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A Caged Bird ――籠の鳥【改訂版】

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「もういいだろう」
 老人のつぶやきが聞こえた。
 指が引き抜かれると、喪失感に声を上げそうになり、頬がいっそう熱くなった。が、すぐにほぐされた輪に熱く固いものが当てられ、無理矢理に体内に押し入ってきた。
『うぐっ』
 内臓にかかる圧力に呻きが漏れた。
 巨大なそれは、遥の意思にも体の具合にもお構いなく、肉の輪をわずかに裂き肉壁を抉りながら、奥へ突き進んでくる。
『やあああ、ああ、ひぃっ』
 自分が悲鳴を上げていることに初め気づいていなかった。圧倒的な存在感に思考力を奪われていたのだ。
 ただ、それが体の奥に突き進むと、自ら喉を振り絞り悲鳴を上げているのを思い知るしかなかった。他にできることが遥にはなかった。
 尻に突っ込まれたそれはやがてゆるゆると出し入れされた。入り口から奥へ、奥から入り口へ。そうするとうずうずとした熱をもった肉が蕩けるようにそれを包み込み、悦楽を追い求めようとし始めた。

 だめだ、こんなの、許さない、だめ……

 中を擦られているのに痛みがない。強引な挿入で切れた痛みはあるものの、体が内部から燃えるように熱くなってきた。全身にしっとりと汗が浮かぶのがわかる。
 腰が、尻がとろける。
 絶望と快楽の狭間で遥はふらふらと揺れ動いていた。

 誰かが下から遥の性器をつかんだ。尻の中への刺激で勃起しかけているのは自分でもわかっていた。
 そこにもあのとろりとした液が塗りつけられた。その瞬間から、それは遥の体の一部ではなく別の生き物になった。
 上下になめらかに擦る手の刺激で簡単に勃たされ、すぐに絶頂に導かれた。
 体が芯から熱い。頭の中が真っ白だ。
 前からの直接の刺激をまた欲しがって、硬く充実していくのがわかる。すると手はまたそれが求めるのに応じて擦って、あるいは先端を指の腹でぐにぐにと弄られる。その快感に体は素直に追い上げられ、再び上り詰めさせらる。
 いかされるたびに深く打ち込まれたものをきつく締め付けてしまう。その時にはもう、それが誰かの性器であることはわかっていた。性器が出入りするその感覚自体も気持ちいい。知らぬうちに腰を振ってしまっている。
 男に犯されながら、何度も絶頂を迎えさせられる。まったく抵抗できない状態で、何の意思表示もできない状態で。
 その上にまた背に針を感じる。痛みと快感に遥の意識はめちゃくちゃになっていった。どこで何を感じているのかわからない。ただ猿ぐつわをされたまま声をあげ続けた。

 誰かの声がした。
『愚かよのう、人の子』
 声は嘲る。
『そうまでして我が力を繋ぎ留めたいか。ならばまだ我が前で踊ってもらおうではないか。楽しみにしておるぞ』
 哄笑とともに鳥の羽ばたきが聞こえた気がした。

 意識が戻った時、遥は自分が正気でいることが信じられなかった。
 どうして狂ってしまえなかったのか。
 無力感に打ちのめされ、唇を噛みしめて震えていることしかできなかった。
 背は毛布が触れるだけで飛び上がりそうに痛い。
 さんざん男にもてあそばれたアナルも、ペニスもひどい違和感があった。
 これから自分がどうなるのかわからない。
 ただわかっているのは、誰も遥の意思をくみ取ってはくれないであろうことだ。遥は人間ではなく、道具に落とされた。その証が背に刻まれた何かなのだ。

 死ねるものなら死にたいよ、父さん――

 死ねないのなら、せめてここからは逃げ出したい。
 いや、逃げ出してやる。
 これ以上連中の思うとおりにはさせない。

 ふつふつと怒りがわき上がってきた。
 死に瀕した父が絶対にやってくれるなと願ったこと――遺言を簡単に踏みにじられた。もう、もとの体には戻れない。
 絶対に許さない。絶対に思うとおりにはさせない。
 あきらめから従順になったと装って、遥は逃走の機会をうかがい続けた。

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