愛とか恋とかのゲームは苦手です

朝顔

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本編

12、破瓜

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 キースの口づけは拙く、とてもルーファスのようにはできなかった。
 合わさった瞬間から心も体も震えてしまい、頭は真っ白になってしまったのだ。
 今キースの中にあるのは単純な喜びだ。それは、キースが恐れてた単純な肉欲が満たされたからだけではない。
 もっと甘く痺れるようなもの。
 その甘さに浸りたくて、キースは夢中でルーファスに唇を重ねた。

「ヘタくそだな、キース。俺をその気にさせたいなら、もっと舌を使うんだ」

 キースは言われた通りに舌を使った。キースがしてくれたみたいに、ルーファスの舌に絡ませて吸い付いてみた。だが、ルーファスはされるがままになっていて、まだまだキースの拙い舌技では、のってきてくれない。

 これではだめだと、キースは焦る気持ちが出てきた。考えれば素人相手にどこまで要求するのかと至るが、ルーファスはそういうのが好きなのだろう。
 薄く開いた瞳が楽しげな色を帯びているのに、キースもうすうす気づいてきた。

 キースだって、今まで、家事も庭仕事も勉強も器用にこなしてきた自信がある。種類が違うのは分かっているが、いつもは床に転がっている小さなプライドに火がついた。

 前世で性的なことには縁遠かったが、興味はあった。友人からお前まだ童貞なのとバカにされて、これ見ておけと見せられたサイトがあった。
 それは女性の喜ばせ方みたいな、ハウツーものの特集が載っていて、ふざけるなと思いつつしっかり見てしまった記憶がある。

 確かそれによると、口の中にも性感帯あると書いてあった。今になってはすっかり忘れていた記憶を手繰り寄せる。ルーファスに伸し掛かってまずは上顎の下に舌を這わせる。ざらざらした部分を舌先を使って念入りに攻めるとルーファスの体がぶるりと揺れるのを感じた。
 そを手応えに感じて、次は舌の付け根の下側に侵入した。まるで舌だけになった生き物のように、うねうねと強弱をつけて動かしてみると、たまらなくなったように、ルーファスの舌が応えてくれた。

 お返しとばかりに、キースの後頭部を髪の毛ごと鷲掴みにして、まさに食らいつかれるというように、キースの口内を食い尽くしてしまう。歯茎まで舌でなぞられると強烈な快感が全身に甘く広がって、どちらとも分からない唾液をキースが残さず喉に落としてから、唇は名残惜しそうに離れていった。

 伸し掛かっていたはずのキースは、いつの間にかルーファスの下に組み敷かれて攻守は完全に逆転していた。埃っぽいマットの感触を背中に感じる。そんな些細なことがキースの興奮をより強くした。

「キース、やっぱり君は悪い子だね。こんな悪戯どこで覚えたの?」

 どうやらルーファスは少しは感じてくれたらしいと嬉しくなったキースだが、まさか前世のネットで拾ってきましたとは言えず、なんと言えばいいのか直ぐに言葉が出なかった。

 するとじっとキースを見据えていたルーファスは、キースのシャツのボタンをはずし始めた。女性のように膨らみのない胸を見て嬉しいのかと不思議に思ったキースだが、ルーファスに胸の蕾をギュッと摘ままれて、思わず変な声が出てしまった。

「ああ、まだ硬くて色も未熟だね。ここを触らせるのは俺が初めてだろう?」

「あ…そっそんなところ…、誰もさ…触らない…いっ!いた…」

 それは良かったと言いながら、ルーファスはいきなり蕾に吸い付いてきた。

「ああっ…!!うっ嘘…!!」

 舌で転がされて強く吸われて、ときおり歯を立てて噛まれると痛みとともに、ビリビリと甘い痺れが駆け抜ける。まさかそこは女性のためにあるものだと思い込んでいたキースは押し寄せる快感の波を信じられない思いで受け止めた。

「さぁキース教えるんだ。あのキスはどこで覚えたの?誰に教えてもらったの?」

 キースに問いかけながら、ルーファスは指でキースの蕾を摘まんではゆるゆると押しつぶしてくる。足の先まで痺れてきて、キースは快感でおかしくなりそうになっていた。

「いっ…、ほっ…本で…自分で調べて…」

 媒体は違うがこの世界に変えて考えれば、本が一番近いだろうと思った。自分で調べたと言うしかなくて、その恥ずかしさにキースの頬は赤さを増した。
 キースの答えに、ルーファスの手は止まった。急に途切れた甘さに不安になって、ルーファスを見上げると、新緑の色をした瞳は全てを見抜こうとするようにキースに注がれていた。

「へぇ、じゃあ本当に君に触れたのは俺が初めてなの?」

 そのことがそんなに大事なのか分からなかったが、それは本当のことなのでキースはルーファスに目線を向けたままコクリと頷いた。
 するとルーファスは鮮やかに瞳を輝かせて嬉しそうに微笑んだ。いつも飄々としていて、どこか掴みどころのない男の心が少し見えたような気がした。

「なんだろう、くだらないことだと思っていたけど。俺にも人並みの感情があるのだと今気が付いたよ」

 どこか自嘲めいた笑いを浮かべたルーファスは、キースと目が合ったら今度は優しく首筋に吸い付いてきた。先ほどまでの痛いくらいの快感と違う、柔らかく肌に触れていく行為はもどかしくて、ただの欲望ではなく、別の感情が流れ込んでくるようで、キースの胸は切なく震えた。

 もっとひどくして欲しい
 何も考えられなくなるくらい
 でないと、勘違いしてしまう
 この行為の先に何かがあるのだと…

 間もなくしてキスの雨が次々と落ちてきて、快感だけを追いかけるためにキースは目を閉じた。



 □□


「んっ…くっ…ふっ…」

 しばらくもどかしいくらいに優しくキースに触れていたルーファスだったが、だんだん火の勢いが増してきたのか、またいつもの荒々しく攻め立ててくる動きに戻った。
 すでにキースの上半身に花びらみたいな赤い痕を残して、それを満足そうに見つめている。

 ルーファスの太くて長い怒張を、口いっぱいに咥えたキースは涙と鼻水を流しながら、必死に舌を這わせて喉の奥まで受け入れている。
 まさか自分で口ですることになるなど思いもしなかったので、こちらについての知識はゼロ。最初に歯を立てるなと言われて、どうすればいいのか一から教えられた。

 上手だと褒められるたびに嬉しくて、もっと喜んで欲しくて息をするのも忘れて夢中になる。
 そうすると、ますますルーファスのそれは大きくなって硬度を増していく。

「…キース、もういい」

 キースの柔らかい髪を掴んだルーファスは、自身をずるりと引き抜いた。口の中をうめつくしていた熱さがなくなって名残惜しい気持ちなったキースは、泣きすぎて赤くなった目でルーファスを見つめた。
 心なしか息を荒くしたルーファスは、キースに下着まで脱いで四つん這いになるように命じた。そんな赤ん坊のような恥ずかしい恰好なのに、ルーファスに言われると素直に従ってしまう。

 前回はしつこいくらいに下に触れてきてくれたのに、今回はキースのそれをルーファスはまったく触ってくれない。それなのに、下着までぐっしょりと濡れていて、先走りの蜜が糸を引いて滴っていた。
 最初に蕾を弄られていた時にすでに濡れている感覚があった。ルーファスを咥えながら、早く自分に触れたくてたまらなかったが、手を伸ばすと悪戯はだめだと言われて許してもらえなかったのだ。

「すごいね。女の子みたいにこんなに濡らして」

 後ろから抱えられるようにして、ルーファスに握られただけで達しそうになってしまいキースは唇を噛んで声を殺して堪えた。

「こら、声を抑えたらだめだ。出した方が楽になるから」

 ルーファスはキースの先走りの蜜を取って、それを指を使って後ろの蕾の中に塗り込めるようにしてほぐしていく。

「る…ルーファス、そっそんなところ…あっ…」

「男同士の行為ではここを使うんだ。でも女の子みたいに自然に濡れるわけじゃないから、ちゃんとほぐさないとね」

 自分でも触れるようなことはない場所に、ゆるゆるとルーファスの指が出入りしていて、むず痒いなんとも言えない感覚が背中をつたってくる。
 キースも男同士が体をつなげる行為でそこを使うというのは知っていた。実際に自分が体験することになるとこれから何が起こるのか、いまだ快感とは言えない状態に恐ろしいと思う気持ちが出てきた。

「…んっ……」

 すぐに終わるかと思いきや、ルーファスは念入りに指を増やして広げていく。このままむず痒い状態がずっと続くのかと思ったとき、ルーファスがいっそう深く指を突き入れた。ある一点をかすめるように刺激されたとき、今まで体験したことのないくらいの快感がキースの体を突き抜けた。

「ああっ!!だっ…だめ!そこぉ…」

「あぁ、ここ?」

 だめだと言ったのに、ルーファスは執拗にそこばかりめがけて指を動かすので、キースは強い快感でおかしくなりそうで、いっそのこと這いずって逃げてしまいたくなった。

「キース…入れるよ」

 そう言ったルーファスはキースの腰をがっしりと掴んで、入り口に張りつめた自身を当てがってきた。指で丹念にほぐされたそこは、初めてにもかかわらず、従順に怒張を飲み込んでいく。

「は…あうぅ…、くっ苦しい…痛い…むり…これ以上、だめ…」

「っ…息を吐いて、力を緩めるんだ。そう…、ほらもう半分入った」

 すでに異物を受け入れる苦しさで息も絶え絶えになっていたキースだが、力をなくしていた自身をルーファスにまた触れられると再び体に火がついた。次第に強引に快楽の波に揉まれて、前を弄られた快感で緩んだ体を一気にルーファスが貫いた。

「あああああっ!!」

 その深すぎる繋がりに、苦しさと鈍い痛みが押し寄せてくる。汗も涙も鼻水も涎も、ありとあらゆるものを垂れ流して、キースは叫ぶように声を上げた。

 自分ばかり苦痛に耐えているのかと思っていたが、上から落ちてきた滴に気が付いて、体をよじってルーファスを見上げると、ルーファスも汗を流して堪えるような表情をしていた。

 その瞬間、ルーファスもまた同じ思いであると感じたキースは、痛みも苦しみも体の中に溶けていくみたいに受け入れていった。覆いかぶさってきたルーファスの口づけを受けたら、後に残されたのは剥き出しの快楽だけで、一緒に高みに上れるということはこの上ない喜びに思えたのだった。






 □□□
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