上 下
96 / 182
夏鎮めの儀

6.番《つがい》の夜(中)

しおりを挟む


 何の物音もしなかった。なのにいきなりカーテンごと抱きしめられた。

「足が丸見えだ。何をやっている」
「ノリが悪いな」
「あいにくそんな暇じゃない」

 抱擁がとかれてカーテンをはぎ取られ、改めて抱きしめられた。

「遥」

 熱く名を呼ばれる。遥は自分からキスを求め、隆人の背に腕を回して縋った。その時微かなミントの香りを感じ、思わずふふっと笑いがこぼれた。

「何かおかしいか?」

 隆人がいぶかしげにしたので、遥は腕を緩めて目をのぞく。

「ミントの香りがしたから、歯磨きしてきたんだなって」
「寝る前には歯磨きはするだろう」
「するけど――」

 遥は隆人の首に再びしっかりと抱きついた。

「何だかうれしかったんだ」
「おかしな奴だな」

 隆人の腕が遥の背をしっかりと抱いた。互いの舌を絡め、奥まで隅まで互いを味わう。
 唇がはずれて、隆人のそれが耳朶へ移った。唇で食まれ、舌先が耳殻の形をなぞる。その濡れた音にぞくぞくする。
 ふたりもつれる足取りでベッドに倒れ込んだ。
 隆人がなおも遥の左耳をなぶり回しながら、爪で右胸のわずかな尖りを執拗に弾き出した。

「あ、ああ……」

 二箇所同時に責められるとどちらを感じればいいのか、どちらを感じているのかわからなくなる。それがもどかしくて、遥は隆人の股間に自らの熱く猛ったものをこすりつけた。

「今夜はせっかちだな」

 唾液に濡れた耳に吹き込まれる息が冷たい。

「ずっと待たされたんだ。早くしてくれてもいいだろう?」
「何を?」

 久々に隆人の性格の悪さが顔を出した。

「わかってるくせに。自分だってこんなに硬くでかくなってるくせに」

 証明するように隆人の胴に腕を回して、互いのものをパジャマ越しにこすりつける。

「ああ、もう下着もパジャマも台無しだ」

 隆人が強引に体を離した。もどかしげに自分の着ているものを脱ぎ捨てると、遥のものも脱がしにかかった。遥も自らパジャマと下着を蹴り脱ぐ。

「危ないぞ」
「隆人」

 咎める口調を無視して、遥は隆人に両手を伸ばして誘った。
 隆人が遥の両の腿の間に入り込んで来た。そして遥の後ろを確かめ指をいれた。
 遥の体がのけぞる。

「ローションは大丈夫そうだな」
「今日、新しいの、用意されてて、丸くて中に入れると溶けてくるって。それが漏れてきそうで……だから……」

 隆人のそれが押し当てられる。

「自分で入れたのか?」

 でもくすぐるように細かく上下に揺れるだけで、遥の望み通りにならない。

「ああ、そうだよ。自分で入れた。奥まで入れろって説明書に書いてあったから、自分の指で奥まで。だから、だから、早く」
「いい子だ」

 隆人が指で広げながらゆっくりと、しかし確かに肉を押し広げながら入ってくる。その重く熱いかたまりの存在に意識が集中し、体も乗っ取られてしまう。
 まるで遥の内部を検分するように隆人が静かにゆっくりと動き出す。こすられる異様さにぞくぞくとして肌が粟立つ。

「ここが好きだったな」

 先端で遥の最も感じやすい部分がそっと探し当てられ、弱く押しもまれる。

「あああ……」
「いいか、遥」

 がくがくと頷く。

「言葉で言え」
「いい、かん、じてる、隆人を……」
「俺もだ」

 隆人のうねりが大きくなった。感じるところもひりひりとするところもすべてない交ぜにされて、挿れられて抜かれて、腰から体がとろけていく。
 繋がりあったまま隆人が、遥を抱えて体を起こし、ベッドに座る。

「う……あふ……」

 更に深く楔が自重で打ち込まれ、体全体を隆人で満たされたような気がする。

「おれの、さわって」

 頼むと今度は素直に応えてくれた。
 遥の濡れたものが大きくたくましい手に包み込まれ、小刻みに動かされ始める。
 もう遥は力がまるで入らず、隆人を受け入れたまま体を預けて、与えられる快楽に酔った。
 濡れる先端もくびれも、硬く立ち上がったそれ自体も隆人の指の動きに翻弄されて、すぐにも上り詰めてしまいそうになる。
 呼吸がせわしなくなるので限界を察したのだろう。隆人の指が残酷に根元を押さえた。

「ああっ」
「まだ早い。俺と一緒に行け」
「はやく、はやくし、て」
「お願いは?」
「おねがいだから、隆人、はやく、いきたい、ふたりで」

 隆人が遥をシーツに伏せさせた。遥はシーツに顔を伏して隆人を期待に震えながら待つ。
 隆人が激しく遥の体を襲った。浅くまで抜かれては敏感なところを押し込まれ、開かれた双丘を肉がうちつけてくる。
 その振動が背筋を駆け上って頭まで痺れさせられる。更にそれに緩急が加えられ、遥は波にもみくちゃにされるような恐怖とそれを超える快楽に声を上げる。
 肉を打つ音と二人の呼吸の音だけが室内に響き、やがてリズムは性急になり、遥は悲鳴を上げた。
 そして二人崩れるようにシーツに身を落とす。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マッチョ兄貴調教

Shin Shinkawa
BL
ジムでよく会うガタイのいい兄貴をメス堕ちさせて調教していく話です。

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

家族連れ、犯された父親 第二巻「男の性活」  ~40代ガチムチお父さんが、様々な男と交わり本当の自分に目覚めていく物語~

くまみ
BL
ジャンヌ ゲイ小説 ガチムチ 太め 親父系 家族連れ、犯された父親 「交差する野郎たち」の続編、3年後が舞台 <あらすじ>  相模和也は3年前に大学時代の先輩で二つ歳上の槙田准一と20年振りの偶然の再会を果たした。大学時代の和也と准一は性処理と言う名目の性的関係を持っていた!時を経て再開をし、性的関係は恋愛関係へと発展した。高校教師をしていた、准一の教え子たち。鴨居茂、中山智成を交えて、男(ゲイ)の付き合いに目覚めていく和也だった。  あれから3年が経ち、和也も周囲の状況には新たなる男たちが登場。更なる男の深みにはまりゲイであることを自覚していく和也であった。

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

処理中です...