取得霊感

富士

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ハシバシ

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ハマサキ宅

『いゃああああ!クロちゃん!気持ちわるい!』

ハマサキの飼っている猫、クロちゃんまでもがおじさんの顔になっていた。

(おい。ハシバシ。クロちゃんまでもその姿にするのはやめろ!ミライさんが
ご立腹だ。)

『っえ?ワダさん?』

ハマサキにはどこからかワダの声が聞こえていた。


『どういうこと…』

『なんだよ。ミライが怖がらせろって指示したんだろー?』

ハマサキの前に姿を表すおじさん。

ミライに付けられた名はハシバシ。

『きゃあああ!』

怯えるハマサキ。

『お嬢ちゃん怖がりだなぁ。やりがいがあるよ!へっへっへっ!』

『なんなのよ、あんた、、、』

泣きだす。ハマサキ。

『少しやりすぎたかな。ごめんよお嬢ちゃん。でもこれはお嬢ちゃんの為なんだぜ?』

『わかっている。ミライさんが送り込んだ協会専属の霊ね、、』

『そういう事!ミライのやろうこんな仕事おしつけやがって。おじさんも女の子泣かせるのはやなんだぞ!』

『随分と楽しそうに感じたけど!』


『そんな事はないさ。おじさんにも君くらいの娘がいてな!』

『!?』


ハシバシは自分の過去を話しだした。



『お父さん今日も休みなの?大丈夫なの?』

『仕事がないんじゃ仕方ないだろ!』

『だからって昼間っから酒のんで競馬はないでしょ!お母さんがみたら泣くわよ!』

『俺には特別な力があるんだ!当たるんだよ競馬なんてもんわ!それが仕事だ!』

『最低ね!くそ親父!』

『それで飯食ってんだお前も!父親になんて事いいやがる!』

『自分で働いてます!』

俺は事故で妻を亡くし全く働くなり悲しさを誤魔化す為に酒とギャンブルに走っていた。

霊感?というのがあるのか小さい頃から人には見えないものが見えていた。

しかし肝心の亡くなった妻は一度も俺の前には現れてくれなかった。

その事で悲しさも強くなっていた。

『マユミ、遅いなぁ残業か?』

いつも帰ってくる時間の2時間をすぎても帰ってこないマユミだった。

朝になっても帰ってこないマユミ。

『なんだ、何やっているんだ?俺に嫌気がさしたか?』

すると家に着信が入った。

『はい。もしもし。』

『おはよう御座います。マユミさんのご自宅ですか?』

『そうですが…』

『わたくしマユミさんの会社のものです。お父様ですか?実はですねマユミさん昨日無断で休んでるんですが体調でも崩されましたか?』

『いえ…マユミは昨日仕事に向かいましたが…』

『そうですか。どうしたんでしょうかね。マユミさんと連絡とれましたらご連絡いただけるようお願いできますか。』

『わかりました…』


それから1年、マユミは見つからなかった。

俺は医者に癌を宣告され余命半年になっていた。

死ぬ前にマユミに会いたい。最後は安心して死にたい。それだけでいい。

俺は残された人生でマユミを必死に探した。

しかし何の手がかりもなく俺は死んでしまった。

マユミは生きているのか?どこかで助けを求めていないか?それだけでも知りたい。
まだ死ねない…


そして俺は霊となった。

まだマユミを探せる!

俺は死んでしまったけれど希望を持てた。

『あのお尋ねしたい事が、あの、』

人に話しをかけても無視をされる。

『あの、聞きたい事が、、』


『きゃああああ!』

たまに反応されるが逃げられてまったく話しを聞いてくれる人はいなかった。

『くそぅ全然情報がないな。こんなんじゃマユミは見つけられない。』

『くそぅ、くそくそくそくそくそ。マユミをただ見つけてたい。娘が今どういう状態か知りたい。生きているか死んでいるかもわからないのか!』

するとハシバシの視界が急に違う場面にかわる。

あれ、ここはどこだ?

居酒屋だった。

『かんぱーい!』

『あれどうかした?マサル君。かんぱいしましょうよ!』

(まさる?)

そこは複数人いる飲み会の場だった。

すると1人の男性が

『マサルじゃない!誰だお前!』

『何いってるの?マサル君じゃない。』

『マサルじゃないだろ!誰だよこのおっさん!』

俺は娘を見つけたいと言う強い気持ちから一時的に人に憑依できるようになっていた。

その力次第に強くなり生きていれば人間以外の生き物にも有効されていった。

『人面犬だー!』

『普通の犬じゃない。』

『いや人面犬だろ!あきらかに!』

見える人間には俺が憑依したものは俺の顔になっているようだ。

『おい。気色悪い犬!貴様を除霊する。』

それがミライとの出会いだった。

ミライが手から緑色の炎を出す。

『やばいっ!』

一瞬でそのやばさが本能的にわかり俺は逃げた。

『待て!』


俺は何とか逃げる事に成功した。

『ハァ、ハァ、なんだ、あの女。めちゃくちゃやばいやつだぞ。憑依を解除する余裕すらなかった。』


俺は元の姿に戻った。

すると

ポンっ

肩を叩かれた。

あの女だった。

『うわぁああ!』

『余計な手間をかけさせるなよ。』

消される!すぐにそれはわかった。

『待ってくれ!まだ俺にはやらなきゃいけない事が!』

『私も今やらなきゃいけない事があるんだ。君を消すこと。』

『話しを聞いてくれ!お願いだ。』

俺は土下座をした。

『おいおい。こんな中年のおっさんの土下座は目に毒だぞ。わかった話しを聞こう』

『娘を探しているんだ!』

俺は全ての事情をこのミライという女に話した。

『なるほどな。まぁ君を消せって依頼があったわけではないんだ。ただここらの野生動物がおっさん化していると聞いて個人的にとても許せなくてな!』

『申し訳ない…』

この女に歯向かうとすぐ消される。
俺は下手にでて話しをしていた。

『あんた人間離れした相当な力を持っているようだ。何とか娘を探す事のに力をかしてくれないだろうか?』

『君は霊だろう。私になんの報酬があるんだ。今ここで消さないだけでも協力的なんだぞ?』

『それは…』

『しかし、君の能力は素晴らしいな。
一時的だが生体に憑依することで霊感のレベル関係なしに生きた人間とコミニケーションがとれる。
そんな霊ははじめて見た。
私のもとで働いてみないか?
報酬はそれでいい。』

『いいのか?』

『まぁ娘を見つけてやれる保証はないが誰かの依頼があれば君を消そうとする人間がいるぞ?
そうならないよう私の管理下で娘を探すんだな。』

『娘を探すのに協力する気ないじゃないか!』

『霊だからといってルールがないわけじゃない。生きた人間が決めたルールにのっとることがこの世界だよ。たとえ霊でもな!』

『なんて女だ。』

『君には協会専属の霊になってもらおう。そうだな。名前はハシバシだ。世界のハシからハシまで見て娘を探すんだな。』

『なんだそのふざけた名前は!』




『まぁこんな感じで専属霊やってます。』

涙を流して聞いていたハマサキ。

『ミライさんは娘さんを探す気はないのでしょうか?』

『さあな。あの女も忙しそうだしな。俺もあの女に目をつけられた以上こうやって霊をやっていくしかないようだ。』


『探しましょう!私協力します!』


『おぉ、ありがたいなお嬢ちゃん。でも俺なんかに時間を使ってる場合じゃないだろ。』

『いいえ。私は誰かの為に力を使いたい!お母さんからもそう言われていた!
除霊とかビジネスじゃないの私は!
困っている人にただ与えられた力を使いたい!ミライさんは否定するだろうけど私は私だわ!』

『お嬢ちゃん。』

『私はハマサキ!あなたに協力するからあなたも私に協力してもっとすごい力を取得させてください!』

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