ガチムチな俺が、性癖がバレてイケメンと結ばれちゃうお話

朝顔

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後編

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「荷物はそこに。シャワー浴びてください。タオルはそこにあるんで……」

「ああ、すまない」

 行くべきか悩んだ。
 やっぱり俺は帰ると行ってマンションの前で雅を残して行こうとした。
 しかし、足はマンションの中へ進んでしまった。
 先日、雅を好きにしてしまった懺悔の気持ちもあって言う通りにするしかない。
 そう思うのだが、それとは別にこんな状況に胸が高鳴ってしまった。こんな自分の気持ちなど無視しようと思うのに、その思いが俺の背中を押していた。


 雅に誘導されるがまま、裸になって浴室に入った俺は、いったい何をしているのか分からなくなってきてしまった。
 マンションに着いた時から俺は、口が空いたまま塞がらなかった。
 雅は俺の後輩で、給与は俺よりもらっていないはずなのに、駅直結のバカでかい高層マンションに住んでいたのだ。
 しかも単身者用の造りではない、ファミリータイプ向けの部屋で、玄関を開けると何部屋もあって驚いた。
 本当に一人で住んでいるのかと何度も聞いてしまったが、雅は広い方が好きなんですと言って笑っていた。

 ……いや、俺でもって言うか、多くがそうだろう。
 住めるか我慢するかの違いだ。
 雅は住める方の人間らしいが、ただのアイドル王子ではなく副業でもしているのか、ますます謎が深まった。

 頭にシャンプーを載せてゴシゴシ擦っていたら、カチャっとドアが開けられる音がした。
 何か言い忘れたことでもあるのかと思ったら、背後に気配を感じた。

「なんだ? 雅か? 今目が開けられないから……」

「大森さん」

 背後からぎゅっと抱きしめられる感覚がした。
 しかも服ではない、生身の肌の感触がしたので、泡だらけだが慌てて振り返って見ると、素っ裸の雅が俺に抱きついていた。

「なっ………なっ、雅……嘘だろ………」

「大森さん、仲良くしましょう。分かったって言ってくれたじゃないですか」

「言ったには……言ったが……だっ……これは……」

「焦らさないで、もう、ギンギンなんです」

「はっ……みやっ……ううっイタッ」

 泡だらけで目を開けていたので垂れてきたシャンプーが目に入って痛みを感じた。
 目を擦っていたら、雅がシャワーをあてて髪に残ったシャンプーを流してくれた。
 やっと目が開けられるようになったと思ったら、今度は雅の顔がすぐ近くにあって、言葉を発する間もなく唇が重なってきた。

「んんっ……! んっ……くっ………っっ……んっ」

 広い浴室の壁に押し付けられて、こじ開けられたところから舌がねじ込んできた。
 反射的に舌で押し返そうとしたが、その舌を絡みとられて根本から吸われるように舐められたら、甘い痺れを感じた。

「はっ………んっ………ハァ………ンンっ………クッ」

 息つく暇もない激しいキス。
 今まで付き合ってきた女性の誰とも、こんなに淫らでトロけるようなキスをしたことがない。
 今まで俺がしていたのは、おままごとだったんじゃないかと思うくらい、欲望を根こそぎ駆り立てられる野獣になったかのようなキスだ。

 どれくらい経ったのか分からない。
 シャワーを浴びながらの酸欠になりそうなキスで、頭はぼーっと霞んで訳が分からなくなっていた。
 ただ、体はものすごく熱くて溶けそうだった。

「大森さん、キスはあんまり上手くないね」

「っ……っ………」

「ふふっ、いいよ。その方がいい。ベッドに行きましょう。お互いもう限界みたいだし」

 雅の言葉にぼんやりとしていたが、押し付けられた下半身に熱い昂りを感じた。

「あぁ………っっ」

 俺のも雅のモノも、石のようにガチガチに硬くなっていて、雅は腰を使いながら卑猥に擦り合わせてきた。
 そういえば、あのホテルの夜以来、自慰もしていなかった。
 溜まりに溜まっていた状態でそんなことをされたらたまらなかった。
 兜を合わせるようにねっとりと擦られたら、先端からトロリと先走りが溢れてしまった。

「あれっ、大森さん、溜まってるみたいですね。ここで一回抜いちゃいましょうか」

「うっ……あっ……ちょっ……ああっ」

 クスッと笑った雅は自分のモノと一緒に掴んで擦り始めた。
 卑猥すぎる光景と、強い刺激に身を震わせた。
 自分でするのとは全然違う快感。
 女の子とのセックスでは、男がやらなければ、満足させなければという思いで、気ばかり焦って萎えてしまうことがほとんどだった。

 そんな俺の欲望は見たこともないくらい、腹につきそうに勃ち上がって今にも爆ぜてしまいそうだった。

「ハァハ……ァ、……だっ……むり……がまん……きな……」

「大森さん、イッていいですよ。可愛い声を出してイッてください」

「……ぅぅ……ぁ……くっあっ……でる……でっ……クッッ!!」

 雅の手に巧みに擦られて、ぴゅうっと白濁が勢いよく飛び散った。
 浴室の壁に飛んだがすぐにシャワーがかかって床に落ちて流れていった。

「ぁぁ………みやび……」

「たくさん出ましたね。じゃあ次は……俺を気持ち良くさせてくださいね」

 イった後の気だるい状態でさっと体を拭かれて寝室に連れて行かれた。
 手を引かれて廊下を歩いている時に、だんだん現実が見えてきて緊張してきてしまった。

 これから……雅の中に………

 あの夜のことはさっぱり覚えていない。
 しかしこんな状態でここに連れてきてたということは、雅がそれを望んでいるのは間違いないだろう。
 女性との噂しか聞いたことがない。
 カモフラージュだったのか、それとも、あの夜のせいで、つまり俺がソッチに目覚めさせてしまったのか。
 俺だって男と経験がないのに、雅を抱いてしまったなんて信じられない。
 ここはハッキリさせないといけない。
 寝室も広いし、雅のベッドはこれまた高級そうなキングサイズだった。
 先にドカンとベッドに乗った雅に手を引かれて、俺もその横に倒れ込むように乗った。

 すぐに俺に触れてきて、キスをしようとしてきた雅をなんとか止めて俺は口を開いた。

「ちょ……ちょっと待ってくれ。あの夜のことをハッキリさせておきたくて、俺達は最後まで……したのか?」

 キスを手で止められた雅は、ムッとした顔で口を尖らせた。

「してないですよ」

「してないのか!?」

「スーツがシワになっちゃうから脱がせてあげたんですけど、そしたら大きくなっちゃって……それだけです」

「だっ……おまっ、じゃ、こんなことをしているのは、もともと男が好きだったから……なのか?」

「ゲイの友人がいて、色々と話は聞いてましたけど、俺はストレートでした。そのはずだったんですけど、大きくなっちゃった大森さんを見たら、俺も勃っちゃったんです。それで大森さんを見ながら……一人で抜いて……それ以来、もっと仲良くしたくてたまらなかったんです」

 なんということだ。
 俺は雅を襲ってはいなかった。
 そりゃそうだろうと一気に力が抜けた。
 そして想像とは違ったが、ある意味目覚めさせてしまったの方だった。
 俺の何が気に入って興奮したのか知らないが、ここから先へ進むのはまた興味とか好奇心で誤魔化せる話ではない。

「雅は俺とセックスがしたいのか?」

「ええ、もちろんです」

 直球過ぎる答えにドキッとしてしまったが、ときめいている場合ではない。気をしっかり取り直した。

「言っておくが、俺も男相手に経験なんてない。この状況でお前だけ放置するわけにいかないとは思うが、本当にいいのか?」

「もちろんです。覚悟はできています」

 こんなところでやけに男らしくスッパリと答えてくれたので拍子抜けしてしまった。

「大森さんは……俺で、いいんですか?」

「お……俺は……その……」

 雅の下着姿を妄想していたくらいだ。
 意識していたし、性的に見ていたのは間違いない。
 こんなことになって驚いているが、心臓はドキドキと高鳴っていて、身体中が雅を求めているように感じた。
 改めて口にするのは恥ずかしくて、雅を見つめながらゆっくり頷いた。

「嬉しい……大森さんっ、あっ……プレゼントがあるんです」

「はっ? プレゼント?」

「これでーす」

 ベッドから飛び降りた雅が、鞄の中をゴソゴソやって取り出したのは、ナイトドリームの新作のランジェリーショーツだった。
 横の部分が紐になっていて、それを指に引っ掛けて俺の顔の前に持ってきた。

「ま……まさか、お前、そういう趣味が……」

 自分のことは棚に上げて、妄想の中の雅がそのまま出てきてしまったのではないかと驚いた。

「ちょっと待ってください。今準備しますから」

 急に俺の性癖を取り出されて、胸の高鳴りは最高潮になった。
 雅の下着姿が見れる。
 妄想通りで嬉しいには嬉しいが、どこか寂しい気持ちもあった。

 雅みたいな綺麗な男なら、違和感なく着こなしてしまうだろう……
 俺も……雅だったら……

「大森さんー、腰浮かせてください」

「あ、ああ、分かった」

 目をつぶっていたが、言われた通り何も考えず素直に腰を上げると、肌にスルっとした絹の触り心地がして、アソコが包まれる感覚がした。
 覚えのあるそれにぱっと目を開けると、雅はショーツを自分で穿くのではなく、俺に穿かせていた。

「えっ…………」

 ここに来て、冗談でもやっているのかと思ったら、雅は目元を赤らめて、恍惚の表情で俺のソコを見つめていた。
 焦げそうなくらい熱い視線、うっすら涎まで垂らしている雅が別人のように見えて言葉を失った。

「やっぱり……思った通りです。これ、デザインは俺が担当したんですけど、大森さんをイメージしたんですよ……。絶対、似合うと思って……」

「は?」

「自分でも結構悩んだんですよ。初めて大森さんを見た時に、ああ、この人に俺のデザインした下着を着せたいって……、だって最高じゃないですか、この筋肉質でムチムチした体。俺って綺麗な女の子に囲まれて生きてきたんで、男らしくて尚且つ可愛いものに憧れがあったんです。そこに、大森さんがドンピシャにハマったんです」

「男らしくて……可愛い……」

「そうです。大森さんてレスラーでもイケるような逞しい体なのに、内面はとっても優しくて、繊細で……ちょっと臆病なクマさん感がたまらなくキちゃって」

 雅は涼しげなイケメン顔を崩して、真っ赤な顔で俺への情熱を語り出した。
 そういえば、この家に入ってからいたるところでクマの置物やらぬいぐるみを見かけた。
 寝室のベッドサイドにものっそりしたクマさんが鎮座していて、頭の中は大混乱になった。

「大森さんって、もしかして……下着フェチですか?」

「えっ、ええ!?」

 いきなり俺の癖をピンポイントで突かれて、衝撃で体がビクッと揺れた。
 まさか、日常のどこかで漏れてしまっていたのかと、冷や汗まで出てきた。

「あの時……傷ついた顔していたから」

「あの時?」

「前にウチの部の新人が悪ノリして、下着つけてみてなんて迫ったじゃないですか。笑いに変えて、場の空気が悪くならないようにされてましたけど、部屋から出て行く時、すごく傷ついた、泣きそうな顔をしていました……、でもたぶん気づいたのは俺だけです。ずっと見ていたから……」

 なんてところを見られていたのかと、驚きすぎて言葉が出てこなかった。

「だから大森さん、もしかして、女性の下着着けるのが好きなのかなって。そういう趣味の人いますよね」

 痛いところを見られて完全に知られてしまった。
 人に知られたら絶対にダメだと思って生きてきたのに、まさか雅にバレてしまうなんて……。
 今から違うんだとか、あの時は体調が悪くてなんて切り返す力が湧いてこなかった。
 自分もどこかで誰かに知ってもらって、おかしいと言ってもらいたかったのかもしれない。

「は……ははは、そうだよ。下着って言ってもショーツだけ、だけど……。一人で家で穿いて、興奮している男だよ。気持ち悪いだろう、もう……放っておいてくれ……」

「違うんです! 言ったじゃないですか、俺のデザインした下着を着て欲しいって。大森さんが、興味があるかもしれないって知って、俺、興奮しておかしくなりそうでした。今だってほら、ここヤバいですよ。大森さんオカズにして全然イケます!」

 雅はそう言ってぐいっと下半身を見せつけてきた。
 雄々しく天を向いて反り返るくらいに勃ち上がったソレを見て、思わずごくっと唾を飲み込んでしまった。
 カリの形や下生えまで色っぽく見えてしまい、触りたくなってしまった。

 同じものが付いているし、男のソレになんて今まで性的な興味を持ったことなんてなかった。
 だが、雅のモノに嫌悪感などなく、なぜだかゾクゾクして体が熱くなった。
 まるで美味しそうなものを目にした時の、獣のようだと思った。

「興奮して……くれているのか? 俺で……?」

「そうですよ。すぐにでもシタくてたまらないです」

 むくっと上半身を起こした俺は、聳え立った雅のソレに触れた。
 ドクンと脈打つように大きく揺れたので、嬉しくなってしまった。
 気持ち良くなって欲しい……、自分がやったことはないけど女性がやってくれた時を思い出して、雅のモノに口に含んだ。

「あっ……嘘、大森さ……」

 同じ男同士、気持ちいいポイントは何となく分かる。
 口に含んだ状態で、亀頭の部分を舌を使って唾と絡めながら舐めてみた。

「ああ……やばっ、それっ気持ちい……」

 反応してくれるのが嬉しくて、ペロペロと舐めながら、口に含んで擦るというのを繰り返した。

「はぁ……はぁ……いいっ……も……イっちゃいます」

「うう……うっ……」

 雅は限界を伝えてきたが、俺は離したくなくて口いっぱいに雅を頬張って、唇で裏筋をごりごり擦って射精を促した。

「あ……あ、あ………でま……、あっっ! くっーーーっっ」

 感じてくれたのか、雅はいつもより高い声を上げて、ドクドクと俺の口の中に放った。
 喉の奥までぬるついた感触と苦い味が広がって、さすがに飲みこめなかった。
 ゲホゲホとむせていると、雅はティッシュを持ってきてくれた。

「大森さん、舐めてくれるのは嬉しいけど、そんな必死に……もしかして……初めてですか?」

「……ごっ……っ、はぁ……ハァ、じよ……女性の下着がすき、なんて、ソッチだと思ったかも、しれないが……。今まで女性としか付き合ったことがない。男は……雅が初めてだ」

 よく知らないくせに、なんて大胆なことをしてしまったのかと自分でも恥ずかしくなった。
 それでも、雅の雄を見せられたら、引き寄せられるように求めてしまった。
 自分の中にこんな感情があったなんて、知らなかった。

「う……嬉し……やばっ」

 引かれるかと思っていたら、裏返った声が聞こえてきて、顔を上げると雅は口元を手で押さえて震えていた。

「初めてとか、そんなので優越感を感じるなんて、ばかばかしいと思っていたのに、やばい……もう……興奮しすぎて、また……」

 一度達したはずだが、雅のソレは元気なままだった。さすが20代だと感心してしまうが、さっきよりいっそう鼻息が荒くなった雅は俺にガバッと覆いかぶさってきた。

「大森さんも……、ここ、はち切れそうになってる」

 すでに繊細な生地を押し上げて、自分の雄が勃ち上がっているのが見えたが、下着の上からゆっくり擦られたら気持ち良すぎてぶるりと震えてしまった。

「もう……いいですか?」

「あ……ああ……」

 ついにこの時が来たのかと緊張が高まった。
 サイドテーブルから何やらボトルを取り出した雅はそれを手に取って手の中で揉み込んだ。

「試供品でもらったやつだから新品ですよ。少し温めてから使うといいって聞いたので……じゃ、いきますね」

 雅は俺の足を持ち上げて膝を立たせてから、下着の中に手を入れて、準備していた液体を俺の後ろに塗りつけてきた。
 雅の長いまつ毛にうっとりと目を奪われていたら、ぐっと指が入ってきた感覚がして、いっきに現実に引き戻された。

「んっっあああっっ、ちょっ……!!」

「ああ、やっぱり……せまい、ですね。手順は調べてます。傷つけないように、トロトロにしますから」

 頭が真っ白だ。
 何が起きているのか、信じられなくて真っ白。
 体格から考えて、普通……普通がよく分からないが、イカつい俺と雅では、向こうもそれなりに逞しいが受け入れるのは雅だと思い込んでいた。

「あ、あ……あの、これは……俺が……その……」

「気持ちいいですか、大森さん?」

「ひっ……んんっ」

 まだ話し合う余地があるのではないかと雅を止めようとしたら、耳元で色気たっぷりに囁かれて、甘く痺れてゾクっとしてしまった。
 しかも中をぐりぐりと広げるようにかき回されて違和感しかなかったのに、ある場所を擦られたら電流が走ったみたいにビリビリと痺れてしまった。

「なん……これ、あああっ、くっ……ああ」

「へぇ、ここかぁ……」

「なんだ? なにが……?」

「男がお尻で気持ち良くなれる場所みたいです。ほら、どうですか?」

「はひっ…ぃぃ……ちからがぬけ……やめっ、ああっああっ……おかしく……なるっっ」

 いい所を集中している攻められたら、俺は涎を垂らしながら頭を振って快感に悶えた。
 気持ち良すぎてたまらない。
 体の内部が焼けるように熱くなって、雅の指をぎゅうぎゅうと締め付けた。

「ははっ、指が引きちぎれそう。俺、耐えられるかな……、頭沸騰して鼻血出そうです」

 こんな甘い攻めは俺の方が耐えられない。
 無意識に前を掴んで擦ってしまった。

「あっ、だめですよ。一人で遊ぶなんて……、もう濡れてぐちょぐちょですよ。軽くイッてますか? 沁みができてる」

 敏感なところを擦られて、イキたくてたまらなくなってしまった。せっかくイキそうになっていたのに、止められてしまい、俺は切ない声を上げた。

「もう三本入りました。入口はとろとろに柔らかくなってますよ。そろそろかな……」

 この快感の波から解き放たれるなら、もうどっちでもよかった。
 雅は自身をあてがって、ゆっくりこじ開けるように中へ挿入ってきた。
 優しすぎる動きがもどかしく感じた俺は、足を雅の後ろに回して自分の方へ引き寄せた。

「あっ、大森さ……くっっ」

「んんっあっ、みや……ふかい」

「くっ、んっっ、さ……すがに、せまっ……中、ヤバいです。すご……うねって……絡みついてく……る」

 汗を垂らしながら、丁寧に腰を進めていた雅だったが、堪えきれなくなったのか、最後の一押しは俺の腰にぶつけるようにバチンと音を鳴らして深く挿入ってきた。

「あっあああっーー、みやっ…みやびっ」

 内部が広げられる圧迫感で、目の前が光ったように一瞬白くなった。
 そして雅が全部挿入した瞬間に、俺は達してしまいショーツの中にどろっとした白濁か流れるのを感じた。

「ああ……最高……。俺、挿入口の空いた下着とか、論外なんですよね。普通の下着をあえて脱がずに窮屈に寄せた間に挿入する……。布が引っ張られて、大森さんのタマは丸見えだし……可愛すぎて……っっ、もっ……んんっ、あっ……………」

「あっあっ、なかっ……あつっ」

 ベラベラ自分の性癖を熱く語っていた雅は、急に中でビクビクと激しく動いた。そして腸壁に熱い飛沫を感じた俺は、雅の腕にしがみついた。

「うわっ……俺、早漏すぎ。すみません、イっちゃいました」

「え?」

「大丈夫です。すぐ回復して、気持ち良くさせますから」

「みやび……もうい……んっ、はっ………んんっ」

 雅は達したがまだ硬度を保ったままで、抜くことなく、俺の胸を揉みながら唇を重ねてきた。

「終わったら中洗って綺麗にしますから、たくさんしましょうね」

「んっ……んあっ……ぁぁ……」

 若さなのか、あっという間に回復した雅はゆるゆると動いて俺の反応を確かめた後、ゆっくりと律動を開始した。

「ああっ、あっ……あっあっ………」

 全身ぐずぐずに溶けてしまうみたいだった。
 こんな激しいことをしたら、明日きっと俺の尻はやばいことになるだろうとは思ったが、気持ち良さそうに感じている雅の顔を見たら、もうどうでもよくなってしまった。

 髪の毛一本、最後の一滴まで、全部一緒に気持ち良くなりたい。
 雅は俺の性癖を知っても引かずに、それどころか興奮すると言って求めてくれた。
 雅が俺に打ち付けるたびに、自分の周りに築いていた壁がボロボロと壊れていくのを感じていた。

 激しい快感の波に溺れて、次に目を開けた時には雅のキスが欲しい……。

 今まで誰にも抱いたことのない気持ちに戸惑いながら、俺はゆっくり目を閉じた。








「こっちこっちー! 発送するのまとめてるから。こっちに置いて」

「あれ、このダンボールって、展示用のだっけ? ショーのやつ?」

 社内は夏の展示会に向けて、みんな走り回っていて騒がしかった。
 俺の所属する部門も今回、スポーツ&リラックスをテーマにウェアを取り扱うことになり、連日その準備に忙しかった。

「大森さーん、ブースのイメージ、先方に送りました?」

「ああ、早速修正が入ったから、午後にまた練り直す」

「みんなー、忙しいと思うけど、お昼はしっかり取ってね」

 部長の一言でみんないったん手を止めて休憩をとることになった。
 今日はなにも用意していなかったので、コンビニに走ろうと外へ出たら廊下でばったりと雅に会ってしまった。

「あっ、大森さん、お疲れ様でーす」

 雅は手を上げて、可愛い後輩の顔で俺に笑いかけてきた。

 二週間前、雅と淫らな夜を過ごしてから、俺の方はすっかり意識してしまい、恥ずかしくてぎこちない対応になったが、雅の方は変わらない態度で接してきた。
 どう返すのが正解なのか分からなかったが、なんとか普通の顔を保って先輩として接している。
 しかし、あまりに態度が変わらず、俺に触れてくることもない雅に、あの夜は何だったのか、俺をどう思っているのかと、雅の顔を見る度にそんな風に思ってしまい胸が痛かった。

 もちろん俺の趣味を周りに言いふらしたりなどしない。
 何もかも変わらない日常だったが、それが逆に俺を不安にさせていた。

「これからお昼ですか?」

「ああ、やっとだよ。コンビニに行ってこようかと……」

「それなら、一緒に食べませんか? 弁当があるんです。いつものところで……」

 フッと微笑んだ雅は、俺の手にさりげなく触れてきた。それは一瞬だったが、あの夜のことを思い出してしまい、ゾクっと背中が痺れてしまった。

 今日も美しくて完璧な雅は、忙しくても少しも乱れがなくて、全身まるで作り物のマネキンのようだ。
 しかしこの男のスーツの下を俺は知っている、そう思うだけでたまらない優越感と後ろが疼いてしまい、なにを考えているんだと慌てて雑念を吹き消した。

 雅のお言葉に甘えて、今日はご馳走になることにした。
 いつものところと聞いて、高鳴る胸を必死に押さえて雅の跡を追った。





「弁当って……手作りか……すごいな」

 てっきり近くの店のテイクアウトでも買ってきたのかと思っていた。
 非常階段に到着して腰を下ろしたら、雅が袋から取り出したのは、木の板を曲げて作られた伝統工芸品のような弁当箱だった。
 それを何個も取り出したと思ったら、それぞれ主食主菜副菜と分けてあり、果物を入れたデザートまで用意されていた。
 お前そこまで持たなくていいからとツッコみたくなるくらいの有能っぷりに、俺はとっくに完敗していた。

「趣味の範囲じゃないなこれは……、普段は自炊してるのか?」

「はい。料理はばーちゃんに仕込まれたんです。他人の作ったものが食べられないわけじゃないけど、自分で作るものが一番美味しくて。ばーちゃんが死んでから、ちゃんとなかなかコレってものに出会えなくて、だから自分のが一番信用できるんです」

「そうか、苦労したんだな……」

「そうでもないですよ。お金はありましたし」

 さらっととんでもないことを言ってくるが、飾らない反応に、雅らしいなと思ってしまった。

「一時期、俺の家って友達がたくさん出入りしてたんですよ。勝手にキッチン使って料理上手なんですってアピールしてくる女いるじゃいですか。ああいうのが一番だめで、食べてとか言われて出されても本当に苦痛で、それで家に人を入れないようになったんです」

 雅の作った料理は、いかにも年寄りが好みそうなラインナップで薄味だったが、普段食べ慣れないものなのに、こんなに美味しかったのかと思うくらいのものばかりで、あっという間に平らげてしまった。
 王子兼料理研究家としてでも上手くやっていけそうで、雅が売れていく様子までイメージできてしまった。

 見た目チャラ王子なのに、綺麗に残さず食べて、片付けまでしっかりやってしまう雅にもう驚くことも飽きてしまった。

「そういえば、大森さんはどうして下着フェチになったんですか?」

「ぶっっ! …ごっほっっ」

 もう知られてはいるのだが、なんでもない日常会話のように持ち出されたので、飲んでいたお茶を噴き出してしまった。
 今さら隠す話でもないし、さらっと伝えて重く考えられない方がいいと思った。

「俺の場合、親への反抗みたいなモンだ。特に母親が過保護で性的なものは汚らわしいと排除された。俺は臆病で弱虫だったから、それに従っていた。ある日偶然、女物の下着を手にする機会があって……まあ、それは結局母に見つかって叱られたわけだけど」

 机の奥に隠したあの飛んできた下着は、結局母親の抜き打ちチェックで発見されてしまった。
 ひどく怒られて、汚らわしい、毒だから触れたらだめだと取り上げられてしまった。
 しかしそのことがよけいに反抗心に火をつけた。
 自分でネットで注文して、再び下着を手に入れた。
 どうせなら自分で穿いてる変態な息子ですと、どうだって見せつけてやるつもりで買ってみたのだが、実際に穿いてみたところ、衝撃を受けたのだ。

「自分で穿いてみたら、すごい安心感に包まれてホッとしたんだ。今まで自分を縛り付けてきた鎖から解放されたみたいに……。それで自分の姿を鏡に映したら、胸が高鳴って、どんどん興奮してきて……、まあそんな感じだ」

「……へえ、そうだったんですね」

 こんなことを誰かに話したのなんて初めてだ。
 絶対に嫌だと思っていたけれど、話してみたら胸の奥がスッキリしたようになった。
 俺はこの秘密を誰かと共有して、分かってもらいたかったのかもしれない。

「大森さん……」

 気がつくと雅の声を耳元で感じだ。
 また眠くなったのかと思ったが、雅の手はいつの間にか俺のシャツのボタンを外して中に侵入してきた。
 ぐにゃりと胸を揉まれて、あの夜の甘い痺れが戻ってきてしまった。

「ばっ……おい、こんなところで……」

「この時間誰も来ないですよ。来てもここは死角ですからすぐにはこちらに気づかれません」

 あの夜のことなんてなかったみたいに元に戻っていたのに、また触れてくるなんて雅の考えが全然読めない。

「大森さん、午後の会議出ますよね? それまで自由にしていいって言われませんでしたか?」

「あ……ああ。そうだが」

「俺も、同じです。この前は強引だったし、会社だと自重しなくちゃって思ってきたけど、こんな風に二人きりなんて、もう……我慢できません」

「んっああっ、つっ……摘むなっ」

「ああ、たまらない。この肉厚の感触……どうしてこんなにエロいんですか? こんなに美味しそうなの……食べないではいられません」

 俺のネクタイを後ろに流して、シャツの前を全開にした雅は乳首を摘んだと思ったら、片方の乳首をペロペロと舐め出した。
 時々吸いつきながら、胸全体を揉まれたら、まるで女になったように甘い声を上げてしまった。

「はぁはぁ……ぁ……くぅっ、ああっ、だめっ……だめだ……みや……び」

「ふふふっ、大森さん、乳首弄られて勃起しちゃったの? 可愛いなぁ……この前舐めてくれたし、今度は俺が……」

 ここは外とはいえ社の中には変わりないので、大きな声を上げるわけにいかない。
 それなのに、雅は嬉々とした顔でベルトを外してズボンのチャックを下ろしてしまった。
 ぶるんと下着の中から俺の大きくなったモノが飛び出してきて、雅はそれを躊躇うことなく口に入れてしまった。

「おおもりはん、もうちょっとにがい、でてきてる」

「ううっ……雅、まて……こんなっ……嘘だろ」

 俺のを咥えたまま喋る雅に、なんて光景なんだとおかしくなりそうだ。
 雅の上品な口の中に、俺のモノが……

「あっ、うっううっ、はぁはぁ……みやび……んんっ……あっっ」

「きもひいい、でふか?」

 口の中に含まれて、舌でゴリゴリと擦られた。空気を入れて卑猥な音を上げながら、頭を上下させる雅を見て、頭がクラリとした。

「きもち……い、いいっっ、ハァハァ……あぁ、そんなにはげしくっ、みや……でる……でるって」

 咥えられた時点でもうイキそうだった。
 激しく擦られたらひとたまりもない。
 雅の柔らかな髪に手を入れて押し返そうとしたのに、雅の頭は全然離れてくれなかった。

「ああっ、くっっ………あっあっ、あああーーっっ!!」

 巧みな舌使いに翻弄されて、あっという間に上り詰めた俺は、口を押さえながら達してしまった。
 ビクビクと腰を揺らして放ったが、ごくりと飲み込む音が聞こえてハッと気がつくと、雅がごちそうさまと言いながら舌をべっと出して見せてきた。

「嘘……嘘だろう、飲んだ……のか?」

「一度飲んでみたくて。確かに苦くて飲めたもんじゃないですけど、大森さんのだと思うと、急に美味しくなった気がします」

「はぁ……お前ってやつは……」

 まったく予想のつかない男すぎて、また呆れてしまった。
 しかもその舌で俺の口をペロリと舐めてきたので、ほんのり苦味感じて、うわっと言ってしまった。

 そんな俺をみて悪戯をした子供のような顔で笑った雅は、俺の乱れた服を直してきた。

「じゃ、そろそろ行きましょう」

「えっ……そ……お前はいいのか?」

 サクッと自分の服の乱れも直した雅は爽やか笑って、立ち上がってしまった。
 見れば雅のソコも服を押し上げているように見えたが、雅は治めますから大丈夫だと言ってきた。

「大森さんに気持ち良くなって欲しかったんです。時間もそんなにないし、行きましょう」

「あ……ああ、分かった……」

 確かに時間に関してはその通りだし、自分だけ気持ち良くさせてもらって、何も言える立場ではない。
 でも、雅びのソコに触れられなかったことが少しだけ寂しくて、あの時の名残なのか後ろがじわっと疼いてしまった。

 自分の変化に戸惑いながら、時間という言葉に押されるように、俺も立ち上がって社の中へ戻った。








 年に一度の国内外のメーカーが集められた展示会は朝から大盛況だった。
 このためにナイトドリームの新作を用意して、それだけではなく、大人可愛いをテーマに新シリーズも発表された。
 そしてスポーツに最適な着心地とお洒落な下着をテーマにウチの部からも新作が発表された。
 ブースにはたくさん人が押しかけて、整理券を配布するほどだった。

「こんなに人が来てくれるなんて、メンズラインも好評ですね。やりましたね、大森さん」

 メインのランジェリー部のブースの端に用意してもらったスペースで、俺と小松は接客係となって対応に追われていた。
 意外と男性のお客様が多くて、驚いたほどだった。会社としてのネームバリューはあるので、そこに期待を持ってもらったようだ。
 そして商談はほぼ成立して、なかなか幸先の良いスタートだった。
 その時、ランジェリー部の女の子が在庫の段ボールを持ってきたのが見えた。
 やけにフラついている姿が気になって立ち上がってすぐ側まで行って声をかけた。

「大丈夫か? フラついてるぞ」

「あっ、大森さん……」

 その子はいつだったか、みんなの前で悪ノリして冗談を言ってきた女の子だった。
 ぱっと思い出したが、そんなことはもうどうでもいいと、女の子の持っている段ボールに手をかけた。

「くおっ、おもっ! なんだこれ、石でも入っているのか?」

「すみません、分厚いカタログが大量に入ってます」

「こりゃフラつくわけだ。よく持ってきたな、っていうか、今度は声かけてくれよ。この筋肉、こういう時に力になれないと、付いてる意味ないからな」

 ヒョイっとはいかなかったが、俺が荷物を代わりに持ち上げてブースの奥まで運んだ。

「大森さん、ありがとうございます」

「おう、後半もお互いがんばろう!」

 軽く手を上げて爽やかに笑ったら、女の子は嬉しそうに笑い返してくれて、頭を下げてから持ち場に戻っていった。

「変わらないですね」

 背後から聞こえてきた声に驚いた振り返ったら、雅が立っていた。
 俺のことをジッと見ながら、昔のことを思い出しているような遠い目をしていた。

「なんの話だ?」

「俺が新人の頃、嫌がらせしてくる先輩がいて、エレベーターが故障している日に、大量のペットボトルを会議室の階に運べって命令されたんです。俺も意地になって途中まで運んだんですけど、汗だくになって吐き気はするし、もう、途方に暮れてて……その時、今みたいな感じで大森さんが段ボールを代わりに運んでくれたんですよ」

「え!? 俺!?」

「そうですよ。トレーニングの一環だからと言ってくれて、汗垂らしながら上まで運んでくれて……、最後は頑張れよって俺の背中を叩いてくれました」

「トレーニング……そういえば、小っ恥ずかしくてそんなような台詞を言ったような気が……」

「実はその時から、ずっと大森さんのこと、気になっていたんです」

「えっ…………」

 雅が熱のこもった目で俺を見つめてきた。
 ガヤガヤした会場だったが、俺と雅だけが立っているみたいに、二人の間には静かで濃密な時間が流れた。

 気になるって……もしかして………

 雅のその言葉の奥を手繰り寄せる前に、そこの二人早く戻ってー! と部長の大きな声が響いて、現実に引き戻された。

 もっと聞きたかったが仕方ないと思って頭をかいていたら、去り際に近づいてきた雅が、今日大森さんの家に行きたいですと小声で話しかけてきた。
 一気に緊張してドキドキと心臓が騒ぎ出した。
 とにかくこんな中途半端な状態ではもどかしくて仕方がない。
 俺はもう何も考えずに、分かったと言って頷いた。






 大盛況のうちに展示会は終了して、各自片付けが終わったら自由解散になった。
 俺と雅は飲みに誘われたがそれぞれ断って、俺の家に向かった。
 雅の家から比べると極狭に思われるかもしれないと思ったが、オーケーしてしまっのだから仕方がない。
 帰り道はタクシーで、展示会の様子などを話しながらごく普通の先輩と後輩、という顔で家まで着いた。

「なんの興味を持ったのか分からんが、とにかく狭いから、それに掃除もちゃんとしていないし、覚悟してくれよ」

 鍵を開けてドアノブをガチャンと回したら、俺の城が姿を現した。
 玄関にはゴミ回収に出し忘れた雑誌やビンカンを置いていたし、靴箱も埃をかぶっている。
 とにかく男の一人暮らしだからと連呼してみたが、考えたら雅も男の一人暮らしなのに、あのモデルルームのような綺麗さは決して真似できないと思った。

「綺麗にしている方じゃないですか? うちは週二でクリーニングを頼んでるんです。働いていて、そこまで家のことをできないですから」

 出た、謎のセレブキャラ!
 その辺りをツッコんで聞いてみたいと思いながら、雅をリビングのソファーに座らせて、冷蔵庫から缶ビールを取り出して雅と自分の前に置いた。
 この家に自分意外の誰かを呼ぶなんて久しぶりだ。
 おもてなしができるようなツマミになりそうなものは何もなかった。

「いつも弁当ですか?」

「そうだ、うちは男子厨房に入らずで、包丁すら握らせてもらえなかったからな。ろくに料理もできない状態でこの歳に……。と言うのは言い訳で、結局俺がやらないだけなんだが。今は買えばなんでも揃うし」

「まあ、そうですね。でも揚げ物ばかりだと健康に悪いですよ」

「ううっ……」

 唐揚げ弁当の容器を積み重ねていたのを発見されてしまったらしい。
 まさか年下から健康について注意されるとは思わなかった。
 自分でやるキッカケが欲しかったのもある。
 重い腰を上げようかなと考えながらビールをぐっとあおった。

「それにしても、展示会、成功してよかったですね」

「ああ、いまの部署に異動して最初はどうなることかと思ったけど、展示会も成功したし、最初の課題はクリアできたかな。なんとかやっていけそうでよかったよ」

「女性ばかりの職場で戸惑いませんでしたか?」

「そりゃそうだよ。今までオッサンに囲まれて真逆だったんだから。お前は……、昔から囲まれ慣れてそうだな」

 この華やかな容姿で明るい性格だ。
 モテないはずがない。
 呼吸をするように告白されてきた姿が想像できた。

「モテなかったとは言いませんが、昔は女の子と対立することも多かったです。子供の頃は女の子とよく間違えられましたし、それで男にもモテてライバル視されることも度々、それから上手くやる方法を身に付けたんです。女性って敵に回すと怖いけど、懐に入るとすごい団結力で頼もしいじゃないですか」

「ああ、確かにその通りだな。なるほど、それでみんなに試作品を着せられてノリノリで笑ってたのか……」

「そーです。ここではあれくらいやらないと、嫉妬が生まれたりしますから。玩具になって可愛がられているくらいが平穏でいいんです」

 俺の趣味と似たようなところがあるのかと思っていたが、雅の場合完全なビジネスだったらしい。

「お前を、少し誤解していたかもしれん。チャラいしモテるから軽そうとか……、本当は俺より真面目で仕事も私生活もしっかりしてるし、見習わないといけないくらいだ」

「ええっ、そんな……」

「いや、本当にそうだよ。お前見ていると完璧すぎて、俺はなんだって気持ちになる。平凡なのは仕方がないが、変態の趣味もあるし……」

 雅が太陽なら俺は宇宙のゴミみたいなものだ。
 自分が恥ずかしくなって小さくなっていたら、雅はソファーから降りて、俺と同じ床に座ってきた。

「俺は完璧な人間なんかじゃないです。髭を剃り忘れて出社することもありますし、風呂に三日入らないこともあります。歯磨きを忘れたり、鼻をほじりながら……」

「いやお前、女子の夢を壊すなって。それどこでも言うなよ」

「だから完璧じゃないんです。子供の頃、思い描いた自分とも違います。愛されたいと思うけど、誰でもいいわけじゃなくて、好きな人の特別になりたいのに、人の心はどうにもできなくて、空回りばかり。カッコ悪くて本当に嫌になって……欲ばかり先走ってめちゃくちゃヤっちゃうし、それで後悔して諦めようって思ってもどうにもできなくて……」

 なんだか話の流れがおかしな方向に進んでしまった。いつも飄々としている雅が、真っ赤になって熱く語り出したので、これは誰なんだろうとマジマジと見つめてしまった。

「あーもう、好きです! 好きなんです!」

「は………? 誰が?」

「大森さんですよ! 他に誰がいるんですか!」

 信じられなくて頭が真っ白になってしまった。
 確かに雅はチャラそうに見えるが、真面目で……恋愛においても、遊びで手を出すような男ではない……のだとしたら、俺とああいうことになったのは……

「………雅、分かってるのか? 俺は男だし、クソ似合わないのに下着が好きな変態で……」

「男とかじゃない。大森さんが好きなんです! それに必死に生きて生きて、自分が安らげると思ったことで、誰にも迷惑をかけないのなら、何が悪いんですか? この世界で誰もが似合わないと言ったとしても、俺は、俺は大森さんのその姿が好きです。いや、大森さんが好きだから、その姿も好きで、もちろん興奮します! 本当に好きなんです! ダメですか? 俺一人だけ、好きだって言っても大森さんは嫌ですか?」

 自分でも整理できなくて確認の意味で口にしたが、ものすごい熱量で返されてしまった。
 こんなに熱い男だったのかと思い知らされた。

「い……ダメとか嫌ではない……嬉しい」

「本当ですか……! 大森さんも俺のことを……」

「好き……だと思うが、すまん、ちょっと混乱していて」

 体の関係から先に入ってしまったが、その前にも雅で妄想していたくらいだから、俺は雅を気になっていた。
 そして身体を繋げたらもう頭の中は雅でいっぱいになってしまった。
 こんな俺のことで熱くなってくれる雅に、嬉しくて愛おしいという気持ちが溢れてきた。

「いいです! それでいいです! 好意が少しでもあるなら。大森さん、好き好きっもー本当に好き!」

「うおおっっ」

 目を潤ませて嬉しそうな顔になった雅は全力で俺に飛びついてきた。不意打ちで支えきれず、雅にのし掛かられて床に倒されてしまった。

「みや……ちょっと……待て……んんっ……っっ」

 雅は言葉を発する間も惜しいのか、俺の顔中にキスをして唇を奪ってきた。
 舌を絡ませて、雅の長い舌で喉の奥まで舐めとられた。呼吸をする暇すら与えてくれない、激しく淫らな口付け。
 キスの雨に加えて、酸欠になりそうな深い口づけに、すっかり俺の頭はトロけてしまった。

「大森さん、ベッドに行きましょう。もうすぐにでも、あなたを愛したい」

 雅のやけに男らしい誘い方に、心臓がドキッと揺れて体の奥に火がついたのが分かった。
 俺は返事をするように、雅の唇に自分唇を重ねた。







「はぁはぁ……はぁ………くっ……はぁぅぅ……」

 灼熱の杭が捩じ込まれて、腹の奥で今にも爆ぜそうにどくどくと揺れている。
 最初の時に力の抜き方を覚えたので、今回はさほど痛みを感じることなく受け入れることができた。
 もちろん、雅が丁寧に時間をかけてほぐしてくれたこともある。
 俺は四つん這いになって、雅は後ろから挿入ってきた。
 枕をつかみながら視線を自分の股間に向けた。
 俺はお気に入りの黒のショーツを穿いていて、布を押し上げて膨らんだ股間が最高にエロくて興奮する眺めだった。

「ティーバックだと、挿れやすくていいですね。大森さんの肌に食い込んでいるのも最高……」

 俺は興奮するが雅はどうなんだろうと、いまだに不安な気持ちがあったが、それを一掃するくらい雅のモノはガチガチに硬くて、俺の中でどんどんデカくなっている気がする。

「ふっ……あっ……熱い……みやび……」

「大森さ……気持ち……いい、ちんこが溶けそう……」

 なじむまでしばらく動かないと言っていたが、限界が来たのか雅は息を吐いてから腰を動かし始めた。

 始めはゆっくりだったものが、俺が熱い息を漏らして感じているのが分かると、雅は一度引き抜いてから深く打ち付けて、パンパンと腰をぶつけながら激しく打ち付け始めた。

「はぁ……はぁはぁはぁ……ああっ……ううっそこはっ…っ…」

「あっ……ここですか? ああ、いいですね。すごい……よく締まる。ここ好きですか?」

「んんぁぁ、す……き、いいっ、きもち……いいっっ、もっと……こすってく……れ」

 自分からこんな甘い声が出るなんて信じられない。何もかも気持ちよくて、雅の雄を求めて俺は涎を垂らしながら喘ぎ続けた。

「ふふっ、可愛すぎます。この肉厚で硬いお尻も……こうやって揉むと柔らかくなって……最高……ずっとこうしていたい」

「ああっ……くくっっっ」

 雅は俺の尻を優しく撫でていたかと思ったら、ぐわんと力を入れて揉みながら、激しく奥を突いてきた。

「ああっくっっ、みやびっっ……みやびぃ」

「大森さん……ハァハァ……おおもりさ……でそう……中に……」

「なか、きて……くれ、たくさ……あついのがほし……」

 雅の熱に包まれると、あの初めて女性用のショーツを履いた時の満たされる感じと同じで、なんとも言えない充足感と体中が喜びで溢れてくる。
 その熱を体の奥に感じられるなんて、最高に幸せだと思った。

「あ……イク、大森さんっっ」

「ああ……あつい……あっっ、いっ……くっっ」

 腹の奥でどぴゅっと熱いものが注ぎ込まれる感覚があった。その熱さに押されるように、俺も達して下着の中にどくどくと放った。

「ぁぁ………みや………みやび」

 雅が俺の中からズルリと自身を引き抜くと、ポタボタと欲情の名残が俺の尻に落ちてきたのを感じた。
 イッた後の気だるい重さの中で、急に寂しくなってしまって雅の名を呼ぶと、俺の横に転がった雅は手を伸ばしてぎゅっと頭ごと包み込んで抱きしめてくれた。

「気持ち良すぎて、途中で心臓止まるかと思いました」

「ばか……そんなの冗談でもやめてくれ」

 俺のことを可愛いなんて言って欲情してくれるのは雅だけだ。
 俺も雅の良いところや悪いところも見たい、もっともっとたくさん色んな話がしたいし、色んな顔が見たい。
 体の中から溢れてくる喜び、これが愛で、そして幸せなのだとやっと気がついた。

 雅を見つめていたら、雅の顔が近づいてきて、またゆっくりと唇が重ねられた。

「二人とも、もうぐしょぐしょですね。大森さん、もう一回、いいですか?」

「ああ、いいよ。体は大丈夫か? 心臓は止めないでくれよ」

「はははっ、分かりました。大森さんこそ、大丈夫ですか? 言っておきますけど俺の体力、ナメないでくださいね」

 聞けば雅は学生時代、体を作るためにサッカーを始めて、全国大会までいったという強者だった。
 体力と聞いて火のついた俺は、望むところだとやる気に燃えてしまった。
 ニヤリと笑った雅はまた俺に覆いかぶさってきて、すぐに淫らなキスが始まった。

 その夜、見た目は柔和な王子様だが、同じ体育会系同士、ぶつかり合う激しい交わりはお互い気を失うように眠りにつくまで続けられた。










 展示会の成功を皮切りに、その後もどんどん売上を伸ばして、スポーツ用のアンダーウェアは今年のヒット商品にも選ばれた。
 仕事は順調、そして私生活も……。

 もちろん趣味については雅以外誰も知る人はいないが、それでも自分を認めてくれる人がいるというのは、満たされて幸せな気持ちになった。




「今度、祖父に会ってくれませんか? 見合いを勧めてきたので、恋人ができたって言ったらぜひ会いたいって」

 日課になった非常階段での昼休憩、腰を下ろすなり雅はとんでもないことを言い出した。

「だっ……そ、それは……」

「あーー、もしかして恋人だと思っていたのは俺だけで……」

「いや、そうじゃなくて。さすがにいきなりはマズいだろう。どう考えたって、可愛い女の子を想像していたのに、俺がどしどし歩いて来てどうもお付き合いしてますなんて、相手は年配の方だろうし……驚いて倒れでもしたら……」

「それは大丈夫です。祖父は破天荒な人ですから。野生のクマを連れて来ても、笑っておめでとうって言ってくれます」

 それが普通の感覚の人なら、また別の意味で恐い。
 挨拶するのは構わないし、会いたいと思うのだが、お互い傷つくようなことにはしたくなかった。

「それに、大森さんもよく知っている人ですから、そんなに緊張することもないじゃないですか」

「は? それはどういう……?」

「あれ、言ってなかったでしたっけ。うちの会長の鬼瓦斬九郎が祖父です。あー、でもそんなにこっちに顔出さないし、あまり話す機会は……」

「はぁ!? あの顔面必殺仕事人の……鬼瓦かいちょ……」

 混乱の時代を生き抜いて、一代で会社を大企業まで築き上げたレジェンド、そして眼光だけで人を殺せるという異名のある怪物、それが鬼瓦会長だ。
 もちろん、会ったことはあるが、怖すぎて目も合わせられなかった記憶がある。

「ちなみに社長は叔父です。そうかー、知らなかったんですね」

 どうやら周りは知っていたが、当然すぎてか怖くてか知らないが、誰も口には出さなかったようだ。
 これでタワマンのセレブ生活の謎が判明した。
 ちなみに入社当時は秘密にしていたらしく、それで雅のイケメンぷりに嫉妬して嫌がらせをする先輩がいたらしい。
 その人がどこへ行ったのか、恐ろしくて聞けなかった。

「じゃ、今週末にでも」

「いやいやいや、ちょっと待て、まだ死にたくない」

「大げさですよぅ、俺溺愛されてますから」

「余計恐いわ!」

 大森さんお願いしますと言ってしがみついて来た雅にぐらぐらと揺さぶられた。
 こうなったら怪物に食われる覚悟で戦場に向かうしかない。

「………分かった」

「やったぁーー! 大森さん! 大好きーーー!」

「ぐっ……ぐるしぃ」

 雅は誰もが振り向く美貌の人だ。
 女子社員達の憧れの王子様。

 そして、俺にとっては……

「大丈夫です。もし、祖父が暴れたら、俺が守ってあげますから」

「こっ、恐いこと言うなって!」

「はははっ、大森さんはかわいーな」

 どんな俺のことも可愛いと言って愛してくれる人だ。
 お願いと甘えられたら、許してしまう。
 溺愛に関しては斬九郎氏といい勝負ができるかもしれない。

 嬉しそうに微笑んだ雅は、俺の頬にキスをしてきた。
 物足りなくて、すぐに離れていった雅の唇をじっと見つめてしまったら、フッと笑った雅は俺の耳に口を寄せてきた。

「止まらなくなっちゃうから、今はここまで。その代わり、今夜は寝かせませんよ」

 つくづく俺の心臓を揺らすのが好きな男。
 そして、最高に甘くてカッコいい、俺の恋人。





 □終わり□

















 ※※※※※※※
 extras
 ※※※※※※※







 恋人ができた。

 年上の人だ。


 幼い頃、両親を亡くして、祖父母に育てられた。
 祖母は教育熱心な人で、今思えば自分は先に逝くのだから、一人でも生きていけるような力を早くから身に付けてもらおうと厳しく育てたのかもしれない。
 祖父は会社を一代で築き上げた人で、仕事人間だが俺には甘く優しかった。

 自慢ではないが、幼い頃からモテまくりの人生で、何人と付き合ったか分からない。
 人当たりが良く誰とでも仲良くなれるタイプだが、これ以上立ち入らせない一線があって、それを意識した時にいつも別れてというのを繰り返してきた。
 正直、もう恋愛は疲れたし、適当に遊んで暮らすのもいいかななんて、思い始めていた頃に出会ったのが、今の恋人、大森さんだ。

 交友関係は広くて、ゲイの友人も何人かいた。
 人が何を選ぶのかなんてどうでもいいが、自分はそっちではないなと思っていたのに、大森さんに出会った時、自分の中に芽生えたことがない感情が生まれた。

 最初はそれがなんだか分からなくて、また色々な女の子と付き合ってみたが、前よりずっと気が乗らなくて、ひどく乾いてしまったように感じていた。

 そして大森さんが異動してきて、同じフロアで働くようになり、この複雑な感情が恋だということに気がついた。

 両親が残していってくれたクマのぬいぐるみ。
 思えば、大森さんはそれによく似ていて、見れば見るほど心を奪われた。
 しかもイカつい見た目に対して、性格は温厚で優しくて、どんどん惹かれていくのが分かった。

 だが、同じ男であるので性欲が湧くのかが疑問ではあったが、それは全く問題がなかった。
 飲み会の後、同じホテルに泊まることになり、酔って寝転んだ大森さんの服を着替えさせようと脱がせたら、勃ち上がったそこを見て、今まで覚えがないくらい興奮してしまった。

 絶対手に入れたい。
 そう思ったら頭が真っ白になった。
 今までの恋愛経験なんて何一つ通用しない。

 覚えたてのガキみたいに強引にしてしまい、後から自己嫌悪に陥った。
 どうしていいか分からず、もう諦めた方がいいかとすら思ったが、後輩を助ける大森さんを見たら、やっぱり好きだと実感してしまった。

 そんな時、満身創痍で告白したら、大森さんも好意があると言って俺を受け入れた。

 晴れて恋人同士。
 週末はお互いの行き来して甘い時間を過ごす。
 こんな幸せがあったのかと思う日々を送っている。



「遅くなっちゃった。大森さん、お腹空かせてるよな」

 金曜の夜、先に退社した大森さんに鍵を渡して家で待っていてもらった。
 普段は俺が料理して二人で食べるのだが、会議が長引いてずいぶんと遅くなってしまった。
 冷蔵庫にある食材を思い浮かべて、すぐに作れるものを考えながらエレベーターを上った。

「すみませんっ、遅くなっちゃって……」

「お疲れ、大丈夫だ。ゆっくりしていたから」

 玄関に入ると、大森さんが笑顔で迎えてくれた。
 怒っていなくてよかったと思っていたら、着替えを済ませるとちょっと座ってくれと椅子を引かれた。

「全然上手くできなくて、情けないんだけど……」

 俺が椅子に座ると大森さんがキッチンから何かを持って歩いて来た。

「人が作ったものが美味しくないとか苦手って聞いたし、どうしようかと思ったんだが、この時間から作ってもらうのは悪いから……」

 これで我慢してくれと言って、大森さんは俺の前に皿を置いた。

「えっ………これ…………」

 それはどう見ても形が悪く、ところどころコゲまであるオムライスだった。
 そしてトマトケチャップで、おうすけと俺の名前が書かれていた。
 ずいぶんと揺れていて、やっと読めるくらいだったが。

「スマン、子供っぽくて。子供の頃、好きだったのを考えたらこれしか思いつかなくて……あー料理上手なお前にこんなものを……」

 大森さんは頭に手を当てて顔を真っ赤にしていた。

 俺はそんな大森さんの様子を見た後、置かれたスプーンを持ってすくってから、口に運んでみた。

「あ……味は、それほど悪くない、と思うんだ。でも、不味かったら、食べなくていいから……」

「………しい」

「え?」

 祖母が亡くなってから、人の手料理がますますダメになった。
 食べることはできるが、何を食べても美味しいと思えない。自分で作ったものを食べる時が唯一美味しくて安らげた。

 きっと一生変わらないと思っていた。

「……名前がついたオムライス……夢だったんです。こういうのテレビとかによく出てくるけど、してもらったことないから……」

「そうか、それはよかっ……ってええ!? 泣いてるのか? そんなに不味かったらいいって……」

「違うんです。違くて……」

 今やっと分かった。
 形の悪いオムライス。
 生焼けだったり、焦げていたり。

「美味しい……美味しいんです、それが……嬉しくて……」

「雅……」

 料理に込められた愛情。
 それを感じることができたなら、料理は美味しく感じるのだと。

「美味かったならよかったよ。ほらまた作ってやるから」

「ううっ……ありがとうございます。でも次は、俺と一緒にやりましょうね。卵のカラが入ってましたから、まずは割り方から教えます」

「えっっ、よ……よろしく頼む……」

 口をへの字に曲げて慌てている大森さんを見たら、ぷっと噴き出して笑ってしまった。

 しっかり全部食べ切ってから、皿を片付けて、くるっと振り返ってぼけっとしている大森さんに声をかけた。

「じゃ、デザートお願いします」

「いや、さすがにそこまでは……アイスでも買ってくるか?」

「こっちのデザートがいいんですけど」

 財布を持って部屋を出ようとしている大森さんの手を掴んで引き寄せた。
 首元に腕を回して、ぺろぺろと唇を舐めたら、大森さんは口を開けて俺を迎い入れてくれた。
 舌を絡めて唇を吸って、口の端から溢れた唾液まですっかり舐めとってしまった。

「こっちも美味しいです」

「ばか……」

 どこもかしこも可愛いなんて反則だ。
 俺の最高に愛おしくて甘い恋人。








 □おわり□
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