愛を知らずに生きられない

朝顔

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(12)苦い始まり

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「俺にすれば良いのに、俺なら誰でもちゃんと好きになるよ。一人には絞れないけど」

「申し訳ないですけど、気持ちの多い方もご遠慮いただいております」

「つれないなぁ。俺ならレイチェルもノエルも一緒に愛せる自信があるのに」

 放課後になっても、エドワードの勢いは止まらなかった。
 レイチェルがげっそりしながら、あの人どうにかしてと、半泣きで訴えてきた。
 すっかり仲良くなったねというと、ギロリと睨まれて今日はすぐ帰るわと言って、スタスタと歩いていってしまった。

「いい足だね、レイチェル。俺は両方いけるから。ノエルも考えてみてね」

 冗談のようにペラペラと言葉が出てくるエドワードにノエルも降参した。

「何か目的があるんですか?レイチェルは分かりますけど、俺にまでそんなことを言うなんて……まさか、博愛主義者だなんて言わないでくださいよ」

「近いものはあるねー。好きなものはみんな好きにだし。俺はさー、兄さんのこともちゃんと好きなんだ。さっきは欠落してるなんて言ったけど、もしかしたら変わってくれるかもしれないと期待もしているんだ。シャツのボタンを留めてたから」

「……なんの話ですか?シャツ?」

 エドワードが、カインのことを少なからず思っていることは分かったが、それとシャツのボタンがどう関係するのか、ノエルには分からなかった。

「言ったでしょう。みんなやってもらってた人なんだ。誰かに何かするって…、初めてじゃないかな」

「え??」

「覚えてないの?昨日ノエルが一人でやってるところみんなに見せるって言って脱ぎ出したんだ。それを、兄さんが止めたんだよ」

 驚愕の事実にノエルは震えた。カインのシャツがどうとかの話はぶっ飛んで、自分の痴態に衝撃を受けた。

「うう!嘘ですよね!?おっ俺がそんなことを?自分でやりだしたんですか!?」

「えー…と、まぁそんな感じ」

 エドワードはニカっと笑って軽く言っているが、酔った自分の恐ろしい行為にノエルは愕然となった。

「そんなに落ち込まないで、未遂だし、可愛かったからさぁ」

 そういう問題ではなく、すっかり気分が落ちてしまったノエルは、まだ用事があるというエドワードを残してもう帰宅することにした。

 ふらふらと校門に向かって歩いていると、見慣れない明らかに周りと違う馬車が止まっていた。
 4頭立ての豪華な馬車で、周囲の注目を集めていた。

 近寄るのは失礼かと避けて行こうとしたら、ドアが開いて行く手を遮ってきた。

「ノエル、迎えに来たよ。今日からは一緒に帰ることにしよう」

「え!?カイン!!」

 戸惑っていたら、周囲の注目を集めてしまい、カインに促されて仕方なく送ってもらうことになった。


 □□


 馬車が走り出してすぐ、カインはノエルの手を引いて自分の膝の上に乗せた。
 そして首の後ろを掴んでノエルの頭を引き寄せて、今日は下から唇に食らいついた。

「は……ん……くふぅ………ん………あぁ…」

 ぴちゃぴちゃと音を立てて唇を吸って、時おり舌を絡めて円を描くように歯肉を舐められる。ゾクゾクとする痺れが背中を這っていき、それがノエルは快感に切ない声を上げた。

 しばらくお互い夢中でキスをしていた。唇が離れたときに唾液が糸になって繋がっていて、それがひどく扇情的に見えた。

「はぁ…は……ぁ、カイン……どうして、急に……」

「どうしてだろう…昨日ノエルと離れてから、ずっとこうしたくてたまらなかったんだ」

 カインはまだ名残惜しそうに、ノエルの唇を舐めた。その時の服が擦れた感覚だけでもたらされる快感にノエルはビクりと揺れた。

「……ノエル?もしかして……」

「あっ!だめっ…触ったら……」

 カインが指で形をなぞるように触れてきて、ノエルは他人に触れられた感触で突き抜ける快感に後ろにのけ反った。

「ノエル、勃ってるよ。女の子としても興奮しなかったのに……。俺とキスして大きくなったの?」

「あぁ…、言わないで……」

「触りたい、触らせて」

 ノエルの返事もきかず、勝手にズボンの前をくつろげたカインは、中から張りつめるほど膨らんで、大きくなったノエルのものを取り出した。

「んぁ……だめ……カイン……」

「へぇ…ノエルのここは、綺麗だね。同じ男でも嫌な気がしない」

 そのまま優しく握ってするするとしごきだした。

「んっ……はぁ……あぁ…あん…」

「ノエル…気持ちいいの?ほら蜜が出てきた」

 カインに擦られて、すぐにイキそうなのを必死で堪えていると、先端から先走りの蜜が溢れてきた。

「…うん…、はぁ……んんっ」

「ほら、気持ちいいって言って」

「あぁ……いい、気持ち…いい」

 狂いそうな快感に閉じていた目をうっすらと開けると、カインの琥珀色の瞳がこちらを捕らえていた。一瞬も見逃さないという強い色で、ノエルの体も火がついたように熱くなる。

 そのとき、何か思いついたようにノエルを椅子に座らせたカインは、おもむろにノエルの下に顔をうずめてきた。

 一瞬何が起きたのか分からなかった。まさか、王子様がそんなことをするなんて露ほども思っていなかったので、その光景が信じられなかった。

「う…嘘!!」

 ためらいもなくノエルのモノをぱくりと口に咥えたカインは、ズブズブと吸い込んだ。

「ひぃぁああ!嘘……だっだめ!!」

「んっ……、確かに苦いが……、ノエルのものだと思うと味は悪くない」

 前世で口淫はもちろん経験済みであるが、それを凌駕するくらいの快感が襲ってきた。

「あぁ、もっ…もう、そんな…、だめだめ!!本当にもう、出ちゃう!出ちゃうからぁ!」

 王子様のお口に出すような失態は出来ないと、騒ぎだしたノエルを咥えながらニヤリと笑ったカインは、そのまま口を離さずに鈴口を舐めながら吸い上げた。

「だめぇっ……あっ!ああああ、いっいくっっっ!!!」

 無意識に腰を揺らしながら達するノエルを咥えながら見つめて、カインは最後の一滴までごくりと飲み込んだ。

「…うっ……うそ……、あっんんん」

 そのままペロペロと舐めて後始末までしてくれたカインに、驚き以外の言葉が見つからない。

「苦いね…、喉に残るな…」

「あっ…当たり前ですよ!なんで俺のなんか……」

 少し考えるような顔をしてから、カインは何も言わずにまたノエルに口づけてきた。
 カインの舌には自分の味が残っていて、それが自分のものだと思うと余計に恥ずかしくなった。

「ノエル…、俺のも舐めてくれる?」

 まさか、やってもらって嫌とも言えず、ノエルはカインの足元にもぐり込んだ。

 カインのモノは服の上からも分かるくらい立ち上がっていた。自分との行為で興奮してくれたのだと思うと、ノエルのお腹の奥にもまた欲情の炎が灯ったのを感じた。

 くつろげてから取り出すと、その柔和な外見からは想像もつかない、赤黒くて大きい凶器のようなものが出てきた。

 自分が男のモノを咥えることなどもちろん初めてで、まさかこんなことになるなんて、思いもしなかった。
 ごくりと唾を飲み込んで、気合いを入れてから舌を這わせた。おずおずと舐めてみたら、そこまで嫌な気分にはならなかった。むしろ、ペロペロと舐めると硬度を増していくそれが、愛しいと思えてきた。
 カインがやってくれたみたいに、大きな口を開けて咥えてみる。男の口でもいっぱいいっぱいなくらいの大きさで、なんとか喉の奥まで咥えこんだ。

「んっ……」

 カインの感じている声がすると、もう抵抗の糸は完全に切れた。
 男同士だからこそ分かる、気持ちよさを感じるポイントを的確についていく。舌を這わせて舐めて、吸い付いたり手も加えてしごいたりしながら攻めていくと、カインの息が上がってきたのが分かった。

「い…いいよ、ノエル。もっと奥まで咥えて…、あぁその顔いいね。涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ……はははっ」

 カインがノエルの後頭部を掴んで、喉の奥まで押し込んできた。思わず歯を立てそうになるのを必死で堪えて奥まで受け入れる。
 苦しさからえずきそうになるのを堪えると、言われた通り、涙も鼻水も止めどなく溢れてぐちゃぐちゃの顔になっていく。

「あぁ、俺のでノエルが壊れていく…、はぁ……ノエル……、もっと壊れてよ。いっぱい出すから…全部飲み干して……」

 ひときわ大きく膨らんだカインのものが、ノエルの喉の奥で爆発するように達した。
 口内に飛び散った精液を、ごくごくと喉の奥に落とす。それは苦くて苦しくて、切ない味がした。

「ほら、ちゃんと綺麗に舐めとって、いいね。ノエルの舌は柔らかい、気に入ったよ」

 そう言ってカインはノエルを抱き寄せてまた唇を吸った。

 このお互いの欲望を吐き出し合うような行為は快楽の世界に無理やり連れ出されて、裸にされて放り出されたようなもので、愛を交わすものとは対極のように思えた。

 人を好きになりたいと願った自分の思いが頭の中で響いていたが、カインのくれる熱に溺れたノエルはすがりつくようにして、その熱を受け入れたのだった。



 □□□
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