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本編
⑭くらいなかで●
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自分の家に帰って、両親が玄関で土下座していたら、借金取りでも来たのかと思うだろう。
あまりの大袈裟過ぎる歓迎に、一緒に入って来た亜蘭は目を白黒させていた。
「ようこそ! おいで下さいました」
「うちの不肖の息子と懇意にしていただき、我が一族としては大変な名誉と光栄で……」
「お父さん、やめてよ」
二人して手を揉み揉みしながら話し始めたので、いい加減恥ずかしいからやめてくれと止めに入った。
「今日はお招きありがとうございます。お休みのところ、お邪魔しちゃってすみません」
「そっ、そんなそんな! 狭苦しい小屋のような粗末な家ですが、どうぞどうぞゆっくりしていってください」
「か、母さん。小屋って……」
俺にとっての城を小屋と呼ばれて少し傷ついたのか、父親がボソッとこぼしたが、母親がさりげなく膝で打ったので、父親はうっと言いながら黙った。
「あのさ、飲み物とかいいからね。買って来たし……」
「分かった分かった。ルイマサ以外でお友達を家に呼ぶなんて、つい嬉しくてね。何かあったら呼んでね」
いつもの三倍増しくらいの笑顔を振りまいて、両親が手を振ってきたが、無視して亜蘭の背中を押して二階の俺の部屋に行くために階段を上った。
「明るいご両親だね」
「……ごめん、本当、大袈裟で恥ずかしい」
亜蘭がクスクス笑っているのを背中に感じながら俺の部屋に案内した。
「どうぞ、本当に何もないけど。漫画とか好きなのあったら適当に見ていいから……」
家に亜蘭を呼ぼうと決めてから、それなりに掃除はしたが、基本的に物が多くて狭いので、居心地が悪いのではないかと心配だった。
一軒家だが、亜蘭の広々とした家と比べたら、俺の部屋は亜蘭の家のトイレくらいの広さだ。
「へぇ……可愛い部屋だね」
ソファーなんて代物はないので、ベッドの前の床に直座りなのだが、亜蘭は抵抗なさそうにすんなり座ってくれた。
「ごめん、落ち着かないかもしれないけど……」
俺の心配をよそに亜蘭はベッドの上にあったクッションを手に取って、ぎゅっと抱きしめた。
「やばっ、この部屋、学の匂いでいっぱい……癒される」
亜蘭を迎えに行く途中で買って来た、飲み物やお菓子を広げながら、くつろいでいる様子の亜蘭を見てホッと胸を撫で下ろした。
「いつも亜蘭の家で悪いからさ。たまには俺の方でもいいかなって……。パーティーとかで人の家に行くのが苦手だって言ってただろう。無理に誘っちゃったらごめんな」
「学の家は別だよ。ここに来てからなんだか温かい気がする。いいお家だね」
多少お世辞が入っているかもしれないが、亜蘭の笑顔は作ったようなものには見えなかった。
リラックスしたような目尻を下げた少し幼い表情を、初めて見れたように思えた。
その後は、ゲームをしたり、本を読んだり、映画を見ながらいつの間にか二人で寝ていたりして、あっという間に空が暗くなってしまった。
もう少しだけ一緒にいたいなと思っていたら、階下から両親に呼ばれた。
「どうぞお口に合うか分かりませんが……」
両親はニコニコ笑いながらも、いかにも緊張していますという顔で、口元をピクピクさせていた。
「んーー、すごく美味しいです」
綺麗な箸使いで上品に料理を口に運んだ亜蘭は、目を大きく開いた。
本当に驚いて、美味しいと言っている様子に、両親、特に父は嬉しそうに笑った。
本当は夕食前に帰る予定だったが、両親は亜蘭を夕食に誘った。
うちの手作りなんて亜蘭は嫌がるかもと思ったが、亜蘭は喜んでと言って楽しそうに食卓に座ってしまった。
「これ、本当にお父様が作ったんですか? レストランに出て来てもいいくらい……。本当に美味しいです」
自慢の得意料理を絶賛されて、父の鼻がぐんぐん伸びていくのが見えた。
家庭料理のどこにでもあるロールキャベツだ。
父なりにこだわりがあるそうだが、いたって平凡な味に思えるのに、亜蘭は目を輝かせて興奮している様子だった。
「これは小さい頃、学の大好物でしてね。幼稚園の頃は、こればっかり食べたいと言って大騒ぎして。鍋いっぱい食べさせていたら、ぷくぷくに太ってしまったんですよ。今じゃモヤシみたいですから、笑い話なんですが、ほらあの写真立ての……」
「父さん! ちょっと!」
余計なことを言ってくれるなと慌てたが、時は遅し。
目を光らせた亜蘭が風のようなスピードで写真を手に取ってしまった。
「こっ……これは!!」
「やめっ、恥ずかしいって! ああ……俺の黒歴史」
「可愛過ぎる! 何ですかこれは!!」
「やだぁ、白馬さんもそう思いますか? この頃の学ってば、マシュマロみたいで、柔らかくって本当に可愛かったんですよ」
母が悪ノリしてきて、亜蘭と意気投合してしまい、ますます俺は真っ赤になって頭を抱えた。
「学、どうしてこの頃、うちに来てくれなかったんだ」
「無茶言うなよ。その頃は知り合いでもなんでもなかったじゃないか」
「……お母様、この写真他にもありますか? ぜひ見たくて」
「あら、いいですわよ。こちらにいらして、学セレクションのアルバムがありますのよ」
「かーさん!! やめてーー」
結局、俺と父親が片付けをする間、何が楽しいのか、亜蘭はうちの母親とアルバムの鑑賞会を始めてしまった。しかも母親がよかったらと言って、俺の写真を渡すという暴走に出て、亜蘭はそれを嬉しそうに受け取って懐に入れていた。
もう、何が何だか分からない。
父親は優しくて良い人だなと言ってニコニコしているので、ため息をつきながらも俺も笑ってその様子を眺めていた。
夕飯の後は、両親が泊まっていくのを勧めて、亜蘭は断るかと思ったのに、それもありがとうございますと言って返すので、ほんとうに泊まることになってしまった。
亜蘭がうちの狭い風呂に入っている間、自分の部屋に布団を敷いたが、夢でも見ているのかと思ってしまった。
電気を消して、静かになった部屋。
天井を眺めながら、布団で亜蘭はちゃんと寝ることができるのかと考えていた。
「学、起きている?」
電気を消してしばらくしたら、亜蘭が話しかけてきた。
不眠症の亜蘭が、それも人の家の布団ではなかなか眠れないだろう。
「起きてるよ。今日はうちの両親に色々と付き合ってもらってごめん。泊まることになって、大丈夫だったの?」
「大丈夫。予定もないし問題無いよ」
忙しいのに断りきれなくてみたいな状況だったらどうしようかと思ったが、無理をさせたわけでも無さそうなのでホッとした。
今日は、亜蘭を家に呼んで、俺の生活を見てもらおうと考えていた。
ちょっと余計なものまで見られてしまったが、俺の暮らしを見て、何か感じ取ってくれたらいいと思っていた。
「俺さ、最近、家で眠れるようになったんだ」
「そ……そう、なんだ。よかったね」
亜蘭から返ってきたのは予想外の言葉だった。
不眠症の亜蘭のために、睡眠不足の手伝いをする、それが俺達の関係だ。
俺の方も、耳の出し入れのコツが分かって、無意識にポンポン出すなんてことはなくなったので、そろそろ特訓も卒業だと思っていた。
ということは、二人の間にある繋がりが、プツリと切れてしまう。
今更ながら、細い線だったのだとショックを受けた。
「学のおかげだよ。本当、いつもありがとう」
「全然、いいよ。俺もお世話になったし……」
「学のご両親、とても素敵な人達だね。なんだかこの家にある全てが温かく感じる」
「亜蘭……」
亜蘭は温かいと言ったが、無性に温もりが恋しくなって、むくりと起き上がった。
同じ部屋に二人きり、今日はずっと近くにいたけれど、もっとくっ付いていたくてたまらなかった。
ベッドから降りた俺は亜蘭の布団に潜りこんだ。
「学? どうしたの?」
「ん……、離れて寝るの……やだ」
「ふふふっ、寂しくなっちゃった? いいよ、こっちに来て」
ベッドも狭いが布団だって狭い。
亜蘭の懐に潜り込んだ俺は、すっぽりと体を包まれるように抱きしめられた。
今日は我慢するつもりだったが、亜蘭の匂いを間近で嗅いだら、ムラムラとしてきてしまった。
はぁはぁと小さく息をしていたが、亜蘭に気づかれてしまった。
「あれ? どうしたの? 顔赤い、目も潤んでる」
「亜蘭……したいよ」
自分の部屋という背徳感からか、今日は何だか特別興奮してしまい、久々に耳が出てしまった。
「可愛いね。でも大丈夫? 声を出したら、気づかれちゃうよ」
「ううっ、我慢、する……」
「学は我慢するの大好きだね。そういうところがまた可愛い。いいよ、俺も学に触れたくて、眠れなかったんだ」
くちゅ。
亜蘭の唇が重なってきて、すぐに舌が入ってきた。
ちゅくちゅくと音を立てながら、二人で舌を絡ませて唇をペロペロと舐め合う。
少し前の俺からしたら考えられないような行為だ。
それを受け入れて、しかも自分から求めるようになるとは思わなかった。
もちろん、他の人なんて考えられない。
全部、どこまでもみっちり亜蘭で満たされたい。
耐えきれなくなった俺は、亜蘭の上に乗って、亜蘭のズボンから大きくなったモノを取り出した。
キスで感じてくれたのか、亜蘭のそれは上品な外見に似合わない卑猥な形になって、ポタポタと汁をこぼしていた。
俺は自分のを取り出して、亜蘭のと重ね合わせて擦り始めた。
「んっ……ふっ……っっ」
「いい眺め。こんなエッチな学を見れるなんて、今日最後のご褒美だね」
俺はすぐにでも達しそうなのに、まだまだ余裕の顔をした亜蘭が悔しくて、亜蘭の先っぽに手を当てて、円を描くように擦ってやった。
「うっ……それ、やばっ」
「あ、大きくなった。気持ちいい? 亜蘭」
「見てるだけでもクるのに、そんな触り方したら先に出ちゃうよ」
「やだ……一緒がいい」
愛おしいものでも見るように、亜蘭の目尻が下げられた。
俺のこと、面倒だなんて思わないで。
少しでいい。
少しでいいから、好きな気持ちが……
亜蘭の中に生まれてくれたら……
「ああっ、だめっ……」
「しっ、学、声大きい」
上に乗っていたはずなのに、いつの間にか俺は下になっていて、亜蘭はアソコを重ね合わせて、腰を動かしながら擦ってきた。
グチョグチョという粘膜が擦れる音が部屋中に響いて、おかしくなるほど興奮してしまう。
俺は口を押さえながら、必死に声を我慢していたが、時々耐えきれなくて漏れてしまう。
その度に亜蘭は嬉しそうに笑って俺の目の上にキスをしてきた。
気持ちいい
気持ち良すぎて溶けてしまいそう
「あら……あらん、……も……でちゃう」
「ん、俺も……一緒に……イクんだろう?」
「んんっ、あらんっっ」
手を離したらとんでもない声が出てしまいそうで、ぎゅっと口を押さえた俺はそこで上り詰めた。
俺をぎゅっと抱きしめた亜蘭がぶるりと震えて、腹に熱い飛沫を感じた。
「あら……す……き」
言ってしまった。
もう好きが溢れていて、堪えきれなかった。
愛しくて愛しくてたまらない。
言わなければ壊れてしまいそうだった。
わずかに息を呑んだような音が聞こえてきたが、抱きしめられていた俺は、その時亜蘭がどんな顔をしていたのか見ることができなかった。
□□□
あまりの大袈裟過ぎる歓迎に、一緒に入って来た亜蘭は目を白黒させていた。
「ようこそ! おいで下さいました」
「うちの不肖の息子と懇意にしていただき、我が一族としては大変な名誉と光栄で……」
「お父さん、やめてよ」
二人して手を揉み揉みしながら話し始めたので、いい加減恥ずかしいからやめてくれと止めに入った。
「今日はお招きありがとうございます。お休みのところ、お邪魔しちゃってすみません」
「そっ、そんなそんな! 狭苦しい小屋のような粗末な家ですが、どうぞどうぞゆっくりしていってください」
「か、母さん。小屋って……」
俺にとっての城を小屋と呼ばれて少し傷ついたのか、父親がボソッとこぼしたが、母親がさりげなく膝で打ったので、父親はうっと言いながら黙った。
「あのさ、飲み物とかいいからね。買って来たし……」
「分かった分かった。ルイマサ以外でお友達を家に呼ぶなんて、つい嬉しくてね。何かあったら呼んでね」
いつもの三倍増しくらいの笑顔を振りまいて、両親が手を振ってきたが、無視して亜蘭の背中を押して二階の俺の部屋に行くために階段を上った。
「明るいご両親だね」
「……ごめん、本当、大袈裟で恥ずかしい」
亜蘭がクスクス笑っているのを背中に感じながら俺の部屋に案内した。
「どうぞ、本当に何もないけど。漫画とか好きなのあったら適当に見ていいから……」
家に亜蘭を呼ぼうと決めてから、それなりに掃除はしたが、基本的に物が多くて狭いので、居心地が悪いのではないかと心配だった。
一軒家だが、亜蘭の広々とした家と比べたら、俺の部屋は亜蘭の家のトイレくらいの広さだ。
「へぇ……可愛い部屋だね」
ソファーなんて代物はないので、ベッドの前の床に直座りなのだが、亜蘭は抵抗なさそうにすんなり座ってくれた。
「ごめん、落ち着かないかもしれないけど……」
俺の心配をよそに亜蘭はベッドの上にあったクッションを手に取って、ぎゅっと抱きしめた。
「やばっ、この部屋、学の匂いでいっぱい……癒される」
亜蘭を迎えに行く途中で買って来た、飲み物やお菓子を広げながら、くつろいでいる様子の亜蘭を見てホッと胸を撫で下ろした。
「いつも亜蘭の家で悪いからさ。たまには俺の方でもいいかなって……。パーティーとかで人の家に行くのが苦手だって言ってただろう。無理に誘っちゃったらごめんな」
「学の家は別だよ。ここに来てからなんだか温かい気がする。いいお家だね」
多少お世辞が入っているかもしれないが、亜蘭の笑顔は作ったようなものには見えなかった。
リラックスしたような目尻を下げた少し幼い表情を、初めて見れたように思えた。
その後は、ゲームをしたり、本を読んだり、映画を見ながらいつの間にか二人で寝ていたりして、あっという間に空が暗くなってしまった。
もう少しだけ一緒にいたいなと思っていたら、階下から両親に呼ばれた。
「どうぞお口に合うか分かりませんが……」
両親はニコニコ笑いながらも、いかにも緊張していますという顔で、口元をピクピクさせていた。
「んーー、すごく美味しいです」
綺麗な箸使いで上品に料理を口に運んだ亜蘭は、目を大きく開いた。
本当に驚いて、美味しいと言っている様子に、両親、特に父は嬉しそうに笑った。
本当は夕食前に帰る予定だったが、両親は亜蘭を夕食に誘った。
うちの手作りなんて亜蘭は嫌がるかもと思ったが、亜蘭は喜んでと言って楽しそうに食卓に座ってしまった。
「これ、本当にお父様が作ったんですか? レストランに出て来てもいいくらい……。本当に美味しいです」
自慢の得意料理を絶賛されて、父の鼻がぐんぐん伸びていくのが見えた。
家庭料理のどこにでもあるロールキャベツだ。
父なりにこだわりがあるそうだが、いたって平凡な味に思えるのに、亜蘭は目を輝かせて興奮している様子だった。
「これは小さい頃、学の大好物でしてね。幼稚園の頃は、こればっかり食べたいと言って大騒ぎして。鍋いっぱい食べさせていたら、ぷくぷくに太ってしまったんですよ。今じゃモヤシみたいですから、笑い話なんですが、ほらあの写真立ての……」
「父さん! ちょっと!」
余計なことを言ってくれるなと慌てたが、時は遅し。
目を光らせた亜蘭が風のようなスピードで写真を手に取ってしまった。
「こっ……これは!!」
「やめっ、恥ずかしいって! ああ……俺の黒歴史」
「可愛過ぎる! 何ですかこれは!!」
「やだぁ、白馬さんもそう思いますか? この頃の学ってば、マシュマロみたいで、柔らかくって本当に可愛かったんですよ」
母が悪ノリしてきて、亜蘭と意気投合してしまい、ますます俺は真っ赤になって頭を抱えた。
「学、どうしてこの頃、うちに来てくれなかったんだ」
「無茶言うなよ。その頃は知り合いでもなんでもなかったじゃないか」
「……お母様、この写真他にもありますか? ぜひ見たくて」
「あら、いいですわよ。こちらにいらして、学セレクションのアルバムがありますのよ」
「かーさん!! やめてーー」
結局、俺と父親が片付けをする間、何が楽しいのか、亜蘭はうちの母親とアルバムの鑑賞会を始めてしまった。しかも母親がよかったらと言って、俺の写真を渡すという暴走に出て、亜蘭はそれを嬉しそうに受け取って懐に入れていた。
もう、何が何だか分からない。
父親は優しくて良い人だなと言ってニコニコしているので、ため息をつきながらも俺も笑ってその様子を眺めていた。
夕飯の後は、両親が泊まっていくのを勧めて、亜蘭は断るかと思ったのに、それもありがとうございますと言って返すので、ほんとうに泊まることになってしまった。
亜蘭がうちの狭い風呂に入っている間、自分の部屋に布団を敷いたが、夢でも見ているのかと思ってしまった。
電気を消して、静かになった部屋。
天井を眺めながら、布団で亜蘭はちゃんと寝ることができるのかと考えていた。
「学、起きている?」
電気を消してしばらくしたら、亜蘭が話しかけてきた。
不眠症の亜蘭が、それも人の家の布団ではなかなか眠れないだろう。
「起きてるよ。今日はうちの両親に色々と付き合ってもらってごめん。泊まることになって、大丈夫だったの?」
「大丈夫。予定もないし問題無いよ」
忙しいのに断りきれなくてみたいな状況だったらどうしようかと思ったが、無理をさせたわけでも無さそうなのでホッとした。
今日は、亜蘭を家に呼んで、俺の生活を見てもらおうと考えていた。
ちょっと余計なものまで見られてしまったが、俺の暮らしを見て、何か感じ取ってくれたらいいと思っていた。
「俺さ、最近、家で眠れるようになったんだ」
「そ……そう、なんだ。よかったね」
亜蘭から返ってきたのは予想外の言葉だった。
不眠症の亜蘭のために、睡眠不足の手伝いをする、それが俺達の関係だ。
俺の方も、耳の出し入れのコツが分かって、無意識にポンポン出すなんてことはなくなったので、そろそろ特訓も卒業だと思っていた。
ということは、二人の間にある繋がりが、プツリと切れてしまう。
今更ながら、細い線だったのだとショックを受けた。
「学のおかげだよ。本当、いつもありがとう」
「全然、いいよ。俺もお世話になったし……」
「学のご両親、とても素敵な人達だね。なんだかこの家にある全てが温かく感じる」
「亜蘭……」
亜蘭は温かいと言ったが、無性に温もりが恋しくなって、むくりと起き上がった。
同じ部屋に二人きり、今日はずっと近くにいたけれど、もっとくっ付いていたくてたまらなかった。
ベッドから降りた俺は亜蘭の布団に潜りこんだ。
「学? どうしたの?」
「ん……、離れて寝るの……やだ」
「ふふふっ、寂しくなっちゃった? いいよ、こっちに来て」
ベッドも狭いが布団だって狭い。
亜蘭の懐に潜り込んだ俺は、すっぽりと体を包まれるように抱きしめられた。
今日は我慢するつもりだったが、亜蘭の匂いを間近で嗅いだら、ムラムラとしてきてしまった。
はぁはぁと小さく息をしていたが、亜蘭に気づかれてしまった。
「あれ? どうしたの? 顔赤い、目も潤んでる」
「亜蘭……したいよ」
自分の部屋という背徳感からか、今日は何だか特別興奮してしまい、久々に耳が出てしまった。
「可愛いね。でも大丈夫? 声を出したら、気づかれちゃうよ」
「ううっ、我慢、する……」
「学は我慢するの大好きだね。そういうところがまた可愛い。いいよ、俺も学に触れたくて、眠れなかったんだ」
くちゅ。
亜蘭の唇が重なってきて、すぐに舌が入ってきた。
ちゅくちゅくと音を立てながら、二人で舌を絡ませて唇をペロペロと舐め合う。
少し前の俺からしたら考えられないような行為だ。
それを受け入れて、しかも自分から求めるようになるとは思わなかった。
もちろん、他の人なんて考えられない。
全部、どこまでもみっちり亜蘭で満たされたい。
耐えきれなくなった俺は、亜蘭の上に乗って、亜蘭のズボンから大きくなったモノを取り出した。
キスで感じてくれたのか、亜蘭のそれは上品な外見に似合わない卑猥な形になって、ポタポタと汁をこぼしていた。
俺は自分のを取り出して、亜蘭のと重ね合わせて擦り始めた。
「んっ……ふっ……っっ」
「いい眺め。こんなエッチな学を見れるなんて、今日最後のご褒美だね」
俺はすぐにでも達しそうなのに、まだまだ余裕の顔をした亜蘭が悔しくて、亜蘭の先っぽに手を当てて、円を描くように擦ってやった。
「うっ……それ、やばっ」
「あ、大きくなった。気持ちいい? 亜蘭」
「見てるだけでもクるのに、そんな触り方したら先に出ちゃうよ」
「やだ……一緒がいい」
愛おしいものでも見るように、亜蘭の目尻が下げられた。
俺のこと、面倒だなんて思わないで。
少しでいい。
少しでいいから、好きな気持ちが……
亜蘭の中に生まれてくれたら……
「ああっ、だめっ……」
「しっ、学、声大きい」
上に乗っていたはずなのに、いつの間にか俺は下になっていて、亜蘭はアソコを重ね合わせて、腰を動かしながら擦ってきた。
グチョグチョという粘膜が擦れる音が部屋中に響いて、おかしくなるほど興奮してしまう。
俺は口を押さえながら、必死に声を我慢していたが、時々耐えきれなくて漏れてしまう。
その度に亜蘭は嬉しそうに笑って俺の目の上にキスをしてきた。
気持ちいい
気持ち良すぎて溶けてしまいそう
「あら……あらん、……も……でちゃう」
「ん、俺も……一緒に……イクんだろう?」
「んんっ、あらんっっ」
手を離したらとんでもない声が出てしまいそうで、ぎゅっと口を押さえた俺はそこで上り詰めた。
俺をぎゅっと抱きしめた亜蘭がぶるりと震えて、腹に熱い飛沫を感じた。
「あら……す……き」
言ってしまった。
もう好きが溢れていて、堪えきれなかった。
愛しくて愛しくてたまらない。
言わなければ壊れてしまいそうだった。
わずかに息を呑んだような音が聞こえてきたが、抱きしめられていた俺は、その時亜蘭がどんな顔をしていたのか見ることができなかった。
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