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第四章 仲良し大作戦編

⑩最高の夜に溶けて。※

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 バルコニーに通じる廊下には人気がなかった。
 次のダンスが始まったので人々はそちらに集まっているようだ。

 俺とイグニスは手を繋ぎながら薄暗い廊下を走った。
 不倫逃亡系のドラマじゃないけど、こんな状況はこっそり逃げているみたいでドキドキしてしまう。
 衝動に駆られて行動するなんていかにも若さが溢れていて、そこがまた胸を高鳴らせる。

 俺の部屋は使用人部屋とは少し離れた場所で、広めの客室を臨時で用意してもらっていた。
 まだパーティーが終わっていない時間だったので幸い誰にも会うことがなかった。
 部屋に入ったらすぐにイグニスは俺にむしゃぶりつくように激しいキスを仕掛けてきた。

 閉めたドアに押し付けられて、しばらくキスしていたが、いつの間にか持ち上げられてベッドに投げられるように置かれた。
 部屋の中は月明かりで十分に明るくて、イグニスの赤くなって興奮した顔もよく見えた。
 ベッドに投げられるなんて、ちょっと荒っぽい行為にも、ますます煽られてしまう。

「まっ…待って…イグニス…」

 さっと服を脱いでイグニスは俺の上に乗ってきた。
 上半身裸になったイグニスの割れた腹筋に目を奪われて、逞しい体つきにクラクラしてしまうが、まずは確認しなければいけないことがあった。

「あの…さ、役の話なんだけど……」

「ん? なんだ?」

 話しながらもイグニスは全然待ってくれない。俺のシャツのボタンを外して、胸の尖りをペロペロと舐め始めた。

「アッアッ…ちょっ…、どっちが…上か…下かの……はぁ…はな…しを」

「俺はどちらでもいい。テラを愛することができるなら」

 イグニスのストレートな物言いに心臓が撃ち抜かれたみたいに粉々になりそうだった。
 俺が最善とかサイズとかそんなものに拘ってぐたぐたと悩んでいたのに、イグニスはそこまで受け入れてくれていたなんて……。

「イグニス、嬉しい。おっ…俺もイグニスとならどちらだって……」

「テラが体位について積極的に考えてくれるなんて、俺も嬉しい。だが、まずは挿れる方が先だろう?」

「え………? あ…あの……」

 何だと言う顔でイグニスは俺を見てきた。どうも話が噛み合っていない気がする。
 しかし、こんなに感動した後で議論を元の位置に戻す方法が分からなくなった。

「まずはテラの後ろを広げないと入らないな……。とりあえず柔らかくしよう」

 あーー! やっぱりイグニス、俺に挿れる気満々じゃん!
 もしかして…長さの問題なのか。
 確かに、長さがこの世界の判断基準だとしたら、イグニスが一切悩まないのも納得できる。

「長さかー! やっぱり、長さなのかぁぁー!」

「テラ? ちょっと足を広げてくれ」

 俺の心の叫びが漏れたが、イグニスはイグニスで集中していた。
 俺の尻に向かって躊躇いなく顔をうずめてきた。

「ゆ…指を入れるの?」

「いや、まずは舌で舐める」

「舐めるって…そこを!?」

 確かに恋人達のエトセトラ上級者テク編、後ろの広げ方で載っていたのをチラッと見たが、未経験の二人がいきなり上級者テクなんて無理があるだろう。
 訓練校の授業で多少知識があるらしいが、アイテムは揃えていなかったらしい。

「まったく、肝心なところが抜けているのはイグニスらしいな。初めてなんだから、ちゃんとアイテムを使おうぜ。そこの鞄の中、外ポケットに小箱があるからそれを取ってくれ」

 俺はベッドサイドに置いていた鞄の中からアレを取るようにイグニスに指示を出した。もともと俺が使いこなすために準備をしていたものだったが、攻め役がイグニスになるならもう任せることにした。

 ファビアン先生の話を聞いてからは、こうなるだろうなと何となく覚悟していたのだ。

「潤滑油を固めたものらしい。少量取ってよく塗り込んでくれって……」

 俺の指示通り、イグニスは鞄の中から銀の小箱を取り出した。
 イグニスはパカっと蓋を開けて中を覗き込んでいたが、俺が説明を加えると指ですくって匂いを嗅いで不思議そうに眺めていた。

「確かによく伸びるな。すまない……、まったく準備ができていなかった」

「いいって、ほら。さっさとやってくれ」

「……テラ、こういう時、やけに男らしいな」

 頭で考えたら怖くなってしまいそうで、もう勢いでやるしかないと腹をくくった。
 イグニスはそういうところも好きだと言って俺に軽いキスをしてから、イグニスは俺の後ろの蕾に指を這わせた。

「はっ……うわっ……なんか…あつっ…」

「大丈夫か? まだ入り口を少し押しているだけなんだが?」

 そう言いつつ、イグニスの指がすでに中に入ったり出たりしているのを感じる。予想以上になんとも言えない感覚がして思考が止まった。
 身体中がふわふわと熱くなってきて、自分の中に別のナニカが生まれてしまうみたいな、不思議な感覚だった。

「すご……っ、テラの中、熱い……。うねって指に吸い付いてくるぞ。ヤバいな、これで中に挿れたらもたない」

「あ……あぁ……、イグニスの……ゆび…感じる…よ。俺の中……ぐるぐるして……」

 イグニスの指はどんどん中に入って、掻き回すみたいに動いてきた。最初は一本の指だったのに、二本になり三本になり、それぞれ別々の動きをして俺の中で暴れ回るので、徐々に不思議な感覚が快感に変わってきた。

「あっあっ、ハァぁア…んん!! そっ…そこぉ! やばっ…すごいキタ……」

「んっ…ここか?」

 背中をベッドに付けてむず痒さに悶えていたが、イグニスの指が一点を擦った時、電流が走ったみたいな衝撃があった。

「そっそこ……あっ…そこ…い…イイ! いいよぉ…気持ち…い」

 強烈な快感に口を閉じるのも忘れて、涎を垂らしながら顔を振って感じてしまった。

「なるほど、ここがテラの良いところか。覚えておこう」

 俺のペニスはすでにガチガチに立ち上がって、口元と同じく涎を溢している状態になっていた。それが、イグニスが良いところを見つけたと言ってめちゃくちゃに擦ってきたので、びゅうっと白濁が飛んでしまった。

「テラ、イッたのか? でも量が少ないな……軽くってやつか? もっと乱れたテラが見たい」

「あっ…ちょっ…そんな、激しくっ。あっ…ああっ……ヤバい……はぁはぁ…おかしく…なる。あああっアンっっ……いっ……イク…またイッちゃ…はんんんんっンンンっーーー!!」

 調子に乗ったイグニスがそこばかり指を増やしてぐりぐり擦ってきたので、俺はイグニスにしがみつきながら腰を揺らして達した。
 ぷるぷると揺れてたペニスから勢いよく飛び散ったものが俺の腹やシーツまでぐっしょりと濡らしていた。

「テラ………俺も、見てるだけで、もうだめだ…まず一回抜かせてくれ」

 俺がイッた姿を見て、イグニスは興奮が止まらないという茹で上がったような顔で、素早く履いていたズボンと下着を脱ぎ捨てた。

 そこは前と同じ巨大なモノが天を向いて反り返るほど立ち上がっていて、イッた後の俺の痴態を眺めながらイグニスは自分のモノをゴシゴシと擦り出した。

「イグニス…イグニス…顔に…顔がいい」

「はっ…テラは…そこが好きだな。……俺の前だと可愛いだけじゃなくて…淫乱になるテラ……ヤバい……あまり興奮させないで…くれ」

「あぁ…ちょうだい、顔にイグニスの熱いのかけて…眼鏡も全部……ぐちゃぐちゃにしてぇ……」

 俺はこの辺からあれ? と思い始めてきた。
 確かに頭の中でそれくらいのことを考えているのだが、さすがに口にできるはずがない。それなのに、俺の興奮はどんどん高まって、後ろも体も頭も熱を持ってカァァと熱くなってきた。

「テラ…そんなに…乱れるなんて……イくぞっっ」

 イグニスは俺の望み通り、顔にぶち撒けてくれた。白濁は眼鏡も眼鏡の中にも入ってきて一気に雄の匂いが顔中に広がった。
 イグニスは汚れた俺の顔なんて構わずキスをしてきた。
 舌を絡め合うと、垂れてきたモノが入ってきて苦い味が口に広がる。なんて、淫らで甘美な味なのだろうと嬉しくてたまらなかった。
 しばらくキスをしていたら、イグニスのモノはすぐに回復していた。

「ハァ………、テラ、次はテラの中に……」

「イグニス…イイ…よっ、大き…いのちょうだい。俺の中にブチ込んで、ぐちゃぐちゃにしてぇ……種をたくさん注いで俺を孕ませてよぉ」

「て…テラ?」

 明らかに乱れすぎな俺の反応にイグニスがやっと疑問を持ったようだ。

「んんっ…お尻…熱いのぉ…早くちょうだい」

「テラ、大丈夫か…様子が……」

 何か思い当たったように、イグニスは先ほど塗り込んだ潤滑油の箱を手に取った。

「……箱の裏に何か書いてある、……ご無沙汰熟女も大喜び。スペシャルボンバー特別薬入り……なんだコレは……」

「それってぇ、蓋が赤いやつ…?」

「ああ……」

「イグニスってばぁ…ソッチじゃないのにぃ、うふふ。かわいい」

「だっ…ううっ…てっテラ!」

 頭がふわふわして空に飛んでいきそうだ。
 どうやら理性は頭の端に追いやられて、欲望に素直になりすぎの自分が俺の体を動かしていた。
 イグニスは母がオマケでもらったサンプルの方を使ってしまったらしい。一緒に入れていた俺が悪いのだが。
 母が婦人薬局でもらったものなので、お遊び程度だと思うが媚薬みたいなものが入っているのかもしれない。
 猫のように四つん這いでイグニスに近づいて、目の前にある起立をペロリと舐めた。

「くっ……」

「イグニス…これ、ここに入れてくれよぉ」

 おもむろに体を後ろを向けた俺は、尻を持ち上げて、イグニスが指を入れていた後ろの孔を見せつけるように掲げた。
 そして、自分の二本の指を使ってそこをぱかっと広げた。
 イグニスがごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。

「あああーーーーっっ! もう知るか! 覚えてないって言っても知らないからな!」

 イグニスは俺の腰をガシッと掴んで後ろの孔に剛直をピタリと当ててきた。

「ああ…イグニスっ、すごく硬い…。早く挿れて、欲しい…欲しいよぉ…おねがい」

「くっっ、エロくなったテラなんて…最強だろ」

 めりめりめり。
 指であんなに広げられたのに、やはりイグニスのモノはデカくて、俺の小さな孔は限界だと悲鳴を上げそうなくらいだった。
 体が二つに分けられるような圧迫感がしたが、あの薬入りの潤滑油のおかげか驚くほど痛みはなかった。
 そしてゾクゾクと全身を駆け巡る快感が大波になって一気に襲ってきた。

「あああああっーーー! イグニス、イイっ気持ちいい、大きいのいいよぉ、もっともっと激しくして」

「まっ…て…テラ、まだ半分しか……」

「やだぁ…やだっ、もっと奥まできてよぉ…長いのがいい」

「だっ…テラ、勝手に動く…なって、ゆっくり挿れる…から」

「んんんっ奥まで来てよぉ…奥トントンしてぇ」

「テラ、本当に…どこでそんな……クソっ」

 煽るだけ煽られて、ぷっつん切れたらしいイグニスは、俺の腸壁を一気に押し広げて奥まで突き挿れてきた。

「ああああっ、奥、きたきたっ出る出ちゃう!!」

 尻のずっと深いところに痺れるくらい良い場所があって、そこをイグニスの怒張が押し広げたら、俺はたまらず達してしまい、ボタボタと濃い白濁がシーツに飛び散った。

「くっっ…テラ、なんて締め付けだ。…はっ…はぁ…はぁ…」

 達した瞬間、中のイグニスをぎゅうぎゅうと締め付けた。入ったばかりでまだ達したくなかったのか、イグニスは堪えるような声を出して荒い息を吐いて耐えているようだった。

「少し…このままでいいか? 少ししたら動くから……」

「ン……? あっ…イグニス……ごめ……なんか、俺変だった」

 達したことで俺の正気はやっと戻ってきた。やはり効果は軽いものだったらしい。それにしても、あんなに乱れて変なことを言いまくったのが恥ずかしくてたまらなかった。

「俺…恥ずかしい…なんてことを言って…」

「もう…大丈夫なのか…? 何か入っていたようだな。驚いたけど…、エロいテラも悪くなかった。もっと乱れても俺はいいぞ」

 そう言いながら、イグニスは自身を少し引き抜いてからまたぐっと奥に挿れてきた。

「ああぁ…っっ、すごっ…目がチカチカするくらい気持ち…いい。イグニス…イグニスも気持ち…いい?」

「ああ、テラの中はヤバい…頭の中も…テラでいっぱいだ」

「……やっと、一つになれたね。ずっと…こうしたかった」

「……テラ、俺もだ」

 愛を交わす行為、二人の愛の証。
 イグニスとつながることで、こんなにも幸福で胸がいっぱいになるて、幸せ過ぎてどうにかなってしまいそうだ。

 俺はこの世界ではただのモブで、三兄弟と知り合えたことで幸運にもイグニスと恋人になることができた。
 俺にとってはこれ以上ないくらいの幸せだ。
 イグニスにとってもそうであってくれたらいい。
 その気持ちが溢れてきた。

「俺……とっても幸せだよ」

「テラ……」

 ちゃんとすることができたら改めて言おうかと思っていたが、後背位ではイグニスの顔がよく見えない。
 なんとか顔を後ろに向けると、イグニスがそれに応えるようにキスをしてきた。
 ちょっとやりにくいけど、それもまた気持ちいい。
 俺の中にいるイグニスがまた膨らんで大きくなったのを感じた。

「イグニス…」

「ん?」

「イグニス…すき…だいすき」

「ああ…テラ…、俺も……っっ…あっ」

 俺の中で大きく膨らんだイグニスが、ぶるりと震えて熱い熱が弾けるように広がるのが分かった。
 どくどくと注ぎ込まれるように尻の奥に熱を感じた。

 これは……まさか。

「イ…グニス…、イッたの?」

「…………」

 いつも強面で自信に満ち溢れている男が真っ赤になって口元を押さえていた。
 まさかの挿入して三擦り半に信じられないという様子だった。

 なんだよ、強いくせに可愛いとか、どれだけ持ってる男なんだ。

 イグニスのモノがズルリと抜けたら中に注がれた残りが俺の後ろからボタボタと垂れて落ちた。
 そんなものまで全て愛おしい。

「テラ…これは、…その…調子が……」

「いいよ。すごく嬉しかったし、気持ち良かった。好き好き、大好き」

 慌てた様子のイグニスが可愛くてしょうがない。俺は飛びついてぎゅっと抱きしめた。
 イグニスだって初めての体験なのだから、思い通りいかなくて当たり前だ。

「遠回りしちゃったけど、初めてちゃんとできたね」

「テラ、愛してる…。可愛い…俺のテラ」

 二人でベッドに沈んで隙間なく抱き合ってたくさんキスをした。

 遠くで拍手と人々の笑い声がほんのり聞こえてきた。
 月明かりに溶けるように抱き合ったまま、色々なことを話して笑い合った。

 いつの間にか眠ってしまったけど、俺の初めての夜は、忘れられないくらい最高のものになった。






 □□


「すみません、入学式の会場はどちらですか?」

 鈴の鳴るような甘くて可愛しい声が聞こえた。
 もう式はとっくに始まっている時間だ。
 初日から遅れて来るなんてウッカリさんだなと思いながら、俺は先輩らしく案内しようと笑顔で振り返った。

「あの三角の屋根の建物だよ。そこを曲がって近くに行けば案内が出てるから…すぐ、…わかる」

 口に出してからすごい既視感に襲われて言葉が詰まりそうになったのに、まるで用意された台詞みたいにスルスルと出てきた。

 妙な感覚に口を開けたまま思考が固まってしまった。
 そんな俺のおかしな様子など全く気にすることなく、目の前のその人はふわりと花が咲いたような笑顔で笑った。

「ありがとうございます。先輩」

 そして、一言お礼を言ってからすれ違い様にペコリと頭を下げて、濃厚な花の香りを残してパタパタと走っていった。

 白磁のような肌、日に透ける金色の髪。
 どんな宝石よりも美しい、こぼれ落ちそうな大きさの青色の瞳。熟れた果実のような桃色の唇に、常に恋をしているかのような桃色の頬。
 一度目にしたら忘れられないくらい可憐な姿。

「あれが、アピス……。アピス・フローラ」

 物語の始まりを盛り上げるように、立ち尽くした俺の後ろから強い風が吹き抜けていった。





 □第四章おわり□
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