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恋じゃないなら、何だったのか
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目と目が至近距離で合う。ユウリの濡れた瞳が俺の瞳に映る。
「奏、好きだ」
瞬間、胸が飛び跳ねた気がして息が止まっていた。
ユウリが俺を好きだなんて、そんなの何かの間違いだ。
だって俺は克巳が好きで克巳が彼氏で、今は仲違い仲だけども。
第一、ユウリみたいに完璧な人は俺なんかと一緒にいていいはずがない。
なのに、どうしてだろう。胸が騒がしい、俺、多分今、ときめいている。
「よし、じゃあ買い出し行ってくる。奏はちゃんと布団に入っててね」
「お、おぅ」
触れ合わせた額を勢いよく離し、ユウリはそう言うとさっさと部屋を出て行った。
触れ合わせた額がまだ熱い。
額に手を当て、思わずまだ触れていたかったと思う自分にほとほと呆れる。
…これじゃ、勝己のこと言えねーじゃん。
ユウリに言われた通り、布団に横たわり思い描くのは、克巳とのこと。
克巳はどうして東雲先生とあんなことをしたのだろうか。仮に俺を好きじゃなくなったなら何故、正直に言ってくれなかったのだろう。
だろう、だろうと仮定ばかりの自分。けれどそろそろ、はっきりとさせなければならない。
ユウリが充電してくれた端末電子を抜き、携帯の画面にタップする。
メール履歴には良樹とユウリ、それから克巳の名前。
「…そろそろケリ、つけなきゃだよなぁ」
新規作成のメールを開き、呟いていた。
「奏、好きだ」
瞬間、胸が飛び跳ねた気がして息が止まっていた。
ユウリが俺を好きだなんて、そんなの何かの間違いだ。
だって俺は克巳が好きで克巳が彼氏で、今は仲違い仲だけども。
第一、ユウリみたいに完璧な人は俺なんかと一緒にいていいはずがない。
なのに、どうしてだろう。胸が騒がしい、俺、多分今、ときめいている。
「よし、じゃあ買い出し行ってくる。奏はちゃんと布団に入っててね」
「お、おぅ」
触れ合わせた額を勢いよく離し、ユウリはそう言うとさっさと部屋を出て行った。
触れ合わせた額がまだ熱い。
額に手を当て、思わずまだ触れていたかったと思う自分にほとほと呆れる。
…これじゃ、勝己のこと言えねーじゃん。
ユウリに言われた通り、布団に横たわり思い描くのは、克巳とのこと。
克巳はどうして東雲先生とあんなことをしたのだろうか。仮に俺を好きじゃなくなったなら何故、正直に言ってくれなかったのだろう。
だろう、だろうと仮定ばかりの自分。けれどそろそろ、はっきりとさせなければならない。
ユウリが充電してくれた端末電子を抜き、携帯の画面にタップする。
メール履歴には良樹とユウリ、それから克巳の名前。
「…そろそろケリ、つけなきゃだよなぁ」
新規作成のメールを開き、呟いていた。
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