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音
第十話【地中の音】
しおりを挟む「パパ! 来て来て!」
娘に手を引っ張られ、庭へと連れて行かれる。
「パパ! あのね! 土の中から音がするの!」
興奮した様子で、勢いよくしゃがんだかと思うと、いきなり大地に片耳を当てた。
「こらこら。服も髪も。顔も汚れちゃうだろ……」
慌てて、娘に止めるように言うが、「パパもやってみてよ!」と、頬を膨らませる。
一人娘だからこそ、ついつい甘くなってしまう。
仕方なく、言われた通り、自分も土で汚れるのも、妻に叱られるのも覚悟して、同じように大地に耳をつける。
すると、「キュィキュィキュィ……」と奇妙な鳴き声が聞こえた。
“モグラか?”
田舎育ちのオレは、小さい頃は実家の畑でよくモグラ狩りをしていたものだが、こんな都会の。
周りはコンクリートで敷き詰められた小さな庭先に、果たしてモグラなんているのだろうか?
しかも。
モグラの鳴き声なんて、オレは一度も聞いた事が無いが……
再度、大地に耳を当てる。
「キュイキュイキュイキュイ……」
「キュゥイキュゥイキュィ……」
先程よりも鳴き声が増えているように聞こえる。
“え?これは何だ?”
バッ!と耳を大地から外し、娘の顔を見ると、「ね? 聞こえるでしょ? なんかの動物かなぁ……パパは知ってる?」と、可愛らしく小首を傾げる。
あぁ。
親馬鹿と言われても構わない。
娘が可愛すぎる。
こんな可愛い娘にパパの威厳を見せたくて、本当は定かではないものの、思わず、得意気な顔をして答える。
「勿論、知っているよ! これは、“モグラ”だよ」
「モグラ?」
「そうだよ。地中の中に住む動物なんだよ」
「そうなんだ! その動物って、捕まえられるの?」
「う~ん。パパの小さい頃はよく、畑のイモとかを食い荒らすから、退治してたけど……」
「退治?」
「そうだよ。退治だよ」
「こんなに可愛い声してるのに退治しちゃうの?」
「う~ん」
娘の悲しそうな顔を見ると、唸るしかなく。
困った顔で、どうしようか悩んでいれば、娘は、またもや、大地に耳をつけ、ジッとしていたかと思うと何かに気が付いたかのように顔を上げた。
「ねぇ! パパ! なんか、その“モグラ”が今、沢山いるよ!」
嬉しそうな笑顔を見せて飛び跳ねる。
“え? こんな所にモグラが大量に発生?”
驚いて大地に耳をつける。
「キュイキュイキュイキュイ……」
「キュゥイキュゥイキュィ……」
「キュイッキュッイキュイキュゥイ……」
本当だ。
確かに増えてい……
「ギュィィィィィィィ……ギュァァァァァア!」
ビクッ!
な、なんだ?
いきなり、声が……
威嚇するような。
怒っているような。
もしかして……仲間同士で喧嘩か?
気になってグッと耳を大地に押し当てる。
「ギュァァァァァアー!」
シュッ!
ザクッ!
「いぃっ!」
耳にいきなり、鋭いなにかが突っ込まれ、余りの痛さに耳を押さえ立ち上がる。
傍にいた娘は心配そうな顔をしてオレを見上げてる。
「大丈夫だよ。何かが耳に入ったみたいなんだ……いぃっ!」
耳の奥が激しく痛み、“何”かが、奥へと入っていっているようだ。
グルグルに頭の中が掻き混ぜられているような、目の奥がチカチカしたり、真っ暗になったり、真っ赤になったり、あまりの衝撃に痛みと吐き気が交互に襲い、立っていられなくなり膝をつく。
苦しみ唸るオレの前に、娘は寄って来て顔を覗きこむ。
きっと、オレの事を心配しているのだろうが、そんな事すら今の状態では気にしていられない。
軋むような抉るような音が脳内に響き渡る。
グチュグチュグチュゥッ
ガリッガリッガリッ……
目、目が霞む……
ぐらつく頭でふと目の前の娘の顔を見る。
すると、そこには何故か満面の笑みを浮かべた娘の姿があった。
「キュイ……パパァ……キュイキュイッ……これでもぅ、ナカマだキュイ……」
真っ赤に光目でそう言う娘の姿を最後にオレは意識を手放した。
「キュイキュイキュイ……さぁて。次は、ママねぇ……ミンナ。待ってってね」
「キュイキュイキュイキュイ……」
「キュゥイキュゥイキュィ……」
「キュキュキュイキュキュキュイ……」
地中の中には未だ、謎めいた生物が沢山いる。
我々、人間の中にも、もしかしたら……
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