A Caged Bird ――籠の鳥【改訂版】

夏生青波(なついあおば)

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A Caged Bird ――籠の鳥【改訂版】

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 意識がもうろうとしている状態で、浣腸された。されているということだけはわかった。
 しかし、それに対して何もできない。あのアパートで施された拘束はまだはずされていなかった上、体がひどく重い。
 満足に体の動かぬままベッドに運ばれ、仰向けに寝かされた。
 それまでの手錠をはずされた代わりに、別の手錠を右手にかけられた。輪と輪の間の鎖がそれまでのものより長く、空いている方の輪はヘッドボードを丸くくりぬいた中の垂直な金属の棒を通してから、左手にかけられた。
 足首の拘束はそのままだった。
 遥の体を男がうつぶせにする。
 鎖の長い手錠に代えられた理由は、そうやって遥の体を動かして隅々まで確認することができるようにするためだったらしい。
 尻を開かれてぬるぬるとした何かが押し込まれた。排泄で緩んだ後であったし、まだ麻痺したように反応の鈍い遥の体は、それを簡単に受け入れる。
 何をされたのかはわからなかった。ただ、中に挿入された上、股間の前後にあたる突起があった。
 また仰向けにされると、挿入されたものが動いた。びくんとすくんだ体内に電流が走り、息をのんだ。

 何だ、今のは?

 動くのが恐ろしく、じっと上を見上げる。
 男が視線に気づいた。
「挿入した器具は前立腺を内側からマッサージするものです。会陰や仙骨も外から刺激いたします」
 ひどく事務的な口調だった。

 続いて男が何をしているのかが見えた。
 小さなボトルから何かを出すと、遥の萎えているものに丁寧に塗りつけた。
 全身に鳥肌が立った。
 今度は何をされたのかわかった。そして思いだした、塗りつけられたものがもたらす身体の変化と、恐ろしいほどの快感を。
  最後に男はとろみのある液を塗りつけた遥のそれの根本に細いベルトのようなものをはめると、手錠や薬物のボトルを片づけて出ていった。
 遥はその場に残された。

 体の変調はすぐに始まった。
 塗られた部分だけが、遥の体とは別の生きものになってしまう。
 わいせつな想像も視覚的な刺激もなく、ただそこだけが勝手に反応していく。もたらされる熱は似ているが、もっと淫靡で陰湿だ。信じられないくらい熱く硬くなる。
 あの液は尻に押し込まれていたものにも塗られていたらしい、熱い疼きに尻を振ってしまい、挿入されているものが前立腺をもみ上げる。その度びくびくと体が震えて更に中をすられ、前後の突起に股間を刺激された。その感触がおぞましいほど気持ちがいい。
 苦しくて吐く息さえ、妙に熱を帯びている。切ない。
 どうしようもなく体が熱い。体の中心から脚にかけてが汗が浮かぶほど熱い。肩は肌寒さを覚えるほどなのに、熱い。苦しい。
 じっとしていられない。
 涙が湧いてきた。
 かゆみのような熱さと器具の刺激に、体の中と外から遥は溶かされているような感覚に侵されている。
『うう……く……』
 さるぐつわを噛まされた口は、呻くことしかできない。
 触りたい。
 せめて前だけでも自分の手で慰めてしまいたい。
 しかし遥の両手はベッドに結びつけられていて、遥の顔あたりまでしかおろすことができない。
 その時、突然自分が寝返りを打てることに気がついた。
 たまらずにうつぶせになる。シーツに信じられないくらいに張りつめたペニスがこすれた。中をすりすりと押し上げられ刺激される。
 全身がぞくぞく震えてとまらない。
 なのに、遥はいくことが出来なかった。
「あ……、くうぅ、うう……」
 根本に食い込む小さなベルト。
 それは遥に射精させないためだったと、今気づいた。
(ああっ、気が狂いそうだ)
 陰湿な快感にむしばまれて、シーツに体をすりつけることがやめられない。そうすればするほど自分を追いつめていく。
 絶対にいくことのできない苦しさに、遥はのたうち回った。
 手錠の鎖が絡まり、ぎりぎりと音を立てる。
 ますます自由を奪われていくのに、どうすることもできない。
 その部屋の中で、遥だけがひたすら悶え苦しんでいる。
 助けもなく、赦しを与えてもくれない。
 いつの間にか、遥は泣き叫んでいた。舌を押さえ込まれて言葉は出すことを許されていない。
『いやだー、やめてくれ! これを取り出してくれッ、おかしくなる、外して、いかせてくれ! ああっ、狂うぅぅ』
 鎖を引きちぎらんばかりにもがきながら、わめき続けた。
 そうしたいと思ってしているのではない。他にできることがなかったからだ。
 手が届くことのできる額に、遥は爪を立てた。そのまま力を込めて、手を顎の方へ下ろしていった。

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