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それは恋だと思っていた
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「そう、かもしれないけど、俺は別にそういうの気にしたくない…」
「え?そうなの?連絡なかったのってそういうことじゃなかった?」
言われてすぐさま、そうだったと思い出すのは克巳と俺のアパートに戻ってすぐのこと。
ユウリや良樹からのメールに返信しようと携帯を手にリビングのソファに腰を下ろした矢先、克巳が背後から突然強い力で抱きしめてきた。
しかも、タイミングが悪いことに携帯のディスプレイには「ユウリ」からのメールが表示されたままだった。
「この人が元カレ?」と聞く克巳に誤魔化すのもおかしいと思い、俺は「そうだけど」と短く返事をした。
すると、克巳は「この人と連絡するのやめてほしい」と言う。
「なんで」と問えば「…わからない?」と返され、自ずと引っ込むしかなくなった。
だが、それはただの言い訳だと自分でもわかっていた。
携帯を見る度、返信を打つ度に痛いほどに抱きしめる力強い腕と低すぎる声がずっと身体に木霊していた。
「奏?奏?大丈夫?」
「あ、あぁ。大丈夫」
ユウリが心配そうな声で俺の名前を呼んだ。
…本当はユウリと連絡してはいけないと、わかっていた。ユウリが言うように、克巳が嫌がるように俺たちは元恋人だ。
俺がもし逆の立場だとしても、そうなれば嫌なものだろう。
だからずっと返信すらできていなかった。返信しないようにしていた。
けれど、この声に縋りたいと素直に思ってしまう。
好きじゃない、好きじゃないけど繋がっていたい。
「本当に?何かあったら彼氏さんにすぐ言うんだよ?」
「あぁ、サンキュ」
「奏はいつも頑張り屋さんだからね、あんまり頑張りすぎないようにね」
ああ、もう電話が切れてしまう。切らないでくれと、思わず願う。
「じゃあまたね、奏」
「あぁ…またな?」
無情にも切れた電話を見つめながら、俺はどうして自分がそう思ってしまうのか、電信柱の陰に背中を預けただひたすら考えていた。
「え?そうなの?連絡なかったのってそういうことじゃなかった?」
言われてすぐさま、そうだったと思い出すのは克巳と俺のアパートに戻ってすぐのこと。
ユウリや良樹からのメールに返信しようと携帯を手にリビングのソファに腰を下ろした矢先、克巳が背後から突然強い力で抱きしめてきた。
しかも、タイミングが悪いことに携帯のディスプレイには「ユウリ」からのメールが表示されたままだった。
「この人が元カレ?」と聞く克巳に誤魔化すのもおかしいと思い、俺は「そうだけど」と短く返事をした。
すると、克巳は「この人と連絡するのやめてほしい」と言う。
「なんで」と問えば「…わからない?」と返され、自ずと引っ込むしかなくなった。
だが、それはただの言い訳だと自分でもわかっていた。
携帯を見る度、返信を打つ度に痛いほどに抱きしめる力強い腕と低すぎる声がずっと身体に木霊していた。
「奏?奏?大丈夫?」
「あ、あぁ。大丈夫」
ユウリが心配そうな声で俺の名前を呼んだ。
…本当はユウリと連絡してはいけないと、わかっていた。ユウリが言うように、克巳が嫌がるように俺たちは元恋人だ。
俺がもし逆の立場だとしても、そうなれば嫌なものだろう。
だからずっと返信すらできていなかった。返信しないようにしていた。
けれど、この声に縋りたいと素直に思ってしまう。
好きじゃない、好きじゃないけど繋がっていたい。
「本当に?何かあったら彼氏さんにすぐ言うんだよ?」
「あぁ、サンキュ」
「奏はいつも頑張り屋さんだからね、あんまり頑張りすぎないようにね」
ああ、もう電話が切れてしまう。切らないでくれと、思わず願う。
「じゃあまたね、奏」
「あぁ…またな?」
無情にも切れた電話を見つめながら、俺はどうして自分がそう思ってしまうのか、電信柱の陰に背中を預けただひたすら考えていた。
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