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春から梅雨
翌る朝(1)
しおりを挟む疲れていたのだろうか。
遥が目を覚ました時には、既にカーテンの隙間から白っぽい明るさが漏れていた。
その薄い明るさの中、横たわったまま室内を眺めた。
カーテンは薔薇色でうんざりするほど襞が作られている上、縁や裾にぴらぴらと飾りがついて、少女趣味の極致だった。
その前にある小さなテーブルと二人掛けのソファと一人掛けの椅子の曲線的な装飾。なぜテーブルや椅子の脚、背もたれの上部を湾曲させた上、絵画の蔓草のような出っ張りを設けるのだろう。服を引っかけてしまうではないか。
とにかくどの家具も無駄に豪華で優美で、庶民の遥には、見ているだけで疲れを感じる代物ばかりだ。
ここが凰の部屋、すなわち遥の部屋だと言われても、どうもしっくり来ない。
ただこれらの品々の価値を聞いたら、遥好みのシンプルなものに入れ替えてほしいとは到底言えない自分を、遥はよくわかっていた。
顔を洗いに行こうと起きあがって、遥はぎょっとした。
広いベッドの奥側に隆人が寝ていたのだ。
自分の間抜けさ加減にあきれ果てた。
いくらベッドが大きいからって、普通は気づくだろう、普通は。
顔が赤くなっているのがわかった。
昨日のことがまるで映画のフィルムが流れるように、頭の中をよぎった。
証立てを受け入れたときの隆人の驚愕の表情。壇上で隆人と肌を合わせ、求め合った深い口づけ。見られていると気づいたときの恐怖。目隠しを外された瞬間の隆人の眼差し。そして、熱くとろけてしまいそうな、深い深い快楽。
思いだしただけで体が反応してしまった。思わず前屈みになる。
とにかくトイレへ。
そう思って隆人に背を向けたとき、密かな笑い声を聞いた。はっとして振り返る。
隆人がおもしろそうに遥を見ていた。
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