愛を知らずに生きられない

朝顔

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(13)燃え上がる思い

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 あのお互い口淫に耽った日から、放課後は毎日のようにカインが迎えに来た。
 手を繋いで会話だけの日もあれば、軽いキスをしてそのまま別れる日もあった。かと思えば、ぐちゃぐちゃになるまで激しくキスをして、手でノエルをイかせて、その白濁をお互いの口に入れて、舌で舐め合う日もあった。

 毎日何をするか分からないカインに、ノエルは完全に翻弄されていた。

 そして、翌日が休みになる前の日、週終わりの放課後、いつものようにノエルを迎えに来たカインは、今日は俺の部屋に来てと言ってきた。

 いくらなんでも、その先を暗示させる誘いに、ノエルの心は戸惑いより嬉しさの方が勝った。
 ひたすら焦らされるような行為に、もう心は限界になっていた。
 その先に虚しい思いが待っていたとしても、踵を返して戻ることはできない。
 自らも求めていることを、ノエルは十分に分かってしまっていた。

 夕暮れに包まれた王宮で、カインが暮らすのは東の宮殿で、まさに白亜の宮殿と呼ぶに相応しい白い外観の美しい建物だった。
 ぱっくりと開けた広いエントランスには、使用人達が並んでいて、その中を当然のようにカインは進んでいき、どういう顔をしたらいいか分からないノエルは下を向きながら後に続いた。

 カインの部屋は2階のほぼ全てだそうで、その広さと部屋数に目が眩みそうになる。
 一応、ノエルも貴族の端くれなのだがその違いは歴然だ。
 カインの後に続いて長い廊下を進んでいく。ノエルは周りを見回していた。

「きょろきょろして、そんなに珍しい?」

「そりゃそうですよ。うちは俺の部屋はありますが、妹のドレスが多過ぎて、俺の部屋まで進出してきましたからね。こんなに広い空間が羨ましいです」

「そう」

 ぽつりと一言だけこぼして、カインは先に行ってしまった。
 興味がなかったのかと思ったが、再び質問をして来た。

「ああ、確かノエルには、兄と妹がいるんだったね」

「ええ」

「仲は良いの?」

「そうですねー、仲はそれなりに良いですよ。兄は真面目でよく出来た人で、すごく頼りになります。妹は家にいるとうるさいくらいくっついて来るので、面倒だけど可愛いですね」

 ノエルがそう言うと、カインは寂しげな顔で微笑んでいた。
 まただと思った。家族の話は馬車の中でもしたのだが、家族の話になるとカインはあの寂しげな顔になる。まるで、無理やり笑顔を作っているみたいな顔だ。

 胸が締め付けられるように痛んだ。それはカインの痛みが自分に飛んできたみたいだった。

 もっと、もっとくればいいと思った。
 それでカインが本当に笑えるならその笑顔が見てみたかった。

 ノエルはカインの背中に抱きついた。冷たく思っていたその体が、実はすごく熱いことをノエルは知ってしまった。
 きっと、自分だけが知っているわけではない。でも今だけは自分のものだと思った。

「どうしたの?我慢できなくなった?」

「……はい。もう馬車の中から……ずっと……」

「ふっ、なら俺の勝ちだ。君を誘う前からずっとこうしたくてたまらなかった」

 なんの勝ち負けか分からないが、カインはノエルのしがみついていた手をほどいて、ぐるりと回り、ノエルを廊下の壁に押し付けて唇を重ねてきた。

 ぴちゃぴちゃとお互いに舌を吸って重ねる音が廊下に響いた。

「あ…ふ…カイン、はぁはぁ……こんなところじゃ……」

「だめだよ、我慢できない」

 カインはノエルのシャツのボタンを外そうとしていたが、集中できなくて焦れったそうにしていた。ついに引きちぎってしまい外れたボタンが廊下に転がっていったのが視界の端に見えた。
 それすらも、欲情を掻き立てるひとつの材料で、お互いの興奮はより熱くなるばかり。
 露になったノエルの胸に手を這わせたカインは感嘆のため息をもらした。

「極上のシルクみたいだね。ブルームーンで初めて見たときは、早く触れてみたかったけど、ヴァイスとエドがいたからね。思った通りの最高だ」

「ひっん……ぅぅ、くすぐったい……」

 女性のように膨らみのない平らな胸の突起に、カインは吸い付いてきた。

「あああ!そっ…それだめ……」

 吸って舌で潰して、歯で甘噛みして、指でぎゅと摘ままれて引っ張られた。

「赤くなってきた…、ほら綺麗な色だよ」

「あっ……くっう……だめ、変な…声でちゃう」

「いいよ、声聞かせて。ノエルの声聞きたい」

 カインはノエルの胸に吸い付きながら、下にも手を這わせてきた。あっという間にズボンからすでに固く張りつめていたアレを取り出して、ぎゅっと握りしめた。

「ああんんん!!!イクぅぁぁぁぁああ!!」

 握りつぶされるかもしれないという本能的な恐怖はもっと深い興奮に変わる、カインから与えられる痛みはすでに快感になっていて、強く握られただけでノエルは白濁を撒き散らして達してしまった。
 長く続く射精感がノエルの体を支配して、快感でおかしくなりそうだった。

「ああ…俺、こんなところで……」

 ここはまだ廊下であって、今は誰の通りもないがいつ誰が来るか、または驚いて引き返したかもしれない。一度達したことで、ノエルの頭は恥ずかしさをやっと感じ始めた。

「まだこれからだよ。ベッドへ行こう」

 ノエルは服は転々と転がっていたが、もはや拾う手間も惜しいくらいだった。そのまま手を引かれて、やっとカインの寝室まで連れてこられたのだった。


 □□


「はぁああっ……もう、もうむ…り、ぬいて……」

 寝室に入ってすぐ、ノエルはベッド上に投げられた。
 うつ伏せになるように言われて、尻をつき上げるような格好をさせられた。
 いわゆる、バックの体位だが、元後ろで入れていた側としては、自分がこの格好をするのにはまだ少し抵抗があった。

 しかし、カインが何やらぬるぬるしたものを後ろに塗りつけて、孔を指でほぐし始めると、わずかに残っていた抵抗は散り散りになってしまった。

 指を入れられるだけで初めは異物感があったが、一本二本と増えていく度に、何とも言えないむず痒さの先に快感がくすぶっているようだった。

 繰り返しもどかしい快感の波が押し寄せてきて、ノエルは指を抜いてくれと懇願したが、丁寧にやらないといけないからとカインに拒否されてしまった。

 さらに指が増えて、ぐるんとかき混ぜられたとき、意識が飛びそうなくらいの強烈な快感がノエルの奥で花開いた。

「なっ……なにこれ!?う…嘘……すごい痺れた」

「ああ、この辺?ノエルの良いところは…」

「いあああはあああ!!!なっ…だっだめぇ!!そこ、擦らないでぇ……、あっ!やっやめ……おかしくなる」

 ノエルが狂ったように喘ぎだすと、カインの目の色が変わり、執拗にそこばかり目掛けて擦ってくるので、ついにまたノエルは泣きながら前を触ることなく達してしまった。

「はははっ、後ろだけでイったの?初めてですごいじゃないか、ノエルは淫乱の素質があるな」

「…やだ、そんなの……」

「どうして、俺はその方が嬉しいのに」

 そこで、仰向けになってと言われて、カインと向き合い、下から見上げるような格好になった。

「俺と一つになるんだよ。こうした方がノエルの顔が見れる」

 そう言ってカインは、自身のモノをノエルの後孔に押し当ててきた。
 カインの怒張はすでに十分な固さと長さがあったが、丁寧にほぐされたのとオイルのようなものを塗られているおかげで、小さな孔はズブズブと飲み込んでいった。

「んっっはぁ…………」

「ノエル、いいよ、そう、力を抜いて……。ほら、見える?もう、全部飲み込んだよ」

「あぁ……、カインの大きいのが……入って…」

「ノエルの、ナカすごい……。うねうねしてて、早く精を飲み干したいみたいに食らいついてくる」

 カインもまた顔が上気して、荒い息をはいている。自分の中で感じてくれているのだと思うと、ノエル後孔はきゅっと締まった。

「うっっ……、こらノエル、そんなに締めて悪い子だ」

 まずは、様子を見るようにゆるゆると腰を動かしてきたカインだが、徐々に速度を上げてパンパンとぶつかり合う音を立てて、打ち付けてきた。

「はぁ…あん…あ…あ…、んっ…はぁぁん…あっあっ…」

 ノエルはもう声を抑えることができない。ナカをカインのモノで擦られる度に、あられもない声を上げてしまう。

 カインのかさの部分で、良いところを狙われて突かれると、気が狂いそうになって、ノエルはのけ反って声を上げた。

「あぁ…ノエル、いいよ。あぁ俺は……君を壊したい……」

 ノエルが目を開けると、情欲に燃えるような目をしたカインがこちらを見ていた。その強い表現も全て快感に変わって耳に入ってくる。ひたすら欲を掻き立てるものになってしまうのだ。

「……い……よ」

「…ノエル?」

「こ…のまま、壊して……、俺……を、めちゃくちゃに……壊して……、カインにだったら……全部いい…から。俺の…全部…あげる」

 ノエルが、快感の波に飲まれながら、やっとそう告げると、カインは強く腰を打ち付けた後、ノエルを強く抱きしめてきた。
 後ろの奥にどくどくと熱い飛沫を感じてカインがナカで達したのが分かった。

「はぁ……すごい、おくが……あつ……んん」

 カインはすぐにむしゃぶりつくようなキスをしてきた。そのキスの間に再び硬度を取り戻して、ナカの圧迫感が復活した。

「あん……また……」

「…まだだ。まだ全然足りないよ」

 カインは再び律動を開始して、中に出されたものが溢れて卑猥な音をたてる。

 終わりの見えない快楽とカインの力強さに、ノエルはぶるりと体を震わせた。
 そしてまた、自身も熱を取り戻していくのが分かる。

 今、ノエルの中にはカインに抱かれることの喜びが溢れている。それはただ快楽を求めたり、欲望の捌け口としてではない。

 その手で触れられて、体を繋げたことで、ついに否定し続けた自分の思いに気づいてしまった。

 カインを好きになってしまった。

 今、ノエルの中から溢れてくる思いはそれしかない。

 この一方通行の思いを、カインに伝えたらその手が離れていってしまいそうで、ノエルはその思いを飲み込んだ。

 未来に繋がることのない。不毛な恋だとしても、火のついた思いは消えることなく、ノエルの中でひとり燃え上がっていく。

 虚しくて悲しい熱さから目を逸らすように、夢中でカインの背中にしがみついたのだった。




 □□□
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