6 / 7
五幕「かぐやの正体」
しおりを挟む
――婚約者が全て脱落したところに、太閤殿下と月の宣教師が目の前に現れた。
月の宣教師は、江戸弁とも京弁とも言えない独特な言い回しで話し出す――
「ナンですかネェ、実の親の許可を得ずして婚約者を選ぶなんテ……」
「飛んで火に入る夏の虫タァ、このことだなぁ、お二人さんよ。」
威勢を見せるが、以前殺されかけただけあって、身体の震えが止まらない。
「笑止、虫とは貴様らのことであろう害虫どもが。妃となるかぐやを盗みおって」
聞き捨てらならねぇ言葉だな。
かぐやが珍しく怒りを露わにして、問いかける。
「私は貴方の女房になるつもりありません。そして月の宣教師。貴方に一つ聞きたいことがあります」
「ナンデスカ、我が娘ヨ」
「貴方が、私を開発した研究者なのですね……?」
開発?
研究者……?
「アァ、そうデス。私が自動感情認識殺戮兵器『永愛』の生みの親デスヨ?」
「じどう……さつりく?」
物騒な名前を聞かされ、頭の歯車がチグハグとなった。
俺より頭の歯車が噛み合うかぐやは、受け入れたように冷静に続ける。
「なぜ私をこの世に……」
「この世界を平安の世にするためデス。遊女のように主人の慰み者とされ、そして世の邪魔者までも排除する、まさに一石二鳥の人格ロボット。それを私は開発に成功シマシタ!」
こいつの頭には蛆虫でも沸いているんじゃぁねぇか?
淫らな頭をグチャグチャに乱してやりたい感情に陥る。
「だがシカシ、どこぞの馬の骨に余計なことを吹き込まれ、変な感情が芽生えてしまったラシイデスネ……」
月の宣教師は、南蛮銃の銃口をかぐやに向けて撃ち放つ。
俺はすかさずかぐやを守り、俺の背中に銃弾が入っていくのが分かった。
「お父様ッ⁉︎」
「あれ……痛くない……」
撃たれた背中は何一つ傷がついていなかった。
「おやオヤ、これはしくじってしまいましター。せっかくの『裏星兎弾』を無駄遣いしてシマウとは……」
「これ、宣教師よ。あまり遊びがすぎると、貴様の首が飛ぶことになるぞ」
「オー、それは困りマシタ! 次こそはこの弾を当てて、初期化してしまわないとデスネー!」
初期化だと……?
「サァ、お遊びはここまでデス。月の国から出荷した状態に戻し、久吉様を癒し、全ての邪魔者を排除するのデス!」
ふざけんじゃねぇ。
誰がテメェらなんかに、かぐやを盗まれてたまるもんか……!
「さぁ、大人しくかぐやを返せば見逃してやるぞ、この溝鼠よ」
「おいおい、テメェら俺を誰と思っていやがるだ……?」
「石川五右衛門であろう?」
「様をつけろや、このハゲネズミッ‼︎」
「……なっ⁉︎」
満月の光をスポットライトに見立てた俺は、太閤殿下を目の前に大見得を切る。
「遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よぉおッ‼︎ 月夜に輝くかぐや姫、己が手に入れたくば、この天下を揺るがす大泥棒、石川五右衛門様を捕まえろぉおッ‼︎」
散り散りに散ったはずの観客と、5人の脱落した貴族達が歓声をあげ、久吉達を無視して雪崩れのように駆け込んでくる。
俺の声に反応した、阿国と助兵衛もその中に紛れ込んでいるであろう。
「おやオヤ、こんな方法で目眩しなんぞ、バカの考えることは面白いデスネ。魔心眼で一人残らず殺してしまいマショウか?」
「それも一興だが、いまはかぐや姫の奪還だ。今夜中に取り戻さねば、貴様を蜂の巣にしてやるぞ」
「オオ、怖いデスネー」
「私ならここにいます」
かぐやにしては色っぽい乱れた服装で宣教師に話しかけている。
「オオ、これはこれは自ら戻ってくるとは殊勝な心掛けデース」
「そう簡単には捕まりませんよ?」
色っぽい笑みを浮かべて暗闇へと消えていくかぐや。
それを宣教師は、鼻の下を伸ばして久吉そっちのけで追いかけ出した。
色気があるのは勿論だ、何故ならそいつは我が座長の出雲阿国なのだから。
俺達は太閤殿下、真柴久吉相手に一世一代の大芝居の幕を開けた――
月の宣教師は、江戸弁とも京弁とも言えない独特な言い回しで話し出す――
「ナンですかネェ、実の親の許可を得ずして婚約者を選ぶなんテ……」
「飛んで火に入る夏の虫タァ、このことだなぁ、お二人さんよ。」
威勢を見せるが、以前殺されかけただけあって、身体の震えが止まらない。
「笑止、虫とは貴様らのことであろう害虫どもが。妃となるかぐやを盗みおって」
聞き捨てらならねぇ言葉だな。
かぐやが珍しく怒りを露わにして、問いかける。
「私は貴方の女房になるつもりありません。そして月の宣教師。貴方に一つ聞きたいことがあります」
「ナンデスカ、我が娘ヨ」
「貴方が、私を開発した研究者なのですね……?」
開発?
研究者……?
「アァ、そうデス。私が自動感情認識殺戮兵器『永愛』の生みの親デスヨ?」
「じどう……さつりく?」
物騒な名前を聞かされ、頭の歯車がチグハグとなった。
俺より頭の歯車が噛み合うかぐやは、受け入れたように冷静に続ける。
「なぜ私をこの世に……」
「この世界を平安の世にするためデス。遊女のように主人の慰み者とされ、そして世の邪魔者までも排除する、まさに一石二鳥の人格ロボット。それを私は開発に成功シマシタ!」
こいつの頭には蛆虫でも沸いているんじゃぁねぇか?
淫らな頭をグチャグチャに乱してやりたい感情に陥る。
「だがシカシ、どこぞの馬の骨に余計なことを吹き込まれ、変な感情が芽生えてしまったラシイデスネ……」
月の宣教師は、南蛮銃の銃口をかぐやに向けて撃ち放つ。
俺はすかさずかぐやを守り、俺の背中に銃弾が入っていくのが分かった。
「お父様ッ⁉︎」
「あれ……痛くない……」
撃たれた背中は何一つ傷がついていなかった。
「おやオヤ、これはしくじってしまいましター。せっかくの『裏星兎弾』を無駄遣いしてシマウとは……」
「これ、宣教師よ。あまり遊びがすぎると、貴様の首が飛ぶことになるぞ」
「オー、それは困りマシタ! 次こそはこの弾を当てて、初期化してしまわないとデスネー!」
初期化だと……?
「サァ、お遊びはここまでデス。月の国から出荷した状態に戻し、久吉様を癒し、全ての邪魔者を排除するのデス!」
ふざけんじゃねぇ。
誰がテメェらなんかに、かぐやを盗まれてたまるもんか……!
「さぁ、大人しくかぐやを返せば見逃してやるぞ、この溝鼠よ」
「おいおい、テメェら俺を誰と思っていやがるだ……?」
「石川五右衛門であろう?」
「様をつけろや、このハゲネズミッ‼︎」
「……なっ⁉︎」
満月の光をスポットライトに見立てた俺は、太閤殿下を目の前に大見得を切る。
「遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よぉおッ‼︎ 月夜に輝くかぐや姫、己が手に入れたくば、この天下を揺るがす大泥棒、石川五右衛門様を捕まえろぉおッ‼︎」
散り散りに散ったはずの観客と、5人の脱落した貴族達が歓声をあげ、久吉達を無視して雪崩れのように駆け込んでくる。
俺の声に反応した、阿国と助兵衛もその中に紛れ込んでいるであろう。
「おやオヤ、こんな方法で目眩しなんぞ、バカの考えることは面白いデスネ。魔心眼で一人残らず殺してしまいマショウか?」
「それも一興だが、いまはかぐや姫の奪還だ。今夜中に取り戻さねば、貴様を蜂の巣にしてやるぞ」
「オオ、怖いデスネー」
「私ならここにいます」
かぐやにしては色っぽい乱れた服装で宣教師に話しかけている。
「オオ、これはこれは自ら戻ってくるとは殊勝な心掛けデース」
「そう簡単には捕まりませんよ?」
色っぽい笑みを浮かべて暗闇へと消えていくかぐや。
それを宣教師は、鼻の下を伸ばして久吉そっちのけで追いかけ出した。
色気があるのは勿論だ、何故ならそいつは我が座長の出雲阿国なのだから。
俺達は太閤殿下、真柴久吉相手に一世一代の大芝居の幕を開けた――
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


月に導かれるが如く。
michael
ファンタジー
ここは日の本、大和の世界。
この世界には『刀』と呼ばれる魔剣が百本ある。
その『刀』と呼ばれる魔剣はすべからず人智を超える、恐ろしく大きな力を持っていると伝わっていた。
曰く、一振りすれば山が割れ。
曰く、一振りすれば海が割れ。
曰く、持っているだけで「生まれてから今までいなかったのに直ぐに彼女ができました!」
などである。
この世界では『刀』を持つ者だけを畏敬の念をもって『侍』と呼ぶ。
その『侍』の中で最強と呼ばれる存在。
その名を『朧月 幻九郎(おぼろづき げんくろう)』という。
しかし彼は『刀』を捨て『侍』をやめた。
そして何処かへと去って行った。
しょうもないコメディーです。ツッコミを入れずに読んで頂けたら幸いです。和風ですが、横文字をバンバン入れていってます、拒否反応がある方はご注意下さい。
注意ーーーこれは作者の以前の作品『霞の如く、生きて逝く』のリメイクです。
『小説家になろう』でも公開しています。意見を幅広くお待ちしております。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる