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本編

いっ…痛いのはイヤ!魔法なんて使えませんてばっ!

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「……協力って、何をすればいいんだ?いや、その…俺からお願いして言うのもあれなんだけど、痛いのとかは……ちょっと……」

 おどおどしながら、ルナソルの後ろに付いて部屋に戻った俺は、ずっとこちらを振り向く事がなかった背中に恐る恐る問いかけた。

「大丈夫ですよ。……実は先生がこの部屋に来てから、寝ている時に勝手に協力させてもらっていたので」

「え!?いっ…いつの間に…、ってか何を…?」

 今までの平和な日々にいったい何があったのか、頭が混乱し始めてとりあえず近くの椅子に座って呼吸を整えた。

「ちょっとした実験と経過の観察です。私は自分で作った魔法がどう定着して、それが変化して弱まる事があるか、もしくは別の効果が出る事があるのか……、先生の体の痕跡を辿り調べていたのです」

「……そうか。……って、え?何言ってるか全然分からないんだけど…。え?つまり、俺に魔法をかけてどうなるのかなーって調べてたってこと?」

「そうですね。そう解釈していただいて結構です」

 許可も取らずに勝手なことをされていたのはどうかと思ったが、生活に支障をきたすことはなかった。
 ならば、今回の協力も大したものではないだろうと考えた。

「分かった。じゃ、さっさと済ませてくれ。どうすればいいんだ?ベッドに寝ればいいのか?」

 ビビっていたくせに、あっさり受け入れた事が理解できなかったのか、ルナソルはポカンとして驚いたような顔をしていた。
 いつも理性の塊みたいな顔をして何事にも動じない男が見せた隙みたいなものが、やけに嬉しく感じてしまった。

「よく分かんなくて怖いけどさ。俺、言ったことは守るから。ほら、ババっと呪文でも唱えて調べてくれ」

 いつまで経っても指示しないので、俺は勝手にベッドに仰向けに転がった。
 ビビりだが、腹を決めたら早くしないと気が済まないタイプだ。なぜなら、長くなるとよけいにビビりだすからだ。

「……正直助かりました。意識のない状態で調べるのは限界があったので。睡眠が深いと辿れなくなってしまうのです。さすがに嫌がるかと思っていましたが……、先生は意外と男らしいのですね」

 私の方こそ、何も知らなかったと言って、ルナソルは寂しそうな表情で笑った。

 俺は注射をされる時は絶対に目をつぶるタイプだ。何をされるか分からないというのが、一番苦手だ。事前にここをこうしてと話してくれたらいいが、きっと魔法の説明なんてきいてもちんぷんかんぷんだ。
 覚悟を決めた気持ちと勢いでベッドに寝たが、内心は手術台に麻酔なしで上るくらいの気持ちでビビっていた。

「……ルっ……ルナソル、痛かったら…左手を上げるから、その時は絶対止めてくれよ!あっ…、やっぱり右手……あっやっぱり手じゃなくて、足……いや足はおかしいだろ…!あの…ヤバそうな時は先に…」

「アリアス先生」

「はっ…はい!!」

 ついに何か来るのかとビクッとして身構えたら、ルナソルはあっさり終わりましたと告げてきた。

「へ?おわっ…終わったの!?」

「ええ、初めからこうするべきでしたね。やっと詳しい事が分かりました。落ち着いて聞いてください。先生の体にはスペルマとしての核が残っています。これは過去に一度私が封印した時に残っていたもので、それは変化はありませんでした。しかし四本の特別な力の流れを感じました」

 ルナソルが何を言っているのか本格的に分からなくなって、俺は混乱して言葉が出てこなかった。
 そんな俺の様子を見てルナソルはあの問題が起こった日に、スペルマとして覚醒が始まり悩んでいた俺に頼まれて封印魔法を行った話をしてくれた。
 そして、本能的に相性の良い相手には封印が効かないという事も。

「な……えっ……それは、誰にでもできる事なのか?それに……今、俺の体がおかしいのは…その、つまり…特別な流れ?のせいなのか?」

「今のところ、これができるのは私だけですね。おかしいとは、今回の候補者達にだけ体が反応するという事ではありませんか?ありえない事ですが、本能的な相性の良い相手とは出会える確率はかなり低い、それなのに、先生はその道が四本も出来ていました。こんな事は、私にも驚きで……」

 俺は思わず、あーー!と声を出して頭をかきむしった。
 突然奇行にでた俺に、ルナソルは目を開いて大丈夫かという心配そうな目で見てきた。

 俺は思い出してしまった。
 そうだ、この世界に転生する時、俺をここへ送り込んだヤツらに、ご褒美特典として相性の良い相手と縁を作ってやろうと言われた。俺は女の子とハーレム作る気満々だったから、いいねぇ!じゃ一人とは言わず何人かお願い!なんて軽く口にしていた。
 相性が良いなら、適当にナンパするだけで仲良くなれそうだし、ラッキーなんて思っていたのだ。

「どうしました?何か心当たりでも?」

「えっと……なんと言えばいいのか、信じたくないというか……受け入れたくないというか……」

「ええ、私も信じたくも受け入れたくもありません」

 俺のアホみたいな答えに、なぜかルナソルも同調してきた。
 その意味を知りたくて、ルナソルの瞳を見上げた。いつも感情の見えない深い色をしているのに、そこには別の何かが潜んでいるような、複雑な色をしていた。
 ここに来てから、手を掴まれるくらいの事はあったが、熱を感じる前にぱっと離されていた。
 あえて触れることを避けていたようだったのに、ルナソルはそんな気配を打ち消すように、ベッドに乗ってきた。
 ルナソルの瞳には情欲の炎が宿っていた。そういう欲とは遠いところにいそうなヤツなのに、今のルナソルは何か解放されたような顔をしていて、この状況を楽しんでいるように思えた。

「……お前、誰だ?」

 なぜこんな思いに至ったのか分からないが、目の前にいる男がいつも顔を合わせていたルナソルとは別人のように思えて、俺の口からはそんな言葉が出てきた。

「………先生は単純そうに見えて意外とよく見てますよね。本当は図書館で貴方に手を握られた時に、私は目覚めていたのです。こんな風に自由に動くのはあの頃以来ですかね。ずっと奥深くに閉じ込められていたから……」

 ルナソルは伸ばした手で俺の首元に触れた。スッとくすぐるように撫でられると、首筋がじんわりと熱くなってきた。

「ここが…一番匂いが出るところなんです。スペルマを発情させるなら、ここを擦ってやるのが一番早い方法。ほら、匂いが濃くなりましたよ。もうお尻が疼いてきたんじゃないですか?」

「は……おま……、ルナソルじゃ…ないのか?」

「同じですよ。ただし、私は強い苦痛を感じた時など、感情のコントロールが乱れた時にしか表には出てきません」

 二重人格、確か前世でそんな話を聞いた事がある。一人の人間の中に二つの人格が存在するという、前世の知識と同じものかは分からないが、近いものがありそうだと思った。

「あの思い出の庭園で貴方に惑わされ、その日からずっと意識の狭間に閉じ込められていたのです。ずっと待っていたのです。こうやって再び、貴方に会えることを……」

「あっ…んっ…はぁっ」

 ルナソルはシャツの前を開いて、胸に手を這わせてきた。大きな手が動く度に甘い痺れが生まれてくる。
 胸の頂きをつねったりこねられたりして、ビリビリと刺激が体を駆け抜けて、どんどん声が漏れてしまう。
 考えたいことばかりなのに、俺の頭から思考力を奪っていった。

「本能が選ぶ相手は私だけだったのに…、まさか、他にも現れるとは計算違いでした。でも、まぁ…貴方が私のモノになるなら許してあげます」

 俺の頭には攻略本に出てきたバッドエンドの一覧ページが頭に浮かんでいた。
 ルナソルのバッドエンドは全て死だった。主人公が途中で他のキャラを攻略しようとしたり、ルナソルの誘いを断ると、突然豹変したルナソルに殺されるのだ。
 なんて危ないキャラだと思っていたが、まさか真面目君のルナソルがそんな事はしなそうだから、製作陣のネタ切れじゃねーのなんて適当に流していた。それに、バッドエンドはデュークが主人公の場合だからと関係ないと思い込んでいた。

 嘘ーーー!怖い!裏ルナソル怖すぎる!!

「アリアス、どうしますか?私のモノになりますか?」

「なります!」

 俺は即答した。なぜならゲームの中でその質問が出て、デュークが嫌だねなんて言った時には、デュークは魔法で首を絞められて……。

「ふふふっ単純で素直、ますます私の好みです」

 もっと高潔な人を好んでくれと思いながら、ルナソルに乳首を責められて、俺はもうすっかり腰を揺らしていた。
 はい、単純で素直なもので………。

「断られたらどうしようかと思っていました。正直、すごく興奮しているので、怒りで我を失ってアリアスを殺してしまうかもしれなかったです。受け入れてくれて良かった」

 ルナソルは頬を赤く染めながら、ふんわりと笑った。言っている事と見た目のギャップが凄すぎて、俺は一緒に合わせてヘラヘラ笑うことしかできなかった。

「ああ、アリアスの後ろはもうグズグズに慣れていますよ。……ここは覚えていてくれますかね、私のことを……」

 何を言っているのかと不思議に思う間もなく、俺はルナソルが下をくつろげて取り出したモノを見てため息をつきそうになった。
 やはり攻略対象者様、例外なく立派なモノをお持ちのようです。
 他のやつとの違いといえば、ルナソルはやけに長さがある、という事だろうか。

「まっ…待って…ルナソル、ちょっと…」

「アリアス、受け入れてくれるんでしょう。もう、十分待ちましたから。さぁ、私を欲してください。その可愛い唇で欲しいと言ってください」

 なりますと同意したので、やめろと言うわけにもいかず、俺は仕方なく心を決めた。
 どうやら、こんな俺でも命は惜しかったらしい。

「ルナソル…来てください」

「だめです。もっと」

「……いっ……入れてください」

「アリアス…、本当に私が欲しいのですか?」

 ルナソルの声の温度が下がった。本格的な命の危機を感じて、俺はルナソル首にしがみついた。

「焦らさないで…、早くそれを俺の中に……入れて……。お願いだ…、ルナソル……」

 ええいもうやるしかないと、ルナソルの耳を噛んでやった。もちろん甘噛みだが、ルナソルはびくり肩を揺らして大きく震えた。

 すぐに俺に覆い被さってきたルナソルは噛み付くようにキスをしてきた。どうやら、その気になったらしい。余裕そうに見えたのに、ずいぶんと切羽詰まった荒々しいキスだ。
 俺は徐々に激しくなるキスを受けながら、どうするべきかと悩んでいた。
 命の恐怖からルナソルを受け入れてしまった。
 考えて見れば、ルナソルは無差別に欲情する獣のようなアリアスのスペルマ特性を封印してくれた男だ。

 という事は、アリアスはそこで発情したのかしらないが、その場で助けてくれた幼いルナソルを襲ったことになる。
 恨まれてはいないようだが、どうもルナソルは表も裏も大事な部分が欠けているように思えた。
 きっとそれは、アリアスが傷つけてしまったことが大きな原因だろう。
 ルナソルのトラウマをどうにかさせることが、俺が生き延びるための方法かもしれないと思い付いたのだった。




「んっ…はぁ…、だめ…も…ああっっ!うっっ……」

 すでに出尽くしたのか、達したのにほとんど何も出す、俺のアソコはぽたぽたと雫をシーツの上に落として冷めることのない熱に震えていた。

「……また、イったのですか?アリアス、本当にスペルマらしい体になりましたね」

 ベッドに四つん這いになった俺を後ろから貫いている男は、相変わらず丁寧な言葉遣いでクスクスと笑っていた。
 屈辱的な言葉に恥ずかしさを覚えたが、後ろからぐっと深く突き入れられると、たまらない快感に俺は喘ぐことしかできない。

「あぁ…ルナソル…、もっと…深く入れ…て、お…くを……奥をついてよぉ……」

「ふふっ、そんなにココが好きですか?いやらしい人だ」

「ふっあ!そっ……そこぉ…いっ……いいよぉ……もっと…も…と」

 長さがあるルナソルは、最奥のもっと深いところまで届いてしまう。そんなところが気持ちいいなんて思わなかったが、ソコを突かれると涎を垂らしながら快感で気が狂いそうになる。

 後ろでに腕を取られてパンパンと音を鳴らしながら、ルナソルは腰を打ち付けてくる。たまらずに俺はルナソルの雄を締め付けて、またイってしまった。
 もう雫すら出ない。
 長い間、揺さぶられ続けたが、ルナソルもやっと限界が近づいたのか、俺を後ろから抱きしめながら、詰めた声を出して中で達した。どくどくと熱い放流を感じながら、俺は求めていたモノがナカをうめつくしていくのを感じていた。
 心も体も満たされていく喜び。スペルマとしての本能か、俺自身が求めていたのか、快感の余韻の中にその答えは見つからなかった。




「……先生、大丈夫ですか?水です。飲んでください」

「んっ……」

 もそもそと体を起こした。背中を支えられてやっと起きれたが、ダルすぎてすぐに崩れ落ちそうだ。
 重くて腰は痛いし、ずっと何か入っている感覚がする。
 口元にカップが寄せられたので、ごくごくと音を立てながら水を飲み干した。
 冷たい水が頭を冷やして、霧がかかっていた頭がやっと見えるようになってきた。

「何日だ?」

「4日目になります」

 ずいぶん長く感じたが、それくらいだったのかと俺はカップに残った水滴をぼんやり見つめた。
 ルナソルが学園にどう話しているか分からないが、仕事にも行かせてもらえずベッドの上でずっと軟禁状態。
 食事や清潔面には気を配ってくれるが、それ以外ルナソルが部屋にいる時はずっとここでヤリ続けている。

 ルナソルのトラウマをどう扱っていいのか分からなかったが、とにかく俺は逃げずに向き合うことしか出来なかった。

「……今日は、アイツじゃないんだな」

「正確に言えば、今もあの時も私は同じ人間です。ずっと否定していた自分の一部分と言った感じでしょうか。ただ、そうですね。違う人間になったような気はします……。でも受け入れたことで前よりは楽になりました」

 楽になったと言いつつ、苦しそうな顔をしたルナソルは俺のことを抱きしめてきた。

「先生、昨日から鍵が空いているのご存知ですよね。どうして……出ていかないんですか?」

「……だって、勝手に出ていったら、お前、悲しむだろう」

 あれはバカでも分かる完全なフラグだ。無断で逃げ出したりしたら、その場で即死亡だろう。やるわけないから!

「……先生」

「償うなんてカッコつけたこと言ったけどさ。俺、何も出来てないし……お前、時々辛そうなしているからさ…、なんかこのまま逃げ出したら、お前壊れちゃいそうな気がして……」

 俺のその言葉を聞いて、ルナソルはビクッと肩を揺らして体が硬くなり、怯えたような目で俺の顔を覗き込んできた。

「……私が、壊れる?」

 もしかして、そんな風に言われたくなかったのだろうか。
 ショックを受けたような表情は初めて見るものだった。

「私が壊したいのは……アリアス、貴方なのに」

「……なんで、俺を壊したいんだよ」

 話の流れが変な方向にいきそうだった。ちょっとだけ命の危機を感じたが、俺はなんとか落ち着いたフリをして聞き返してみた。

「だって……壊さないと……その笑顔を誰にも見せなくない。誰かに取られるくらいなら、いっそのこと全員殺して…真っ赤な血で貴方を飾ってあげたい…。私の…私だけのアリアス……」

 色々ヤバい男だと思ってはいたが、いよいよこれはマズイと体に悪寒が走った。
 ヤバい…これはヤンでる……、ん?こいつ…もしかして!ヤンデレキャラか!?今頃気がついた!!

 確かゲームでのデュークとルナソルのハッピーエンドは二人で闇堕ちして、悪の魔法を使い国を滅ぼす。え?メリバ?みたいなエンドだった気がする。
 マズい!マズすぎる!手を出してはいけない相手だった!
 こうなったら、全員攻略するハーレムエンドのルートを思い出すしかない。そのルートならルナソルは暴走しないはずだ。

 俺は恐怖で震えながら、ハーレムルートで主人公が取った行動を思い出した。
 デュークは確か……、過去に囚われるルナソルに、お前が必要なんだと言って手を差し伸べて、愛の魔法をかけて心を癒す……。

 ………愛の魔法って。

 なんだそりゃ!?なんでもアリかよ!!
 フザけんな!魔力なしの俺にはどうしようも出来ないじゃねーか!!

「アリアス……」

 いよいよヤバい目になったルナソルが俺の頬に触れて顔を近づけてきた。
 このままだと、俺が殺されるか、周り全員殺すエンドになってしまう。

 頭の中は色々な事がこんがらがって大渋滞。
 背中に汗がどっと噴き出てくるのを感じながら俺は震えながら口を開いた。



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