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恋じゃないなら、何だったのか

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 それでも時間は止まることを知らない。

 あの悪魔の日から数日、今日も俺は何食わぬ顔で職場である学校にいる。

 …本音を言えば、ひたすらに辛いだけだった。

 こんな時、大人で教師である身は残酷だが、同じ職場の奴を好きになったのも自分である。

 しかし、そろそろホテル住まいもなんとかしなければと、ようやく現実を見れるようにもなってきた。

 あの日、終電とともに降りた駅。とりあえずとホテルで一泊過ごし、翌日から職場まで電車で30分のホテルへと身を潜めていた。

 生憎、出歩いたり趣味に没頭するタイプじゃなかったのが幸いだったのか、蓄えのある口座に助けられてはいるが、問題はそこではない。

 いつまでも避けていられるはずがないのだから。

 とりあえず携帯だけでもと、気味の悪い、今や吐き気を催す部屋へと克巳と東雲先生が授業の時を見計らい、有給を使って取りに行って以来、克巳からは毎日連絡が入っている。

 ー本当にごめん。説明させてほしい。

 ーどこにいるかだけでも、連絡してほしい。

 それから良樹とユウリからも。

 ー全然連絡つかないけど、どうした?

 ー奏、元気かい?良ければまた、良樹さんと飲みにでも行かない?

 …嘘、だとは思わない。

 克巳が言う説明したいにも、良樹が言う心配も、ユウリの気遣いも。

 嘘なはずがない、なのにその全部が白々しく聞こえるのだから、自分も相当参っているのだろう。

 結局、誰にも返信が出来ないまま、気付けばあの日からもう一週間は経っていた。

 日本に住んでいれば、スーパーやコンビニがある限り、食事に困ることはない。

 とは言え、外食ばかりでは身体が鈍りそうだ。

 幸い、宿泊しているホテルは自炊ができるようにとコンロやキッチンがに備わっているタイプだったため、今日は買い物でもして帰ろうか。

 こんな時まで主婦の癖がついている自分を呪いたくなるなと、それでもホテル最寄りのスーパーに行く。

 その帰りのことだった。

「あれぇ、戸崎先生!こんなところで偶然ですねぇ?」

「東雲、先生…」
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