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8.理想の未来へ
(6)※
しおりを挟む泰徳の手が胸から手を澄人の尻の方に滑ると、思わず逃げるように身を捩ってしまった。そんな澄人を泰徳が愛しげに笑う。
「うつ伏せになれ。腹の下に枕を入れた方が楽だ」
命令に澄人は素直に従うが尻を上げた姿には羞恥を覚えた。両腿の間に泰徳が入った。秘すべき場所を泰徳に晒している恥ずかしさに額をシーツに押しつける。
「これからここを拡げる」
後孔を指で丸く撫でられ、腰が跳ねた。
指が離れたので首を捻って背後の泰徳を見ると手にしたチューブの蓋を開けている。澄人は速まる鼓動と熱くなる体に耐えきれず、顔をシーツに戻した。とろりとした液に塗れた指が固く閉じた後蕾の襞に触れた。そこを丁寧に濡らしていく。
「ゆっくり息を吐いて、力を抜け」
泰徳の言葉に従いながら、そこを開こうと意識する。しかしつぷりと先端が入っただけで、澄人の体は異物を押しだそうとする。液が増やされ、再び入りこんできた指で小さく抜き差しが繰りかえされる。吐く息が、あっあっという声となって漏れてしまう。
「上手だぞ、澄人」
優しい声にふっと喜びの笑みがこぼれた。その瞬間、指がまた奥へ進んだ。確かに澄人の中に泰徳の指がある。指は柔らかに開きかけの蕾を撫でまわり、辛抱強く出入りする。
澄人は目をつぶって深く呼吸をした。今体に入っているのは泰徳の一部だ。やっとここまでこられた。だが足りない。泰徳の体でもっと自分を満たしてほしい。
「指を増やすぞ」
泰徳の言葉に息を吐く。こじ開ける力に逆らわないように体を緩める。進入を阻もうとする反射を短い吐息で紛らわす。
泰徳の指は男性らしく節があり、太く長い。たっぷり濡れたそれを二本、澄人の体は受けいれた。開かれた後孔は擦られることに慣れてきている。敏感な肉輪は泰徳の指の形を感じとり始めた。
「男同士のセックスを調べたのなら、前立腺で快感を得られることも知っているのだろう?」
からかうような声だ。澄人は小さく、はい、と答えた。指の腹が昂る澄人の付け根の裏側を探っている。そこに触れられたら何が起きるのかわからず、澄人の体は緊張にこわばる。
「大丈夫だ。気持ちよくなれる。安心しろ」
泰徳は澄人の心の動きを察してくれている。背後から軽く抱きしめられた。その温もりにふわっとリラックスした瞬間、澄人の体は衝撃に貫かれた。
「ああッやぁーッ」
神経を直に触られたような、それでいて苦痛とは違うたまらない何かに背を反らして声をあげた。
「ここか」
獲物を捕らえたかのような泰徳の声音とともに、指がそこを柔らかく揉む。澄人はうろたえ腰を振って逃げようとする。
「あ、あ、だめっ、や、やっ」
「違うだろう? 気持ちいいんだろう?」
「わ、からな……ひっ」
「お前は感じているんだ。気持ちいいから体が反応している。前を触ってみろ」
触らなくてもわかっている。中からの刺激が強制的に澄人を押しあげてくる。より硬くなり、シーツや枕で擦れて溢れる先走りがあたりを濡らしている。
「言え、澄人。正直に口にしろ」
「き、もち、い……いいッ感じるッ」
「そうだ。すぐにここが好きになる。ここでイくこともできるようになる。俺がしてやる」
泰徳にならどうされてもいいと、澄人は慣れぬ快感に体をびくびくと痙攣しながら思った。泰徳にこうされたかった。
泰徳がどんなセフレと付きあっても、澄人は相手に瑕を見つけた。結城至だけではない。他の者も泰徳の相手としては不満でいつも不快だった。今はわかる。泰徳の側に澄人は在るのに、セックスの相手だけは、快楽を分け与えてもらえるのは自分ではなかったからだ。やっと望みが叶った。泰徳が自分を抱いてくれる。自分が泰徳に快楽を与えられる。
澄人は自ら尻を上げ、泰徳を振りかえった。
「もっと、もっと泰徳様の好みに、してください。俺を、変えて。おねがい、です」
泰徳がにんまりと笑っていた。
「ああ、俺の好みに育ててやる」
前立腺への刺激に澄人とは腰を振り、喘いだ。後孔を開くことに慣れてきて、指は三本に増やされた。その指で更に中を拡げられ、責められて澄人の昂りから溢れる透明の愛液は止めようがない。
「そろそろいいだろう」
限界まで深く差しこまれていた指が抜かれた。澄人の鼓動が速くなる。泰徳が腹までそそり立った剛直にローションをつけようとしていた。
「俺が、やります」
泰徳が微笑み、澄人の手にローションを出してくれた。とろりと冷たいそれを手のひらに広げ、泰徳を包みこんだ。重量と硬さのあるそれは張りつめ血管が浮いている。先端から根元まで丁寧にローションを塗りつける。
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