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④ いびつなハートは重なり合って。
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どうやって部屋までたどり着いたか分からない。
興奮し過ぎて、納見はその場で香坂を組み敷いてしまいそうだった。
香坂の住むマンションは、駅から少し離れているが、外観にも内装にもこだわっているお洒落なマンションだった。
いかにもこだわりのある人が住んでいそうで、香坂が出入りする姿は絵になりそうだと思った。
お互い無言で歩いて部屋にたどり着くと、香坂は慣れた手つきでポケットから鍵を取り出してドアを開けた。
納見はその様子をジッと見ていた。
自分の中に渦巻く支配したいという欲求。
そんなものは最初から備わっていなかったかのように、今まで感じることはなかったが、自分でも知らない奥深くに眠っていたのかもしれない。
タクシーの中で自分を見つめる香坂の目は、明らかにSubの目をしていた。
そもそも納見は香坂をずっとDomだと思い込んでいた。
それが居酒屋で突然Subだと打ち明けられて、その時点で頭がどうにかなりそうだった。
こんな嬉しい偶然があるだろうか。
Domだと思っていたから、自分の思いを押し込めようと思っていたのに。
自身も周囲の勘違いされる目線から苦しんでいたと告白してくれた香坂は、抱えきれない欲が滲み出して壮絶な色気を放っていた。
本当はSubとして求められたいとこぼしていた横顔を、無茶苦茶にして抱きしめてしまいたかった。
でも、ダメだ。
香坂は強引にされることを嫌っている。
それはまさに自分の性癖である、可愛がりたいというのに一致しているが、無理やりに求めたら香坂は逃げてしまいそうな気がした。
少しずつ、香坂から自分を求めるように……
自分の中にこんな感情があるのなんて知らなかった。
可愛がりたい。
ズブズブにハマって抜け出せなくなるくらい、求めて欲しい。
一度正気に戻ったのか、離れようとした香坂を引き止めた。
絶対に逃がしたくなかった。
耳元で囁くと、真っ赤になった香坂は明らかに興奮していて、欲望が勃ち上がってどくどくと揺れているのが見えた。
(可愛い、なんて可愛いんだろう)
その時点から溢れ出す欲求が体を突き破りそうだった。
玄関のドアを開ける香坂の後ろ姿を見たら、もう我慢ができなかった。
薄暗い部屋に入って、ドアが閉まる前に、納見は後ろから香坂を抱きしめた。
「っっ……!!」
香坂が息を呑む音が聞こえて、強張った体がビクリと震えた。
嫌だと言われたらすぐに離すつもりだった。
しかし香坂は抵抗することなく、されるがままにゆっくりと体の力を抜いて、納見の手を掴んだ。
そしてその手を自分の下半身に導いてきた。
「納見せんせ……ここ、あつい……」
「可愛いね。もうこんなにして、誰にでもこうなの?」
「ちがっ……こんなの初めてで……触らせたこともない」
「へぇ、いい子だ。まるで俺を待っていてくれたみたいだ」
「もっと……もっと言って」
香坂は少し恥ずかしそうに俯きながら、納見の愛撫に震えて気持ち良さそうな声を上げた。
これがいつもあのツンと澄ましていて完璧と言われる香坂の本当の姿なのか。
いつも自分を覆い隠しているものがビリビリと破れて、本来の自分が顔を出したような、初めてちゃんと空気を吸ったような自由な気持ちになった。
玄関は狭すぎるので、香坂を押してリビングまで歩いた。
コンクリートが剥き出しのお洒落なデザイン壁に囲まれたリビングには大きなソファーがあった。
そのソファーに座った納見は、立ち尽くしている香坂に目を合わせた。
ウズウズと期待を込めた視線を感じて、顔が綻んでしまうのを止められない。
期待通りにしようと納見は口を開いた。
「Kneel(おすわり)」
恍惚の表情を浮かべた香坂はペタンと床に座り込んだ。香坂が熱に浮かされた目をして、自分を見つめてくる光景は、今までに感じたことがないくらい快感だった。
「Good(いいこ)、香坂先生、Safe wordを教えて」
「Red(とまれ)でいい。あの、お願い……先生呼びはちょっと……」
「じゃあ名前で呼び合おう。俺は陽太で、先生は……」
「仁」
「仁、本当に俺とプレイしていいの?」
香坂は頬を赤くして熱のこもった目で見つめてきた。そして恥ずかしそうに顔を伏せた後、こくりと頷いた。
「今日の陽太、まるで別人みたいだ……。それが本当の性格なのか?」
「うー……ん、自分でもよく分からない。ただ、仁のことを見ていたら、まるで鎖が外れたみたいに、開放的な気持ちになってる。でも、本質が変わるわけじゃない。酷く扱ったりしたくないし、むしろとことん可愛がりたい」
「ああ……それ、何もかも……陽太は俺の理想にぴったりだ」
口に手を当てた香坂はまるで感動しているみたいに目を潤ませていた。
そんな姿にもゾクゾクとしてしまい、納見は今にも押し倒したい衝動に必死に耐えていた。
「それは嬉しい。それじゃあ、仁は、何をしてくれるのかな?」
「あ……め……たいです」
「え?」
「お俺のお口を陽太のソレでいっぱいに……」
「分かった。じゃあ、Strip(ぬいで)」
納見のCommandにハッとした香坂は、恥ずかしそうに頬を染めながら、上着を脱いでネクタイを外してシャツのボタンに手をかけた。
一枚一枚、完璧な美を誇る香坂が服を脱いでいくと、やがて生まれたままの姿になった。
薄暗い室内で白い肌がテカテカと光って見える。
全身からむせそうになるくらい無防備な色香を放っていて、香坂の股間のモノはぶるりと揺れて大きくなっていた。
(すごい……、あんなに興奮して……)
男のモノだと思うけれど、嫌悪感など少しもない。
あれをどうやって可愛がってあげようか、想像するだけで涎が溢れてしまいそうだった。
「すごく綺麗だよ。Goodboy(かわいい)、さあ、Come(おいで)」
床を這ってきた香坂は、納見のズボンのチャックを唇で咥えて下ろした。
香坂の痴態を見ているだけで、納見のモノも大きくなっていて、ズボンから元気よく飛び出すと、香坂はソレを見て驚いた顔になった。
「すごい……陽太の大き……お口に入るかな」
口ではそう言いながらも、待ちきれなかったように舌を出した香坂は、早速股間に顔を埋めて舌を使って舐め始めた。
香坂の舌の感触は、ねっとりとしてザラザラしていた。たっぷりの唾液で絡ませてから唇と舌を使って、亀頭や裏筋を丁寧に愛撫していく。
淫らで美しくて、アソコが溶けてしまいそうなくらい気持ちがいい。
納見は、思わず溢れてしまいそうな声を抑えながら、なんて光景なんだと頭がクラクラしていた。
「ハァ……くっ、ハァ、仁、うまいね。フェラは経験があるの?」
「んっ……んんっ。プレイの経験はないって……言っただろう。初めて……だ。妄想はしてた……けど」
チクンと胸が痛んだ。
初めてと聞いて嬉しいはずなのに、香坂が妄想していたという相手がいると知って胸が痛んで、ジリジリと焦げたような感覚がした。
飲んでいた時、確かに香坂は色々と自分のことを語っていた。
Domと間違えられることが多くて、寄ってくるのはDomを期待する人ばかり。自分で出会いを求めたこともあるが、いかにもDomといった自信たっぷりで強気な性格の人ばかりで気が合わなかった。
だからこの歳になってもちゃんとしたプレイは未経験で憧れだけが膨らんでいた。
香坂はそう語っていた。
「あっ………くっっ、もう……」
自分でも早すぎると思ったが、香坂が必死に自分のモノを頬張っている光景なんて、直視しただけで達しそうで我慢できなかった。
限界を伝えると、香坂はパクリと口に咥えて頭を動かしながら唇を使って擦ってきた。
強烈な快感が下半身に集中して堪えきれなくなった。
「あ……っ、で……るっっ」
気持ち良すぎて気がついたら香坂の頭を掴んで、そのまま口内に発射してしまった。
香坂はじゅるじゅると音を立てて残らず吸い取った後、口の周りに付いた白濁をペロリと舐めた。
「にが……でもぜんぶ、舐めた」
香坂は恍惚の表情で見上げてきた。
気怠さが体を包んでいたが、早く早くという視線に気がついた納見は香坂の頭をふわりと撫でた。
「よくできたね。気持ちよかったよ。Goodboy」
「んんっ……」
これを待っていたという顔で納見の手に、香坂は自分から頭を擦り付けてきた。
(やばっ、なんて……可愛すぎだよ)
「Come(おいで)」
優しい声で香坂を呼ぶと、香坂は期待に目を輝かせてゆっくりとソファーに乗ってきた。
男二人が座るには少し狭いソファーがギシギシと軋んだ音を立てた。
うっとりとした顔で自分を見つめてくる香坂の頬に触れた。
「Kiss(くちづけ)」
自分の唇を指してCommandを口にすると、香坂は頬を赤くして顔を近づけてきた。
彫刻のように整った美しい顔に酔いしれるように、納見は重なった唇の柔らかさと、ほんの少しの苦さを感じて目を閉じた。
柔らかな朝日はバターのように滑らかにベッドの上に伸びて、その温かさに包まれながら香坂は目を開けた。
幸せな夢を見ていた。
体が軽くて羽が生えたように心地いい。
昨日は飲みすぎてしまったなと思いながらゆっくり体を起こすと、そこで固まってしまった。
(ど……どういうこと? これは……いったい)
驚きで息を呑みながら、自分の隣に寝ている男を見て、思考が止まってしまった。
いつもモジャモジャのくるくるとした髪の毛はふんわりとベッドに伸びていて、隠れていた顔があらわになっていた。
予想以上に整った顔立ちに驚かされたが、瓶底眼鏡に隠されていた目はバシバシのまつ毛に覆われていた。
その姿を見たら昨夜の記憶が雨のように降ってきて、香坂の心をずぶ濡れにした。
「んっ……あっ、香坂先生、おはようございます」
昨夜、幻のように快感の渦に自分を飲み込んだ男を思い出して顔が熱くなったが、目覚めたばかりの納見を見て、色んな意味で心臓が震えてしまった。
長いまつ毛に覆われた目がぱちっと開くと、黒目の大きな瞳が姿を現した。
スッと通った鼻筋と、どことなくまたあどけなさの残る童顔の甘い顔立ち。
社会人になっているはずだが、美少年という言葉がぴったり当てはまった。
朝日を浴びてキラキラと光る瞳に見つめられると、自分がイケナイことしてしまった気がして焦ってしまった。
(あのダサい姿の奥に、こんな爆弾を仕込んでいたなんて……)
「あ……あの、すみません、昨日は私……」
「謝らないでください。誘ったのは私の方です。まさか、近くにこんな理想の方がいたなんて……、気がついたら我慢できなくなってしまいました」
二人して裸でベッドに寝ていたが、昨夜の記憶では最後まではしていないはずだ。
気まずい沈黙でそれを確かめるように納見をみたら、自分より真っ赤になった顔を見せられて唖然としてしまった。
ここにいる可愛らしい美少年と、昨夜の納見と本当に同一人物なのだろうか。
昨夜の納見に、ソファーの上でどろどろに溶かされて手でイカされた後、最後の方はSpaceに入ってトロンと眠りに落ちてしまった。
香坂は自分の体を見渡したが、かなり汚れたはずだが、体はサッパリしていて綺麗だった。
寝落ちしたはずなのにベッドに寝かされていたところからすると、アフターケアもばっちりということだ。
感動した香坂は思わず納見の手を掴んでしまった。
「納見先生! 恋人はいらっしゃらないと言っておられましたよね?」
「は……はい」
「こうなってしまったのも何かの縁です。私とお付き合いしませんか?」
「えっ………」
自分で言っておきながら強引すぎるだろうと、断られる気しかしていなかった。
これでは納見の優しさにつけ込んでいる状態だ。
(それでもいい。こんな理想的な人が手に入るならそれでも……)
「はい、私でよければ……」
まさかのOKが出て、気持ちは天に昇りそうなくらいになった。
感情的には好きだとか甘ったるいものではなくて、ダイナミクスの相性だけで惹かれているのは確かだが、今までの香坂にとってそれが一番ネックで大事なポイントだった。
適度に意地悪でとんでもなく甘やかしてくれる納見、普段のオドオドした姿からは想像もできないほどプレイの時はカッコ良くてひたすら優しい。Commandを聞くだけで溶けてしまいそうになる。
こんな相手に二度と会えるような気がしない。
同じ職場の同僚であるとか、そんなものはもうどうでもよかった。
とにかく今、なかったことには絶対にできないとしがみついてしまった。
「と……とりあえず、職場ではお互い生徒の目や立場もありますから普段通りにして秘密にしておきましょう。週末、予定がなければ会ってプレイをする。うちでも、納見先生の家でもどこでもいいです。ああ、すみません、まともにお付き合いをしたことがなくて、こんな感じで大丈夫なのでしょうか……」
「え…ええ、それで構いません」
ガッつき過ぎているにしては、恋人らしい要素が少ないなとも思ったが、とにかく香坂が想像できるお付き合いというものがそれしか思い浮かばなかった。
勢いで好き勝手に提案してしまったが、納見は優しそうに目を細めて笑ってくれた。
よかったとホッとしながら手を差し出すと、納見は手を握り返してくれた。
こうして二人の付き合いは、ぎこちない雰囲気を纏いながら、握手で始まったのだった。
□□□
興奮し過ぎて、納見はその場で香坂を組み敷いてしまいそうだった。
香坂の住むマンションは、駅から少し離れているが、外観にも内装にもこだわっているお洒落なマンションだった。
いかにもこだわりのある人が住んでいそうで、香坂が出入りする姿は絵になりそうだと思った。
お互い無言で歩いて部屋にたどり着くと、香坂は慣れた手つきでポケットから鍵を取り出してドアを開けた。
納見はその様子をジッと見ていた。
自分の中に渦巻く支配したいという欲求。
そんなものは最初から備わっていなかったかのように、今まで感じることはなかったが、自分でも知らない奥深くに眠っていたのかもしれない。
タクシーの中で自分を見つめる香坂の目は、明らかにSubの目をしていた。
そもそも納見は香坂をずっとDomだと思い込んでいた。
それが居酒屋で突然Subだと打ち明けられて、その時点で頭がどうにかなりそうだった。
こんな嬉しい偶然があるだろうか。
Domだと思っていたから、自分の思いを押し込めようと思っていたのに。
自身も周囲の勘違いされる目線から苦しんでいたと告白してくれた香坂は、抱えきれない欲が滲み出して壮絶な色気を放っていた。
本当はSubとして求められたいとこぼしていた横顔を、無茶苦茶にして抱きしめてしまいたかった。
でも、ダメだ。
香坂は強引にされることを嫌っている。
それはまさに自分の性癖である、可愛がりたいというのに一致しているが、無理やりに求めたら香坂は逃げてしまいそうな気がした。
少しずつ、香坂から自分を求めるように……
自分の中にこんな感情があるのなんて知らなかった。
可愛がりたい。
ズブズブにハマって抜け出せなくなるくらい、求めて欲しい。
一度正気に戻ったのか、離れようとした香坂を引き止めた。
絶対に逃がしたくなかった。
耳元で囁くと、真っ赤になった香坂は明らかに興奮していて、欲望が勃ち上がってどくどくと揺れているのが見えた。
(可愛い、なんて可愛いんだろう)
その時点から溢れ出す欲求が体を突き破りそうだった。
玄関のドアを開ける香坂の後ろ姿を見たら、もう我慢ができなかった。
薄暗い部屋に入って、ドアが閉まる前に、納見は後ろから香坂を抱きしめた。
「っっ……!!」
香坂が息を呑む音が聞こえて、強張った体がビクリと震えた。
嫌だと言われたらすぐに離すつもりだった。
しかし香坂は抵抗することなく、されるがままにゆっくりと体の力を抜いて、納見の手を掴んだ。
そしてその手を自分の下半身に導いてきた。
「納見せんせ……ここ、あつい……」
「可愛いね。もうこんなにして、誰にでもこうなの?」
「ちがっ……こんなの初めてで……触らせたこともない」
「へぇ、いい子だ。まるで俺を待っていてくれたみたいだ」
「もっと……もっと言って」
香坂は少し恥ずかしそうに俯きながら、納見の愛撫に震えて気持ち良さそうな声を上げた。
これがいつもあのツンと澄ましていて完璧と言われる香坂の本当の姿なのか。
いつも自分を覆い隠しているものがビリビリと破れて、本来の自分が顔を出したような、初めてちゃんと空気を吸ったような自由な気持ちになった。
玄関は狭すぎるので、香坂を押してリビングまで歩いた。
コンクリートが剥き出しのお洒落なデザイン壁に囲まれたリビングには大きなソファーがあった。
そのソファーに座った納見は、立ち尽くしている香坂に目を合わせた。
ウズウズと期待を込めた視線を感じて、顔が綻んでしまうのを止められない。
期待通りにしようと納見は口を開いた。
「Kneel(おすわり)」
恍惚の表情を浮かべた香坂はペタンと床に座り込んだ。香坂が熱に浮かされた目をして、自分を見つめてくる光景は、今までに感じたことがないくらい快感だった。
「Good(いいこ)、香坂先生、Safe wordを教えて」
「Red(とまれ)でいい。あの、お願い……先生呼びはちょっと……」
「じゃあ名前で呼び合おう。俺は陽太で、先生は……」
「仁」
「仁、本当に俺とプレイしていいの?」
香坂は頬を赤くして熱のこもった目で見つめてきた。そして恥ずかしそうに顔を伏せた後、こくりと頷いた。
「今日の陽太、まるで別人みたいだ……。それが本当の性格なのか?」
「うー……ん、自分でもよく分からない。ただ、仁のことを見ていたら、まるで鎖が外れたみたいに、開放的な気持ちになってる。でも、本質が変わるわけじゃない。酷く扱ったりしたくないし、むしろとことん可愛がりたい」
「ああ……それ、何もかも……陽太は俺の理想にぴったりだ」
口に手を当てた香坂はまるで感動しているみたいに目を潤ませていた。
そんな姿にもゾクゾクとしてしまい、納見は今にも押し倒したい衝動に必死に耐えていた。
「それは嬉しい。それじゃあ、仁は、何をしてくれるのかな?」
「あ……め……たいです」
「え?」
「お俺のお口を陽太のソレでいっぱいに……」
「分かった。じゃあ、Strip(ぬいで)」
納見のCommandにハッとした香坂は、恥ずかしそうに頬を染めながら、上着を脱いでネクタイを外してシャツのボタンに手をかけた。
一枚一枚、完璧な美を誇る香坂が服を脱いでいくと、やがて生まれたままの姿になった。
薄暗い室内で白い肌がテカテカと光って見える。
全身からむせそうになるくらい無防備な色香を放っていて、香坂の股間のモノはぶるりと揺れて大きくなっていた。
(すごい……、あんなに興奮して……)
男のモノだと思うけれど、嫌悪感など少しもない。
あれをどうやって可愛がってあげようか、想像するだけで涎が溢れてしまいそうだった。
「すごく綺麗だよ。Goodboy(かわいい)、さあ、Come(おいで)」
床を這ってきた香坂は、納見のズボンのチャックを唇で咥えて下ろした。
香坂の痴態を見ているだけで、納見のモノも大きくなっていて、ズボンから元気よく飛び出すと、香坂はソレを見て驚いた顔になった。
「すごい……陽太の大き……お口に入るかな」
口ではそう言いながらも、待ちきれなかったように舌を出した香坂は、早速股間に顔を埋めて舌を使って舐め始めた。
香坂の舌の感触は、ねっとりとしてザラザラしていた。たっぷりの唾液で絡ませてから唇と舌を使って、亀頭や裏筋を丁寧に愛撫していく。
淫らで美しくて、アソコが溶けてしまいそうなくらい気持ちがいい。
納見は、思わず溢れてしまいそうな声を抑えながら、なんて光景なんだと頭がクラクラしていた。
「ハァ……くっ、ハァ、仁、うまいね。フェラは経験があるの?」
「んっ……んんっ。プレイの経験はないって……言っただろう。初めて……だ。妄想はしてた……けど」
チクンと胸が痛んだ。
初めてと聞いて嬉しいはずなのに、香坂が妄想していたという相手がいると知って胸が痛んで、ジリジリと焦げたような感覚がした。
飲んでいた時、確かに香坂は色々と自分のことを語っていた。
Domと間違えられることが多くて、寄ってくるのはDomを期待する人ばかり。自分で出会いを求めたこともあるが、いかにもDomといった自信たっぷりで強気な性格の人ばかりで気が合わなかった。
だからこの歳になってもちゃんとしたプレイは未経験で憧れだけが膨らんでいた。
香坂はそう語っていた。
「あっ………くっっ、もう……」
自分でも早すぎると思ったが、香坂が必死に自分のモノを頬張っている光景なんて、直視しただけで達しそうで我慢できなかった。
限界を伝えると、香坂はパクリと口に咥えて頭を動かしながら唇を使って擦ってきた。
強烈な快感が下半身に集中して堪えきれなくなった。
「あ……っ、で……るっっ」
気持ち良すぎて気がついたら香坂の頭を掴んで、そのまま口内に発射してしまった。
香坂はじゅるじゅると音を立てて残らず吸い取った後、口の周りに付いた白濁をペロリと舐めた。
「にが……でもぜんぶ、舐めた」
香坂は恍惚の表情で見上げてきた。
気怠さが体を包んでいたが、早く早くという視線に気がついた納見は香坂の頭をふわりと撫でた。
「よくできたね。気持ちよかったよ。Goodboy」
「んんっ……」
これを待っていたという顔で納見の手に、香坂は自分から頭を擦り付けてきた。
(やばっ、なんて……可愛すぎだよ)
「Come(おいで)」
優しい声で香坂を呼ぶと、香坂は期待に目を輝かせてゆっくりとソファーに乗ってきた。
男二人が座るには少し狭いソファーがギシギシと軋んだ音を立てた。
うっとりとした顔で自分を見つめてくる香坂の頬に触れた。
「Kiss(くちづけ)」
自分の唇を指してCommandを口にすると、香坂は頬を赤くして顔を近づけてきた。
彫刻のように整った美しい顔に酔いしれるように、納見は重なった唇の柔らかさと、ほんの少しの苦さを感じて目を閉じた。
柔らかな朝日はバターのように滑らかにベッドの上に伸びて、その温かさに包まれながら香坂は目を開けた。
幸せな夢を見ていた。
体が軽くて羽が生えたように心地いい。
昨日は飲みすぎてしまったなと思いながらゆっくり体を起こすと、そこで固まってしまった。
(ど……どういうこと? これは……いったい)
驚きで息を呑みながら、自分の隣に寝ている男を見て、思考が止まってしまった。
いつもモジャモジャのくるくるとした髪の毛はふんわりとベッドに伸びていて、隠れていた顔があらわになっていた。
予想以上に整った顔立ちに驚かされたが、瓶底眼鏡に隠されていた目はバシバシのまつ毛に覆われていた。
その姿を見たら昨夜の記憶が雨のように降ってきて、香坂の心をずぶ濡れにした。
「んっ……あっ、香坂先生、おはようございます」
昨夜、幻のように快感の渦に自分を飲み込んだ男を思い出して顔が熱くなったが、目覚めたばかりの納見を見て、色んな意味で心臓が震えてしまった。
長いまつ毛に覆われた目がぱちっと開くと、黒目の大きな瞳が姿を現した。
スッと通った鼻筋と、どことなくまたあどけなさの残る童顔の甘い顔立ち。
社会人になっているはずだが、美少年という言葉がぴったり当てはまった。
朝日を浴びてキラキラと光る瞳に見つめられると、自分がイケナイことしてしまった気がして焦ってしまった。
(あのダサい姿の奥に、こんな爆弾を仕込んでいたなんて……)
「あ……あの、すみません、昨日は私……」
「謝らないでください。誘ったのは私の方です。まさか、近くにこんな理想の方がいたなんて……、気がついたら我慢できなくなってしまいました」
二人して裸でベッドに寝ていたが、昨夜の記憶では最後まではしていないはずだ。
気まずい沈黙でそれを確かめるように納見をみたら、自分より真っ赤になった顔を見せられて唖然としてしまった。
ここにいる可愛らしい美少年と、昨夜の納見と本当に同一人物なのだろうか。
昨夜の納見に、ソファーの上でどろどろに溶かされて手でイカされた後、最後の方はSpaceに入ってトロンと眠りに落ちてしまった。
香坂は自分の体を見渡したが、かなり汚れたはずだが、体はサッパリしていて綺麗だった。
寝落ちしたはずなのにベッドに寝かされていたところからすると、アフターケアもばっちりということだ。
感動した香坂は思わず納見の手を掴んでしまった。
「納見先生! 恋人はいらっしゃらないと言っておられましたよね?」
「は……はい」
「こうなってしまったのも何かの縁です。私とお付き合いしませんか?」
「えっ………」
自分で言っておきながら強引すぎるだろうと、断られる気しかしていなかった。
これでは納見の優しさにつけ込んでいる状態だ。
(それでもいい。こんな理想的な人が手に入るならそれでも……)
「はい、私でよければ……」
まさかのOKが出て、気持ちは天に昇りそうなくらいになった。
感情的には好きだとか甘ったるいものではなくて、ダイナミクスの相性だけで惹かれているのは確かだが、今までの香坂にとってそれが一番ネックで大事なポイントだった。
適度に意地悪でとんでもなく甘やかしてくれる納見、普段のオドオドした姿からは想像もできないほどプレイの時はカッコ良くてひたすら優しい。Commandを聞くだけで溶けてしまいそうになる。
こんな相手に二度と会えるような気がしない。
同じ職場の同僚であるとか、そんなものはもうどうでもよかった。
とにかく今、なかったことには絶対にできないとしがみついてしまった。
「と……とりあえず、職場ではお互い生徒の目や立場もありますから普段通りにして秘密にしておきましょう。週末、予定がなければ会ってプレイをする。うちでも、納見先生の家でもどこでもいいです。ああ、すみません、まともにお付き合いをしたことがなくて、こんな感じで大丈夫なのでしょうか……」
「え…ええ、それで構いません」
ガッつき過ぎているにしては、恋人らしい要素が少ないなとも思ったが、とにかく香坂が想像できるお付き合いというものがそれしか思い浮かばなかった。
勢いで好き勝手に提案してしまったが、納見は優しそうに目を細めて笑ってくれた。
よかったとホッとしながら手を差し出すと、納見は手を握り返してくれた。
こうして二人の付き合いは、ぎこちない雰囲気を纏いながら、握手で始まったのだった。
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