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後編
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「本当に大丈夫? 誰かにいじめられたりしていない?」
「大丈夫だって。平和だし、上手くやっているよ」
「そう……それならいいけど。困ったことがあったら言ってね。すぐに飛んでいくから」
モニター越しだが、心配していますというミラの視線を感じて、俺は安心させるように笑った。
夕食後、寮の自室でベッドに寝転びながら、久々にミラに連絡をした。
お互いの近況を話して、元気なことを伝えた。
「大丈夫、友達もできたし。クラスのみんなも驚くくらい良くしてくれるよ」
「そう……、うちのセイジュは優しくていい子だもの。みんなすぐに気づくと思ったわ。同室の方はやっと来たの? 挨拶したいんだけど」
「ああ、今風呂なんだ。また連絡するよ」
それじゃと言って通信を切った。
自分のクラス内の雰囲気はまったく問題ない。
リザベルトやラリック以外にも、友人はたくさんできた。
他のクラスのことが気がかりではあるが、そのうち飽きて構われなくなるだろうと考えた。
カタンと音がしてバスルームのドアが開いた。
タオルでゴシゴシ頭を拭きながら出てきたのはリザベルトだった。
「先に入ったぞ。セイジュも入れ」
「ああ、うん」
「明るい声の人だな。母親か?」
「そう、うち両親どっちも女性なんだ。明るいのはいいけど、お喋りだから二人揃うと耳を塞ぎたくなるくらい大騒ぎだよ」
「いいじゃないか。そんな明るい二人に育てられたから、セイジュも明るくなったんだな」
風呂に入ろうと立ち上がったところ、すれ違いざまにポンポンと頭を撫でられてしまった。
いつもは大して気にしないのに、今日はやけにドキッとしてしまった。
それは食堂での一件があったからだろうか。
転びそうになって動揺して、周りに嘲笑されて心細くなってしまった。
そんな時、力強く助け出してくれたリザベルトのことを、意識してしまう自分がいることに気がついた。
「先に寝ている」
そう言って疲れたのか、リザベルトは自分のベッドに潜り込んで布団をかぶってしまった。
俺が風呂から出てもリザベルトは変わらず布団をかぶって寝ていた。
電気を消してから、リザベルトを起こさないように静かにベッドに転がった。
目を閉じて眠ろうと思ったが色々考えてしまった。
いつも寝つきはいい方で、ベッドに転がるとものの数秒で眠ってしまう。
それなのに、今日はやけに目が冴えてしまった。
学校で起きたやっかいなことが色々と思い浮かんでくる。
それに、ラリックが言っていた、リザベルトが不眠症だという話も気になっていた。
「ん……セイジュ」
突然リザベルトに名前を呼ばれたので、ドキッとしてしまった。
起きていたのかと思ったら、寝返りを打って仰向けになったリザベルトは、目を閉じたままだった。
どうやら寝言だったらしい……。
「俺の夢を見てるのかよ……」
リザベルトは布団を足で蹴ったようで、布団が半分ベットから落ちていた。
俺は上半身を起こして、リザベルトの方に体を向けた。
「ん?」
リザベルトは再び俺の名前を呼んだ。
月明かりだけの部屋でよく目を凝らしてみると、仰向けになっているリザベルトの下半身が山のように盛り上がっていた。
思わず声を上げそうになるくらい、大きなテントが張っていて、俺は口を手で押さえて驚いてしまった。
さっきまで布団を直してやろうと思っていたのに、しばらく悩んだ後、俺はまた横になって布団に潜り込んだ。
見なかったことにしよう。
そう決定して、若気の至り、生理的な現象ということで頭の中で処理することにした。
それからしばらく、寝よう寝ようと思っていても、寝入り端にさっきのテントが頭の中で襲ってきて、息を吸いながら目が覚めてしまった。
どうしようかと思っていたら、ギシギシとベッドが軋む音がして、リザベルトが起きた気配がした。
ギギっと床を踏む音が聞こえて、背中を向けて寝ている俺のすぐ後ろに気配がした。
首の後ろくらいに息遣いを感じて、すぅぅーっと深呼吸レベルで息を吸い込む音がした。
まるで掃除機のように匂いを嗅がれる感覚がしたら、ゴソゴソと音がして何かを擦るような音と、はぁはぁという息遣いの音が聞こえたきた。
これはもう……明らかにリザベルトが自分を慰めているとしか思えない。
「くっ……セイジュ……」
しかも俺の匂いを嗅ぎながら、擦っている。
こんな大胆なこと、慣れた感じでやっているので、もしかしたら初めてではないなと感じ取った。
寝ている俺の匂いを嗅ぎながら自慰に耽るなんて信じられない。
普段の俺なら寒気がして、やめろと怒っていたはずだ。
それなのに今日はどうしてか、俺のアソコも疼いてきてしまった。
そういえば慰めたのはしばらく前で、ずっと弄っていなかった。
人の気持ち良さそうな声を聞いて、俺も興奮してしまったというのだろうか。
フェロモンなんて感じないはずなのに、リザベルトから雄の匂いを感じてしまい、ぶるっと震えてしまった。
リザベルトに気づかれないように、俺も自分のソコに手を這わした。
何をしているのか自分でも説明できない。
リザベルトは俺の匂いをクンクン嗅ぎながらマスをかいているし、俺は俺で声を我慢しながらアソコを布団に隠して弄っていた。
「はぁ……はぁ……うぅっ、くくっ」
背後で詰まるような声がして、わずかな振動を感じた。
ゴソゴソと何かを拭く音がして、これはおそらく終わったなと思った。
何を考えたのか、リザベルトは俺の頭を撫でた後、ようやく自分のベッドに戻っていった。
一人熱を持て余したまま、俺は固まったようになって動けなくなった。
何をしているのかと正気に戻ったのが一つだが、それよりもドクドクとうるさい心臓の音が、静かな部屋に響いてリザベルトに聞こえてしまいそうだった。
一度意識してしまうと、だめだだめだと思っても頭から離れない。
背後から伸びてきた大きな手に、ドキッとして心臓が跳ねてしまった。
「セイジュ? どうしたの?」
「あっ、あぁ、ラリックか……」
「ほら、肩のところに糸屑が付いてた。驚かせてごめん」
放課後、部屋になかなか戻れなくて、ひとりで廊下を歩いていたら、後ろからラリックが話しかけてきた。
「いや、助かったよ。ありがとう」
そう言いながら俺は周りを見渡して、他に誰かいないか確認してしまった。
そんな俺の様子を、ラリックは何か言いたげな顔で見てきた。
「あのさ……、リザベルトと喧嘩でもした? なんか最近避けているみたいだから」
「えっ……」
他人から見てもそう感じるのなら、リザベルトにはとっくに伝わっているだろう。
あの夜から俺はリザベルトの顔がまともに見れなくなった。
とにかく近くに寄られると心臓がドキッとして顔が熱くなってしまう。
それを悟られないように、そっと離れる、というのを繰り返していた。
自分自身の気持ちなのに、この落ち着かない状態が何だかよく分からない。
リザベルトを見ると緊張して逃げたくなる。
だけど本当に離れてしまうと胸が痛んで……
「喧嘩ってわけじゃないけど……」
「アイツ、ああいう性格だから誤解されやすいけど、根はいいやつなんだよ」
「ああいう性格?」
ラリックの言い方に少し疑問を覚えて、つい聞き返してしまった。ラリックは俺の横に付いて小声で話しかけてきた。
「……ほら、とにかく乱暴だろう。笑顔とは無縁で何も言わないし、睨みつけて威嚇するし……てっきりセイジュも恐くなったのかと……」
何を言っているのかと目を瞬かせてしまった。
ラリックの口から出てきたのは、とてもリザベルトとは思えない人の話だった。
「えっ……俺の知っているリザベルトはそんなヤツじゃ……。お喋りってわけじゃないけど、普通に喋るし、優しいし……笑顔は……あまりないけど……よく表情が変わって」
話しながらリザベルトのことを思い出して胸が苦しくなってしまった。
避けてばかりいるけど、自分はちゃんとリザベルトに向き合ってきたのかと考えさせられてしまった。
「リザベルトは誰もが知ってる家に生まれたからさ、子供の頃から注目されて、色々言ってくるヤツが多くて。そういうのが嫌で自分の殻に閉じ篭もるようになっちゃったんだよ。でも……そうか、セイジュの前ではそんな態度なんだ……。てっきり喧嘩だと思ったから、余計なことを言っちゃった。よかった、二人の友人として応援するよ」
「え? 応援って……」
ラリックはニヤニヤと笑うばかりで、応援の意味を教えてくれなかった。しかも手を握られて、勇気付けられるように頑張れと言われてしまった。
「何があったか分からないけど、避けていても解決しないよ。嫌なところはちゃんと言って話し合わないと」
そう言いながら、ラリックは持っていた紙袋の中から、ガサゴソと袋を取り出して渡してきた。
「今週から体育が始まるだろう。今みんなに体操着を配って歩いているんだ。セイジュは一番小さいサイズでいいよな。はい、これがリザベルトの分な」
クラス長としての仕事なのか、ラリックは体操着を渡してきた。リザベルトの分がかなり大きいので、俺は両手で抱えながら受け取った。
「早く仲直りしろよ。お前達が沈んでると、クラス全体が暗くなるからさ。頼むよ」
そう言ったラリックは笑顔で手を振りながら次の生徒のところへ向かったようだった。
残された俺は、二人分の体操着を抱えながら小さくため息をついた。
喧嘩したわけではない。
一方的に俺が避けているだけだ。
リザベルトはそんな俺の気配を察知して、話しかけたいという顔で見てくるだけ。
「いいきっかけだな。ちゃんと話そう……」
俺はもらった体操着を渡しながら、リザベルトに最近避けていたことを謝ろうと思った。
体操着を持って、寮の部屋へ向かった。
夕食前の時間、リザベルトは部屋にいるはずだ。
俺は緊張しながら、部屋のドアを開けた。
思った通り、部屋の中にはリザベルトがいて、机に向かって本を読んでいた。
「た……ただいま」
「おかえり」
後ろ姿だが、リザベルトが本を読んでいる手がピクッと揺れたのが分かった。
何か言わないとと思い、俺はリザベルトの方へ近づいて行った。
「これ……ラリックから」
「ああ、服か。悪いな、重かっただろう」
ラリックからもらった体操着を手渡すと、リザベルトは緊張した顔で椅子から立ち上がって両手で受け取った。
「勉強……邪魔しちゃったよね。俺はこれで……」
「セイジュ! 聞いてくれ」
何とも言えない空気に、また改めようと踵を返そうとしたら、ガタンと音がして、見るとリザベルトが両手を床につけて土下座していた。
「すまない! あの時、起きていたんだろう? 俺は寝ているセイジュに酷いことを……それで、ずっと避けているんだよな? 悪い……あんな気持ち悪いことをして、俺は……最低だ」
俺の態度が変わったから、あの夜のことを気づいていたのだと分かったのだろう。リザベルトは床に頭を付けて謝ってきた。
「いっ、ちょっ、頭を上げてよ。確かに……起きていたけど……」
「ああああっやっぱりーー! なんてことだ!」
リザベルトは苦しそうな顔になって頭を抱えてしまった。俺は一緒にしゃがんでリザベルトの体を起こした。
「何も言わずに避けていたのは俺の方だよ……確かに驚いたけど、俺のこと好きって言ってくれてたもんな。それを、友人ならいいと言いつつ、俺は色々と頼っちゃったし」
「いいんだ。どんどん利用してくれて構わない。ただ……気持ちはどうしても諦められなくて、でも、もうあんなこと絶対にしないから……」
「う……うん」
「本当に悪かった」
「俺の方こそ……助けてもらってばっかりだから……いつも本当にごめん」
何度も頭を下げてくるリザベルトに、大丈夫だからと言ってリザベルトの背中を撫でた。
「それに……気持ち悪いってわけじゃ……びっくりはしたけど……」
自分を責めるリザベルトを見ていたら、何だか胸がチクリと痛んでしまった。
そんな俺の言葉に、何か気がついたようにリザベルトが顔を上げた。
「ほ、本当に?」
「うん……」
「じゃ……じゃあ、また、してもいいか?」
「えっ!? そっ、それは……」
「セイジュは何もしなくていい。匂いだけ嗅がせてもらえれば……」
リザベルトが目をキラキラさせながら俺の腕を掴んできた。
バカなことを言うなと言って振り払おうとしたが、リザベルトが犬のように尻尾を振って見えて、可愛く思えてしまった。
「う……だって……」
「セイジュ……」
仲良くなる、というのがこういうことで合っているのか、ゲーム友達くらいしかいなかった俺にはよく分からない。
だが、いつもお世話になっているリザベルトの頼みを断るのは可哀想だ。
ドクドクとうるさく鳴る心臓の音を聞きながら、俺はそう思うことにした。
「分かった」
「セイジューーー!」
感激した顔になったリザベルトが、飛びついて来ようとしていたので、ヒラリと身をかわして立ち上がった。
「調子に乗るなっ、ほら、体操着試着しろよ。サイズ違いはメッセージを入れてくれって」
一気に恥ずかしくなった俺は、ラリックからもらった体操着を抱えてリザベルトから距離をとった。
俺が逃げたので口を尖らせたリザベルトだったが、仲直りできたのが嬉しかったのか、分かったと言って自分のベッドの方に戻った。
俺は何となくその場で着替えることが恥ずかしくて、机の後ろに回り込んで着替え始めた。
リザベルトは気にせずその場で脱いでいた。
「ああ、少しキツイな。腕周りとズボンの裾も短い」
「おいおい、どれだけ体格がいいんだよ。それ在庫で一番大きいやつらしいよ」
「そうか」
俺はリザベルトに説明するのに夢中で、自分の着替えとか全然考えずに半袖の服を頭からかぶって腕を通してから、ズボンを履いた。
「ん? ズボンの裾が短いって、これはそういうもんだろう」
「いや、どう考えたって足首が出ている」
「足首って、そんなの全部出るじゃないか」
言っていることが噛み合わなくて、俺は仕方なく確認するために机の後ろから飛び出した。
するとそこには、Tシャツもズボンもムキムキの体でパンパンになっているリザベルトの姿があった。
確かに言われてみたら、ズボンの裾が足首より上になっていて、不恰好だなと思ってしまった。
しかしここで俺は明らかにおかしいことに気がついた。
今まで話に夢中で全く違和感を持っていなかったが、自分の格好がおかしい気がした。
そして、俺の姿を見たリザベルトの顔がみるみる赤くなっていくのが分かった。
「せっ、セイジュ、それは……」
「うわぁっ、何で俺だけ短パン!? これ夏物? それにしても……短い……」
ここでやっと自分が履いているのが短いズボンだということに気がついた。
しかもフトモモより上で尻に食い込むくらい短いし、生地も薄いのでアソコの形が丸見えだった。
「……それは、女子用だ」
「女子用!? 女子用ってこんなエッチなの!? っていうか、ラリック、間違えて渡したな!!」
「女子はその下に黒いタイツを履く……」
「ああ、そうなんだ。おかしいと思った。わわっ、スースーする。脱がないと」
「待て」
間違えたとはいえ、気にせず履いてしまったので俺は真っ赤になって早く着替えようとした。
しかし、部屋の反対側にいたのに、リザベルトは瞬間移動でもしてきたかのような秒速で俺の腕を掴んできた。
「何だよ」
「やばい……その格好は反則だ。こんなの見せられたら……」
「へっ、おまっ……はっ、鼻血!!」
スローモーションのようにリザベルトの鼻から血が垂れていくのが見えて、交換する体操着にでも付いたら大変だと、俺は慌てて脱ぎ捨てていた肌着を床から拾ってリザベルトの顔に当てた。
「ぬおおおっ、これは!? 汗……汗の……セイジュ、俺を殺す気かっ」
「え?」
「俺はお前の匂いがたまらないのに、凝縮されたやつを鼻に付けるなんて」
どうやら鼻血を拭くために渡した肌着で余計に鼻血が出てしまったらしい。
それなら洗ったタオルと交代させようとしたが、リザベルトは俺の肌着を抱えたまま離さなかった。
「セイジュ……少しでいいんだ。直接を匂いを嗅がせてくれ……下の方の……」
「うええっ!!」
何を言い出すんだと後退りしたら、背後にベッドがあってドンとお尻をつい座ってしまった。
「嗅がせてくれるって言ったじゃないかっっ」
「バカっ、頸の辺りかと思ったんだよ! いくら何でもこんなところだめだ」
「セイジュー」
またお決まりのうるうるした目で見られて、心臓がキュッとしてしまった。
嗅いでもいいと言った手前、頑なに断るのも悪いかと思ってしまった。
「触れないから……近くに寄るだけだ」
「あーもーぅ、分かったよ。俺の何がいいんだよ。サッパリ分からない」
いったい何をされるのか、不安になっていた俺の前に跪いたリザベルトは、本当にその場でクンクンと鼻を鳴らして匂いを嗅いできた。
俺はただ怯えていたが、リザベルトはその場から動かずに匂いだけ嗅いで満足したらしい。
スッと立ち上がったら大きめのバスタオルを持ってきて、俺の下半身にバサッと落とした。
「これ以上はやめておく」
「え……」
「そりゃもっと嗅ぎたいけど、セイジュに嫌われたくない。セイジュの匂いも好きだが、俺はセイジュが好きなんだ。明るくて可愛くて……セイジュは俺の太陽だ」
「………」
リザベルトはボソボソと喋ってはいたが、とんでもない熱烈な言葉を重ねられて、どうしたらいいのか分からなくなった。
こんなに人から好かれたことなどない。
匂いがいいって何だよって思っていたけれど、俺自身のこともちゃんと好きなんだと思ったら、腹の奥からじんわりと温かいものが上がってきた。
「無駄に生まれた家がデカいから、昔からちゃんと俺を見てくれるやつなんていなかった。初めて会った時、セイジュは俺を真っ直ぐに見てくれた。おかしいことを言っても、突き放さずに一緒に考えてくれた。友達になろうと努力したけど、好きな気持ちは消せなくて……はぁ、俺は何をやっているんだ」
リザベルトは少し離れたところで床に座り込んで頭を抱えていた。
リザベルトの好意は嬉しい。
最初は戸惑いばかりだったけど、だんだん慣れというか、リザベルトの温かさがしっくり体に染み込んで心地良くなった。
この気持ちをなんと言ったらいいのだろう……
「ちょっと、時間がほしい。リザベルトとのこと、ちゃんと考えたい」
飛び込みたい気持ちはあるが、ほんの少し残った迷いが俺の足を掴んだ。
俺の言葉にリザベルトは分かったと言って顔を上げた。
「ちょっといいかしら? 話があるんだけど」
俺の生活にはない、やけに甘ったるい声が聞こえてきて、急いでいた足を止めた。
振り返るとみんなのアイドル、天使のベリーちゃんが立っていた。
初めて見たときはその可愛さに心が躍ってしまったが、今はなんだか寒気がして変な空気を感じでしまった。
「移動教室かしら? いつも一緒にいるお友達は?」
「え……ええと、俺は日直だったから片付けがあって……」
そう、と興味なさそうにベリーちゃんは呟いた。
心なしか潤んでいる瞳がギラっと光ったような気がしたのは気のせいだろう。
リザベルトに関係を考えたいと告げてから一週間、表面上はただのお友達として今まで通り過ごしていた。
しかし、考えれば考えるほど、俺では釣り合わないのではないかと悩んでしまった。
リザベルトの輝かしい人生において汚点になってしまわないか心配なのだ。
それに俺はベータなので、このまま将来も一緒にいたいと言われても、俺では子孫を残すことができない。
いきなりそこまで考える必要などないのだろうか。
それにこれが恋愛感情なのか、ただ押されて悩んでいるだけなのか判断できなかった。
「ちょっと、アナタ? 聞いているの?」
ぼけっとしながら考え込んでいたら、少し前を歩いているベリーちゃんがギロっと睨んできた。
どうやら話しかけたのにうわの空だったらしい。
俺は慌てて姿勢を正した。
話があると言われて、廊下の奥に連れて行かれ、人通りのない場所まで来たら、壁際に立たされることになった。
「……アナタのせいで……、私は補欠合格で特Aクラスに入るはずだったのに……。後から来て奪うなんて許さない……。しかも、チヤホヤされていい気になって……私の憧れの月の君まで奪うなんて……」
「え? 月の君?」
「リザベルト様のことよ! 私は前から憧れていたの! 最強のアルファに嫁いで、崇拝されて一生贅沢して暮らせると思っていたのに!!」
敵意がたっぷりこもった目でギロリと睨まれてしまった。
嫌われていそうだとは思っていたが、思っていた以上だったようだ。
「クラスについては申し訳なく思うけど……」
「さっさとリザベルト様から離れなさい。アナタみたいな凡人は友人としても相応しくないわ。何ができるの? 何も力になれないくせに」
ドクンっと心臓が揺れて、汗がたらりと流れ落ちた。
ベリーちゃんの言う通り、俺には何の力もなく、リザベルトと一緒にいたら彼の足を引っ張るような存在になってしまうかもしれない。
離れることを考えたら心臓がぎゅっと痛んで、手で胸を押さえた。
「そ、そうだとしても、君は関係ない。俺とリザベルトの問題だ」
「あーそー! 開き直るのね。私を崇拝する者はたくさんいるのよ。一声かけたら、アナタなんて……」
「何をするつもりだ?」
腹の奥に響く声が聞こえてきてた。
俺は壁に追い詰められていたが、掴みかかりそうな勢いで迫ってきていたベリーちゃんの足が止まった。
「あっ……」
「何をするつもりかと聞いている」
仁王立ちで鋭い目をしているのはリザベルトだった。
ベリーちゃんが、ガタガタと震えているので、おそらく威嚇のフェロモンを放っているのだと思われる。
匂いは感じないが、明らかに怒っている雰囲気は感じた。
「私、リザベルト様とお近づきになりたいのです。貴方ほど優秀な血統の方は、私のようなオメガと結婚して、優秀なアルファの子を得るべきですわ」
「優秀な血統、偉大な血筋、そういうのはもううんざりなんだ。必要か必要じゃないかは俺が決める」
「こんな愚鈍な男は貴方には相応しく……」
「なんだと? 俺のセイジュを侮辱したら、許さない」
まるで地震でも起きているかのように、壁や床が振動し始めて、ベリーちゃんは驚いた様子で床に尻餅をついた。声にならない声を上げて、転がりながら逃げて行った。
「セイジュ、大丈夫か?」
放心していたら、リザベルトに声をかけられて俺はハッと我に返った。
「リザベルト……」
「怪我はないか? 殴られたりは?」
「えっ、ベリーちゃんに? いや、俺がいくら非力でも女の子にそこまで……」
「よかった……心配したんだ」
心配するレベルが過保護すぎると感じたが、リザベルトに頬を撫でられたら、胸がくすぐったくて温かくなった。
「いつも心配してくれたのに、ごめん……。俺、他のクラスの子に嫌われてるみたいでさ。それで、直接色々言われて……」
「……悪く言っているヤツらがいるって話は聞いていた。無理やり聞きただすわけにもいかなくて、周囲に怪しい動きがあったら教えてくれと頼んでいたんだ。それでセイジュが連れて行かれたと聞いて、急いできたんだ」
「そうだったんだね。信用できなかったわけじゃないんだ。俺だけ、我慢すれば丸く収まるかと思って」
リザベルトは、知ってたと言って俺の頭をガシガシと撫でてきた。
そこで休み時間が終わってベルの音が鳴ったので、二人で教室へ戻ることになった。
前を歩くリザベルトの背中が、やけに広くて逞しく見えてしまった。
この思いは友達のそれよりももっと強いものだと感じていた。
今度こそ、ちゃんと伝えようと心に決めた。
その夜、夕食を食べて部屋に戻った後、俺はリザベルトに声をかけて、ベッドに座ってもらった。
俺は机の椅子に腰掛けて、深く鼻から息を吸ってから口を開いた。
「今日は、本当、駆けつけてきてくれてありがとう」
「これからも文句を言ってくるヤツがいるかもしれない。そしたらすぐに助けを呼べよ。バース性にこだわるヤツはいるし、近づかせないようにするのが一番なんだが……」
何か言いづらいところなのか、リザベルトは口をモゴモゴしながら顔を下に向けてしまった。
俺は今がチャンスだと手に力を込めた。
「あのさ、つっ、付き合ってみようかなって……」
「へ? 誰と? いつの間に!?」
変な言い方になってしまい、誤解されてしまったようだ。
リザベルトは顔を上げて、真剣な顔で問いただしてきた。
「い、いや、リザベルトだよ」
「俺!?」
「他に誰がいるんだよ。……俺、誰かと付き合うのは初めてで、戸惑いはあるけど……リザベルトなら、一緒にいたいなって思ったんだ」
流されたわけではなく、俺なりに色々考えて出した答えだった。迷ったらアレコレ考えるより、やってみようという両親から受け継いだ精神が俺の背中を押した。
「セイジュ!!」
潤んだ目になったリザベルトが飛びついてきたので、巨体にのし掛かられて俺は椅子から落ちそうになった。
「まっ、まてって。重い! 重いってば」
「悪い、でも、でも嬉しくて……この匂いを毎日好きなだけ堪能できるなんて」
「お前……匂いだけかよ」
「そりゃ……、匂い惚れしたからな。セイジュのことが好きだから、匂いもずっと嗅いでいたい」
何だか上手く丸め込まれたような気がしないでもないが、俺の匂いを嗅ぎながら、幸せそうに目尻を下げて笑っているリザベルトを見たら、まぁ、いいかと思ってしまった。
「わっ……リザベルト、そ、それ……」
抱きしめられていたら、硬いものが当たる感覚がして、視線を下に向けるとリザベルトの股間が衣服を押し上げて大きく盛り上がっていた。
「……悪い。嬉しくて興奮が治らない」
顔を赤くしたリザベルトは、トイレに行ってくると言って俺から離れようとした。
無性に寂しくなって、俺は手を伸ばしてリザベルトの腕を掴んだ。
「え?」
「さ……触りたい、んだけど……だめ?」
この先に何があるのか。
それが知りたくて、俺はリザベルトの青い瞳を見つめた。
リザベルトと付き合うためには、性的な面で自分が使い物にならなければ、継続していくのは困難だ。
だからそういう意味で慣れておくことが必要だろうと俺はリザベルトに触れたいと言った。
リザベルトは俺の言葉に一気に興奮したのか、目がギラギラと強い光を帯びて、その勢いで俺を抱えてベッドまで運んだ。
リザベルトは下着一枚になると、すでにそこは収まりきらない大きさで、先っぽが出ていた。
腹につきそうなくらいにそり返っていて、ビクビクと揺れていた。
「……手を貸してくれ。あと、少しだけ匂いも嗅いでいいか?」
こういった行為の知識はほとんどないので、俺は言われるままに手を伸ばした。
下着をずらして、ぶるんと飛び出したモノに手を這わせると、リザベルトが息を吸い込む音が聞こえてきた。
不快感など微塵もない。
硬さも熱も、全て愛おしく感じてしまい、俺はその勢いに乗って上下に擦り始めた。
「ん………っっ……はぁ………」
力加減を気にしながら、気持ち良さそうなところを擦っていくと、リザベルトの息遣いが部屋に満ちていった。
リザベルトは俺の首筋をクンクンと嗅ぎながら、その度に恍惚の表情になって、先端が膨れて先走りが飛び出した。
そんな乱れたリザベルトの姿を見ていたら、俺も興奮してきてしまい、モゾモゾと下半身を動かしてしまった。
「セイジュ……まさか……」
「ん……俺も、一緒に……いい?」
鼻息で空を飛びそうなくらい興奮しているリザベルトは、俺の服をあっという間に脱がせてしまった。
「くっ……ぅぅ! なんて可愛さだ……」
リザベルトのと比べると、俺のは子供みたいに見えるのかもしれない。
お前のが化物なんだと言いたくなった。
リザベルトは涎を垂らしながら今にもかぶりつきそうな顔をしていた。
「心配するな。いきなりはしない。潤滑玉もないしな」
潤滑玉とは、オメガが発情期以外にも使用できる保護薬みたいなものらしい。
ベータの俺が使えるのか分からないが、とりあえず今は考えないことにした。
「こうやって重ねれば……お互い気持ちいいだろ?」
「んっ……」
ベッドの上で向き合う格好で、お互いのモノを重ねて擦り合わせた。
俺の手の上からリザベルトの手が重なり、気持ちよくて顔を上げたら、リザベルトの唇が重なってきた。
「んっ、ふっ……んんっ……はっぁ……ぁぁ……」
リザベルトはアソコもデカければ舌も長くて、口内の奥まで舐め尽くされて、口を閉じれなくなった。
初めてのキスがこんなに激しくて苦しいものだなんて、もう少し手加減してくれと頭の中で叫んだ。
「っっ、はぁ……リザベルト……そこっ……」
「ここか? 頭合わせてぐりぐりやるとヤバいな。セイジュ、気持ちいいか?」
「う……ん、はぁ……気持ちい……も、でちゃ……」
俺も出そうだと言ったリザベルトは、重ね合わせたまま激しく擦り始めた。
亀頭が触れ合うのが痺れるくらい気持ちいい、俺は熱い息を吐きながら、リザベルトの背中に掴まってびくびくと腰を揺らした。
「ううっ、……あ、あ…ぁぁ……」
強烈な快感が突き抜けて、気がつくとお互いの腹から溢れるくらい白濁が飛び散っていた。
ぼんやりとした頭で。リザベルトの先っぽからぴゅっと飛び出たものが、俺の頬まで飛んできたのが分かった。
「二人分だから大量だな」
「ん……ふわふわ……する」
力が抜けてぐたんとリザベルトにもたれかかると、頭を撫でられた後、頬を指で拭われてそこにキスをされた。
「体洗ってやる。風呂に行くぞ」
その後、抱っこで風呂に連れて行かれて、うとうとしている中、隅々まで綺麗に洗ってもらった。
リザベルトとちょっとエッチなことをしてしまった次の日。
校舎に入ると、ラリックが走ってきておはようと言って俺の肩を叩いた。
「おめでとう、付き合うことになったんだね」
振り返った俺を見て、ラリックは少し目を開いて驚いた顔をした後、手を叩いてきた。
昨日の今日で、なぜ知っているのかと不思議に思っていたら、ラリックはクスクスと笑ってきた。
「だってさ、セイジュの体から、リザベルトのフェロモン臭がすごいよ。いわゆるマーキングってやつ。一番強烈なのは体液を直接浴びることだから、まぁ、付き合ったんだよね。あ、シャワーくらいじゃ取れないよ」
「えっえっ、そっ、そんなに!? って、あの……ええと……」
「リザベルトのこと、セイジュも嫌そうではなかったから、時間の問題だとは思っていたけど。まぁ、これでその辺のオメガやアルファは近寄ってこないよ」
辺りを見回すといつも敵意のある目で見てくる他のクラスの生徒達が、怯えた目をしていて、目が合うとヒィィと声を上げて逃げて行った。
まるでお化けにでもなった気分だった。
「仲良くするのも、ほどほどにな」
いつだったか同じ台詞を言われて軽く聞き流していたが、まさかこの展開が予想されていたかのように思えて驚いてしまった。
顔が熱くなってしまい、どう返そうかぐるぐる考えていたら、後ろから腕が回ってきてガバッと抱きしめられた。
こんなことをするのは、リザベルトしかいない。
「ラリック、変な気は起こすなよ」
「もう嫉妬してんの? 匂いが濃過ぎてもはやセイジュがリザベルトにしか見えない。無理無理、変な気が起こるわけない」
両手を上げて勘弁してくれと言い残したラリックは、ニヤニヤ笑いながら先に走って行ってしまった。
「俺の匂いを纏っていれば、誰も文句は言ってこないだろう。他のクラスのヤツらも、教師も。そう難しく考えるな。番犬に守られているくらいに思っておけ」
耳元に息を吹きかけられて、変な声を上げそうになった。いちおう付き合い出したわけだが、朝からこんなにイチャイチャするのが許されるのか、慌てて周りを見たが、みんな一切こちらを見ないようにして足早に通り過ぎていた。
ある意味これで、俺は平穏な学生生活を送れるようになった。
「セイジュ、俺は好きなものはかまいたくて甘やかしかくてたまらないんだ。ずっと我慢していたんだから、これから覚悟してくれよ」
今までだって十分色々やってもらって甘やかされていた気がするのだが、これ以上もっと先があるのだろうかと首を傾げてしまった。
「お……お手柔らかに、お願いします……わっっ!」
ニヤッとイタズラっぽく笑ったリザベルトに、そのまま腰を持ち上げられて、肩に担がれてしまった。
「ちょっ、恥ずかし……やめろって!」
「いいだろう。セイジュと付き合えた日の翌朝だ。何もかも嬉しくて、自慢したくてたまらない」
本音を言うとまだ気持ちが追いついていない部分もあるが、この強引で無茶苦茶な愛情が俺にはぴったりハマっているような気がする。
この学校に来て、最高の相手に出会うことができた。
フェロモンを感じなくとも、リザベルトがいつでも守ってくれているみたいで嬉しかった。
教室まで運ばれた後も、しっかり膝の上に乗せられて、重度の甘やかしに、それはそれで悩まされるのであった。
□終□
「大丈夫だって。平和だし、上手くやっているよ」
「そう……それならいいけど。困ったことがあったら言ってね。すぐに飛んでいくから」
モニター越しだが、心配していますというミラの視線を感じて、俺は安心させるように笑った。
夕食後、寮の自室でベッドに寝転びながら、久々にミラに連絡をした。
お互いの近況を話して、元気なことを伝えた。
「大丈夫、友達もできたし。クラスのみんなも驚くくらい良くしてくれるよ」
「そう……、うちのセイジュは優しくていい子だもの。みんなすぐに気づくと思ったわ。同室の方はやっと来たの? 挨拶したいんだけど」
「ああ、今風呂なんだ。また連絡するよ」
それじゃと言って通信を切った。
自分のクラス内の雰囲気はまったく問題ない。
リザベルトやラリック以外にも、友人はたくさんできた。
他のクラスのことが気がかりではあるが、そのうち飽きて構われなくなるだろうと考えた。
カタンと音がしてバスルームのドアが開いた。
タオルでゴシゴシ頭を拭きながら出てきたのはリザベルトだった。
「先に入ったぞ。セイジュも入れ」
「ああ、うん」
「明るい声の人だな。母親か?」
「そう、うち両親どっちも女性なんだ。明るいのはいいけど、お喋りだから二人揃うと耳を塞ぎたくなるくらい大騒ぎだよ」
「いいじゃないか。そんな明るい二人に育てられたから、セイジュも明るくなったんだな」
風呂に入ろうと立ち上がったところ、すれ違いざまにポンポンと頭を撫でられてしまった。
いつもは大して気にしないのに、今日はやけにドキッとしてしまった。
それは食堂での一件があったからだろうか。
転びそうになって動揺して、周りに嘲笑されて心細くなってしまった。
そんな時、力強く助け出してくれたリザベルトのことを、意識してしまう自分がいることに気がついた。
「先に寝ている」
そう言って疲れたのか、リザベルトは自分のベッドに潜り込んで布団をかぶってしまった。
俺が風呂から出てもリザベルトは変わらず布団をかぶって寝ていた。
電気を消してから、リザベルトを起こさないように静かにベッドに転がった。
目を閉じて眠ろうと思ったが色々考えてしまった。
いつも寝つきはいい方で、ベッドに転がるとものの数秒で眠ってしまう。
それなのに、今日はやけに目が冴えてしまった。
学校で起きたやっかいなことが色々と思い浮かんでくる。
それに、ラリックが言っていた、リザベルトが不眠症だという話も気になっていた。
「ん……セイジュ」
突然リザベルトに名前を呼ばれたので、ドキッとしてしまった。
起きていたのかと思ったら、寝返りを打って仰向けになったリザベルトは、目を閉じたままだった。
どうやら寝言だったらしい……。
「俺の夢を見てるのかよ……」
リザベルトは布団を足で蹴ったようで、布団が半分ベットから落ちていた。
俺は上半身を起こして、リザベルトの方に体を向けた。
「ん?」
リザベルトは再び俺の名前を呼んだ。
月明かりだけの部屋でよく目を凝らしてみると、仰向けになっているリザベルトの下半身が山のように盛り上がっていた。
思わず声を上げそうになるくらい、大きなテントが張っていて、俺は口を手で押さえて驚いてしまった。
さっきまで布団を直してやろうと思っていたのに、しばらく悩んだ後、俺はまた横になって布団に潜り込んだ。
見なかったことにしよう。
そう決定して、若気の至り、生理的な現象ということで頭の中で処理することにした。
それからしばらく、寝よう寝ようと思っていても、寝入り端にさっきのテントが頭の中で襲ってきて、息を吸いながら目が覚めてしまった。
どうしようかと思っていたら、ギシギシとベッドが軋む音がして、リザベルトが起きた気配がした。
ギギっと床を踏む音が聞こえて、背中を向けて寝ている俺のすぐ後ろに気配がした。
首の後ろくらいに息遣いを感じて、すぅぅーっと深呼吸レベルで息を吸い込む音がした。
まるで掃除機のように匂いを嗅がれる感覚がしたら、ゴソゴソと音がして何かを擦るような音と、はぁはぁという息遣いの音が聞こえたきた。
これはもう……明らかにリザベルトが自分を慰めているとしか思えない。
「くっ……セイジュ……」
しかも俺の匂いを嗅ぎながら、擦っている。
こんな大胆なこと、慣れた感じでやっているので、もしかしたら初めてではないなと感じ取った。
寝ている俺の匂いを嗅ぎながら自慰に耽るなんて信じられない。
普段の俺なら寒気がして、やめろと怒っていたはずだ。
それなのに今日はどうしてか、俺のアソコも疼いてきてしまった。
そういえば慰めたのはしばらく前で、ずっと弄っていなかった。
人の気持ち良さそうな声を聞いて、俺も興奮してしまったというのだろうか。
フェロモンなんて感じないはずなのに、リザベルトから雄の匂いを感じてしまい、ぶるっと震えてしまった。
リザベルトに気づかれないように、俺も自分のソコに手を這わした。
何をしているのか自分でも説明できない。
リザベルトは俺の匂いをクンクン嗅ぎながらマスをかいているし、俺は俺で声を我慢しながらアソコを布団に隠して弄っていた。
「はぁ……はぁ……うぅっ、くくっ」
背後で詰まるような声がして、わずかな振動を感じた。
ゴソゴソと何かを拭く音がして、これはおそらく終わったなと思った。
何を考えたのか、リザベルトは俺の頭を撫でた後、ようやく自分のベッドに戻っていった。
一人熱を持て余したまま、俺は固まったようになって動けなくなった。
何をしているのかと正気に戻ったのが一つだが、それよりもドクドクとうるさい心臓の音が、静かな部屋に響いてリザベルトに聞こえてしまいそうだった。
一度意識してしまうと、だめだだめだと思っても頭から離れない。
背後から伸びてきた大きな手に、ドキッとして心臓が跳ねてしまった。
「セイジュ? どうしたの?」
「あっ、あぁ、ラリックか……」
「ほら、肩のところに糸屑が付いてた。驚かせてごめん」
放課後、部屋になかなか戻れなくて、ひとりで廊下を歩いていたら、後ろからラリックが話しかけてきた。
「いや、助かったよ。ありがとう」
そう言いながら俺は周りを見渡して、他に誰かいないか確認してしまった。
そんな俺の様子を、ラリックは何か言いたげな顔で見てきた。
「あのさ……、リザベルトと喧嘩でもした? なんか最近避けているみたいだから」
「えっ……」
他人から見てもそう感じるのなら、リザベルトにはとっくに伝わっているだろう。
あの夜から俺はリザベルトの顔がまともに見れなくなった。
とにかく近くに寄られると心臓がドキッとして顔が熱くなってしまう。
それを悟られないように、そっと離れる、というのを繰り返していた。
自分自身の気持ちなのに、この落ち着かない状態が何だかよく分からない。
リザベルトを見ると緊張して逃げたくなる。
だけど本当に離れてしまうと胸が痛んで……
「喧嘩ってわけじゃないけど……」
「アイツ、ああいう性格だから誤解されやすいけど、根はいいやつなんだよ」
「ああいう性格?」
ラリックの言い方に少し疑問を覚えて、つい聞き返してしまった。ラリックは俺の横に付いて小声で話しかけてきた。
「……ほら、とにかく乱暴だろう。笑顔とは無縁で何も言わないし、睨みつけて威嚇するし……てっきりセイジュも恐くなったのかと……」
何を言っているのかと目を瞬かせてしまった。
ラリックの口から出てきたのは、とてもリザベルトとは思えない人の話だった。
「えっ……俺の知っているリザベルトはそんなヤツじゃ……。お喋りってわけじゃないけど、普通に喋るし、優しいし……笑顔は……あまりないけど……よく表情が変わって」
話しながらリザベルトのことを思い出して胸が苦しくなってしまった。
避けてばかりいるけど、自分はちゃんとリザベルトに向き合ってきたのかと考えさせられてしまった。
「リザベルトは誰もが知ってる家に生まれたからさ、子供の頃から注目されて、色々言ってくるヤツが多くて。そういうのが嫌で自分の殻に閉じ篭もるようになっちゃったんだよ。でも……そうか、セイジュの前ではそんな態度なんだ……。てっきり喧嘩だと思ったから、余計なことを言っちゃった。よかった、二人の友人として応援するよ」
「え? 応援って……」
ラリックはニヤニヤと笑うばかりで、応援の意味を教えてくれなかった。しかも手を握られて、勇気付けられるように頑張れと言われてしまった。
「何があったか分からないけど、避けていても解決しないよ。嫌なところはちゃんと言って話し合わないと」
そう言いながら、ラリックは持っていた紙袋の中から、ガサゴソと袋を取り出して渡してきた。
「今週から体育が始まるだろう。今みんなに体操着を配って歩いているんだ。セイジュは一番小さいサイズでいいよな。はい、これがリザベルトの分な」
クラス長としての仕事なのか、ラリックは体操着を渡してきた。リザベルトの分がかなり大きいので、俺は両手で抱えながら受け取った。
「早く仲直りしろよ。お前達が沈んでると、クラス全体が暗くなるからさ。頼むよ」
そう言ったラリックは笑顔で手を振りながら次の生徒のところへ向かったようだった。
残された俺は、二人分の体操着を抱えながら小さくため息をついた。
喧嘩したわけではない。
一方的に俺が避けているだけだ。
リザベルトはそんな俺の気配を察知して、話しかけたいという顔で見てくるだけ。
「いいきっかけだな。ちゃんと話そう……」
俺はもらった体操着を渡しながら、リザベルトに最近避けていたことを謝ろうと思った。
体操着を持って、寮の部屋へ向かった。
夕食前の時間、リザベルトは部屋にいるはずだ。
俺は緊張しながら、部屋のドアを開けた。
思った通り、部屋の中にはリザベルトがいて、机に向かって本を読んでいた。
「た……ただいま」
「おかえり」
後ろ姿だが、リザベルトが本を読んでいる手がピクッと揺れたのが分かった。
何か言わないとと思い、俺はリザベルトの方へ近づいて行った。
「これ……ラリックから」
「ああ、服か。悪いな、重かっただろう」
ラリックからもらった体操着を手渡すと、リザベルトは緊張した顔で椅子から立ち上がって両手で受け取った。
「勉強……邪魔しちゃったよね。俺はこれで……」
「セイジュ! 聞いてくれ」
何とも言えない空気に、また改めようと踵を返そうとしたら、ガタンと音がして、見るとリザベルトが両手を床につけて土下座していた。
「すまない! あの時、起きていたんだろう? 俺は寝ているセイジュに酷いことを……それで、ずっと避けているんだよな? 悪い……あんな気持ち悪いことをして、俺は……最低だ」
俺の態度が変わったから、あの夜のことを気づいていたのだと分かったのだろう。リザベルトは床に頭を付けて謝ってきた。
「いっ、ちょっ、頭を上げてよ。確かに……起きていたけど……」
「ああああっやっぱりーー! なんてことだ!」
リザベルトは苦しそうな顔になって頭を抱えてしまった。俺は一緒にしゃがんでリザベルトの体を起こした。
「何も言わずに避けていたのは俺の方だよ……確かに驚いたけど、俺のこと好きって言ってくれてたもんな。それを、友人ならいいと言いつつ、俺は色々と頼っちゃったし」
「いいんだ。どんどん利用してくれて構わない。ただ……気持ちはどうしても諦められなくて、でも、もうあんなこと絶対にしないから……」
「う……うん」
「本当に悪かった」
「俺の方こそ……助けてもらってばっかりだから……いつも本当にごめん」
何度も頭を下げてくるリザベルトに、大丈夫だからと言ってリザベルトの背中を撫でた。
「それに……気持ち悪いってわけじゃ……びっくりはしたけど……」
自分を責めるリザベルトを見ていたら、何だか胸がチクリと痛んでしまった。
そんな俺の言葉に、何か気がついたようにリザベルトが顔を上げた。
「ほ、本当に?」
「うん……」
「じゃ……じゃあ、また、してもいいか?」
「えっ!? そっ、それは……」
「セイジュは何もしなくていい。匂いだけ嗅がせてもらえれば……」
リザベルトが目をキラキラさせながら俺の腕を掴んできた。
バカなことを言うなと言って振り払おうとしたが、リザベルトが犬のように尻尾を振って見えて、可愛く思えてしまった。
「う……だって……」
「セイジュ……」
仲良くなる、というのがこういうことで合っているのか、ゲーム友達くらいしかいなかった俺にはよく分からない。
だが、いつもお世話になっているリザベルトの頼みを断るのは可哀想だ。
ドクドクとうるさく鳴る心臓の音を聞きながら、俺はそう思うことにした。
「分かった」
「セイジューーー!」
感激した顔になったリザベルトが、飛びついて来ようとしていたので、ヒラリと身をかわして立ち上がった。
「調子に乗るなっ、ほら、体操着試着しろよ。サイズ違いはメッセージを入れてくれって」
一気に恥ずかしくなった俺は、ラリックからもらった体操着を抱えてリザベルトから距離をとった。
俺が逃げたので口を尖らせたリザベルトだったが、仲直りできたのが嬉しかったのか、分かったと言って自分のベッドの方に戻った。
俺は何となくその場で着替えることが恥ずかしくて、机の後ろに回り込んで着替え始めた。
リザベルトは気にせずその場で脱いでいた。
「ああ、少しキツイな。腕周りとズボンの裾も短い」
「おいおい、どれだけ体格がいいんだよ。それ在庫で一番大きいやつらしいよ」
「そうか」
俺はリザベルトに説明するのに夢中で、自分の着替えとか全然考えずに半袖の服を頭からかぶって腕を通してから、ズボンを履いた。
「ん? ズボンの裾が短いって、これはそういうもんだろう」
「いや、どう考えたって足首が出ている」
「足首って、そんなの全部出るじゃないか」
言っていることが噛み合わなくて、俺は仕方なく確認するために机の後ろから飛び出した。
するとそこには、Tシャツもズボンもムキムキの体でパンパンになっているリザベルトの姿があった。
確かに言われてみたら、ズボンの裾が足首より上になっていて、不恰好だなと思ってしまった。
しかしここで俺は明らかにおかしいことに気がついた。
今まで話に夢中で全く違和感を持っていなかったが、自分の格好がおかしい気がした。
そして、俺の姿を見たリザベルトの顔がみるみる赤くなっていくのが分かった。
「せっ、セイジュ、それは……」
「うわぁっ、何で俺だけ短パン!? これ夏物? それにしても……短い……」
ここでやっと自分が履いているのが短いズボンだということに気がついた。
しかもフトモモより上で尻に食い込むくらい短いし、生地も薄いのでアソコの形が丸見えだった。
「……それは、女子用だ」
「女子用!? 女子用ってこんなエッチなの!? っていうか、ラリック、間違えて渡したな!!」
「女子はその下に黒いタイツを履く……」
「ああ、そうなんだ。おかしいと思った。わわっ、スースーする。脱がないと」
「待て」
間違えたとはいえ、気にせず履いてしまったので俺は真っ赤になって早く着替えようとした。
しかし、部屋の反対側にいたのに、リザベルトは瞬間移動でもしてきたかのような秒速で俺の腕を掴んできた。
「何だよ」
「やばい……その格好は反則だ。こんなの見せられたら……」
「へっ、おまっ……はっ、鼻血!!」
スローモーションのようにリザベルトの鼻から血が垂れていくのが見えて、交換する体操着にでも付いたら大変だと、俺は慌てて脱ぎ捨てていた肌着を床から拾ってリザベルトの顔に当てた。
「ぬおおおっ、これは!? 汗……汗の……セイジュ、俺を殺す気かっ」
「え?」
「俺はお前の匂いがたまらないのに、凝縮されたやつを鼻に付けるなんて」
どうやら鼻血を拭くために渡した肌着で余計に鼻血が出てしまったらしい。
それなら洗ったタオルと交代させようとしたが、リザベルトは俺の肌着を抱えたまま離さなかった。
「セイジュ……少しでいいんだ。直接を匂いを嗅がせてくれ……下の方の……」
「うええっ!!」
何を言い出すんだと後退りしたら、背後にベッドがあってドンとお尻をつい座ってしまった。
「嗅がせてくれるって言ったじゃないかっっ」
「バカっ、頸の辺りかと思ったんだよ! いくら何でもこんなところだめだ」
「セイジュー」
またお決まりのうるうるした目で見られて、心臓がキュッとしてしまった。
嗅いでもいいと言った手前、頑なに断るのも悪いかと思ってしまった。
「触れないから……近くに寄るだけだ」
「あーもーぅ、分かったよ。俺の何がいいんだよ。サッパリ分からない」
いったい何をされるのか、不安になっていた俺の前に跪いたリザベルトは、本当にその場でクンクンと鼻を鳴らして匂いを嗅いできた。
俺はただ怯えていたが、リザベルトはその場から動かずに匂いだけ嗅いで満足したらしい。
スッと立ち上がったら大きめのバスタオルを持ってきて、俺の下半身にバサッと落とした。
「これ以上はやめておく」
「え……」
「そりゃもっと嗅ぎたいけど、セイジュに嫌われたくない。セイジュの匂いも好きだが、俺はセイジュが好きなんだ。明るくて可愛くて……セイジュは俺の太陽だ」
「………」
リザベルトはボソボソと喋ってはいたが、とんでもない熱烈な言葉を重ねられて、どうしたらいいのか分からなくなった。
こんなに人から好かれたことなどない。
匂いがいいって何だよって思っていたけれど、俺自身のこともちゃんと好きなんだと思ったら、腹の奥からじんわりと温かいものが上がってきた。
「無駄に生まれた家がデカいから、昔からちゃんと俺を見てくれるやつなんていなかった。初めて会った時、セイジュは俺を真っ直ぐに見てくれた。おかしいことを言っても、突き放さずに一緒に考えてくれた。友達になろうと努力したけど、好きな気持ちは消せなくて……はぁ、俺は何をやっているんだ」
リザベルトは少し離れたところで床に座り込んで頭を抱えていた。
リザベルトの好意は嬉しい。
最初は戸惑いばかりだったけど、だんだん慣れというか、リザベルトの温かさがしっくり体に染み込んで心地良くなった。
この気持ちをなんと言ったらいいのだろう……
「ちょっと、時間がほしい。リザベルトとのこと、ちゃんと考えたい」
飛び込みたい気持ちはあるが、ほんの少し残った迷いが俺の足を掴んだ。
俺の言葉にリザベルトは分かったと言って顔を上げた。
「ちょっといいかしら? 話があるんだけど」
俺の生活にはない、やけに甘ったるい声が聞こえてきて、急いでいた足を止めた。
振り返るとみんなのアイドル、天使のベリーちゃんが立っていた。
初めて見たときはその可愛さに心が躍ってしまったが、今はなんだか寒気がして変な空気を感じでしまった。
「移動教室かしら? いつも一緒にいるお友達は?」
「え……ええと、俺は日直だったから片付けがあって……」
そう、と興味なさそうにベリーちゃんは呟いた。
心なしか潤んでいる瞳がギラっと光ったような気がしたのは気のせいだろう。
リザベルトに関係を考えたいと告げてから一週間、表面上はただのお友達として今まで通り過ごしていた。
しかし、考えれば考えるほど、俺では釣り合わないのではないかと悩んでしまった。
リザベルトの輝かしい人生において汚点になってしまわないか心配なのだ。
それに俺はベータなので、このまま将来も一緒にいたいと言われても、俺では子孫を残すことができない。
いきなりそこまで考える必要などないのだろうか。
それにこれが恋愛感情なのか、ただ押されて悩んでいるだけなのか判断できなかった。
「ちょっと、アナタ? 聞いているの?」
ぼけっとしながら考え込んでいたら、少し前を歩いているベリーちゃんがギロっと睨んできた。
どうやら話しかけたのにうわの空だったらしい。
俺は慌てて姿勢を正した。
話があると言われて、廊下の奥に連れて行かれ、人通りのない場所まで来たら、壁際に立たされることになった。
「……アナタのせいで……、私は補欠合格で特Aクラスに入るはずだったのに……。後から来て奪うなんて許さない……。しかも、チヤホヤされていい気になって……私の憧れの月の君まで奪うなんて……」
「え? 月の君?」
「リザベルト様のことよ! 私は前から憧れていたの! 最強のアルファに嫁いで、崇拝されて一生贅沢して暮らせると思っていたのに!!」
敵意がたっぷりこもった目でギロリと睨まれてしまった。
嫌われていそうだとは思っていたが、思っていた以上だったようだ。
「クラスについては申し訳なく思うけど……」
「さっさとリザベルト様から離れなさい。アナタみたいな凡人は友人としても相応しくないわ。何ができるの? 何も力になれないくせに」
ドクンっと心臓が揺れて、汗がたらりと流れ落ちた。
ベリーちゃんの言う通り、俺には何の力もなく、リザベルトと一緒にいたら彼の足を引っ張るような存在になってしまうかもしれない。
離れることを考えたら心臓がぎゅっと痛んで、手で胸を押さえた。
「そ、そうだとしても、君は関係ない。俺とリザベルトの問題だ」
「あーそー! 開き直るのね。私を崇拝する者はたくさんいるのよ。一声かけたら、アナタなんて……」
「何をするつもりだ?」
腹の奥に響く声が聞こえてきてた。
俺は壁に追い詰められていたが、掴みかかりそうな勢いで迫ってきていたベリーちゃんの足が止まった。
「あっ……」
「何をするつもりかと聞いている」
仁王立ちで鋭い目をしているのはリザベルトだった。
ベリーちゃんが、ガタガタと震えているので、おそらく威嚇のフェロモンを放っているのだと思われる。
匂いは感じないが、明らかに怒っている雰囲気は感じた。
「私、リザベルト様とお近づきになりたいのです。貴方ほど優秀な血統の方は、私のようなオメガと結婚して、優秀なアルファの子を得るべきですわ」
「優秀な血統、偉大な血筋、そういうのはもううんざりなんだ。必要か必要じゃないかは俺が決める」
「こんな愚鈍な男は貴方には相応しく……」
「なんだと? 俺のセイジュを侮辱したら、許さない」
まるで地震でも起きているかのように、壁や床が振動し始めて、ベリーちゃんは驚いた様子で床に尻餅をついた。声にならない声を上げて、転がりながら逃げて行った。
「セイジュ、大丈夫か?」
放心していたら、リザベルトに声をかけられて俺はハッと我に返った。
「リザベルト……」
「怪我はないか? 殴られたりは?」
「えっ、ベリーちゃんに? いや、俺がいくら非力でも女の子にそこまで……」
「よかった……心配したんだ」
心配するレベルが過保護すぎると感じたが、リザベルトに頬を撫でられたら、胸がくすぐったくて温かくなった。
「いつも心配してくれたのに、ごめん……。俺、他のクラスの子に嫌われてるみたいでさ。それで、直接色々言われて……」
「……悪く言っているヤツらがいるって話は聞いていた。無理やり聞きただすわけにもいかなくて、周囲に怪しい動きがあったら教えてくれと頼んでいたんだ。それでセイジュが連れて行かれたと聞いて、急いできたんだ」
「そうだったんだね。信用できなかったわけじゃないんだ。俺だけ、我慢すれば丸く収まるかと思って」
リザベルトは、知ってたと言って俺の頭をガシガシと撫でてきた。
そこで休み時間が終わってベルの音が鳴ったので、二人で教室へ戻ることになった。
前を歩くリザベルトの背中が、やけに広くて逞しく見えてしまった。
この思いは友達のそれよりももっと強いものだと感じていた。
今度こそ、ちゃんと伝えようと心に決めた。
その夜、夕食を食べて部屋に戻った後、俺はリザベルトに声をかけて、ベッドに座ってもらった。
俺は机の椅子に腰掛けて、深く鼻から息を吸ってから口を開いた。
「今日は、本当、駆けつけてきてくれてありがとう」
「これからも文句を言ってくるヤツがいるかもしれない。そしたらすぐに助けを呼べよ。バース性にこだわるヤツはいるし、近づかせないようにするのが一番なんだが……」
何か言いづらいところなのか、リザベルトは口をモゴモゴしながら顔を下に向けてしまった。
俺は今がチャンスだと手に力を込めた。
「あのさ、つっ、付き合ってみようかなって……」
「へ? 誰と? いつの間に!?」
変な言い方になってしまい、誤解されてしまったようだ。
リザベルトは顔を上げて、真剣な顔で問いただしてきた。
「い、いや、リザベルトだよ」
「俺!?」
「他に誰がいるんだよ。……俺、誰かと付き合うのは初めてで、戸惑いはあるけど……リザベルトなら、一緒にいたいなって思ったんだ」
流されたわけではなく、俺なりに色々考えて出した答えだった。迷ったらアレコレ考えるより、やってみようという両親から受け継いだ精神が俺の背中を押した。
「セイジュ!!」
潤んだ目になったリザベルトが飛びついてきたので、巨体にのし掛かられて俺は椅子から落ちそうになった。
「まっ、まてって。重い! 重いってば」
「悪い、でも、でも嬉しくて……この匂いを毎日好きなだけ堪能できるなんて」
「お前……匂いだけかよ」
「そりゃ……、匂い惚れしたからな。セイジュのことが好きだから、匂いもずっと嗅いでいたい」
何だか上手く丸め込まれたような気がしないでもないが、俺の匂いを嗅ぎながら、幸せそうに目尻を下げて笑っているリザベルトを見たら、まぁ、いいかと思ってしまった。
「わっ……リザベルト、そ、それ……」
抱きしめられていたら、硬いものが当たる感覚がして、視線を下に向けるとリザベルトの股間が衣服を押し上げて大きく盛り上がっていた。
「……悪い。嬉しくて興奮が治らない」
顔を赤くしたリザベルトは、トイレに行ってくると言って俺から離れようとした。
無性に寂しくなって、俺は手を伸ばしてリザベルトの腕を掴んだ。
「え?」
「さ……触りたい、んだけど……だめ?」
この先に何があるのか。
それが知りたくて、俺はリザベルトの青い瞳を見つめた。
リザベルトと付き合うためには、性的な面で自分が使い物にならなければ、継続していくのは困難だ。
だからそういう意味で慣れておくことが必要だろうと俺はリザベルトに触れたいと言った。
リザベルトは俺の言葉に一気に興奮したのか、目がギラギラと強い光を帯びて、その勢いで俺を抱えてベッドまで運んだ。
リザベルトは下着一枚になると、すでにそこは収まりきらない大きさで、先っぽが出ていた。
腹につきそうなくらいにそり返っていて、ビクビクと揺れていた。
「……手を貸してくれ。あと、少しだけ匂いも嗅いでいいか?」
こういった行為の知識はほとんどないので、俺は言われるままに手を伸ばした。
下着をずらして、ぶるんと飛び出したモノに手を這わせると、リザベルトが息を吸い込む音が聞こえてきた。
不快感など微塵もない。
硬さも熱も、全て愛おしく感じてしまい、俺はその勢いに乗って上下に擦り始めた。
「ん………っっ……はぁ………」
力加減を気にしながら、気持ち良さそうなところを擦っていくと、リザベルトの息遣いが部屋に満ちていった。
リザベルトは俺の首筋をクンクンと嗅ぎながら、その度に恍惚の表情になって、先端が膨れて先走りが飛び出した。
そんな乱れたリザベルトの姿を見ていたら、俺も興奮してきてしまい、モゾモゾと下半身を動かしてしまった。
「セイジュ……まさか……」
「ん……俺も、一緒に……いい?」
鼻息で空を飛びそうなくらい興奮しているリザベルトは、俺の服をあっという間に脱がせてしまった。
「くっ……ぅぅ! なんて可愛さだ……」
リザベルトのと比べると、俺のは子供みたいに見えるのかもしれない。
お前のが化物なんだと言いたくなった。
リザベルトは涎を垂らしながら今にもかぶりつきそうな顔をしていた。
「心配するな。いきなりはしない。潤滑玉もないしな」
潤滑玉とは、オメガが発情期以外にも使用できる保護薬みたいなものらしい。
ベータの俺が使えるのか分からないが、とりあえず今は考えないことにした。
「こうやって重ねれば……お互い気持ちいいだろ?」
「んっ……」
ベッドの上で向き合う格好で、お互いのモノを重ねて擦り合わせた。
俺の手の上からリザベルトの手が重なり、気持ちよくて顔を上げたら、リザベルトの唇が重なってきた。
「んっ、ふっ……んんっ……はっぁ……ぁぁ……」
リザベルトはアソコもデカければ舌も長くて、口内の奥まで舐め尽くされて、口を閉じれなくなった。
初めてのキスがこんなに激しくて苦しいものだなんて、もう少し手加減してくれと頭の中で叫んだ。
「っっ、はぁ……リザベルト……そこっ……」
「ここか? 頭合わせてぐりぐりやるとヤバいな。セイジュ、気持ちいいか?」
「う……ん、はぁ……気持ちい……も、でちゃ……」
俺も出そうだと言ったリザベルトは、重ね合わせたまま激しく擦り始めた。
亀頭が触れ合うのが痺れるくらい気持ちいい、俺は熱い息を吐きながら、リザベルトの背中に掴まってびくびくと腰を揺らした。
「ううっ、……あ、あ…ぁぁ……」
強烈な快感が突き抜けて、気がつくとお互いの腹から溢れるくらい白濁が飛び散っていた。
ぼんやりとした頭で。リザベルトの先っぽからぴゅっと飛び出たものが、俺の頬まで飛んできたのが分かった。
「二人分だから大量だな」
「ん……ふわふわ……する」
力が抜けてぐたんとリザベルトにもたれかかると、頭を撫でられた後、頬を指で拭われてそこにキスをされた。
「体洗ってやる。風呂に行くぞ」
その後、抱っこで風呂に連れて行かれて、うとうとしている中、隅々まで綺麗に洗ってもらった。
リザベルトとちょっとエッチなことをしてしまった次の日。
校舎に入ると、ラリックが走ってきておはようと言って俺の肩を叩いた。
「おめでとう、付き合うことになったんだね」
振り返った俺を見て、ラリックは少し目を開いて驚いた顔をした後、手を叩いてきた。
昨日の今日で、なぜ知っているのかと不思議に思っていたら、ラリックはクスクスと笑ってきた。
「だってさ、セイジュの体から、リザベルトのフェロモン臭がすごいよ。いわゆるマーキングってやつ。一番強烈なのは体液を直接浴びることだから、まぁ、付き合ったんだよね。あ、シャワーくらいじゃ取れないよ」
「えっえっ、そっ、そんなに!? って、あの……ええと……」
「リザベルトのこと、セイジュも嫌そうではなかったから、時間の問題だとは思っていたけど。まぁ、これでその辺のオメガやアルファは近寄ってこないよ」
辺りを見回すといつも敵意のある目で見てくる他のクラスの生徒達が、怯えた目をしていて、目が合うとヒィィと声を上げて逃げて行った。
まるでお化けにでもなった気分だった。
「仲良くするのも、ほどほどにな」
いつだったか同じ台詞を言われて軽く聞き流していたが、まさかこの展開が予想されていたかのように思えて驚いてしまった。
顔が熱くなってしまい、どう返そうかぐるぐる考えていたら、後ろから腕が回ってきてガバッと抱きしめられた。
こんなことをするのは、リザベルトしかいない。
「ラリック、変な気は起こすなよ」
「もう嫉妬してんの? 匂いが濃過ぎてもはやセイジュがリザベルトにしか見えない。無理無理、変な気が起こるわけない」
両手を上げて勘弁してくれと言い残したラリックは、ニヤニヤ笑いながら先に走って行ってしまった。
「俺の匂いを纏っていれば、誰も文句は言ってこないだろう。他のクラスのヤツらも、教師も。そう難しく考えるな。番犬に守られているくらいに思っておけ」
耳元に息を吹きかけられて、変な声を上げそうになった。いちおう付き合い出したわけだが、朝からこんなにイチャイチャするのが許されるのか、慌てて周りを見たが、みんな一切こちらを見ないようにして足早に通り過ぎていた。
ある意味これで、俺は平穏な学生生活を送れるようになった。
「セイジュ、俺は好きなものはかまいたくて甘やかしかくてたまらないんだ。ずっと我慢していたんだから、これから覚悟してくれよ」
今までだって十分色々やってもらって甘やかされていた気がするのだが、これ以上もっと先があるのだろうかと首を傾げてしまった。
「お……お手柔らかに、お願いします……わっっ!」
ニヤッとイタズラっぽく笑ったリザベルトに、そのまま腰を持ち上げられて、肩に担がれてしまった。
「ちょっ、恥ずかし……やめろって!」
「いいだろう。セイジュと付き合えた日の翌朝だ。何もかも嬉しくて、自慢したくてたまらない」
本音を言うとまだ気持ちが追いついていない部分もあるが、この強引で無茶苦茶な愛情が俺にはぴったりハマっているような気がする。
この学校に来て、最高の相手に出会うことができた。
フェロモンを感じなくとも、リザベルトがいつでも守ってくれているみたいで嬉しかった。
教室まで運ばれた後も、しっかり膝の上に乗せられて、重度の甘やかしに、それはそれで悩まされるのであった。
□終□
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破天荒な両親の計らいで、学園生活始めたら月の輪熊のようなルームメイトに懐かれました!と一言で纏めたらこうなるよね〜🎵グイグイと熊さんから猛烈に懐かれてましたからね🎵(*≧艸≦)))
夢梨様
こんにちは。
感想ありがとうございます♪♪
お返事が遅れてしまい申し訳ございません。
月の輪熊!まさにそんな感じですね。
ホワイトムーンにもかかってて素敵♡
懐かれちゃって、おうおうと撫でている間に、付き合うことになっちゃいました(^^)
作品としてはここまでなんですが、続きを書きたいなと思っているお話です。
素敵な感想ありがとうございました。
こんにちは。楽しく読ませて頂きました。
続編、番外編、何でも良いので、もっと読みたいです!希望としては、
①リザベルトとセイジュのママン達とのご挨拶(結局、会えてないし、会話もしてないので、どんな感じになるのか気になります)
②セイジュとレッド財閥(おじいちゃん)との初対面(娘の結婚には反対してたけど、実は孫には「セイジュた〜ん」って抱きついたり、部屋は孫の隠し撮り写真だらけで、『セイジュLOVE』って書かれたウチワを持ったりして威厳も何もない激甘なおじいちゃんだったりしてw、とか勝手に妄想してますごめんなさい)
③セイジュをバカにしてたオメガ達や教師達へのざまぁ(リザベルトのニオイ付けで、ある意味ざまぁは完了してると思いますが、ダメ押しで実はセイジュがレッド財閥の関係者だったことを知って、顔面蒼白になってるところを読みたいです(上の②を絡ませたら、もっとヒェ〜ってなりそうですよね))
④セイジュとリザベルトの未来(2人は結婚するのか、リザベルトの家族の反応はどうなのか、子供はどうするのか(一時的に妊娠・出産出来る薬を開発したりするのか、養子を迎えるのか、子供は要らないで落ち着くのか)
図々しく、長々とすみません。色々妄想が進んじゃって、こんなに希望が(自分でも若干引き気味w)。勝手に希望してるだけなので、無視して下さって大丈夫です。
時間があって余力があるときに考えてみてください。これからも応援してます!
しょこら。様
お飲みいただきありがとうございます。
わわっ、盛りだくさんのリクエスト(^^)ありがとうございます♪♪
気に入っていただき、想像してもらえたんだなと思うととても嬉しいです⭐︎
アリッサとパパ(じぃじ)の長年の確執については、実は書いていたんですけど、文字数の関係で消してしまって……。
激甘おじいちゃんの辺りが、ピッタリハマって、それそれ!と声を上げて喜んでしまいました(笑)
ちょっと間が空いてしまうと思いますが、二年生、三年生、カレッジ編、社会人編的な感じで、追加できたらなと思っています。
温かい感想ありがとうございました⭐︎⭐︎
え?最後まで行って無いですよ?!( ´ ~ ` )ンェ…
めちゃいい感じで終わっちゃうんですか?
姜 月藍様
お読みいただきありがとうございます⭐︎
今回短編の企画で、恋の目覚めというテーマで書いておりまして、二人の関係はまだこれからというところですね^^;
体格差カップル好きなので、二人のその後は書いていきたいなと思っています。
ちょっと時間が空いて、小出しになってしまうかもしれませんが、また楽しんでいただけたら嬉しいです。
感想ありがとうございました♪♪