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すれ違いはサプライズ
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そんな日常の中、湊が出て行ってしまう事件が起きてしまったのだ。
その日は俺が休みで湊は早上がりの日だった。
交番勤務の俺は交代制の勤務サイクルで、湊も日曜日と祝日以外は早番だったり遅番だったりの勤務のため、俺たちの休みが合うことはめったにないことで、湊は休みではないが一緒に過ごせる時間が少しでもあることに俺たちは浮かれていた。
いや、正確には俺だけが浮かれていたのかもしれないが。
「じゃあ、行ってくるね。わかってると思うけど、煌太さん。俺のいない隙に誰かと会おうなんて、」
「わかってますよ、湊くん。今日は大人しく、買い物でもして家で帰りをジーっと待ってますから。」
相変わらず、俺の浮気の心配をする湊をなんとか宥めて仕事に送り出して、俺も支度をしてある場所に向かう。
もうすぐ交際一年になる可愛い恋人のために作っていたアクセサリーが、あと少しで完成しそうなのだから、今、バレてしまうわけにはいかないのだ。
「水希さん、とても素敵な仕上がりです!お相手の方もきっと、喜んでいただけますね。」
「だと、いいんですけどね。」
そもそも、記念日とか誕生日とかに疎かった俺が手作りのアクセサリーを作っているなんて湊は夢にも思わないことだろう。
同僚の一言が全ての始まりであった。
『そういえば、この前奥さんと結婚して8年目の記念日だったんだけどさ、俺すっかり忘れてたんだよな。でも女の人ってそういうのちゃんと覚えてるみたいでさ、帰ったらぶっきらぼうにはい、これって渡された箱に手作りのバングルが入ってたわけ!さすがの俺も感動したよな。だからさ、お前も付き合ってる人いるなら、記念日は大事にしとけよ?』って、半分以上惚気話を聞かされたわけだが、目から鱗状態の俺は、すぐに手作りのアクセサリーショップを調べて1ヶ月間、湊の目を掻い潜って通い続けていたわけだ。
物をあげたから何かが変わるなんて思ってもいないけれど、心配性で嫉妬ばかりする湊がこれで少しでも安心してくれるといいとは思っている。
俺だって、若い湊にいつ呆れられるかとかもっといい男なんか世の中に数えきれないほどいるんだから、いつ湊が他の奴を好きになるかとか、湊には言わないだけで結構不安なんだ。
「あと少しで、素敵なアクセサリーが出来上がりますね。次回の来店もお待ちしております。」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。」
店を後にして、夕飯の食材を買って家に帰った俺は、全く気が付きもしていなかったんだ。
湊の、嫉妬の本当の意味を。
「ただいま~。」
「おかえり、湊。ちょっと早いけど、夕飯もうできてるからいつでもいいぞ。」
「うん…。」
早上がりの日は遅くても16時半には帰ってくる湊が、今日は17時半になってようやく帰ってきて、いつもよりも様子がおかしいことに気がつく。
いつもなら、『ただいま!今日、誰かに会った?』って喰われるくらいの勢いで聞いてくるはずが、今日に限っては何も聞かない。
それどころか、『あ、今日のご飯、俺の好きなカレーだ!さすが、煌太さんだね!』っていうお褒めの言葉もないなんて、明らかに何かがおかしい。
ただ、湊も新社会人として働き始めて数ヶ月しか経っていないのだから、かつての俺と同じように社会の荒波にでも揉まれているのだろうか。
食事の席についても、何も言わずにただ黙々と好きなカレーライスを食べ続ける湊に、さすがの俺も心配になって声を掛ける。
「湊、どうした?なんか、元気ないみたいだな?」
「え?そんなこと、ないよ?」
そう言って俺と目を合わせないように、ひたすらカレーライスの器を見つめる湊が俺にも言えないようなことで悩んでいるのかと思うと、胸が苦しくなる。
その日は俺が休みで湊は早上がりの日だった。
交番勤務の俺は交代制の勤務サイクルで、湊も日曜日と祝日以外は早番だったり遅番だったりの勤務のため、俺たちの休みが合うことはめったにないことで、湊は休みではないが一緒に過ごせる時間が少しでもあることに俺たちは浮かれていた。
いや、正確には俺だけが浮かれていたのかもしれないが。
「じゃあ、行ってくるね。わかってると思うけど、煌太さん。俺のいない隙に誰かと会おうなんて、」
「わかってますよ、湊くん。今日は大人しく、買い物でもして家で帰りをジーっと待ってますから。」
相変わらず、俺の浮気の心配をする湊をなんとか宥めて仕事に送り出して、俺も支度をしてある場所に向かう。
もうすぐ交際一年になる可愛い恋人のために作っていたアクセサリーが、あと少しで完成しそうなのだから、今、バレてしまうわけにはいかないのだ。
「水希さん、とても素敵な仕上がりです!お相手の方もきっと、喜んでいただけますね。」
「だと、いいんですけどね。」
そもそも、記念日とか誕生日とかに疎かった俺が手作りのアクセサリーを作っているなんて湊は夢にも思わないことだろう。
同僚の一言が全ての始まりであった。
『そういえば、この前奥さんと結婚して8年目の記念日だったんだけどさ、俺すっかり忘れてたんだよな。でも女の人ってそういうのちゃんと覚えてるみたいでさ、帰ったらぶっきらぼうにはい、これって渡された箱に手作りのバングルが入ってたわけ!さすがの俺も感動したよな。だからさ、お前も付き合ってる人いるなら、記念日は大事にしとけよ?』って、半分以上惚気話を聞かされたわけだが、目から鱗状態の俺は、すぐに手作りのアクセサリーショップを調べて1ヶ月間、湊の目を掻い潜って通い続けていたわけだ。
物をあげたから何かが変わるなんて思ってもいないけれど、心配性で嫉妬ばかりする湊がこれで少しでも安心してくれるといいとは思っている。
俺だって、若い湊にいつ呆れられるかとかもっといい男なんか世の中に数えきれないほどいるんだから、いつ湊が他の奴を好きになるかとか、湊には言わないだけで結構不安なんだ。
「あと少しで、素敵なアクセサリーが出来上がりますね。次回の来店もお待ちしております。」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。」
店を後にして、夕飯の食材を買って家に帰った俺は、全く気が付きもしていなかったんだ。
湊の、嫉妬の本当の意味を。
「ただいま~。」
「おかえり、湊。ちょっと早いけど、夕飯もうできてるからいつでもいいぞ。」
「うん…。」
早上がりの日は遅くても16時半には帰ってくる湊が、今日は17時半になってようやく帰ってきて、いつもよりも様子がおかしいことに気がつく。
いつもなら、『ただいま!今日、誰かに会った?』って喰われるくらいの勢いで聞いてくるはずが、今日に限っては何も聞かない。
それどころか、『あ、今日のご飯、俺の好きなカレーだ!さすが、煌太さんだね!』っていうお褒めの言葉もないなんて、明らかに何かがおかしい。
ただ、湊も新社会人として働き始めて数ヶ月しか経っていないのだから、かつての俺と同じように社会の荒波にでも揉まれているのだろうか。
食事の席についても、何も言わずにただ黙々と好きなカレーライスを食べ続ける湊に、さすがの俺も心配になって声を掛ける。
「湊、どうした?なんか、元気ないみたいだな?」
「え?そんなこと、ないよ?」
そう言って俺と目を合わせないように、ひたすらカレーライスの器を見つめる湊が俺にも言えないようなことで悩んでいるのかと思うと、胸が苦しくなる。
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