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本編

悪魔にお尻を狙われて…喜んでなんか……ない!

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 夕暮れから夜に変わりつつある頃、保健室には乾いた音が響いていた。
 そしてその音とともに、俺の悲鳴が同じリズムで続いていたが、俺の悲鳴はただの痛みに耐えるものではなく、いつの間にか妙な甘さを含んだものになっていた。

「もう一度聞く、ルナソルに後ろから挿れられて、お前は何回イったんだ?」

「そ…んなぁぁ、覚えて……な…い」

 パシンと音が響いて切り裂くような痛みが尻に走る。
 俺が言葉に詰まったり、反論したならすぐにでも尻を叩かれてしまう。
 こんな屈辱的な行為を受け入れられる筈もなく、暴れて逃れたいのにジェラルドに触れられて灯った熱がそれを許してくれない。

「ああっ…い…痛い…、痛いよぉ…」

 叩かれた尻から突き刺すようにあった痛みがあった筈なのに、それがだんだんと熱くなって痛みとは別の感覚になっていた。

 それは……。

「……アリアス、痛いじゃないだろう。ダラダラ前からも後ろからも溢しやがって。尻叩かれて勃起してんの分かってんだろ?」

「ううっっ…」

 なんてことだ。ジェラルドのおかげで俺の体が変態になってしまった。
 俺はジェラルドに尻を叩かれて感じている。叩かれる度にジンジンとした熱が体を突き抜けて、強烈な快感になって俺のアソコはギンギンに硬くなってしまう。
 イキたくてイキたくてたまらない。

「ジェラルド…い…イキたい…。苦しいよぉ……」

 息が上がり顔は熱くなって涙まで出てきた。いきなり俺を支配してきたヤツに頼むのなんて嫌すぎるが、俺を解放してくれるのはジェラルドしかいない。俺は後ろにいるジェラルドの方に顔を向けて懇願した。

 ジェラルドは赤い目をいっそう光らせて嬉しそうな顔をしていた。太い首筋が波のように揺れて、唾を飲み込んだように見えた。

「まだ答えてないぞ。お前は何回イったんだ?」

「…さ…三回…」

「三回もイったのか、まったく淫乱保健医だ。ふっ…まぁいい。ちゃんと答えたからなご褒美をやろう。前を擦られるのと、後ろからブチ込まれるのとどっちがいい?」

 すっかり快感の虜になっている俺は頭を支配されてまともに考えることなんどできない。とにかく気持ちのいいものがたくさん欲しかった。

「……ん……ぶ」

「ああ?」

「…全部…欲しい」

 自分でもおいおいと思うくらい、貪欲な俺の言葉にジェラルドは一瞬責める手を止めた後、くつくつと可笑しそうに笑った。

「欲しがりなお姫様だ。最高だな、お前」

「んんっあっ……ああああああーーー!!」

 今の俺にとっては最高のご褒美をジェラルドはくれた。すでに溶けてしまいそうだった俺の孔に、一気に灼熱の杭を打ち込んできた。
 待ちに待ったモノがくれた熱さに、俺の体は喜びに震えてそのまま達してしまった。
 保健室のベッド上、薬品の香りがする白いシーツに白濁が飛び散った。

「おいおい……挿れただけでイキやがって……。ほら、俺に掴まれ。まだこれからだぞ」

「ふっ…ううああっ……!!」

 挿れたままぐるりと回されてベッドに背を乗せられた。
 両足を持ち上げた後、ジェラルドが深く入ってくるのが気持ち良すぎて、俺は涎を垂らしながら歓喜の声を上げた。

「あっ…んんっ……」

 律動を開始したジェラルドに合わせて、食らい付いて離したくないと俺の腰も自然に揺れていた。
 そんな俺の痴態を見ながら、ジェラルドはくくくっと笑った。

「どうした?ご褒美だろう。もっと喜んでくれないのか?ほら、涎垂らして涙流して…ひどい顔じゃないか。少しは可愛くおねだりしてみろよ」

「くっ……」

 俺を見下ろす男の屈辱的な物言いに、頭はカッと熱くなったが、凶暴さが色に変わったような赤い瞳に捕らわれたら、怒りよりもゾクゾクとした快感が噴き出してきた。

「もっ…と…」

 まさか自分が

「もっと…気持ちよく…てくだ…さ…い」

 こんな事を言う日が来るなんて……

「さっき…みたいに…お…おし…りを…、お願い……たたいて…くださ…い」

 あー悪夢だ。
 なんて最悪な相手なんだ。

 口の端を持ち上げて、ニヤリと満足そうに笑った悪魔の顔はしばらく俺の頭から離れなかった。





「こちらがアリアス様がお使いいただくお部屋になります。旦那様は本日は朝まで帰りませんので……」

 どこへ、という質問は聞いても答えてくれなそうだった。
 ジェラルドの屋敷の使用人は目を合わせてくれないし、事務的に俺を案内した後、素っ気ない態度でさっさと行ってしまった。

 国の魔導士としては引退したジェラルドだったが、個人的には細々と依頼を受けているらしく、俺を自分の屋敷に向かう馬車に乗せた後、別の仕事があると言われてそこで別れることになった。

 ジェラルドはブラック侯爵家から出て、首都の中心部に住んでいた。魔導士として働いた功績として、もともと王族が所有していた屋敷を授与されらしい。
 とにかく広い屋敷で、ぱっと見ただけでは全貌が分からない。びっくりするのは使用人を除けば、住人はここの主人であるジェラルドのみだということだ。
 俺はその中の主人の部屋の隣室を使わせてもらうことになったが、ここに来る間にも何部屋あったか数え切れない。
 ジェラルドが大家族でも作れば話は別だが、それでも使い切れないくらいの広さだった。

「……名家の生まれで容姿に恵まれ、社会的地位もあって、バカでかい家を貰って、王家からの信頼も厚い……。ますます嫌味なヤツだ」

 もちろん彼がここまで来たのは、努力や苦労の結果だと言うことは本を読んでそれなりに分かっているつもりだ。
 つもりだが、部屋に飾られている金の調度品を見て思わず鞄につめそうになった。

 くぅぅーーー!結果的に若くして引退して好きなことやって、大きな屋敷で贅沢な生活!羨ましすぎるーーー!
 この金の豚みたいな置物一つで俺の生涯賃金と同じくらいだろう。

 ブツブツ言いながら寝る支度を済ませたが、ケツがジンジン熱を持っていてちっとも眠れそうにない。
 まさかあんな屈辱的な行為をさせるとは思わなかった。そして、自分から求めてしまうなんて、もう俺は完全に終わってしまった。

「しかしあれ…悪くなかった。……って!あぁ、もう最悪……」

 信じられない行為だったが、あまりの気持ちよさに途中で何度か意識を失った。飛んでしまった俺に構わず、ジェラルドはずっと俺の中で続けていたらしい。
 俺が気がついた時は、ジェラルドは俺の中にたっぷり出していて、保健室のベッドがアレまみれになっていた。
 まだガツガツこようとするジェラルドを、もう壊れると言って泣いて止めたくらいだった。

 同居初日からこんなことをされて、この先何が待っているのか。ルナソルの時のように命の危険はないが、体が変態になってしまう危険は大いにある。

 とにかく明日に備えて寝ようとベッドに入って目を閉じていると暫くしてからドアの外が騒がしくなった。
 今日は帰らないと言っていたジェラルドが帰宅したのだろうか。もうかなり遅い時間帯であるから、わざわざ顔を見せる必要もないだろうと思って再び目を閉じたが、いつになっても話し声が止まないので仕方なくベッドから出て廊下を覗くことにした。


「……だから、少し挨拶したいだけだって。ジェラルドがご執心のお姫様に。今来ているんだろう」

「何時だと思ってるんですか。別の日にしてください。というか、別の日もだめです。ぜひ大人しくお帰りください。宮までは転移魔法でお送りしますから……」

「帰ると色々うるさい奴が多いのは知ってるだろう。こういう時にしか、時間が取れないんだ」

「ハシュール殿下、さすがの私も怒ります……」

 ジェラルドの一言を聞いて、声を聞くためにゆっくりと僅かに開いていたドアを力をかけて押してしまった。
 おかげで、ドアはバーンと音を立てて全開になった。
 廊下には二人の男が立っていた。

 一人は黒衣で魔術士の長いローブを纏ったジェラルドと、銀髪で色白、ジェラルドと同じ赤い目をした男だった。
 先程聞こえた名前からして、彼が王家の人間、しかも多分記憶に間違いなければ、第二王子ハシュールということになるだろう。

「…も……申し訳ございません。殿下、このような格好でご無礼をお許しください」

 当然端っこ貴族の俺に面識があるはずもないと思うが、寝巻き姿で飛び出してしまった。慌てて頭を深く下げて挨拶をした。

「其方がアリアスか…、いや、こちらが夜分に突然訪問したのだから、楽にしてくれ。それよりこっちに来てくれ顔が見たい」

 え…?偉い人とか困るんだけどと思いながら、困惑顔でハシュール殿下に恐る恐る近づいて行った。

「確かに美しい顔だな。でもまぁ、このレベルならうちの宮にはたくさんいる。何しろ国中から容姿の良い者を集めているからな」

「はあ…、それは凄そうですね」

 ハシュール殿下は自慢げに語っているが、俺はちっとも羨ましくない。媚を売っておいてそんな相手ではないと思うので一応驚いたフリをしておいた。

「さて、誰にもこだわることなく、適当に遊ぶだけで結婚など必要ないと言っていた男が夢中になっているとは…アリアス、其方にはいったい何があるというのだろうか……」

 手を伸ばしてきたハシュール殿下の手が俺の頬に触れた。
 柔らかな指先が頬を滑っているが、ちっとも体は変な状態にはならない。安堵しながら、早く止めてほしいと無言で耐えて、とにかく目線を下に向けていた。

「……ん?匂い?其方から甘い匂いが……」

「そこまでです!」

 ずっと後ろで控えていたジェラルドが俺を庇うようにハシュール殿下との間に入ってきた。

「連絡が入りました。至急お戻りになるようにと……」

「まったく、少し留守にすると直ぐこれだ……、仕方ない。アリアス、また其方に会いたい、今度はゆっくりと……」

 ハシュール殿下の足元に魔法陣が光って、ハシュール殿下が片手を上げて微笑んだ後、スッと光が強くなって全身を包んでから、火を消したみたいに一瞬でその姿が消えてしまった。

「……うわっ。便利……」

「便利だが、他人を転移魔法で運ぶのはかなりの魔力を使うんだ。これをやったら暫く使い物にならん」

 ガタンと壁に持たれたジェラルドは苦しそうに息を吐いていた。

「大丈夫ですか!?誰か呼びますか?」

「……いや、ベッドに行く…。寝れば回復するから」

 青い顔で辛そうになってしまったジェラルドのデカい体を、俺が必死で支えてなんとか部屋のベッドまで連れてきた。

「すまない……、今日は色々と手伝わされて…かなり消耗していたんだ」

 国の仕事からは離れたくせに、ハシュール殿下の依頼だといくら王族の命令とはいえ、なぜこれほど身を削ってまでやる必要があるのか疑問だった。

 とりあえず体を拭いてやってベッドに押し込んで布団をかけた。
 疲れが押し寄せてきたのだろう。ジェラルドは眠そうな目をしていた。俺は部屋に戻るからと伝えて立ち上がろうとすると、ジェラルドはがっと俺の手を掴んできた。

「ハシュール殿下が……、お前に興味を持ってしまった。会わせたくなかったのに……」

「興味?そうかなぁ…、持ったとしても、俺は別に何も出来ないですし、向こうはただの気まぐれですよ」

「だめだ……、アリアス……。お前だけは……」

 掴まれた手の握力が抜けて、ジェラルドの手はするりとベッドに落ちていった。
 俺はもう一度布団を直してジェラルドの部屋を出た。

 とにかく訳の分からない濃い一日だった。おまけに眠りを邪魔されたので、このまま立って寝れそうだ。俺も早く自分のベッドに帰ろうと、大きなあくびをして歩き出したのだった。




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