107 / 182
夏鎮めの儀
17.きぬぎぬ
しおりを挟むうとうとし、ちょうど眠りに落ちようとしたところで、隆人の訪いがあった。
遥は目をこすりベッドの上に身を起こした。
寝室に隆人が入ってきた。
「起きたのか?」
「うん」
薄い掛け布団を持ち上げ、隆人を誘う。
隆人が微笑いながら滑り込んできて、遥をシーツに押し倒した。
「眠いか? 眠いなら、このままでいいんだぞ」
遥は隆人の首に腕を回し、自らキスをねだる。
深く互いの舌を貪れば体は自然と目を覚まし、熱く火照ってきた。隆人が自分を求めるのを感じて、遥の中で期待のうずきが生じてくる。
互いのパジャマと下着を脱がせあい、直に触れあって相手を欲する形を確かめ合う。
隆人の欲望を深く浅く身内に受け入れ、遥は喘ぐ。
「感じるのか、遥」
「ああ……、たかひ……」
「もっと欲しいだろう?」
「……んっ、もっと、もと感じたっ…いはげしく」
「いいぞ、遥」
隆人が答えた。
他人が、異物が、体内をこすり上げ引き抜かれ出入りしている。電撃のような快楽も、無理に広げられる苦痛もごちゃごちゃにかき混ぜられて、たまらずに隆人の体にかじりつき、無意識に腰を振っている。振っていると気づいて恥ずかしくなってもやめられない。
「たかひ、と、たかひと……」
大海に放り出され、溺れかかっているかのように思えて隆人にすがるが、その隆人こそが遥に快楽の波を続けざまに浴びせかけているのだ。
遥の腹部に欲望の証がたかまっていく。
「もう、もう……」
最後のひとことが言えず、その代わりシーツに片手をついて背を浮かせ、噛みつくようにキスをした。
「わか、った」
隆人の方ももう限界が近かったのだろう。一度大きく腰を引かれた。
「あんっ」
不満げな声を上げてしまった直後に大きく突き上げられた。
「ああっ」
背が思わずのけぞる。
隆人は花火の時よりも荒っぽく遥を追い立ててきた。
遥は目を閉ざして隆人の首に腕を回し、すべてをゆだねた。
何度かの大きな波の後、ついに遥は波の頂上へ突き上げられ、欲望を吐き出し、隆人の欲望の証をも体内に感じた。
風呂を簡単に使い、下着だけを身につけ、二人抱き合って清潔なベッドで眠った。
疲れていたからだろうか。それとも満たされていたからだろうか。遥はぐっすりと眠った。
朝が来て、世話係が起こしに来た。
ガウンを着て、世話係の給仕で朝食をとる。昨日がずっと和食だったせいかスクランブルエッグにベーコン、サラダにスープ、パンといった洋風がありがたい。
その後、鳳方の世話係から隆人の衣類が届けられ、俊介が隆人の着替えを手伝っていた。仕事に行くのだろう。ネクタイこそしていないものの、ワイシャツにスーツだ。
遥は則之のサポートを受けて着替えた。帰るだけなので淡いミントグリーンのポロシャツに生成りの麻のパンツを選ばれた。
「遥」
隆人に呼ばれて前に行った。
「きぬぎぬ、という言葉を知っているか?」
首を横に振る。隆人が「そうか」と言った。
「昔は通い婚だった。女のもとを男が訪ね、朝帰った。きぬぎぬの語源ははっきりとしてはいないそうだが、布団がなかった時代に共寝するとき、互いの着物を重ねて掛けて布団のようにしていたらしい。その重なり合った衣と衣とが別々になる朝、ということできぬぎぬは、後の朝と書く」
隆人が遥の手を取り、手のひらに「後朝」と指で書いて見せた。
「今の俺とお前だ」
0
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
家族連れ、犯された父親 第二巻「男の性活」 ~40代ガチムチお父さんが、様々な男と交わり本当の自分に目覚めていく物語~
くまみ
BL
ジャンヌ ゲイ小説 ガチムチ 太め 親父系
家族連れ、犯された父親 「交差する野郎たち」の続編、3年後が舞台
<あらすじ>
相模和也は3年前に大学時代の先輩で二つ歳上の槙田准一と20年振りの偶然の再会を果たした。大学時代の和也と准一は性処理と言う名目の性的関係を持っていた!時を経て再開をし、性的関係は恋愛関係へと発展した。高校教師をしていた、准一の教え子たち。鴨居茂、中山智成を交えて、男(ゲイ)の付き合いに目覚めていく和也だった。
あれから3年が経ち、和也も周囲の状況には新たなる男たちが登場。更なる男の深みにはまりゲイであることを自覚していく和也であった。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる