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第三章 入学編(十八歳)
【幕間SS】ビギナーズラックよ、永遠に
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まさかこの場所に再び訪れるとは……
「シリウス、早く早くー! 次はこっちの台で勝負しよう」
「あー、今行くよ」
ノリノリのイクシオに引っ張られながら、俺は前にえらい目にあった貴族の遊び場であるカジノに来ていた。
あの時と同じくセカンドバックを持ってきたが、それは手下を買収するためではなく、今回は単純に遊ぶためだ。
最初に誘っていたイクシオは自分抜きでカジノに行ったことをえらく根に持っていて、毎回その話になるので結局一緒に遊びに行くことになったのだ。
今回は遅い時間ではなく、学校が休みの日を利用してお昼過ぎの時間を狙った。
ちょうど開店時間だったので、以前のように混んでいることもなく、入店後はずっとイクシオとカードゲームに興じていた。
結果としては、まあ、負けている。
ビギナーズラックという言葉は俺にとっては存在しないらしい。
「シリウスはさ、手堅いからさ、分かりやすいんだよ。あれじゃ読まれるって」
「だから言っただろう。俺は負けるからってさ」
俺とは違ってイクシオは負けることもあったが、その分大きく勝っていた。
こういうゲームは性格が出るらしい。
常に慎重派の俺は攻めることができないので、とことん読まれてしまう。
イクシオが誘ってくれたとはいえ、こうも上手くいかないと気分が沈んできたところで、イクシオは俺をルーレットのテーブルに連れてきた。
「おっ、シリウスじゃん」
「わっ、イゼル!」
混み合っている場所で、立っていた人にぶつかったと思ったら、振り返ったその人はイゼルだった。
「おー、なんだ、遊びに来るなら言ってくれよ。いい台案内するのに」
「ちょっと、シリウス、あの男……」
今日も絶好調で、遊び人らしいテカテカしたシャツでキメているイゼルを見て、見覚えがあると思ったのか、イクシオは俺の腕を掴んできた。
「大丈夫だ、イクシオ。ちょっと、その……趣味が合って、仲良くなったんだ」
「本当に? 大丈夫なの? チャラいけど……」
イクシオは訝しんだ目でイゼルを見た。イゼルの方はイクシオに見られていると分かると頬がぽっと赤くなったように見えた。
「イクシオ・カラム様。ちゃんとご挨拶するのは初めてですよね、ブラック男爵家のイゼルと申します」
「ああ……、よろしく」
「やっ……べっ、気の強そうな美人! 超タイプです!」
「はあ!?」
「あの、良かったら俺とデートしません? 絶対退屈させませんから!」
どうやらイクシオはイゼルの好みど真ん中だったらしい。そういえば前々から、あの人はなんていう名前なのかとイクシオのことを聞かれていたのを思い出した。
「チャラ過ぎ! やだやだ、アンタみたいなの。僕のタイプじゃない!」
イクシオの方は眉間にシワを寄せて引いているが、ここは二人の友人として、何か手助けできないかと考えた。
「そうだ、二人とも、ここがカジノだってこと分かってるよね。これも何かの縁だよ。イゼル、デートを賭けて勝負してみれば?」
「おおっ、シリウス、なかなかいい事を!」
「へぇ、僕と勝負するつもり? いいよ乗った、負けるつもりはないけど」
この場所に立っていると、いつもと違う感覚が生まれてくる。それは冒険と好奇心、普段なら冷静に通り過ぎてしまうことも、面白いと思ったら最後、飛び込まなくてはいけない感覚になってしまう。
双方も賭け事は遊び慣れている者同士、キラリと目を光らせて、ルーレットで勝負を始めてしまった。
盛り上がっている二人とは違い、俺の方はこれでゆっくり自分のペースでできるようになった。
カードとは違い、ルーレットなら上手く行くかもしれない。
俺はごくっと唾を飲み込んで、セカンドバックを取り出した。
「信じられない! 僕が負けるなんてーーー!」
「約束ですからね、今度のデートしましょうね。ちなみに、ご希望なら、昼の紳士コースに加えて、夜の野獣コース追加できますけど」
「ばかっ、最低ーー!」
どうやら勝負はついたらしい。
イクシオが負けた負けたと騒いで、その周りをチョロチョロとイゼルが嬉しそうに回っていた。
「シリウスー、帰ろう」
「あ、俺、送りますよ」
「付いて来んな、あれ? シリウス?」
二人が漫才みたいなやり取りをしている中、俺は一人手を震わせながら、現実と向き合っていた。
「どうしよう……イクシオ」
「げっ、シリウス。もしかして負けちゃった? もう、だから一人でやるなって言ったのに」
「シリウスー、だから、素人は見てるだけにしとけって……」
端の方でゴソゴソやっていた俺のところに来た二人は、様子を見て一瞬言葉を失ったようだった。
「違うんだ……チップがたくさんになっちゃって……」
俺の前には一人では待ちきれない量のチップが山積みになっていた。
たまたまルーレットで大勝ちしてしまい、どうしていいか分からなくなってパニックになっていた。
どうもビギナーズラックというのは遅れてやってくるらしい。
「いつの間に……どれだけ稼いだの?」
「持つべきものは運の良い友人だぜ! イクシオ様、デートは船に乗って大陸一周にしましょう!」
「なに、調子に乗ってたかろうとしてんの! とにかく、これを換金して……」
「待て、どうせならこれを使って三人で大勝負、やってみないか?」
イゼルはイクシオの持っていたVIPカードを指差してニッと笑って見せた。
ここは大人達の夢の国。
どんな冷静な判断も、この空気に飲まれたら、誰もが好奇心に勝てなくなる。
「いいね、やろう」
俺は立ち上がって拳を突き上げた。
今日の俺はツイている。普段なら絶対こんなことを考えないのに、雰囲気に酔って完全におかしくなっていた。
それは、三人とも同じだった。
大量のチップを袋にブチ込んで、三人で意気揚々と奥のVIPルームに足を踏み入れたのだった。
「シリウス、またカジノに行ったんだって? ランドンさんに聞いたよ」
自室で呆然として天井を見上げていたら、訓練から帰宅したアスランがどしどし足音を鳴らしながら部屋に入ってきた。
「……うん」
「まったく、シリウスの友人は何で揃いも揃って、悪い遊びを教えるんだから! シリウス、聞いてる?」
「………うん」
「心ここに在らずだね。もしかして負けたとか?」
「……………」
「その様子だと、すごい負けだね。もしかして、スッカラカン……」
「言わないでー、もうやらないーー」
「いい勉強になったでしょう。これに懲りたらもうやらない! 分かった?」
「ううっ、はい」
大勝利からの急落下。
VIPの世界はまさに異世界だった。
身包み剥がされて、三人でカジノから放り出された。
大人の世界の恐ろしさを実感した俺は、アスランにも怒られて、もう二度とカジノには行かないと誓ったのだった。
□おわり□
「シリウス、早く早くー! 次はこっちの台で勝負しよう」
「あー、今行くよ」
ノリノリのイクシオに引っ張られながら、俺は前にえらい目にあった貴族の遊び場であるカジノに来ていた。
あの時と同じくセカンドバックを持ってきたが、それは手下を買収するためではなく、今回は単純に遊ぶためだ。
最初に誘っていたイクシオは自分抜きでカジノに行ったことをえらく根に持っていて、毎回その話になるので結局一緒に遊びに行くことになったのだ。
今回は遅い時間ではなく、学校が休みの日を利用してお昼過ぎの時間を狙った。
ちょうど開店時間だったので、以前のように混んでいることもなく、入店後はずっとイクシオとカードゲームに興じていた。
結果としては、まあ、負けている。
ビギナーズラックという言葉は俺にとっては存在しないらしい。
「シリウスはさ、手堅いからさ、分かりやすいんだよ。あれじゃ読まれるって」
「だから言っただろう。俺は負けるからってさ」
俺とは違ってイクシオは負けることもあったが、その分大きく勝っていた。
こういうゲームは性格が出るらしい。
常に慎重派の俺は攻めることができないので、とことん読まれてしまう。
イクシオが誘ってくれたとはいえ、こうも上手くいかないと気分が沈んできたところで、イクシオは俺をルーレットのテーブルに連れてきた。
「おっ、シリウスじゃん」
「わっ、イゼル!」
混み合っている場所で、立っていた人にぶつかったと思ったら、振り返ったその人はイゼルだった。
「おー、なんだ、遊びに来るなら言ってくれよ。いい台案内するのに」
「ちょっと、シリウス、あの男……」
今日も絶好調で、遊び人らしいテカテカしたシャツでキメているイゼルを見て、見覚えがあると思ったのか、イクシオは俺の腕を掴んできた。
「大丈夫だ、イクシオ。ちょっと、その……趣味が合って、仲良くなったんだ」
「本当に? 大丈夫なの? チャラいけど……」
イクシオは訝しんだ目でイゼルを見た。イゼルの方はイクシオに見られていると分かると頬がぽっと赤くなったように見えた。
「イクシオ・カラム様。ちゃんとご挨拶するのは初めてですよね、ブラック男爵家のイゼルと申します」
「ああ……、よろしく」
「やっ……べっ、気の強そうな美人! 超タイプです!」
「はあ!?」
「あの、良かったら俺とデートしません? 絶対退屈させませんから!」
どうやらイクシオはイゼルの好みど真ん中だったらしい。そういえば前々から、あの人はなんていう名前なのかとイクシオのことを聞かれていたのを思い出した。
「チャラ過ぎ! やだやだ、アンタみたいなの。僕のタイプじゃない!」
イクシオの方は眉間にシワを寄せて引いているが、ここは二人の友人として、何か手助けできないかと考えた。
「そうだ、二人とも、ここがカジノだってこと分かってるよね。これも何かの縁だよ。イゼル、デートを賭けて勝負してみれば?」
「おおっ、シリウス、なかなかいい事を!」
「へぇ、僕と勝負するつもり? いいよ乗った、負けるつもりはないけど」
この場所に立っていると、いつもと違う感覚が生まれてくる。それは冒険と好奇心、普段なら冷静に通り過ぎてしまうことも、面白いと思ったら最後、飛び込まなくてはいけない感覚になってしまう。
双方も賭け事は遊び慣れている者同士、キラリと目を光らせて、ルーレットで勝負を始めてしまった。
盛り上がっている二人とは違い、俺の方はこれでゆっくり自分のペースでできるようになった。
カードとは違い、ルーレットなら上手く行くかもしれない。
俺はごくっと唾を飲み込んで、セカンドバックを取り出した。
「信じられない! 僕が負けるなんてーーー!」
「約束ですからね、今度のデートしましょうね。ちなみに、ご希望なら、昼の紳士コースに加えて、夜の野獣コース追加できますけど」
「ばかっ、最低ーー!」
どうやら勝負はついたらしい。
イクシオが負けた負けたと騒いで、その周りをチョロチョロとイゼルが嬉しそうに回っていた。
「シリウスー、帰ろう」
「あ、俺、送りますよ」
「付いて来んな、あれ? シリウス?」
二人が漫才みたいなやり取りをしている中、俺は一人手を震わせながら、現実と向き合っていた。
「どうしよう……イクシオ」
「げっ、シリウス。もしかして負けちゃった? もう、だから一人でやるなって言ったのに」
「シリウスー、だから、素人は見てるだけにしとけって……」
端の方でゴソゴソやっていた俺のところに来た二人は、様子を見て一瞬言葉を失ったようだった。
「違うんだ……チップがたくさんになっちゃって……」
俺の前には一人では待ちきれない量のチップが山積みになっていた。
たまたまルーレットで大勝ちしてしまい、どうしていいか分からなくなってパニックになっていた。
どうもビギナーズラックというのは遅れてやってくるらしい。
「いつの間に……どれだけ稼いだの?」
「持つべきものは運の良い友人だぜ! イクシオ様、デートは船に乗って大陸一周にしましょう!」
「なに、調子に乗ってたかろうとしてんの! とにかく、これを換金して……」
「待て、どうせならこれを使って三人で大勝負、やってみないか?」
イゼルはイクシオの持っていたVIPカードを指差してニッと笑って見せた。
ここは大人達の夢の国。
どんな冷静な判断も、この空気に飲まれたら、誰もが好奇心に勝てなくなる。
「いいね、やろう」
俺は立ち上がって拳を突き上げた。
今日の俺はツイている。普段なら絶対こんなことを考えないのに、雰囲気に酔って完全におかしくなっていた。
それは、三人とも同じだった。
大量のチップを袋にブチ込んで、三人で意気揚々と奥のVIPルームに足を踏み入れたのだった。
「シリウス、またカジノに行ったんだって? ランドンさんに聞いたよ」
自室で呆然として天井を見上げていたら、訓練から帰宅したアスランがどしどし足音を鳴らしながら部屋に入ってきた。
「……うん」
「まったく、シリウスの友人は何で揃いも揃って、悪い遊びを教えるんだから! シリウス、聞いてる?」
「………うん」
「心ここに在らずだね。もしかして負けたとか?」
「……………」
「その様子だと、すごい負けだね。もしかして、スッカラカン……」
「言わないでー、もうやらないーー」
「いい勉強になったでしょう。これに懲りたらもうやらない! 分かった?」
「ううっ、はい」
大勝利からの急落下。
VIPの世界はまさに異世界だった。
身包み剥がされて、三人でカジノから放り出された。
大人の世界の恐ろしさを実感した俺は、アスランにも怒られて、もう二度とカジノには行かないと誓ったのだった。
□おわり□
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