炎よ永遠に

朝顔

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XXII

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 朝から軽快な音楽が鳴り響き、学校内はいつもと違う熱のこもった雰囲気になっていた。

 今日はユアマイエンジェルコンテスト当日。
 一日授業はなく学内に業者が入りたくさんの出店が並んでいた。
 一般区画にも同じように店が並ぶが、規模は大違いだ。天使区画の生徒は家族や友人を招待することができるので、かなりの人数が来るそうだ。
 そして、メインイベントのコンテストは、両区画の中央にある、野外ホールで行われる。
 ここは一般区画の生徒も入れるので、聖堂のイベントと同じく全生徒が集合する。
 各国の要人がゲストとして招待されているし、審査員には俺も知っているくらいの大物の名前が並んでいた。

 コンテストは午後からだが、すでに着替えを済ませて自分の部屋を出ると、アルメンティスに廊下で出会ってしまった。
 まるで俺の着替えを待っていたかのようなタイミングだなと思いながら、一応声をかけた。

「アルティのおかげで衣装が間に合ったよ。ありがとう、なかなか気に入ったよこれ」

 まず業者を学内に呼ぶだけで時間がかかるのだが、それらを権限を使ってすっ飛ばして、最速で仕上げてもらった。記事から、服のデザインまで全てアルメンティスに決めてもらったが、さすがの生粋の御坊ちゃま、なかなかいいセンスで気に入ってしまった。

 アルメンティスが選んでくれた衣装は、シンプルな白いスーツだった。
 シャツとジャケットにパンツは白、中のベストだけ光沢のある紫の生地が使われている。金糸でアルガルト家の紋章刺繍されていて、繊細で高級感あり美しかった。

 アルメンティスは俺の姿を見た口元に手を当てたまま動かなくなっていた。
 話しかけても反応がないので、何か着方が間違っていたのかとチェックしてみたが、とくに問題はなさそうである。

「………いい」

「へ?」

「……すごくいい。思った以上に良すぎて困るなぁ」

 目を輝かせながらアルメンティスは近寄って来た。
 アルメンティスはブラックコーデで、シャツもネクタイも全てブラックで統一されている。神はみんなこのスタイルらしい。

 側にきたアルメンティスは、よほど自分のデザインが気に入ったのか、俺の顔を両手でふわりと包んだ。

「レイ……。このまま二人でここにいようよ。こんなに可愛いレイを誰にも見せたくない」

 そんな風に大切にされているようなことを言われるとドキッとしてしまう。

「だ…だめだ、そんなの」

「どうして?レイは人前が苦手だって嫌がっていたよね。俺も出なくていいって言ったのに、結局どうして参加することになったの?」

「そ……それは……」

 アルメンティスは俺が参加すると言っても、分かったと言って大して興味がなさそうだった。だが、そんな質問をしてくるということは、少しは気にしてくれたのかもしれない。

「だから…あれだろ。色々迷惑かかるんだろ、お前に……。これに俺が出て少しでも力になれるなら…、ああ、もう細かく聞くな!」

 まさか本人の前で言わなければいけないなんて思っていなくて、俺は顔が熱くなるのをごまかすように手で隠した。

「………俺のために、苦手な人前に出るのを我慢しようとしたの?」

「き…聞くなよ……。優勝は無理でも少しくらいなら…っ…うわっ!!」

 どんな顔をしているのか見られなかったが、アルメンティスが飛びつくように抱きしめてきて、俺はあっという間に大きな腕の中に捕らわれた。

「……反則だよレイ。そんな可愛い格好して、可愛いことを言うなんて……」

 耳元にアルメンティスの熱い息がかかって、ゴリゴリと下半身を押し付けられて、すでに存在感のある硬い感触に俺は慌てた。

「お…おい、何を硬くしてるんだ。だめだ…待て、この衣装を汚したりしたら…」

 アルメンティスは俺の言うことなんて聞かずに、カチャカチャと音を立てながら、片手で俺のベルトを外してズボンのチャックまで開けてしまった。
 何とも驚くほどの早技に、これが神の手腕かと変な感想が頭に浮かんできたが、慌てて違う違うと気を取り直した。

「だっ……こら!だめだ!こんなところで……服が汚せないから…って……んっつ…ちょっ……!!」

 向かい合ったままの状態から反対側にされて、後ろからアルメンティスは俺のペニスを握ってきた。
 わずかに反応していたソコは、巧みに擦られたらあっという間に反り返るほど立ち上がってしまった。

「………はぁ……だめ……だめだって」

 住居とはいえここは一階の廊下、ジェロームも来る場所だ。こんな所で大きな声は出せない。それに足下に落ちたズボンに先走りが垂れてしまいそうで、壁に手をついて必死に耐えていた。

 アルメンティスが俺の名前を呼んで、孔に指を這わせてきた。唾液でたっぷり濡らされていたのか入口はすんなり受け入れた。

「あれ…、昨日のはバスルームで全部かき出したと思ったのに、ちょっと出てきた」

 朝っぱらからこんな場所で普通に言われてしまうと、恥ずかしくて死にそうだ。
 昨夜も、アルメンティスとセックスをしたが、その後一緒にシャワーを浴びてそこを丁寧に洗い流されたはずだった。

「ほら、少し慣らしただけで、すんなり入っていくよ。レイのここはすっかり俺の形になったね」

「…ぅう……くくっ……はぁ…は……」

 アルメンティスのモノは大きくて、いくら弛んでいても息を吐きながら受け入れないといけない。
 最近になってやっとその力加減が分かってきた。

「アルティ……ジェ…ジェロームにこんなところ…見られたら……」

「心配ないよ。ジェロームは裏方の仕事で会場を走り回っているから。レイはやけにジェロームのこと気にするよね。焼けるんだけど」

 後ろから貫かれてやっと入ったと思ったら、アルメンティスは尻を掴んでぐりぐりとナカで円を描くように動かしてきた。
 これをされるといつも気持ち良すぎて、俺が大きな声をあげて悶えるのをもう知り尽くしている。

「だっ…あああ!!っつ!だっ…て、ジェロームはアルティの……天使だろ……、アイツとも……こういう…ことを……」

「してると思っていたの?言っていなかったっけ。ジェロームは代々、うちの執事をやっている家系の男なんだ。神は一人は天使を置かないといけないから、ジェロームを天使にしていただけだよ。それにアイツは異性愛者だし、恋人もいるよ」

「ええ!?そっ…そんな……」

 また誰も教えてくれなくて、驚いたことが増えた。ずっと天使としてアルメンティスのこういった世話までやってきたと思っていたのに、ここでも執事のような存在で、まさか、恋人までいるなんて聞いていなかった。

「あれ?もしかして……嫉妬してくれたのは、レイの方だった?」

「ううっ…してな……あっ…んああ!」

 真っ赤になって壁に顔を押し付けて、自分の思い込みが恥ずかしくて悶えた。
 そんな俺を見てなぜか中にいるアルメンティスがぐわんと大きさを増した。

「レイ…レイ…なんて可愛いんだ。だめだよ。こんなに俺を煽るなんて…やっぱり今日は行かせたくない」

「はぁ…アルティ……あぁ……」

 ゆるゆると動き出したアルメンティスは、だんだん速度を上げて腰を打ちつけてきた。
 俺は壁に手をついて、揺らされる度に湧き上がってくる快感に声を漏らした。
 ジェロームがいないと分かっていても、廊下という場所は気になってしまう。
 そんな俺を乱して声を上げさせようと、アルメンティスは前を擦りながら、責めてくるので、たまらず嬌声を上げてしまった。
 俺だってこのままベッドになだれ込んで、一日アルメンティスと繋がっていれたら幸せだと感じてしまった。
 だが、直前でキャンセルしたら、アルメンティスがあることないこと言われるだろう。
 俺はそれが嫌だった。

「レイ…」

 耳元で切ない声で自分の名前を呼ばれると、胸がキュュウと絞られるような感じがして、たまらない気持ちになる。
 そしてこれが合図だということもよく学んでいた。

「アルティ…出して……たくさん……俺のナカに……」

 初めはありえないと思った台詞も今は作る必要もなく、心の中からすんなりと出てくる。それがどういう事を意味しているのか、知るのが怖かった。

「……レイ……いくよ」

 パンパンと激しいリズムで打たれて、俺は壁に顔を押し付けて、快感の波に耐えた。
 先に限界を迎えたのは俺で、アルメンティスの手の中に放ってしまった。

 ビクビクと揺れて達していたら、アルメンティスも俺の中で爆ぜた。
 熱く流れるモノが腹の奥から俺を満たしていく。
 こんな快感を知らなかった。
 この瞬間はいつも満たされて、まるで本当に愛されて幸せであるような気持ちになる。

 それだけで、俺は十分だと思った。

 人を愛する資格のない俺は、人から愛されることもまた夢の夢だ。
 これは白昼夢、熱に侵されて見ている幻。

 いつかこの世界から現実に戻った時、この夢を忘れることができるだろうか。
 それが、だんだん怖いと思うようになっていた。






「こっちこっち!なに?レイ、汗だくじゃない!」

 コンテストの参加者用控室の近くで走っていると、ミスリルが手をブンブン振ってこっちだと教えてくれた。

「ああ…間に合ったんだな。よかった……階段が思った以上にキツくてさ」

「はぁ?エレベーター使わなかったの?三台くらいあるから、混んでなかったでしょう?」

「エレベーターは苦手なんだ。少しならいいが、ここは時間がかかりそうだから……」

 ミスリルと話しながら控室に入ると、ジロリと俺に向けられる視線が集中したのが分かった。
 他の神の天使、参加者達は俺の方なんて見向きもしないようにしているが、背を向けたら一斉に突き刺さるような視線を感じる。意識されているのか、あまり居心地のいいものではなかった。

「ほら、汗拭いて、ちょっとメイクした方がいいね。やってあげるから、座って」

「あ…わ…悪いな。ありがとう」

 アルメンティスのおかげですっかり遅刻寸前になってしまった。
 ミスリルは椅子を用意してくれて、備え付けのメイク道具で汗だくでぼろぼろだった顔を直してくれた。

 手際良く鏡の中の自分が変わっていく過程に、感心しながら口を開けて眺めてしまった。

 そんな、俺達を見る視線はずっと感じていたが、その中に悪意のこもった黒い色があることに、俺はまだ気づいていなかった。






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