俺の彼氏

ゆきの(リンドウ)

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俺の彼氏が家出した

(1)-5

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 ついに来たか。愛想を尽かされるのだろうか。半ば、びくびくしながら、どうか愛想だけは尽かされませんようにと願い、雪が待つソファに座った。

「話、なんだけど」
 思わず、ごくりと生唾を飲む。

「単刀直入に聞くけど、哲太。浮気してる?」
「は?」
「…真剣に聞いてる。浮気、してるのかって」

 雪の真剣で大きい目が、哲太の瞳を覗き込む。本気で聞かれているし、疑われているとわかった。

「してないけど」
「…それ、本気で言ってる?」
「本気も何も、してないんだって」

 しばらく、そのやり取りを繰り返した。してないのだから、してないと言い張ったのに、雪も雪で譲らない。

 一体、何を根拠にそう思っているのだ。

 核心を得ているような言い方に戸惑う。雪は根拠なしに何かを疑うような人ではない。それは哲太もわかっていた。
 しかし、困ったことに本当に思い当たる節がない。浮気と言うからには、誰かと哲太がそういう仲だと疑われるようなことをしてしまったのだとは思うが、身に覚えがないのだ。

 互いに譲らない状況に、思わず哲太が溜息を吐く。すると、雪が勢いよく、テーブルに置いたままになっていた携帯を手にし、素早く操作し始める。

「じゃあ、これ、何?」
「これって」
「どうして哲太が、俺の料理教室仲間の腰を抱いてるの?」

 問われ、差し出された携帯を穴が開く勢いで見た。それは誰かのSNSのようで、手前には見覚えだけはある女性が二人、ピースをして映っていた。その奥に目を凝らすと、たしかに哲太らしき人が男性の腰を抱いているように見える。

「これ、もしかして先週の?」
「そうだよ、先週の飲み会」
「…なんで雪が」
「俺、最近、料理のSNS見るのはまってんの。で、見てたら偶然、写真に哲太にそっくりな人が映ってた」

 なるほど、とは思えなかった。そんな偶然なんてあるか?けれど、今、そんなことを間違っても口にはできない。
 と、ちらりと見た雪の顔に疑念の心を押しつぶした。

 とりあえず、釈明しなければ。
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