64 / 102
忘れていた恋の記憶
(3)
しおりを挟む
ドクドクと心臓が鳴る。もちろん、デカくて見るからに高そうな皿を落としかけたせいもあるが、多分それだけではない。
『奏、好きだ』
真摯な誠実な言葉だった。第一、ユウリはそんな冗談を言う奴ではない。
だからこそ、信じられなかった。俺は夢に夢を見るなんの才能もない平凡な男、いや、それ以下なのかもしれない。
彼氏に浮気され、浮気相手に脅され運の尽きもここまで悪いかと自分でも思う。
対してユウリは、俺とは比べ物にならないくらいに立派な男である。
単身でイタリアへと渡り、厳しすぎるが故に毎日胃が痛くなりながらも修行を積み重ね、日本でシェフとしてオーナーとして成功している。
外見は言わずもがな、性格もこの通り最高すぎる男だ。
なのに、何故俺なんだ。俺なんかを好きなんだ。
何回考えても答えは見つからない。けれども、それをユウリ本人に聞く勇気だってない。
「それで?奏くんは今、何に悩んでるのかな?」
「え、何にってもちろん、克巳とのこと」
「違う違う。この期に及んでまだ誤魔化そうとしてる?」
…やはり良樹は騙せない。
「実は俺、ユウリに告白された」
「うん。そっか、ついにユウリさん言ったんだ」
どうも会話が噛み合っていない気がした。良樹にはユウリが元カレだったことしか伝えていない。なのにそれではまるで、何かを知っているようだ。
困惑した顔で言葉を失っていると、良樹が言う。
「実は俺、ユウリさんに相談されてたの。いつものバーで」
聞けば良樹とユウリはあれから度々、飲みに行く仲になっていたそうで、俺たちが出会ったバーにもよく足を運んでいたらしい。
そこで、ユウリからの相談、つまりユウリが俺のことを好きだと聞いたという。
「…もしかして二週間前くらいにバーにいた?二人で」
「ん?ああ~いたかな?なんで?」
やっぱり、と思いながらもあの時の自分の勝手な判断に赤面してしまいそうだった。
観念してあの日のことをかいつまんで話すと、良樹が盛大に笑い出す。
『奏、好きだ』
真摯な誠実な言葉だった。第一、ユウリはそんな冗談を言う奴ではない。
だからこそ、信じられなかった。俺は夢に夢を見るなんの才能もない平凡な男、いや、それ以下なのかもしれない。
彼氏に浮気され、浮気相手に脅され運の尽きもここまで悪いかと自分でも思う。
対してユウリは、俺とは比べ物にならないくらいに立派な男である。
単身でイタリアへと渡り、厳しすぎるが故に毎日胃が痛くなりながらも修行を積み重ね、日本でシェフとしてオーナーとして成功している。
外見は言わずもがな、性格もこの通り最高すぎる男だ。
なのに、何故俺なんだ。俺なんかを好きなんだ。
何回考えても答えは見つからない。けれども、それをユウリ本人に聞く勇気だってない。
「それで?奏くんは今、何に悩んでるのかな?」
「え、何にってもちろん、克巳とのこと」
「違う違う。この期に及んでまだ誤魔化そうとしてる?」
…やはり良樹は騙せない。
「実は俺、ユウリに告白された」
「うん。そっか、ついにユウリさん言ったんだ」
どうも会話が噛み合っていない気がした。良樹にはユウリが元カレだったことしか伝えていない。なのにそれではまるで、何かを知っているようだ。
困惑した顔で言葉を失っていると、良樹が言う。
「実は俺、ユウリさんに相談されてたの。いつものバーで」
聞けば良樹とユウリはあれから度々、飲みに行く仲になっていたそうで、俺たちが出会ったバーにもよく足を運んでいたらしい。
そこで、ユウリからの相談、つまりユウリが俺のことを好きだと聞いたという。
「…もしかして二週間前くらいにバーにいた?二人で」
「ん?ああ~いたかな?なんで?」
やっぱり、と思いながらもあの時の自分の勝手な判断に赤面してしまいそうだった。
観念してあの日のことをかいつまんで話すと、良樹が盛大に笑い出す。
2
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
何処吹く風に満ちている
夏蜜
BL
和凰高校の一年生である大宮創一は、新聞部に入部してほどなく顧問の平木に魅了される。授業も手に付かない状態が続くなか、気づけばつかみどころのない同級生へも惹かれ始めていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる