イゼルの熱気に押されてしまった俺は、仕方なく分かったと頷くしかなかった。
「ちょっ、何これ!? いつの間に……」
イゼルがプレゼントしてくれたアスランの似姿絵は、俺の部屋のど真ん中に飾ることにした。
肝心の絵は、爽やかに歯を見せて笑っているアスランの顔を、かなり大きく描いてもらった。彩色もはっきりとした鮮やかな色を使っているので、見ているだけで気分が上がる良い仕上がりだった。
ベッドからちょうど見える位置なので、嬉々としながら飾っていたら、ちょうど部屋に入ってきたアスランが、うげっと変な声を上げた。
「アスラン! どうだ? この絵! なかなかよく描けているだろう。あっ、そうそう、その位置で固定して。うん、完璧、ありがとう」
設置を終えた使用人達がそそくさと部屋を出て行ったら、頭を抱えているアスランの姿だけが残った。
「いや、恥ずかしいって、やだよ、自分の顔がドカンと飾ってあるの」
「えー、だって、アスランの顔、好きだから……」
「シリウスっ……、好きでいてくれるのは嬉しいけど、自分に見られながら寝起きするのはちょっとさ」
俺が明らかにシュンとなったので、文句を言っていたアスランはヤバいと思ったのだろう、慌てて俺を慰めるように手を握ってきた。
「分かった、場所を応接間にするから、それならいい?」
「え? あー……うん、それなら」
アスランは苦笑いで、それもあまり歓迎していなさそうな顔をしていた。でも、俺のご機嫌を取るためか、渋々折れてくれたらしい。
そこで俺はイゼルに頼まれたことを思い出した。
今の時間は人も来ないから、ちょうどいいかもしれない。ごくっと唾を飲み込んだ俺は、やることにした。
「アスラン、ちょっと……いいかな?」
上目遣いでじっとアスランを見つめながら、近くに寄った俺はアスランのズボンに手をかけた。
「え………ええっ、シリウス? どうしたの? 急に……、嬉しいけど」
「少しだけ……見せて欲しいんだ」
じっくり見ようと床に膝をついた俺はアスランのズボンと下着を解いた。パサリと床に落とすと、下着の中からアスランの雄々しいモノが姿を表した。
観察するのに邪魔なシャツをくるくると巻いて押し上げていたら、アスランの雄はむくむくと膨れて勃ち上がってきてしまった。
「あっ、だっ……だめだよ、大きくしないで」
「え? 何で?」
「それは……その、平常時の姿をじっくり見てみたくて」
「何それ? 無理だって……、シリウスに見られたら、我慢できないよ」
彫像を作りたいなんて言ったら、また反対されそうなので、興味ということでごまかすしかなさそうだ。
芸術の深いところがわからないが、さすがに起きている状態を再現するのはマズイだろう。
「一回抜いたらおさまるかな?」
「う……うん、たぶん」
俺だって自分の目の前でむくむく大きくなってしまうアスランのソレが愛おしくて可愛くて、観察どころの話ではなくなってしまった。
「じゃあ……、いいかな?」
アスランの雄に手を添えた俺は、愛おしさあまって、頬ずりしてから、先端にちゅっとキスをした。
「あぁっ……シリウスっっ」
「悪いな、シリウス。早速調べてきてくれたのか?」
「う……うん。大変だった、一回じゃ元に戻らなくて、三回も四回も……顎が外れるかと……」
「は? 何の話だ?」
「いや、こっちの話だ」
のんきに屋上に姿を表したイゼルに、俺は頼まれていたことが終わったと話をした。
「いちおう簡単にスケッチしてきたよ。ホクロとかあって、もしそこまで知りたかったら、聞いてくれれば……」
「おー! ありがとう、彫刻師に送るよ。それにしても、際どいところを悪いな……、服は着るにしても、足は出してもらうから、どうしてもスネ毛の辺りは重要だからさ。そうか、アスラン様はスネにホクロがあるのか……」
「え………スネ毛?」
「ああ、スネ毛だよ………え? もっ……もしかして、ツルツルなのか!?」
「そっ、そういうわけじゃ……、あ、あの、そのスケッチブック!! いったん返して! かか描き直してくるから!」
「あっ、おいーー、シリウスーーー」
自分の勘違いに真っ赤になって目眩がしてしまった。
これは絶対に見られてはダメだと察知した俺は、イゼルからスケッチブックを奪って逃走した。
後日、アスランファンクラブは発足した。
部室の入り口には手のひらサイズのアスランが、サイドチェストのポーズをキメている彫像が飾られた。
入会者希望者は数多く現れて、例の彫刻は盗難されるほどの人気が出たとか出なかったとか……。
□おわり□
「ファンクラブ?」
「そう、作ることにしたんだ。それで発起人の俺が会長に決まった。お前は副会長だ、シリウス」
「本当に作るの? ちなみに、人数は……」
「……まだ二人だ」
イゼルはいいだろ別にと言いながら、手すりに背中をもたれて自信満々の様子でニヤッと笑って銀色の髪をかき上げた。
ゲームの設定では悪役とその手下の関係であった俺とイゼルは、実際のところ、ただの友人同士になった。
家族思いではあるが、調子に乗って悪ノリするタイプのイゼルの評判はあまり良い方ではない。
本人も来るもの拒まずと言うだけあって、色恋の方は遊び人というあだ名が付けられていた。
リカード達はイゼルと俺が連むのをいい顔はしなくて、影響されたら困るからやめておけとアドバイスされるくらいだ。
そっち方面のことは、相容れないものがあるが、俺とイゼルは別の繋がりがあって意気投合して、友人同士としての関係が続いていた。
イゼルとは知り合って以来、こうやって放課後たまに屋上に集まってアスランの情報交換や、近況について語り合っていた。
学内でクラブ活動は自由にしていいとされている。いちおう許可制だが、この勢いだとすでにイゼルは申請書類まで出していそうな気配がした。
「そんなに大々的にするのはなぁ……」
「あっ、ずるいぞ、恋人だからって自分だけのものにするなんて! アスラン様のカッコよさは誰が見ても惚れ惚れしてしまうんだから! まだ勧誘していないけど、おそらく同じ意見のやつを何人か知ってる」
そう言われてしまえば、これ以上反対するのはどうかという状況になってしまった。
あれだけの存在感だ。
俺がカッコいいと思うんだから、他にもそう思う人がいるのは当たり前で、自分だけ独り占めしたいなんていうのは確かによくないなと思ってしまった。
「心配するなよ、別に恋人を目指す会ってわけじゃない。あの漢っぷりに憧れて語り合いたいだけなんだ」
「うん……」
「そうだ、シリウスに細部の情報を聞いて完成した似姿絵が出来上がったぞ。邸に届けるようにしておいたから。ちなみに協力料として俺が全部負担している」
「本当に!? ありがとう、早速部屋に飾るよ。楽しみだなぁ」
似姿絵を作るなんて言ったらアスランは絶対嫌がるタイプなので、俺が顔の特徴などを絵師に伝えて下書きを作ってもらった。後は色を付けたものの完成を待っていたのだった。
「本当に助かったよ。かなり良いものが出来た。それでさ、今度は彫像を作ってクラブのシンボルにしようと思うんだけど、また協力して欲しいんだけど」
「彫像!? すごいね! 確かにあれは俺も芸術として後世に残しておくべきだと思う」
うんうん言って頷いながら腕を組んでいたら、耳を近づけてきたイゼルが小声で話しかけてきた。
「彫像となると、全身が必要なんだけど……」
「全身? ああ、あの筋肉の具合とか重要だよね」
「筋肉もそうなんだけど、ほら……他にも大事なところが……」
言いにくそうに頬を赤らめているイゼルを見て、俺は何のことだか察知して一緒に真っ赤になってしまった。
そうだった、俺が前世とかでイメージのある彫像といえば、裸でポーズをきめているものだった。
芸術とはああいうものだったと思い出して、心臓がドクドクと鳴ってしまった。
言いにくそうなイゼルを見て悟った。俺しか分からないことといえば、つまりアソコの部分、ということだろう。
「そっ……そんなに、忠実に再現しないとだめなのか?」
「当たり前だろう! 彫像は芸術作品なんだ! 適当にするわけにいない!」
イゼルの熱気に押されてしまった俺は、仕方なく分かったと頷くしかなかった。
「ちょっ、何これ!? いつの間に……」
イゼルがプレゼントしてくれたアスランの似姿絵は、俺の部屋のど真ん中に飾ることにした。
肝心の絵は、爽やかに歯を見せて笑っているアスランの顔を、かなり大きく描いてもらった。彩色もはっきりとした鮮やかな色を使っているので、見ているだけで気分が上がる良い仕上がりだった。
ベッドからちょうど見える位置なので、嬉々としながら飾っていたら、ちょうど部屋に入ってきたアスランが、うげっと変な声を上げた。
「アスラン! どうだ? この絵! なかなかよく描けているだろう。あっ、そうそう、その位置で固定して。うん、完璧、ありがとう」
設置を終えた使用人達がそそくさと部屋を出て行ったら、頭を抱えているアスランの姿だけが残った。
「いや、恥ずかしいって、やだよ、自分の顔がドカンと飾ってあるの」
「えー、だって、アスランの顔、好きだから……」
「シリウスっ……、好きでいてくれるのは嬉しいけど、自分に見られながら寝起きするのはちょっとさ」
俺が明らかにシュンとなったので、文句を言っていたアスランはヤバいと思ったのだろう、慌てて俺を慰めるように手を握ってきた。
「分かった、場所を応接間にするから、それならいい?」
「え? あー……うん、それなら」
アスランは苦笑いで、それもあまり歓迎していなさそうな顔をしていた。でも、俺のご機嫌を取るためか、渋々折れてくれたらしい。
そこで俺はイゼルに頼まれたことを思い出した。
今の時間は人も来ないから、ちょうどいいかもしれない。ごくっと唾を飲み込んだ俺は、やることにした。
「アスラン、ちょっと……いいかな?」
上目遣いでじっとアスランを見つめながら、近くに寄った俺はアスランのズボンに手をかけた。
「え………ええっ、シリウス? どうしたの? 急に……、嬉しいけど」
「少しだけ……見せて欲しいんだ」
じっくり見ようと床に膝をついた俺はアスランのズボンと下着を解いた。パサリと床に落とすと、下着の中からアスランの雄々しいモノが姿を表した。
観察するのに邪魔なシャツをくるくると巻いて押し上げていたら、アスランの雄はむくむくと膨れて勃ち上がってきてしまった。
「あっ、だっ……だめだよ、大きくしないで」
「え? 何で?」
「それは……その、平常時の姿をじっくり見てみたくて」
「何それ? 無理だって……、シリウスに見られたら、我慢できないよ」
彫像を作りたいなんて言ったら、また反対されそうなので、興味ということでごまかすしかなさそうだ。
芸術の深いところがわからないが、さすがに起きている状態を再現するのはマズイだろう。
「一回抜いたらおさまるかな?」
「う……うん、たぶん」
俺だって自分の目の前でむくむく大きくなってしまうアスランのソレが愛おしくて可愛くて、観察どころの話ではなくなってしまった。
「じゃあ……、いいかな?」
アスランの雄に手を添えた俺は、愛おしさあまって、頬ずりしてから、先端にちゅっとキスをした。
「あぁっ……シリウスっっ」
「悪いな、シリウス。早速調べてきてくれたのか?」
「う……うん。大変だった、一回じゃ元に戻らなくて、三回も四回も……顎が外れるかと……」
「は? 何の話だ?」
「いや、こっちの話だ」
のんきに屋上に姿を表したイゼルに、俺は頼まれていたことが終わったと話をした。
「いちおう簡単にスケッチしてきたよ。ホクロとかあって、もしそこまで知りたかったら、聞いてくれれば……」
「おー! ありがとう、彫刻師に送るよ。それにしても、際どいところを悪いな……、服は着るにしても、足は出してもらうから、どうしてもスネ毛の辺りは重要だからさ。そうか、アスラン様はスネにホクロがあるのか……」
「え………スネ毛?」
「ああ、スネ毛だよ………え? もっ……もしかして、ツルツルなのか!?」
「そっ、そういうわけじゃ……、あ、あの、そのスケッチブック!! いったん返して! かか描き直してくるから!」
「あっ、おいーー、シリウスーーー」
自分の勘違いに真っ赤になって目眩がしてしまった。
これは絶対に見られてはダメだと察知した俺は、イゼルからスケッチブックを奪って逃走した。
後日、アスランファンクラブは発足した。
部室の入り口には手のひらサイズのアスランが、サイドチェストのポーズをキメている彫像が飾られた。
入会者希望者は数多く現れて、例の彫刻は盗難されるほどの人気が出たとか出なかったとか……。
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