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俺の彼氏が家出した
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「あ、ごめん、榊にもまだ言ってなかったけど、俺、中学の頃からお前のこと知っててさ」
と、南沢が話してくれたのは、中学の頃の弓道の大会でのことだった。
「妹の付き添いってか、応援で行ったんです。その時に、めっちゃ格好いい人いるなって思って見てたのが榊くんだったんです」
「へえ、じゃあその時に初めて話したの?」
陽子さんが興味津々に聞く。
「いえ、その時は話しかけられなくて」
「じゃあ、どうして哲太くんだってわかったの?」
「それは…釘づけにされたから、ですかね?」
あまりにも格好良かったので―。
ドクン、と心臓が大きく高鳴った。じわじわと身体の内側から込み上げてくる熱が抑えきれない。
格好良かった、たしかに南沢はそう言った。もちろん、同級生に対する憧れのようなものだろう。
それでも、嬉しかった。他の誰に言われてもきっと、こんなに嬉しくは思えない。どうしてこんなに嬉しいのかもわからない。けれど、嬉しくて頬が熱くなる。
きっと南沢だからだ。不思議と南沢に言われること、されること全てが榊の細胞すべてに刺さる。
嬉しかったり、悲しかったり。双子に産まれるとそういう感情が自然と伝染すると聞いたことがある。
でも、きっと双子ではない。だったらこの感情はなんなのだろうか。考えて、わかりそうでわかりたくない。
だってわかってしまったら、両親のようになってしまう―。
考え、路頭に迷いそうになった時、隣から視線を感じ、見ると南沢が榊をじっと見つめていた。
大きな瞳を柔らかく垂れさせて。まるで、榊の迷う気持ちに大丈夫だと言ってくれているかのように。
「だから、高校で同じクラスになれたってわかった時、すっごく嬉しかったんです。で、思い切って声掛けちゃいました」
「なんか、運命感じるわね」
「…はい、俺もそう思ってます」
なんだよ、それ。運命なんて、理屈じゃ説明できないだろ?頭では警鐘を鳴らしている。なのに、どうしたってそれを信じたがる自分がいた。
もし、運命なら、そうであるならこの気持ちを認めてもいいのだろうか。
答えは見えそうで、けれどまだはっきりとは見えなかった。ただ、雲に隠れていた月が、半分以上見え始めているような気がしている。
気付けば、もうとっぷりと日は暮れて、漆黒の夜を月の光が照らしていた。
「すき焼きまでごちそうになっちゃって、本当ありがとうございました」
「気にしなくていいって。それより、また家に遊びに来いよ」
「はい、是非」
と、南沢が話してくれたのは、中学の頃の弓道の大会でのことだった。
「妹の付き添いってか、応援で行ったんです。その時に、めっちゃ格好いい人いるなって思って見てたのが榊くんだったんです」
「へえ、じゃあその時に初めて話したの?」
陽子さんが興味津々に聞く。
「いえ、その時は話しかけられなくて」
「じゃあ、どうして哲太くんだってわかったの?」
「それは…釘づけにされたから、ですかね?」
あまりにも格好良かったので―。
ドクン、と心臓が大きく高鳴った。じわじわと身体の内側から込み上げてくる熱が抑えきれない。
格好良かった、たしかに南沢はそう言った。もちろん、同級生に対する憧れのようなものだろう。
それでも、嬉しかった。他の誰に言われてもきっと、こんなに嬉しくは思えない。どうしてこんなに嬉しいのかもわからない。けれど、嬉しくて頬が熱くなる。
きっと南沢だからだ。不思議と南沢に言われること、されること全てが榊の細胞すべてに刺さる。
嬉しかったり、悲しかったり。双子に産まれるとそういう感情が自然と伝染すると聞いたことがある。
でも、きっと双子ではない。だったらこの感情はなんなのだろうか。考えて、わかりそうでわかりたくない。
だってわかってしまったら、両親のようになってしまう―。
考え、路頭に迷いそうになった時、隣から視線を感じ、見ると南沢が榊をじっと見つめていた。
大きな瞳を柔らかく垂れさせて。まるで、榊の迷う気持ちに大丈夫だと言ってくれているかのように。
「だから、高校で同じクラスになれたってわかった時、すっごく嬉しかったんです。で、思い切って声掛けちゃいました」
「なんか、運命感じるわね」
「…はい、俺もそう思ってます」
なんだよ、それ。運命なんて、理屈じゃ説明できないだろ?頭では警鐘を鳴らしている。なのに、どうしたってそれを信じたがる自分がいた。
もし、運命なら、そうであるならこの気持ちを認めてもいいのだろうか。
答えは見えそうで、けれどまだはっきりとは見えなかった。ただ、雲に隠れていた月が、半分以上見え始めているような気がしている。
気付けば、もうとっぷりと日は暮れて、漆黒の夜を月の光が照らしていた。
「すき焼きまでごちそうになっちゃって、本当ありがとうございました」
「気にしなくていいって。それより、また家に遊びに来いよ」
「はい、是非」
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