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恋と呼びたいだけだった
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猛烈に怒るという感情をまさか俺が持つことになるなんて、夢にも思わなかった。
戸崎 奏は今、怒るの最上級の感情をどのように扱えばいいのか、非常に困り果てていた。
猛烈に怒るというのはこう、なんていうか、腹の奥が妙に熱くて心臓がバクバクと痛いほどに脈打つこと、らしい。
そんなこと、辞書にも先生にも教わらなかったのに、実際そうなってみないとわからないというのは、なんともまあ皮肉な話である。
目の前の男は果たしてどうなのか、ふと気になって俯いていた顔を上げて見た。だが、すぐにその衝動を俺は後悔する。
なんとこの男、特徴であるデカすぎる上半身が、見事に丸まっているのだ。しかも、首まで亀のように仕舞い込まれている。
「おい!なんでお前がそんなんなってんだよ!」
罵声が狭い部屋に響き渡る。ついでに荒い吐息とあいつの啜り泣く声も。
「だ、だって、奏が怒ってるから…」
油井 克巳。この男は何故、どうしてこうなんだ、と付き合ってから何回も何十回も疑問に感じて仕方のないことを懲りもせずにまた思っていた。
油井 克巳という男は、不思議な男である。
女性二人分ほどにある肩幅にスーツの上からでもわかる筋骨隆々な背中、身長175センチの俺でも見上げるほどのそれに正直、ビビったのは否めない。
それがあいつとの初対面、必死で勝ち取った中学教職の初日の出来事だった。
職員が壁となりぐるりと狭い職員室を囲む、その中にいた一際デカい奴が克巳だ。
なんでこいつの隣に立ってんだ、俺。
目立ちたくない、なるべくなら中立に穏便に、学生時代から培ってきたセオリーが崩れる音がしたのを今もよく覚えているし、実際そうなったのだ。
何故ならその馬鹿でかい男が左隣、つまり俺がいた方向に身体をゆっくりと倒してきたのだから。
目が覚めると見慣れない白い天井が目に映った。同時に嗅ぎ慣れない消毒液の匂いが鼻を満たす。
「ご、ごめんなさい!俺、あの、極度の緊張から貧血になっていたらしくて」
やたらと掠れた声の方、そこにいる人物を認識した瞬間、俺は痛む身体を無視して盛大に叫んでいた。
そこにいるのはたしかにあの馬鹿でかい身体だ、なのに顔が頭が小さいのだ!
そいつを見た瞬間、俺はロシア土産だと母からもらったマトリョーシカを思い出していた。
戸崎 奏は今、怒るの最上級の感情をどのように扱えばいいのか、非常に困り果てていた。
猛烈に怒るというのはこう、なんていうか、腹の奥が妙に熱くて心臓がバクバクと痛いほどに脈打つこと、らしい。
そんなこと、辞書にも先生にも教わらなかったのに、実際そうなってみないとわからないというのは、なんともまあ皮肉な話である。
目の前の男は果たしてどうなのか、ふと気になって俯いていた顔を上げて見た。だが、すぐにその衝動を俺は後悔する。
なんとこの男、特徴であるデカすぎる上半身が、見事に丸まっているのだ。しかも、首まで亀のように仕舞い込まれている。
「おい!なんでお前がそんなんなってんだよ!」
罵声が狭い部屋に響き渡る。ついでに荒い吐息とあいつの啜り泣く声も。
「だ、だって、奏が怒ってるから…」
油井 克巳。この男は何故、どうしてこうなんだ、と付き合ってから何回も何十回も疑問に感じて仕方のないことを懲りもせずにまた思っていた。
油井 克巳という男は、不思議な男である。
女性二人分ほどにある肩幅にスーツの上からでもわかる筋骨隆々な背中、身長175センチの俺でも見上げるほどのそれに正直、ビビったのは否めない。
それがあいつとの初対面、必死で勝ち取った中学教職の初日の出来事だった。
職員が壁となりぐるりと狭い職員室を囲む、その中にいた一際デカい奴が克巳だ。
なんでこいつの隣に立ってんだ、俺。
目立ちたくない、なるべくなら中立に穏便に、学生時代から培ってきたセオリーが崩れる音がしたのを今もよく覚えているし、実際そうなったのだ。
何故ならその馬鹿でかい男が左隣、つまり俺がいた方向に身体をゆっくりと倒してきたのだから。
目が覚めると見慣れない白い天井が目に映った。同時に嗅ぎ慣れない消毒液の匂いが鼻を満たす。
「ご、ごめんなさい!俺、あの、極度の緊張から貧血になっていたらしくて」
やたらと掠れた声の方、そこにいる人物を認識した瞬間、俺は痛む身体を無視して盛大に叫んでいた。
そこにいるのはたしかにあの馬鹿でかい身体だ、なのに顔が頭が小さいのだ!
そいつを見た瞬間、俺はロシア土産だと母からもらったマトリョーシカを思い出していた。
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