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11月◯日 地獄の稽古、そしてカメと幼馴染たち
16.斯々猫々、天使が降臨しまして!
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――カノ子ちゃんを獣神化させることになった俺は、ミィとは違う、とあることで悩んで筆を止めていた。
「描けないよ、先生……」
「ん、どうした、トラ?」
「俺……アニメの衣裳しか思いつかない……‼︎」
ミィの獣神化はセーラーニャーンに救われましたが、俺のファッションセンスは救いようがありませんでしたとさ――
「はっはっは! たしかにオメェの私服のセンスは絶望的だもんなァ!」
自分で言うのは良いけど、他人に言われるとスゲェムカツク……‼︎
「まぁ安心しろ、筆宝は持ち主の潜在能力を高めるからな」
斯々然々、又々説明されまして。
筆宝は漠然としたイメージすらも具現化してくれるらしい。
『自動創造』
いわゆるオートモード機能だ。
「ほれ、カノ子が鹿の格好で獣神化したらどうなるかイメージして描いてみろ」
またこの人は簡単に言いやがって。
そう思いつつ、俺はカノ子ちゃんで妄想……
いや想像をする。
鹿かぁ……
そういえばなんで白いんだろう。
たしか鹿って神の使いとか言われてるんだっけ。
ん、やっぱり天使じゃん……‼︎
なんとなく漠然としたイメージを思い描き、カノ子ちゃんに筆を向ける。
「なんだかドキドキするね……」
うるうるした黒い瞳を向けて喋りかけてくる。
いくら鹿の姿でも、そんな発言されたらドキドキしてしまう……‼︎
平常心、平常心……
集中して、筆を走らせる。
すると筆が光り出し、ぼんやりしたイメージを元に筆が勝手に動き出す。
そういえば、俺が青龍相手に白虎を描いた時も、こんな感じでスラスラと描けたっけ。
恐るべし自動創造。
輪郭を書き出し、最後は瞳を入れるだけとなった。
カノ子ちゃんの瞳を見つめて仕上げる。
『画竜点睛』
これを知ったのが今日の成果かな……
そろそろ見慣れた光の粒子達は、アニメの変身シーンかの如く包み込み、一散していく。
「すごい……本当に私も変身しちゃった」
「ほぉ。これが虎之助が抱くカノ子のイメージか」
「くやしいけど、キレイだにゃ……」
「天使だ……」
想像から勝手に創造された結果。
黒髪に映える純白のワンピース。
背に生えた白く艶めく大きな羽。
そして天使の輪の代わりに立派な二本の角をもつ天使様が降臨した。
まさか本当に天使になるなんて。
天使は喜び空を舞い、
「トラくん、私を描いてくれてありがと! 私、こういうコスプレしてみたかったの!」
天使様は、たまに触れてはいけないような話題を出してくるが、天界語なのだろう。かわいいな。
癒された瞬間、嫌な頭痛と倦怠感に襲われた。
「痛い……」
頭の中で鐘を撞いたかの様に、重く鈍い痛みが駆け巡る。
身体が重い……
あまりの辛さに膝をつく。
「トラくん、大丈夫⁉︎」
心配してくれたカノ子ちゃんは角を光らせ、俺を癒してくれる。
……だいぶ楽になった。
なんでいきなりこうなってしまったんだ。
「それが今の限界ってことだ」
「今の限界?」
「筋肉痛はわかるだろ? それと同じで無い頭を無理矢理使ったからだな」
「それは俺が馬鹿ってことですか?」
「まぁそれもあるが……」
否定しろよ!
「自動創造は、筆の妖力がオメェの脳に直接語りかけ自動的に想像を形成する。その時、脳や身体は強制的に働かされ、疲弊、最悪意識を失うデメリットがある」
そういうことは早く言えよ!
あー。
だから白虎を描いた時、気を失ったのか……
稽古をすれば慣れるらしいが、今の俺はこれが限界らしい。
「自分とミィの獣神化、そしてカノ子への自動創造、これが今の限界ってこったな」
「せっかくカノ子ちゃんに治してもらったけど、正直まだ気持ち悪いっす……」
「大丈夫、トラくん?」
カノ子ちゃんは俺にまた癒しの光を与えてくれるが、二本の立派な角が段々と小さくなっていく。
「あれ、光が出なくなってきちゃった……」
「ほれほれ、カノ子もあんまり治癒術を使いすぎんな」
俺が筆で妖力を使う様に、カノ子ちゃんは自分の角で妖力を使うらしい。
「先生、そういう説明は早く言ってくださいよ……」
「わりぃわりぃ、あたしは言葉で教えるのが苦手でなぁ!」
教師だろう、あんた!
「よし、今日はこのくらいにしておこう」
よかった、やっと稽古が終わる……!
「あーそうそう。この世界を救うにはあと何人か必要だ」
ん、先生がニヤけている……?
この狐目を吊り上がらせて笑う時は、嫌な予感しかしない。
「今日の放課後は仲間探し。放課後、美術室に集合だ!」
え。まだやるの?
「はい、わかりました!」
「鹿娘に負けないにゃ!」
「……まじかぁ……」
白い九尾は悪魔なニヤけを。
白い天使は無邪気な笑顔。
制服猫は嫉妬心で躍起になり、猫耳姿の俺は吐気と睡魔に襲われた――
「描けないよ、先生……」
「ん、どうした、トラ?」
「俺……アニメの衣裳しか思いつかない……‼︎」
ミィの獣神化はセーラーニャーンに救われましたが、俺のファッションセンスは救いようがありませんでしたとさ――
「はっはっは! たしかにオメェの私服のセンスは絶望的だもんなァ!」
自分で言うのは良いけど、他人に言われるとスゲェムカツク……‼︎
「まぁ安心しろ、筆宝は持ち主の潜在能力を高めるからな」
斯々然々、又々説明されまして。
筆宝は漠然としたイメージすらも具現化してくれるらしい。
『自動創造』
いわゆるオートモード機能だ。
「ほれ、カノ子が鹿の格好で獣神化したらどうなるかイメージして描いてみろ」
またこの人は簡単に言いやがって。
そう思いつつ、俺はカノ子ちゃんで妄想……
いや想像をする。
鹿かぁ……
そういえばなんで白いんだろう。
たしか鹿って神の使いとか言われてるんだっけ。
ん、やっぱり天使じゃん……‼︎
なんとなく漠然としたイメージを思い描き、カノ子ちゃんに筆を向ける。
「なんだかドキドキするね……」
うるうるした黒い瞳を向けて喋りかけてくる。
いくら鹿の姿でも、そんな発言されたらドキドキしてしまう……‼︎
平常心、平常心……
集中して、筆を走らせる。
すると筆が光り出し、ぼんやりしたイメージを元に筆が勝手に動き出す。
そういえば、俺が青龍相手に白虎を描いた時も、こんな感じでスラスラと描けたっけ。
恐るべし自動創造。
輪郭を書き出し、最後は瞳を入れるだけとなった。
カノ子ちゃんの瞳を見つめて仕上げる。
『画竜点睛』
これを知ったのが今日の成果かな……
そろそろ見慣れた光の粒子達は、アニメの変身シーンかの如く包み込み、一散していく。
「すごい……本当に私も変身しちゃった」
「ほぉ。これが虎之助が抱くカノ子のイメージか」
「くやしいけど、キレイだにゃ……」
「天使だ……」
想像から勝手に創造された結果。
黒髪に映える純白のワンピース。
背に生えた白く艶めく大きな羽。
そして天使の輪の代わりに立派な二本の角をもつ天使様が降臨した。
まさか本当に天使になるなんて。
天使は喜び空を舞い、
「トラくん、私を描いてくれてありがと! 私、こういうコスプレしてみたかったの!」
天使様は、たまに触れてはいけないような話題を出してくるが、天界語なのだろう。かわいいな。
癒された瞬間、嫌な頭痛と倦怠感に襲われた。
「痛い……」
頭の中で鐘を撞いたかの様に、重く鈍い痛みが駆け巡る。
身体が重い……
あまりの辛さに膝をつく。
「トラくん、大丈夫⁉︎」
心配してくれたカノ子ちゃんは角を光らせ、俺を癒してくれる。
……だいぶ楽になった。
なんでいきなりこうなってしまったんだ。
「それが今の限界ってことだ」
「今の限界?」
「筋肉痛はわかるだろ? それと同じで無い頭を無理矢理使ったからだな」
「それは俺が馬鹿ってことですか?」
「まぁそれもあるが……」
否定しろよ!
「自動創造は、筆の妖力がオメェの脳に直接語りかけ自動的に想像を形成する。その時、脳や身体は強制的に働かされ、疲弊、最悪意識を失うデメリットがある」
そういうことは早く言えよ!
あー。
だから白虎を描いた時、気を失ったのか……
稽古をすれば慣れるらしいが、今の俺はこれが限界らしい。
「自分とミィの獣神化、そしてカノ子への自動創造、これが今の限界ってこったな」
「せっかくカノ子ちゃんに治してもらったけど、正直まだ気持ち悪いっす……」
「大丈夫、トラくん?」
カノ子ちゃんは俺にまた癒しの光を与えてくれるが、二本の立派な角が段々と小さくなっていく。
「あれ、光が出なくなってきちゃった……」
「ほれほれ、カノ子もあんまり治癒術を使いすぎんな」
俺が筆で妖力を使う様に、カノ子ちゃんは自分の角で妖力を使うらしい。
「先生、そういう説明は早く言ってくださいよ……」
「わりぃわりぃ、あたしは言葉で教えるのが苦手でなぁ!」
教師だろう、あんた!
「よし、今日はこのくらいにしておこう」
よかった、やっと稽古が終わる……!
「あーそうそう。この世界を救うにはあと何人か必要だ」
ん、先生がニヤけている……?
この狐目を吊り上がらせて笑う時は、嫌な予感しかしない。
「今日の放課後は仲間探し。放課後、美術室に集合だ!」
え。まだやるの?
「はい、わかりました!」
「鹿娘に負けないにゃ!」
「……まじかぁ……」
白い九尾は悪魔なニヤけを。
白い天使は無邪気な笑顔。
制服猫は嫉妬心で躍起になり、猫耳姿の俺は吐気と睡魔に襲われた――
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