俺の彼氏

ゆきの(リンドウ)

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俺の彼氏が家出した

(1)-3

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「何、笑ってんだよ」
「笑ってた?俺が?」
「ああ、思いッきり幸せそうな顔して笑っちゃって」

 いや、それはない。今、自分はこの年になって窘められてしまった過去を思い返していたのだ。と、春日井に言うが、「いや、俺はこの目で見た」となかなか認めてはくれない。

「いいなあ、リア充、羨ましい~」
「…春日井も充実してるだろ」
「俺?全然。だって、別れましたから」

 道理でやけに引っかかって来たわけだ。と、納得していると、春日井は「女ってわかんないよな」と言う。

「昨日までめっちゃいい雰囲気だったのに、突然、ずーんってなってさ、何かしたって聞いても自分で考えればとか言われるし」
「そうか…」
「なんかもう、このまま独身でいいかもとか最近、思ってきてる、俺」
「それは」
「いいよ、慰めてくれなくて。いや、やっぱり慰めて」

 どっちだよ。思いながら春日井らしい返答に思わず笑みが零れる。

「榊はさ、嫌にならないの?彼女さんのこと」
 問われ、考えた。が、嫌になることはないなと思い、「ない」と率直に言った。

「じゃあ、逆に嫌になられることはない?」
「なられる?」
「彼女さんに愛想尽かされるってこと」

 考え、ぞっとした。愛想を尽かされるということは=見切りをつけられるということで、それは自ずと別れを意味しているような気もする。

 けれど、思えばたしかにそういう節はあった、と榊は思い返した。雪は時に大胆に行動に出ることがある。たとえば、榊が同窓会に行った時、酔ってしまって女性二人に送ってもらったときなんかは酷く怒り、翌日、起きたら雪の姿がないなんてこともあった。
 あれを世間では愛想を尽かされたというのだろうか。

「多分、あるんじゃないか」
「榊でもあるんだ、そんなにラブラブなのに」

 感心したように言われるほどではない。思いながらも、傷心の春日井に言ってはいけないような気になり、口を噤む。

「そっか、まあ、榊は大丈夫だと思うけど、長き仲にも礼儀ありって言うもんね、気を付けなよ」

 そう言われたところで、ブレイクタイムの職員が戻ってきて、話は終わりとなった。
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