89 / 105
俺の彼氏が家出した
(2)-1
しおりを挟む
「榊~おはよ!」
夏は朝から暑い。特に最近は、向日葵が咲き乱れそうな暑さだ。
榊 哲太は夏が苦手なわけではないが、それでも暑すぎる夏は苦手だった。
しかし、最近ではその暑さも悪くはないと思い始めている。
その原因である一人の男が今、榊に元気よく挨拶をしてくれた南沢 雪で、榊の親友でもある。
「おはよう、南沢」
「にしても、今日も暑いな?もう溶けちゃいそ」
たしかに暑い。が、溶けるとは少し大げさで、けれど南沢が言うのならそうなのかもとすら思う。
「溶けたら困る」
「…困るってなんで?」
「南沢と会えなくなるだろ?」
「榊って…マジで天然だよな」
そうか?と言いながら南沢を振り返ると、何故だか並んで歩いていたはずが数歩後ろにいて、たったそれだけのことに笑みが零れそうになる。
「もうすぐ夏休みだよなぁ」
「ああ」
「榊は今年もバイト?」
「と、弓道。それから漫研かな」
「漫研かあ、そういえば新入部員、入ったんだろ?」
漫研、とは漫画研究同好会の略称だ。榊はそこに正式に加入していないのだが、なんだかんだで準部員のようなポジションにいる。
「ああ、入ってくれたらしい」
「結構、榊に懐いてるとか聞いたけどな、俺」
そうか?と言いながら、けれど思い当たる行動に思わず口角が下がる。
漫研の新入部員は三名だった。そのうちの一人、高崎 凛は、入った当初から明るく元気な性格だった。
言うならば陽キャ族だ。
『榊先輩ですよね?俺、先輩のこと知ってました!』
『…なんで知ってる?』
『だって俺、去年の学祭、来てましたもん!漫研のブースで先輩のこと見かけて、かっこいいなって思ってたんです、ずっと!』
当初はお世辞だと、気にもしていなかった。陽キャ族は、よく人を褒めるものだ。陽キャ族の長的な存在である南沢も、榊をよく褒めるため、榊は重く受け止めていなかった。
が、しばらくたっても飽きることなく『かっこいい』を連発し、しかも隣の席に座った日には『めっちゃ嬉しいっす!』と、溢れ出る想いをぶつけてくる高崎に、鈍い榊ですら懐かれていると認識したのだった。
夏は朝から暑い。特に最近は、向日葵が咲き乱れそうな暑さだ。
榊 哲太は夏が苦手なわけではないが、それでも暑すぎる夏は苦手だった。
しかし、最近ではその暑さも悪くはないと思い始めている。
その原因である一人の男が今、榊に元気よく挨拶をしてくれた南沢 雪で、榊の親友でもある。
「おはよう、南沢」
「にしても、今日も暑いな?もう溶けちゃいそ」
たしかに暑い。が、溶けるとは少し大げさで、けれど南沢が言うのならそうなのかもとすら思う。
「溶けたら困る」
「…困るってなんで?」
「南沢と会えなくなるだろ?」
「榊って…マジで天然だよな」
そうか?と言いながら南沢を振り返ると、何故だか並んで歩いていたはずが数歩後ろにいて、たったそれだけのことに笑みが零れそうになる。
「もうすぐ夏休みだよなぁ」
「ああ」
「榊は今年もバイト?」
「と、弓道。それから漫研かな」
「漫研かあ、そういえば新入部員、入ったんだろ?」
漫研、とは漫画研究同好会の略称だ。榊はそこに正式に加入していないのだが、なんだかんだで準部員のようなポジションにいる。
「ああ、入ってくれたらしい」
「結構、榊に懐いてるとか聞いたけどな、俺」
そうか?と言いながら、けれど思い当たる行動に思わず口角が下がる。
漫研の新入部員は三名だった。そのうちの一人、高崎 凛は、入った当初から明るく元気な性格だった。
言うならば陽キャ族だ。
『榊先輩ですよね?俺、先輩のこと知ってました!』
『…なんで知ってる?』
『だって俺、去年の学祭、来てましたもん!漫研のブースで先輩のこと見かけて、かっこいいなって思ってたんです、ずっと!』
当初はお世辞だと、気にもしていなかった。陽キャ族は、よく人を褒めるものだ。陽キャ族の長的な存在である南沢も、榊をよく褒めるため、榊は重く受け止めていなかった。
が、しばらくたっても飽きることなく『かっこいい』を連発し、しかも隣の席に座った日には『めっちゃ嬉しいっす!』と、溢れ出る想いをぶつけてくる高崎に、鈍い榊ですら懐かれていると認識したのだった。
1
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説

僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-
悠里
BL
高3の時、義理の弟に告白された。
拒否して、1人暮らしで逃げたのに。2年後、弟が現れて言ったのは「あれは勘違いだった。兄弟としてやり直したい」というセリフ。
逃げたのは、嫌いだったからじゃない。ただどうしても受け入れられなかっただけ。
兄弟に戻るために一緒に暮らし始めたのに。どんどん、想いが溢れていく。



代わりでいいから
氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。
不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。
ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。
他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。

心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる