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かつてそれは恋だった
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「まだ克巳くんから連絡来てないの」
せめて夕飯は作らせてくれと俺が作った唐揚げをつまみながら、良樹が呆れなのか情けをかけているのか判別できない声で俺に問う。
「来てない…まじであいつ、俺のことなんてどうでもいいんだわ」
「はいはい、それはまずないからね?」
その返答に確証はと言えば、唸る声が現実を物語っているようだと、半ばやけくそにがっつり生姜の効いた唐揚げを頬張った。
「けどさ、一回は連絡来てたよね?」
「…俺がファミレスを飛び出した日ね」
「じゃあ何でその時に出なかったの」
「…だって、まだ心の準備も出来てなかったし、また掛かってくると思ったし」
そう言えば「だから可愛いティーンだなんて言われるんだよ」と良樹が言うのは、何年も前に別れた恋人のことだ。
まさか自分がティーンなんてと、当時は否定していたがやはり俺はいわゆる乙女思考だと言わざるを得ないと最近では自覚しつつある。
というのも、克巳と付き合ってから割と自分は恋愛に夢を見ているタイプだとわかったのだ。
良樹と元カレの言葉を借りるなら、たとえば彼氏の帰りがいつもより遅いだけでメシも食べずに待っているとか、喧嘩した時に連絡を一方的に待っているだとか、そういうところが乙女なのだそう。
認めたくは決してないが、思い当たる節がありすぎるのもやはり事実で、そうなったのは多感な思春期に起きた出来事のせいだろう。
ゲイ、というセクシャリティを胸に秘めていた高校生の頃の俺の一番の理解者は、誰でもない、BL漫画だったのだ。
しかも、俺が好んで読むのは青春モノばかり、ということはエロも何も知らないピュアで甘いモノに限られている。
「まじか…」当時の俺はたしか、そう呟いていたはずだ。
いくら時代が寛容になってきたからとは言え、男女の恋愛話をするように自身の恋愛話を包み隠さずおおっぴろげに語れる度胸がまだなかった俺は、いつしか架空の物語が恋愛のバイブルとなっていた。
だからある意味ではもう仕方ないと自分では割り切ってはいた。
しかし、克巳に於いては俺が夢を見過ぎているとしても、目に余るものがあるのではないだろうか。
せめて夕飯は作らせてくれと俺が作った唐揚げをつまみながら、良樹が呆れなのか情けをかけているのか判別できない声で俺に問う。
「来てない…まじであいつ、俺のことなんてどうでもいいんだわ」
「はいはい、それはまずないからね?」
その返答に確証はと言えば、唸る声が現実を物語っているようだと、半ばやけくそにがっつり生姜の効いた唐揚げを頬張った。
「けどさ、一回は連絡来てたよね?」
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「じゃあ何でその時に出なかったの」
「…だって、まだ心の準備も出来てなかったし、また掛かってくると思ったし」
そう言えば「だから可愛いティーンだなんて言われるんだよ」と良樹が言うのは、何年も前に別れた恋人のことだ。
まさか自分がティーンなんてと、当時は否定していたがやはり俺はいわゆる乙女思考だと言わざるを得ないと最近では自覚しつつある。
というのも、克巳と付き合ってから割と自分は恋愛に夢を見ているタイプだとわかったのだ。
良樹と元カレの言葉を借りるなら、たとえば彼氏の帰りがいつもより遅いだけでメシも食べずに待っているとか、喧嘩した時に連絡を一方的に待っているだとか、そういうところが乙女なのだそう。
認めたくは決してないが、思い当たる節がありすぎるのもやはり事実で、そうなったのは多感な思春期に起きた出来事のせいだろう。
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いくら時代が寛容になってきたからとは言え、男女の恋愛話をするように自身の恋愛話を包み隠さずおおっぴろげに語れる度胸がまだなかった俺は、いつしか架空の物語が恋愛のバイブルとなっていた。
だからある意味ではもう仕方ないと自分では割り切ってはいた。
しかし、克巳に於いては俺が夢を見過ぎているとしても、目に余るものがあるのではないだろうか。
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